陰の剣聖になりたくて!   作:川井 アザト

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4話

アイリスは、ミドガル王国の王族専用車両の中で、考えにふけっていた。  

 

アイリス「何者かしら・・・・ユーリって・・・」

 

アイリスは、ユーリと手合わせをし、完膚なきまでに叩きのめされたと感じていた。

 

アイリスは、学園では並ぶもの無しの、無敗の魔剣士だった。

 

学園の試合では、どれだけの相手をし、はねのけてきたかは、数え切れない程だ。

 

ブシン祭の際も、世界各地の剣豪を相手にし、優勝を勝ち取ってきた。

 

だが、ユーリだけは、別格だった。

 

ユーリと手合わせをした際、アイリスがユーリに感じたものは、圧倒的なまでの氣勢と魔力。

 

おおよそ、人の理屈の範疇を超えたような、鬼神の如き強さを、アイリスはユーリと対峙して感じていた。

 

アイリス「遊ばれてたのかしら・・・私・・・」

 

ユーリに打ち込んだ斬撃は、どれも本気だった。

 

立ち合いの後半からは、殺気もこもっていたかもしれない。

 

だが、そのどれも、ユーリには通じなかった。

 

アイリス「そういえば、ユーリに教えてもらった瞑想の鍛錬方法、試してみようかしら・・・・」

 

アイリスは、ユーリに、彼の独自の鍛錬方法を教わっていた。

 

瞑想は、ブシン流にも存在する。

 

しかし、ユーリの瞑想は、どの流派にも属さないやり方だった。

 

体の力を完全に抜き、周りの魔力を丹田に集め、練り上げるという独特の瞑想のイメージ。

 

彼は、この鍛錬に慣れれば、魔力量の上昇と操作を効率よく行えると言っていた。

 

アイリス「私は、背負わなければならない・・・王国を、領土を、国民を、そのためなら私は・・・・」

 

アイリスの気負いは、彼女自身の剣を迷わせている。

 

それに彼女はまだ気づいていない。

 

アイリス「ユーリ・・・・・もっと、早くに、あなたに会えていたらね・・・・」

 

アイリスは、魔剣士としての強さから、尊敬と期待の視線を、普段から向けられていた。

 

王家の第一王女というのもあるが、周りからの彼女に対する感情は、決して親しくはなれなかった。

 

それ故、今まで友人というものができたことがない。

 

彼女は、心からの親友を、心の何処かで欲していたのだ。 

 

アイリスは、ユーリという身分も年齢も関係なく、友人になれたことを、心強く、嬉しく思っていた。

 

アイリス「また会えるわよね、ユーリ・・・・」

 

彼女は、王都に帰るまでの道中、彼のことを頭の中で、ずっと考え、思い続けていた。

 

いつになく、思い出にふけながら。

 

〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈

 

アイリス王女が、村から離れた2日後、やっと北の山の調査が終わり、兵士が引き上げ、本格的な鍛錬を再開することができた。

 

兵士が引き上げた後、俺はすぐに山へと向かい、いつもの瞑想と基礎鍛錬を行い、〈実戦〉の稽古を始めようとしていた。

 

ユーリ「よーし!やっと本格的にできるぞー!今日は少し飛ばして、〈俵断ち〉は、十本は行きたいな!」

 

木剣を握り、鍛錬場の周辺にある、霊樹の元へと向かう。

 

霊樹の前まで立ち、脇を締め、木剣を横に構える。

 

ユーリ「フーー・・・・・・・」

 

氣と魔力を全身に行き渡らせ、左手を握りしめる。

 

腰を溜め、重心を落とす。

 

ユーリ「・・・・・・・・・またか」

 

俺が、霊樹に向けて、斬撃を放とうとしたときだった。

 

また、何者かの気配が、森の方から感じられた。

 

ユーリ「出てきてもいいよ。何もしないから。」

 

感じた気配に、敵意は感じられない。

 

あるとすればそれは、好奇心の気配だった。

 

俺が、気配の主に対し、話しかけ、しばらくした後に、俺の前に一瞬で、黒いローブを着た人物が現れた。

 

「さすがね。」

 

ローブの下からのぞかせた煌めく金髪、そして声から、目の前の人物が、女性だということがわかった。

 

身長も俺と同じくらいで、少女といえる背丈くらいだ。

 

ユーリ「そりゃどーも。それで、君は?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ユーリ「だんまりだと困るんだけど・・・・」

 

その時だった

 

目の前の少女が、消え、俺の目の前まで肉薄した。

 

ユーリ「マジか・・・・・」

 

少女の手には、黒い魔力の塊の剣が握られており、俺の心臓めがけて一閃に突きを放ってきた。

 

ユーリ「あぶな・・・・」

 

俺は、即座に半身になり、彼女の突きを避けると、避けられた彼女の体が目の前まで来た。

 

俺は、彼女の頭を掴み、地面に叩きつけた。

 

「ッッ・・・・!」

 

俺は、叩きつけた彼女に対し、手にしていた木剣を、首元に添えた。

 

ユーリ「抵抗はしないでね。ただの木剣でも、君のことを殺せるから。」

 

俺は彼女にそう警告した。

 

「・・・・・・・やっぱり、間違いではないようね。」

 

少女から、殺気が消えるのが感じた。

 

どうやら、抵抗する意思は無いらしい。

 

俺はそっと木剣を遠ざけ、彼女の頭から手を離した。

 

すると、少女はゆっくりと起き上がり、立ち上がった。

 

「やっと見つけたわ・・・・」

 

彼女は、そう言うと、ゆっくりとローブを解除した。

 

どうやら、ローブ自体も魔力の塊らしい。

 

まるで、スライムのようだった。

 

ローブを解除した彼女は、金髪の長髪をなびかせ、青い瞳はラピスラズリの宝石のように煌めいていた。

 

「私の名はアルファ。初めまして、〈鎌鼬〉さん。」

 

 

〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈

 

 

目の前に突如として現れ、殺気を込めた一閃突きを放ってきた少女は、アルファと名乗った。

 

ユーリ「なんで、俺が鎌鼬だと思ったの?」

 

俺は、彼女の言葉に引っかかった。

 

〈鎌鼬〉、その単語は、あの夜の村の人間しか知らない言葉だ。

 

アルファ「事実を述べたまでよ。あなたの戦いぶりは見ていたわ。まあ、戦いっていうより、一方的な殺戮だったけど。」

 

ユーリ「・・・・・・・・どこまで知ってるの?」

 

アルファ「全部よ。あなたが剣の鍛錬をしていること、家族のために魔剣士を目指していること、あなたが〈鎌鼬〉の正体だということも。」

 

彼女は知っていた。俺が、この世界でやってきたことの全てを。

 

どうやら、いつの間にか、観客がいたらしい。

 

それも、厄介そうな世界の住人の観客に。

 

ユーリ「なんで、俺なの?」

 

情報は、世界の中にある人間一人一人にあることだ。

 

アルファが、わざわざ俺一人を、そこまで注視することに疑問を感じた。

 

アルファ「答えは単純よ。あなたが、この世界を、一人で平らげてしまうくらいの強さを持っていると感じたから。そして・・・・・」

 

アルファは、突然、俺の前でひざまずいた。

 

まるで、王に謁見する、騎士のように。

 

アルファ「あなたに、私たちを、鍛えてもらいたいの。」

 

アルファの願いは、至極単純だった。

 

鍛えるという行為は、人それぞれに理由がある。

 

強くなるため、健康のため、自分以外の誰かのためと、様々だ。

 

だが、アルファの鍛えて欲しいという言葉には、様々な含みがあると、俺は感じた。

 

俺のことを監視する分、彼女が、表の世界の人間ではないことは明白だった。

 

ユーリ「・・・・・どうしても?」

 

アルファ「どうしてもよ。」

 

ユーリ「ただの村の男の子だよ?」

 

アルファ「関係ないわ。」

 

ユーリ「嫌だと言ったら?」

 

アルファ「何度だってお願いしにくるわ。」

 

アルファが、強硬手段をあまり使わない、冷静な判断のできる女性だということは、彼女の落ち着いた言動から察せられた。

 

俺がここで嫌だと言って、しつこくお願いに来られるのも、鍛錬の邪魔になって困る。

 

それに、彼女に、俺の家族を知られている分、あまり俺には、選択肢がないように思えた。

 

ユーリ「ハァ・・・・人数は?どうせ一人じゃないんでしょ?」

 

アルファの魔力の気配から、他の複数の人物の魔力が感じ取れた。

 

匂いではないが、染み付いた魔力の痕跡は、早々消えるものではない。

 

アルファ「話が早くて助かるわ。まずは、私を入れた七人ってところね。追々、あなたに鍛えてもらえる人数を、増やせられれば良いのだけれど。」

 

ユーリ「男女比の割合は?」

 

アルファ「私の主人を入れると、9:1の割合で、女性が多いわね。」

 

ユーリ「ギャルゲーかよ・・・・」

 

アルファ「ギャル、ゲー・・・?」

 

俺の口走った前世の単語に、アルファが反応した。

 

9:1ってことは、彼女たちの主人は男性。

 

はたから見れば、ただのハーレムだ。

 

ユーリ「なんでもない。それで、何を鍛えてほしいの?」

 

アルファ「全般といったところね。戦闘面もそうだけれど、魔力量の増強、魔力操作の効率、精神修行、その他諸々・・・」

 

ユーリ「時間がかかるね・・・・まあ、一朝一夕じゃ強くはなれないし」

 

アルファ「その通りね。どう?引き受けてもらえるかしら?」

 

彼女は立ち上がり、右手を俺に差し出した。

 

どうやら、契約成立の握手を交わしたいらしい。

 

ユーリ「ハァ・・・・しょうがないから、付き合ってあげるよ・・・」

 

俺は、アルファの右手を掴み、握手を交わした。

 

ここに、一つの契約が成り立ったのだ。

 

ユーリ(俺の鍛錬の時間、取れるかなぁ・・・・)

 

これから徐々に奪われていく自分のプライベートの時間をよそに、闇の住人との付き合いが、ここから始まってしまった。

 

 

〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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