陰の剣聖になりたくて!   作:川井 アザト

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6話

 

 

〜〜3年後〜〜〜

 

 

よく晴れた日の早朝。

 

15歳になった俺は、身の回りを片付け、身だしなみを整えていた。

 

こんなことしているには、理由がある。

 

3年ぶりに、王都から、アイリス様が正式にこの村へ来訪されるのだ。

 

そのことがわかったのは、昨日届いたアイリス様からの手紙と、村長からの通達だった。

 

俺は、アイリス様から初めて手紙をもらったあの日から、彼女と文通を重ねていた。

 

内容は、近況報告や、剣の鍛錬のこと、悩み、王都の情勢、学園生活など様々だった。

 

アイリス様は、20歳になられ、王都の騎士団を組織し、領内の治安維持や、支援活動に勤しんでいるようだ。

 

ユーリ「こんなものか・・・」

 

俺は鏡で身だしなみをチェックし、椅子から立ち上がった。

 

いつもより、俺の鼓動が早い。

 

アイリス様に会えることが、何よりも楽しみで仕方なかった。

 

この世界で、初めてできた、俺の大切な、友人だから。

 

ユーリ「少し早いけど、会場を見ておこうかな。」

 

アイリス様が来られた時に、来賓として招くための会場が、設けられていた。

 

会場は、村長の家。

 

王族を迎えるには少し小さいが、まあまあ大きな村長の家を会場として使い、そこで、村長との対談があり、午後に村の視察という予定になっていた。

 

ユーリ「まだ早いか・・・それなら。」

 

3年ぶりに友人に会えるからといって、あまり興奮しすぎるのも良くはない。

 

アツくなるのは、武人としては、愚の骨頂だ。

 

俺は、家の外に出て、軒先に立てかけてある木剣を手に取った。

 

木剣を下段に構え、瞑想の状態に入る。

 

氣を鎮め、魔力を丹田の内側に集約させ、練り上げる。

 

ユーリ「ふう・・・・落ち着いた・・・・」

 

構えを解き、楽な姿勢に体勢を戻す。

 

いつも通りの感覚を確認し、俺は木剣を軒先へと立てかけ、薪割り用の切り株に座る。

 

ユーリ「早く来ないかな、アイリス様・・・・」

 

瞑想で、心を落ち着かせたはずなのに、氣が緩むと、またすぐアイリス様のことを考えて、徐々に鼓動が早くなっていった。

 

俺は、またすぐに立てかけた木剣を手に取り、また瞑想の状態に入る。

 

だが、その時だった。

 

家の入り口のところで、馬の鳴き声と、馬車が止まる音がした。

 

ユーリ「誰だろ?アイリス様は、まだ来ないだろうし。別の来賓の貴族様かな?でも、手紙にはそんなこと・・・・」

 

アイリス様は、ミドガル王国騎士団の隊列の馬車で来るはずだ。

 

もらった手紙の内容にも、別の来賓が来るという話題はなかった。

 

俺は、恐る恐る、家の入り口へと向かった。

 

そこで目にしたのは。

 

アイリス「ユーリっ!」

 

アイリス様の姿だった。

 

ユーリ「アイリス様!?」

 

彼女が来るのは、午前の10時くらいの予定だと手紙には書いてあった。

 

だが、予定の時間より3時間も早く、アイリス様は来ていた。

 

そんな彼女は、馬車から飛び出すように出て、俺のそばへと近寄り、そのまま抱きしめてきた。

 

ユーリ「ちょっ!?ええっ!?」

 

初めての家族以外の女性の抱擁に、俺は動揺を隠しきれなかった。

 

心臓の鼓動も早く、今にも爆発してしまいそうだ。

 

アイリス「会いたかった・・・本当に会いたかった・・・ユーリ・・・」

 

彼女は、そのまま俺を抱きしめ続けた。

 

ユーリ「ちょっ・・・アイリス様・・・苦しい・・・折れる折れる・・・」

 

アイリス「あッ!?ご、ごめんなさい!嬉しくなってつい!」

 

アイリス様は、慌てたように、俺から離れた。

 

ユーリ「おぉ〜・・・折れるかと思った〜・・・」

 

アイリス「ごめんなさいユーリ!怪我はしてないかしら!?」

 

ユーリ「大丈夫ですよ・・・アイリス様。それよりも、改めて・・・」

 

俺は姿勢を直し、アイリス様に向き直る。

 

ユーリ「お久しぶりです。アイリス様。友人として会える日を心待ちにしておりました。」

 

アイリス「私もよユーリ。この日をどれだけ待ち望んだことか・・・」

 

ユーリ「ええ、本当に・・・どうぞ、我が家にお上がりください。時間もまだですし、それまでおくつろぎくださいませ。お連れ様もどうぞ。」

 

アイリス「ありがとう、ユーリ。また、お邪魔させてもらうわね。」

 

俺は、アイリス様と、連れの2人の近衛騎士の方を、我が家へと案内した。

 

アイリス様は、家に入ると、懐かしむような目で、家の中の周りを見ていた。

 

ユーリ「お座りになってお休みください。今、お茶を持っていきますので。」

 

アイリス「あの薬草茶ね!懐かしいわ!」

 

アイリス様が、3年前に滞在されたときに出したお茶。

 

地元の森の中で採れたハーブや薬草を煎り、お茶にして出したときに、アイリス様は、笑顔でそのお茶を飲んでいた。

 

お茶箱を取り出し、事前に煎ったハーブと薬草をポットに入れ、お湯を注ぎ込み、しばらく待って、木のコップに移し、アイリス様とお連れの騎士様に出した。

 

アイリス「この香り、たまらないわ・・・いただきます。」

 

ユーリ「どうぞ、お召し上がりください。お連れ様も、どうぞ。」

 

マルコ「あ、いや!自分たちのことはお構いなく!」

 

グレン「いいじゃないかマルコ。ありがたくいただこう。」

 

アイリス「そうしてください、2人とも。このお茶は、とても美味しいんですよ。」

 

アイリス様も、2人にお茶を飲むよう促す。

 

促された騎士の2人は、席に座り、俺の淹れたお茶を飲んだ。

 

マルコ「美味い・・・・なんですか!これ!」

 

グレン「こんなうまい茶は、初めてだ・・・・!一体、何を入れてるんだ!?」

 

2人は、お茶を飲んで驚いたような顔で、お茶の内容物について聞いてきた。

 

ユーリ「ええっと、ドラゴンリーフに、エルフェンルート、あと数種類のハーブを・・・・」

 

マルコ グレン 「「ぶぶーーーーーーッッッ」」

 

騎士の2人は、盛大にお茶を噴き出した。

 

ユーリ「大丈夫ですか!?」

 

俺は2人に、顔を拭くためのタオルを持ってきて、騎士の2人に渡した。

 

2人は、口を拭い、呼吸を整え、しばらくして俺に聞いてきた。

 

マルコ「ユーリ君!その植物はどこで!?いつ採ったの!?」

 

グレン「国難が解決できるかもしれん重要な質問だ!答えてくれないか!?」

 

ユーリ「え、ええと、その・・・・」

 

アイリス「2人とも落ち着いてください。彼が怯えているじゃないですか。」

 

アイリス様は、2人を諌め、落ち着くように促す。

 

2人はそれに従い、改めて席に座った。

 

アイリス「2人の反応も当然です。私も最初は驚きましたから。」

 

アイリス様は、お茶を吹き出しはしなかったが、最初にこれの内容物を聞いた時は、驚愕していた。

 

2人の騎士の反応を見ていて、少し、懐かしい想いがした。

 

マルコ「ドラゴンリーフに、エルフェンルートは、神話級の伝説の植物・・・・国庫にだって、その2つの、ほんの枯れた葉っぱの一部しかないのに・・・・」

 

ドラゴンリーフとエルフェンルートは、どちらも、吟遊詩人が歌にし、神代の古代語の資料の中に記された、とても貴重な薬草らしい。

 

その2つの薬草は、どんな万病も蹴散らし、摂取し続ければ、不老不死の如く、寿命を延ばすという代物だった。

 

ユーリ「俺がいつも使っている北の山の、霊樹の森から、たまに採れることがあります。村の診療所の先生に採取を依頼されることもありますし、俺にとっては馴染み深い植物なんです。」

 

グレン「霊樹だと・・・!?あの高密度の魔力の塊が、森林になって群生していると!?」

 

ユーリ「ええ、まあ・・・・」

 

アイリス様の騎士たちは、ユーリの話を聞いて、半ば放心状態になっていた。

 

アイリス「お二人共!しっかりしてください!ユーリの話を聞いてそうなるのはわかりますが!騎士として踏ん張ってください!」

 

アイリス様は、2人を揺らしながら、我に帰させようと必死だった。

 

彼女の問いかけに応え、放心状態から戻ってくるのに、20分はかかってしまった。

 

アイリス「ゴホン・・・・お茶、美味しかったわ、ユーリ。ごちそうさま。」

 

ユーリ「お粗末さまです。」

 

俺は、空になったコップを片付けて、再び、アイリス様と向かい合うように座った。

 

アイリス「さて、思い出話に浸りたいのも山々なんだけど、私がこんなに早く村に来て、あなたに会いに来たのには、理由があるの。」

 

ユーリ「どんな理由か聞いても?」

 

アイリス「ええ。このことは、本当に早くに、あなたに伝えたくてね・・・・」

 

アイリス様は、真剣な面持ちと目で、俺を見つめた。

 

アイリス「ユーリ。いえ、ユーリ殿。あなたに、ミドガル魔剣士学園の〈講師〉になっていただくことを、ここに伝えます。」

 

ユーリ「・・・・・・・・は?」

 

俺もしばらく、彼女の発言に、状況が掴めないでいた。

 

 

〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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