この素晴らしい世界に祝福を!オールマイティ!   作:円卓騎士夫婦別姓

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この忙しない王室と遠征を

「いやぁね、俺も確かに悪かったと思う……だがなぁ……? ピンポイントでアイリスの事を転移させやがったコイツだって、多少俺たちみたいな目に遭ったって痛ていていてい、すいませんすいません生意気言いましたぁっ!!」

 

「クレア、そこまでになさい! ……お兄様はこれでも世界を救った英雄の一人なのですよ?!」

「……はっ、左様なさいますか! ……申し訳ございませんアイリス様、どうか気を悪くなさりませんように……!」

 

 正座のままでカズマが訴えると、どうやら足を上からギュウギュウと押し潰されたようで、訴求は即座に取り下げられた。

 加勢が入ったお陰で、クレアと言うらしい人の無慈悲な足責めは潮を引いたようだ。

 

 ハートフル、アイリス王女様。

 言い方引っかかるけど。

 

 アクアと一(まと)めに麻紐(あさひも)で括られたカズマは、右耳に(つんざ)く甲高い喚き声と視界の先の椅子に座る私を五感で捉え、込み上げるものを覚えているようだ。

 

 勿論、憤怒を。

 

 背中で笑いを抑えながら、

「……この女神様何回縛り上げられんのマジで」

 

「うぅう……! ぼうっ! なんなのよロナぁ、毎回毎回あんだのせいでしょぉっ!!」

「いやいや、あの(はりつけ)の時も今も、私はただ紐という手段を作り出しただけで、原因はいつだって君の側にあったでしょう」

 

「……! っううぅ……! ぼうっ、カズマさあああん!! ロナが論破してくるううう! ぎもちわるいよおおお!」

 

 グギり混じりで応えた私に一蹴され、カズマの片方腫れた顔を泣きで蹂躙(じゅうりん)するアクア。

 

 コイツがもっと早めに気付いていたら、カズマーとてこんな英雄にあるまじき仕打ちを受けるに至らなかったというのに。

 

『Why?』という具合の尊顔で肩を竦めそのまま回転する私の元に、(しか)め面のダクネスが寄って声を潜めた。

 

「……おい、お前も少しは弁えろ……アイリス様の御前(おんまえ)だぞ!」

 

「はぇ? 私別に何もしとらんでしょうに」

「そういう話ではない……国王なんだぞ、国のトップなんだぞ! 私達が居るからまだ良いが、お前レベルの無礼を働いたらどうなるか、わかったものじゃないんだ……」

 

「ほーん……」

 

 ……なるほど、聞く限りホントに王権は圧倒的らしいな。

 

 ダクネスの必死の諭しに、私はそれはもう下らないという感じで鼻を鳴らして。

 

「大丈夫でしょ、私強いし。てか、首飛ばされそうになったりしたとて私飛べるし」

 

「……いや何言ってる、飛んだとしてなんだ、国中で指名手配されるぞ!」

「あー……まあ確かに? 首()ねられる時も君と手繋いでるか分からないし、置いてく事になるか。……まぁあれだ、そうなったらばネバギブってこってな」

 

「……っおまえ……はっ!!」

 

 鬼の形相で口篭ったダクネスで私は満足したので、再び足で蹴って椅子を回転させる。

 

「てかほらそんなことよりほら、見て見て。これさ、足伸ばして回ると普通に回るんだけどさ……これをグーンッって膝曲げるとあっ、ほら、一気に早くなんのよこれすごくねおぉっちょっとちょっと! 急に止めんでくださいよ!」

 

「………………いいや、置いていかれんように手を繋いでおこうと思ってな。若しくは……今、この場で首を刎ねるのと同じ状態にしてやってもいい……」

 

 と、回る回転椅子をガシッと止めてから左手で私の手首を鷲掴み、右手で拳を作ってきたララティーナの人。

 あぁやべぇやべぇ、こうされるとコイツの魔力抵抗のせいで逃げられないんだった。

 

 私はすかさず下手に出て、両手で合掌(がっしょう)しながら(こうべ)を垂れる。

 

「……いや嘘ですやん……冗談ですやん……仲()うして貰いたかっただけですやん……。すいませんすいません」

 

「…………はぁ……本当に頼むぞ。一応は賢者ならば、それらしく振る舞う事はしなくても、最低限普通にしろ。王室の者たちも、お前の称号に威厳を見てるんだ」

 

 そう言ってダクネスは、疲労百のため息とともに私を解放した。

 

「普通ね、普通……」

 

「……あぁ、普通だ。ほら、あの紐もそろそろ解いてやれ。もう十分だろう」

「ウッス紐っすね、自分に解かしてください」

 

「……な、なんなんだ急なその感じは……。なんだか知らないが、(しゃく)に障るぞ……」

 

「普通っす」

 

 顰め面のダクネスをそう流して私は、構築魔法(ビルド)で作った麻紐を二人の脇腹から消失させる。

 

 いやはや、やはり使い勝手のいい魔法だ。

 紐を魔力に還しながら私は改めて思う。

 

 ビルドは物体の大体の組成が分かっていれば、短時間ならば少ない魔力消費で物体を生み出せる。

 私が文系なおかげで作り出せる物はかなりウィットに富んでいないが、それでもクリエイトウォーターとかより()()多いくらいの魔力で色々作れるのはありがたい。

 

 大気を媒介して外の空間を無理矢理転移元に指定するという、近場且つ止まってる相手にしかできないクソ力技で相当魔力を食ったので、トレースでアイアン・メイデンでも作りたかった所を麻紐で我慢させてもらった。

 

 何となくできるかなとか思ってやってみたらできた技だからな、もう二度とできないかもしれん。再現性が皆無過ぎる。

 

 加えて、一方のトレースはと言うともう、チートレベルの魔法だ。

 いやまぁ私自身の魔力量の問題で全然そんなことは無いが、私が能力の解釈をかなり広げている事もあってコッチはかなりウィットに富んでいる。

 

『再現』をその権能とする魔法で、目的によってかなり魔力消費量にバラつきがある。

 本来、というか普通は、初級魔法使いが魔法を習得・研鑽する際に、その当て感やら何やらを覚える為に使う魔法で、より腕の立つ魔法使いの放つそれを無理矢理トレースして、その魔法を正攻法で打つよりも大幅に魔力を消費する代わりに感覚を掴むとかが用法らしい。

 

 がまあ、全然それ以外にも使えたというか、私の解釈力と身体の中で魔法を弄る事に耐えられる体質ががっちりハマって、もうそんなところでは留まっていない。

 物体トレースしてるしこっち。

 

 スマホだってトレースで作った。

 とはいえ、カメラ機能とかスピーカーとかしかついてないが。

 もしインターネットだとか多少でかいストレージだとかを付与しようものなら、途端に私の魔力量が悲鳴をあげてスマホが爆発するか或いは私がそうなるだろう。

 

 遠出にしろ騒ぐにしろ今後スマホは相当使うだろうから、毎日トレースかけて維持するしか無いな。魔力消費エグいけど。

 

 トレースで生み出したものから構造を理解してビルドしようとすると、条件を満たしたことにならないようで、弾かれるというのがあるので。

 あとはなんだろう、概念とかに触れたりするのはそりゃあまあ無理だった。

 まぁ要するに、ズルはいい加減でしろよってことだろう。

 

 と、拘束を解かれてげんなりしながら立ち上がったカズマ。

 

「……というか、なんだってこんな夜分遅くにアイリス直々に屋敷まで来てくれたんだ? 用自体わかったもんじゃないし、というかそういうのは、やっても白ス……クレアとかレインとかまでなんじゃねぇの?」

 

 聞いて、流れ的にレインって言うっぽい人が、

「それの事なんですが、今日も本来は私達二人で来る予定だったんですけど……アイリス様が、カズマ殿の所に行くのならどうしてもと仰るので……」

 

 あー、なんかそういや言ってたな、王女様はカズマさんに気があるみたいな話してたか。

 ……さあさあ、この屋敷には正妻ポジとその対抗馬が睨み効かせてるが、果たして今夜のカズマ周りはどんな修羅場と化すのだろうか。

 

「フン……なんですか、どんな不届き者が来るかと身構えていれば、来たのは夜這い目的の王女様ですか……? あーあ、めちゃくちゃ気落ちしました、さっさとエクスプロージョンでもぶちかまして分からせてやりたいところです……。爆裂爆裂爆裂爆裂……」

 

 と、案の定ソファでちょむを抱いていた正妻さんが、ワンチャン側近の人達に聞こえたりとかするくらいの小声で愚痴るのが聞こえて。

 

 うぃー、アツアツですわ。

 

 同じく聞こえたであろうダクネスが、複雑な顔ながらも蒼白になってるのがまた良い。

 

 コイツそれなりに頭硬ぇからな、(おとし)めがいあるわ。

 

「フッ、何顔(こわ)ばらせてんすか」

「……強ばってない……っ!」

 

「強ばってたでしょ、正妻さんのお言葉で色々」

 

 相当性格の悪い私の揺さぶりを聞いたダクネスは、ムッとした表情を一瞬だけ顔テクスチャに浮かべたが、その後般若の形相で私に向き直って。

 

「……お前、後で覚えておけよ……!」

 

「……今のうちにどっか飛んどこうかしら……ヒュッ」

 

 と、手首鷲掴まれたら終わりなので、私は床を蹴ってダクネスから距離を取る。

 

 

 というか、肝心の用件がまだ話されてないな。

 

 

 さっきちょっとだけ、衛兵っぽい人達に『アレが賢者の名を冠す……』とかそういう、なろう系ムーブメントの視線を浴びたので、勿論私はクシャクシャの顔で指差して威嚇してやったのだが、それとも何か関係があるのだろうか。

 

「というか、早く本題に入った方が良いんじゃないの。この夜中に、しかもわざわざ王室様の方から直々に来たってことは、多分相当急ぎの用でしょう?」

 

 私が椅子に深く(もた)れながら言うと、聞いた二人の側近の人達の後ろの衛兵が何人か感嘆の声を上げる。

 

 それは違うじゃない。

 誰でも言えることにも反応するのは違うじゃない。

 敬意じゃなくて反射じゃないそれ。

 

 聞いた、騎士っぽい感じの方の側近が。

 

「……いやはや、流石は賢者だ。智将の噂はサトウカズマの方から予々(かねがね)聞いていたが……我々の思惑など既に全てお見通しのようだ」

 

 おおいいねいいね。

 

 私は調子乗って。

 

「ええもちろん。……ギフテッドメーン」

 

「…………ん? ぎふてっど……めーん?」

 

「………………続けて」

 

 私の二指敬礼を見て、首を傾げるレインと視線を天に向けるダクネスを尻目に、クレアっぽい人は咳払いしてから。

 

「……コホン……我々王室の者たち、そして我らが(あるじ)であるアイリス様は今夜……ロナ殿(ゆかり)の地と聞く叡智の街『エルケントニス』への出征を同行願いたく、訪ねた次第だ」

 

「……はーん、なるほどソレで……」

 

「……エルケントニス……? ……お前、そこまで優秀な奴だったのか?!」

 

 街の名前を聞いたララティーナの人が狼狽えている。

 

「そう……まさにギフちゅもがもご」

「なんだ、その『エルケントニス』っつーのは、そんなに優秀で名の知れた街なのか?」

 

 私がもう一度ギフテッドメーンしようとすると、いつの間に椅子の背後に来ていたカズマによって口を塞がれた。

 

「名の知れたなんてものじゃ無い……! 賢者の称号を持つ者は皆この街の出だと言われる程の、世界規模で認知されている学術都市だ……。それをコイツが……」

 

 と、これまたなろう展開の常套句的な台詞がダクネスの口をついて出て来た。

 

 ……っへえ……。

 ……そうだったんですね……。

 

 カズマに口をふさがれたままの私は、目がテンなその情報に再び手を作って。

 

「はーん……賢者の名を欲しいままにする、的な街って訳か。でもコイツの言動を見る限り賢者的な挙動は(ことごと)く「ふぉう……ふぁふぁひのこのふぇんふぁいぺひな──」クリエイト・ウォーター」

「なばあっばばあばばあっば」

 

「……悉くバカやるのに使われてるからな……一体どんな癖者の集まりなんだか」

 

 ……という感じで我々は、カズマ同担トライアングルを抱えて、夜分遅くにエルケントニスにピクニックに行く事になった。

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