この素晴らしい世界に祝福を!オールマイティ! 作:円卓騎士夫婦別姓
賢者の街、エルケントニス。
突如の荒くれ侵入者の自爆攻撃により、狙われた身と言えど俺達はそれぞれに思いを巡らせていた。
アクアは今は割り切ったようであっけらかんとしているが、先程まで乗っていた車両を
エリス教徒であるダクネスやクレアの四人は、ペンダントを取り出して祈りを捧げていた。
めぐみんは先程から難しい顔で思案に
侵入者の
…………そして、当の自爆テロをすんでで阻止した
「あああああああああああああああああああああああああああもうそうなのよなもうなあ! もうな最終的にはそうなのよな私なのよな侵入気付く対策施す欺瞞見抜くで最終的にこうっ追放、防衛? そうなのよもう私なのよ最後の最後まで頭回して巡らして全部かっさらってくのはね私というねもうディスティニーですわ、もうね運命巡ってねシナプス巡ってこう巡り巡って雪印──」
と、お決まりのお株相殺タイム。
背骨で喋ってるのかと思わされる口ぶりだ。
「…………俺、夜なべするの得意だったはずなんだけど。なんつーか、筋肉が重い……」
「カズマ大丈夫……? 確かにさっきのテロリストの子のは、私も色んな意味で肝冷えたけど……あれだけ寝る時間あったのに、今のカズマ廃人みたいな目元してるわよ?」
「……いやもう、スマン。静かにしててくれ。……凄いぞお前、寝てる時ですらうるさかったんだからな」
アクアが俺の両頬を包みながら横から顔色チェック入れて来たので、その両手首をググッと引きがしながら言って。
「ちょっと何ですか、生意気ね……女神の私が心配してやってんだから、
「感謝でも靴は舐めねえ」
俺が小学生レベルのアクアの連想を
「……あの、賢者様? ……さっきは、勝手な事言っちゃって、その……ごめ」
「やっぱり問題解決能力が高過ぎというのは言わずもがなではあるがあるがあるがあるがそのそんなことすらどうでも良くなるようなこのーエンドルフィンね」
「……え? えんどる……えんどるふぃ」
「そうそうエンドルフィンなのよエンドルフィン……いやなんか変だなちょっと、ちょっとエンドルフィン→って、エンドルフィン→ってその
「…………、…………んっ、…………えぇ………………?」
アイリスはどうやら、およそ意味を喪失した賢者の言葉に会話を
黄金の肉体におけるロナ自慢の部位は表情筋であることを強く感じさせる
「アイリス様、この男の話す事は九割が
「……っぇえ? ……でもさっきは…………」
「……ダスティネス
「クレアまで……。でも、私……ねぇレイン? って、あぁ……」
「今日は仕事で来ただけ、仕事で来ただけ、仕事で来ただけだから大丈夫仕事で来ただけだから……」
「あーどうしよ立ちはだかったな困難どうするこの困難どうする解決するかもう一回解決するか? いやでもそしたらまた再びより大きなエンドルフィン、大きなエンドルフィン→に
聞き終えて、もう
「…………あ……あぁ……。……じゃあ、良いです。……ありがとう、ございました……」
と、暴走に
「さっきまでの格好ついたインテリ賢者はどこほっつき歩いてんやがんだ……」
「…………まぁですが、今回に限ってはロナの洞察が無ければ、アクア諸共爆破されて詰んでいましたからね……。今までの敵はこんな特攻に走るほどの者は少なかった中で、少し怖いですね……」
「あーまじで凄くなってきたな。あねぇカズマ、ちょっと私ヤバいかも相当キてる今かなりキてる」
「……おう。そうか」
「そうそうあれなのよなんかなんだろう、気持ちがかなり良くなって来てて」
「そうか」
「そうそうそうそうあアレアレ、アレするあのー、ゆんぼだんぷゆんぼだんぷしようよ気持ちいいし」
「…………んんいやまずその『ユンボダンプ』が何かを知らん俺は。なんか良からぬモノっぽいし」
という感じで、アクアとめぐみんを両隣に
「え? あそっか
「ジジイ?」
「ゆんだん知らない? こうやってこの両手で肩持って」
「あおいやめろ」
「……でほら……うーん、うーん気持ちよしってやんのよ。うーん気持ちよしっ、て」
と、それを虫の交尾でも見るように観察するめぐみん。
「……すみませんロナ、流石に画が気持ち悪いです。外でやらないでください」
「そりゃ気持ち悪いに決まってるでしょそういうもんだよ」
「気持ちいっつったろお前」
「あーそっか。…………で、今日は王女様まで連れて来てこの街に何しに来たんだっけ? 何かの宣伝とあとは……なんだっけ、護衛、だったよね? 街全体の。ね、レイン」
「『あーそっか』はそんな便利な言葉じゃねぇよ……って、ん? ……待てよ……」
……アグレッシブな切り込みに反したロナの急な切り上げを聞いて俺は、少しばかりの矛盾に気が付いた気がした。
この賢者モドキの頭がエンドルフィンドライブしてるのは通常運転として、なんでコイツはこの街に来た目的を知っている……?
流石に引っかかる所あったので、俺はサッとレインの横を歩いて。
「(…………なぁレイン、今日お前達がここに呼ばれた目的って、まだ誰も明確に分かってねぇんだったよな……これってちっとばかしおかしくねぇか? ……またコイツの
俺がそう耳打ちで確認すると、ロナの口走りを聞いてからなんだか少し青いレインが、
「(…………あー、それは、です、ね……)」
言って、小難しそうな顔をするクレアと
「(…………色々理由あって、あえて貴方には……『伝えない』という方向でやってまして……。同行していただく上で
「(……ほー、あえて伝えない、か。……まぁでも、バレちまったもんはしょうがねぇだろ、別に俺も
「(……………………まぁ、そうですよね…………)」
かなり大人な対応で俺が問うと、レインは意を決したような感じで目を
「(………………下心です。……貴方の。……貴方のアイリス様への、下心です……)」
「…………下心……。……ほーって、ん?」
………………下心?
それも、俺からアイリスへのですか……。
「(…………以前、エルケントニスの方から連絡があった時に『次回の連絡は護衛要請』という
「(…………果たしてサトウカズマは、アイリス様の為の事以外で、と言うよりも、『アイリス様の前で鼻を高く出来る事以外で、本気で成果を残そうとしてくれるか』……というのが、あがりまして…………)」
……と、言葉尻を下げに下げながらの乾いた声で告げ終えられてしまった。
……見透かされてたんですか……っ?!
この二ヶ月の王都の仕事も、外交の仕事も全部、アイリスに『またお兄様に助けられてしまいました』って言ってもらえるからだったの……!
かっこつけられるからだったの……!
見透かされてたんですかぁ……恥ずかしい……っ!!
「なる、ホド…………」
それ以上の事をレインから聞く勇気が無かったので、俺は
………………そんな事ないもん……。
そんな事ないもん……っ!!
* * *
「……良かったぁ。ロナもしっかり居る。この子の転移魔法は色々頼りにしていたので……助かります」
「……え、ロナ
「……あ……、……まぁ、適当な人なので……あの人」
──ついに、エルケントニス中心街。
この街の者はそうなのだろうか、皆が各自の服装の上にロナのそれのような
ルークと言うらしいそのお姉さんと事態の詳細を話そうとしていたのだが、めぐみんが公会堂の端に何かを見たようで……。
「ど、どどんこ?! それに、あるえにふにふらまで……何故貴方達がここに?!」
あるえにふにふらにどどんこ……。
紅魔族も護衛か何かで来ているんだろうか。
「おお、めぐみんじゃないか。それにパーティの奴も……。っというか、その、とてもじゃないが……普通の街には、少し似合わないようなお人を連れてるように見えるんだが……」
「今日は王室の方からカズマさん達にお願いにあがったんです。……それと、騎士団の方からもう四名
「……おう、しつ……か……」
レインの優雅な口振りの応答を受けて、あるえのひきつり気味の口が震えながら声を出した。
「……あるえヤバい、紅魔族は強くなきゃなのに…………私緊張して来たかもしれな」
「我ぁが名はどどんこ! 最強のアークウィザードにして、いつか最強にカッコイイ名乗りを覚える者! ……我が
……と、仲間達の動揺を無視し、鳥の翼を
どうやら、中二病集団の中にも分別のグラデーションはあるようだ。
決して握手には足を運ばないクレアが、
「あぁ……まぁ、頼りにさせて
「…………それはそうと、そっちの緑の男も王室の者なのか? ……服装はこの街の者のようでもあるが」
「……あぁいや、コイツは新しくウチに入った新入りでな。ほら」
俺が言いかけると、ロナは既にウキウキで歩み出ていて。
「あどうも私あの、ハギノリザードマンと言いますよろしく頼みます」
「……ハギノ、リザードマン……。獣人の
「あまあそうはい、よろしくお願いします」
「………………いや、あるえ待て。……ちょっとコイツ借りる」
と、珍しく
「…………おいエセ賢者……。いや、さっきのがあるからエセとは言いずらいがまぁエセ賢者。……お前それめんどくせぇんだよ、会うやつ会うやつ
とぼけ顔のバカは、
「んー……? アレに関してはだってさ、ダブルダッチめっちゃ
「……は? あんなぁ、流行ったも何もレッドカーペットの電波はこっちまで届かねぇだろ。……考えてみろ、エヌエイチケー集金が異世界まで来るか? 来ねぇだろうが! もし来たら俺が無理矢理にでもブチ帰してやるわ!」
「でもこっちの世界にもコーラとかあったしなぁ。持ってきてるかもしんないでしょラジバンダリも」
「持ってこねぇわ! ……いやまぁ確かに、コーラもコーラでなんか知らんが赤に
舐め腐ったニヤけ顔が、
「カズマこそ考えてみなよ。日本人転生して来ます、あっちの文化持って来ます、それが金になります……。それで、黒コーラあって? ラジバンダリ無い? ……ね?」
「……、……ねぇよ……ねぇよ……! 黒コーラあってラジバンダリはねぇよ!!」
……っクソ、なんで俺はこんなトンチンカン相手のバカ口論でちょっと負けそうになってんだ……。
「……あのぉ……大丈夫でしょうか?」
と、
「あっ……あぁいえ! なんでも、ありません。このバカが少しバカやってたもんで」
「んー、それで言ったらこっちの紅魔族の子もなんかやってたよね。……なにどどんこ、どどんこって。ドドンコって言ったらそれはもう」
「っだぁ! お前はもう一旦どっかテレポートでもしとけうるせぇな!! スティールでパンツぶち抜いてやってもいいんだぞ、今この場で!!」
「お……? やはり両刀か? ここで両刀出して来たか?」
言いながらクソ賢者は、下唇を口奥に追いやりながら煽りつけて来た。
あぁダメだ、コイツをまともに相手するのが間違っている…………。
ということで。
「…………ダクネス、あと頼むぞ」
「ん? あ、私カズマよりデカいダクネスよりデカいんでダクネスさんとは違いまぁあッッッッ……!! ………………っ
「……あぁ、任せておけ」
俺の脳味噌と口周りの筋肉の過労に気付いたダクネスが、ロナの首根っこを
……ざまぁみろノンデリ賢者、どんだけ頭良くても結局はパワーなんだ。
ジト目でロナの首根っこを掴むダクネスが、
「……そうだな、ココ最近は、お前の教えてくれた食事管理のおかげで、少し冷え気味だな…………さて。私からも、何かお前に教えてやらないといけないな……?」
「………………私ぃ、アレなんですよぉ。すっごい頭良いんで……なんでその、ご
「なら、私の言いたいことも分かるな?」
「あマジで分かりますホント分かります」
「…………少し、静かにしてくれると嬉しいんだが」
「……そんなたりまえじゃないすか。……だからその、あんま……そんなにおっかない顔で言わんといて下さい……。ほら、折角の美人さんが勿体無いんとちゃいま」
「口を閉じておけ、いいな?」
「………………フイ……ッ」
と、ダクネスに
こんだけ途端に弱っちくなると流石にちょっとウケるな。
困惑で固まっていたあるえが、
「…………仲が良いのは変わって無いようだ……」
「……あー、ちょっと気になったんだけど、私が……そのなんなの? どどんこがどうのってさっき」
「っあそれねぇ」
「おい」
「なんも言及する気無かったんだ」
「……そうだ」
と、賢者の悪ふざけが全自動でスタート切りそうになったタイミングで、再び圧力をかけてくれた有能クルセイダー。
「え……? ……そう、良かった良かった。これからよろしくね、ハギノリザードマン?」
あぁ、アホで良かった。
ロナは一生名前で呼ばれなくなりそうだけど。
一連の混沌がある程度収束したのを見計らったルークのお姉さんが、咳払いをしてから。
「本日は皆様、
と、難しい顔になって、
「そちらの詳しい話は、ラスディの方から致します予定だったんですが、先程ここを飛び出してしまって……それっきり……」
聞いて、
「飛び出して……何か急用でも?」
「……えぇ、先程お聞きしたロナの判断による山の爆破が起こって、そこから一目散に。……申し訳ありません。凄く自由な方なもので……
「……ですよね。やっぱり観光資源ですよね、あそこ」
話を聞いて色々思い出した様子のレインが、少し天を仰いでからごちるように言った。
あの荒れ山で星でも見るつもりだったんだろうか、なんだか魂の芯が抜けているような
…………と、とてもお利口に俺達が話を聞いていると、堂を囲む回廊の方から、一人の伝令らしき人がルークのお姉さんにそそくさと近寄り……。
「……え? ……あ、そういう事……。ロナ?」
どうやら何かロナの事について話していたらしく、ルークのお姉さんは手招きしてロナを呼び寄せた。
ダクネスの一瞬の殺気を振り切ってからロナは、お姉さんの所まで耳を
「…………おぉ?」
お姉さんからの耳打ちを聞いたロナは、一瞬緊張したように口を
「皆……。私は久しくこの街に来てなくてね、色んな人のとこに挨拶に行きたいんだ。あとまぁ、このまま普通に皆と同行してっても、予定調和でつまらないし……」
と、絶対に、明らかに、『鳴らす形』で右手を
「………………かくれんぼだ。って事で、サヨナ」
……重力の音と共に、テレポートしてどこかに消えて行きやがった…………。
「……へ? ……いや、だから一緒に行動しろって事なんだけどぉおおお!? …………転移はイタズラじゃなくて、街の為に使ってよぉぉぉ……っ」
と、そのいつも通りの暴走にお姉さんは
……思わず俺は、口角の下げすぎで首筋に山脈を作った。
迷惑かけやがって…………めんどくせぇ…………ぇ。
俺が口を思わずひしゃげさせていると、
「…………よし。手分けして
「「「「「「……了解」」」」」」
……そうしてアイリス以外の俺達六人は、エルケントニスに消えたやりすぎ賢者の頭を冷やす