蒼穹の艦隊   作:サツキタロオ

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新作!


【蒼穹の艦隊 編】
PHASE-1:目覚める艦娘


……

 

海。

 

かつて人類が大海原に憧れを抱き、船を造り、そして駆け出した。

 

そして人類が外宇宙にまで進展し、時代は発展して数百年が過ぎた正暦時代。

地球を巡った覇権争いは終わり、平和な時代が訪れると思われていた。

 

しかし、突如として深海から謎の敵『深海棲艦』が現れ、人類は制海権を失ってしまった……。

だが、それだけではいかない人類。

人類は、一部の高い身体能力や特定の能力を持つ人間に、船の魂を授ける『艦娘化計画』を実施。

 

そして、人類と艦娘、そして深海棲艦との戦いは長年に続いた……

 

 

 

 

 

 

 

………

 

「おい…こっちに人が…!」

 

「こいつも艦娘だよな…?」

 

だ、誰だ…?

 

「急いで鎮守府に連絡しろ…!」

 

俺は…

 

………………

 

「……………」

目を覚ますと、そこはベッドの上だった。

「ここは…?」

「あ、目を覚ましましたか?」

……白衣の女性が声をかけてきた。

「よかった……なかなか目を覚まさないから心配だったんですよ?」

「……ここは」

「ここは、鎮守府にある医務室です。」

「……鎮守府…?なんですか?それ…」

俺は頭を傾げる。

「え……まさか、何も覚えてないの……?」

「……はい」

「そんな……」

女性は、少し考えてから口を開いた。

「……じゃあ、自分の名前はわかる?」

……名前?俺の名前……

「俺は……あれ?」

 

……思い出せない。

 

「わからない……です」

「そう……」

女性はまた考え始めた。

「あの……俺はどうしてここに?」

「それは……あなたが海で倒れていたからよ」

「……海?俺が……?」

「……うーん…とりあえず、ここで休んでてね。そっち分野に詳しい人を連れてくるから。」

女性は、部屋から出ていった。

海で倒れてた……? ……どういうことだろう。

 

………

 

「提督、第一部隊。ただいま帰還しました。」

「ご苦労様。」

俺が今回の資料を提督の机に置く。

「今回、ドロップ艦が出たって聞いたけど、どんな子だった?」

「ああ、駆逐艦らしいぞ。しかも、夕雲型だ。」

「おっ、この鎮守府だと初めての夕雲型だな。」

 

 

夕雲型か……。

 

基礎的な能力は平均で高スペック。

駆逐艦の中でも高水準な者が多いを聞く。

 

俺は軽巡洋艦ではあるが、今だに駆逐艦と軽巡の違いが分からない。

同期に聞いてもしっかりした答えは貰えなかった。

 

「…今日中にメディカルチェック終わるらしいぞ。」

「お、明日ぐらいには挨拶に来るのかな?」

提督はウッキウキでどんな子が来るか楽しみにしていた。

…ぶっちゃけ俺も楽しみにしている。

 

「どの艦隊に入るんだ?」

「うーん…榛名達の部隊に任そうかな。」

 

まじか。俺、新しい奴と一緒に戦えるのか。すげぇ嬉しい。

…早く会うのが楽しみだ。

 

 

………

 

目が覚めた俺は、医者からしっかりした検査を受けていた。

「……うむ…凄い健康体だ…」

「…そうなんですか?」

「ああ。今の時代になってドロップ艦は滅多に見ないからね……。」

医者の話によれば、ドロップ艦と呼ばれる艦娘が俺以外にも居るらしく、最近はあまり見かけないと聞いた。

「とりあえず、君の鎮守府に連絡しておこう。」

「お願いします。」

俺は、自分の手のひらをジッと見つめる。

この手は……本当に俺の手なのだろうか……?記憶が無いから、自分が何者なのかが分からない。

しかし、自分の性別は男だと思っていた。しかし、体の隅々を触るが、男性特有のモノが無くなっていた。

「まじか…」

俺は少し落胆し、ベッドに寝転がる。

しかし…何も思い出せない。自分が何者なのか…この国の事とか…なんで女の子になってるのかとか…

「これからどうなるのかな。俺。」

そんな事を考えていると、ドアをノックする音と共に誰かが入ってきた。

「おっす。」「あ、どうも…」

入ってきた少女に挨拶され、俺も挨拶し返す。

セイラー服に眼帯という少々奇抜な格好をした少女だった。

 

「…えっと…」

「ああ、自己紹介が遅れたな。俺は木曾。よろしくな。」

「あー…えっと…」

「いや、いいんだ。」

そう言って木曾さんは俺に飴を渡してきた。

「ありがとうございます。」

「敬語は要らない。そういうのむず痒いからさ。」

「え?…ああ、分かったよ。木曾。」

木曾からそう言われ、俺は敬語を無くして話す。最初はコワモテそうな感じだったが、話してみると意外と話しやすかった。

「…うん。お前は今の世の中の現状を知ってるか?」

俺はそれを聞かれて考えるが、分からず首を横に振る。

「…そうだな。俺たちの部屋に案内すると同時に話すよ。」

 

そう言って木曾は部屋から出て、俺も部屋から出る。

話はこうだ。

 

数百年前に海から現れた敵『深海棲艦』と呼ばれる謎の敵によって人類は制海権を失うが、艦娘と呼ばれる少女たちによって人類を守っているそうな。

そして、侵略前に宇宙にまで手を出し、そこから得た『フォトン』と呼ばれる粒子を利用して艦娘の戦力増強に繋げているそうな。

 

「…っと、着いたぞ。ここが俺達第一部隊の部屋だ。あ、これ鍵な。」

そう言って木曾から鍵を渡される。

「今日からお前は、俺達第一部隊の仲間。つまり、俺の仲間だ!」

「まだわかんない事があったら聞けよ。」

「あ、ああ…」

「…ふう…さて、案内が終わったし、俺は風呂に行ってくる。後は自由にしててくれ。」

そう言って木曾は手を振って何処かに歩き去ってしまった。

 

俺は部屋に入り、辺りを見回す。

六人程が寝られるぐらいの広さで、畳にちゃぶ台、奥にはそれぞれの私物があった。

よく見ると、一つの布団が盛り上がっているのが見え、誰かが寝ているのだと分かった。

「…んん?」

すると、布団から誰かが出てきた。

大きなあくびをして目を擦る…長身の女性。

灰色の髪に整った顔立ちをしており、言うなれば大和撫子と言った感じだろうか。

「…ん?お前は?」

女性は俺に気づくと、更衣室に行って急いで服を着替え始めた。

 

暫くして更衣室から出てきて女性は大きく伸びをした。

「……で?お前誰?」

「…え、ああ。今日配属の艦娘ですが…」

すると女性は暫く考え、ポンっと手を叩いた。

「ああ!今日木曾の言ってた奴か!お前だったのかぁ…よろしくな!」

そう言って女性…いや、彼女は俺の肩を叩いた。

「俺、高速戦艦の榛名。よろしくな。」

「…」

「ん?どうした?」

「いや、そんな美しい見た目をしてるけど、男らしい口調なんだなって。」

「うーん…なんつーか…だいぶ複雑っていうか…」

木曾と榛名は気まずそうに話し始めた。

 

「実はだな。俺らは元々男だったんだよ。」

 

…??????

言ってる意味が分からなくて、俺は頭がショートした。

「……は?どういう事?」

「…こほん…艦娘になる為には適合率が高くないと駄目なんだ。これは基本女の方が適合率が高いんだけど…」

木曾はベッドの横にある引き出しから何やら紙を取り出して、俺に見せてきた。

「これは?」

「艦娘適合率の診断結果。」

その紙には、木曾の人間の時の名前とあと色々長い文章と書かれていた。

「俺ら二人は、男だけど適合率が高かったから艦娘になったって事。」

「へえ…珍しいの?」

俺は率直に思った疑問を聞いてみる事にした。

「さあな。多くて20人ぐらいだそうだ。」

「へぇ……」

「まあ、俺らは運良く適合率が高かったから艦娘になれた。……で、この鎮守府には4人いる。」

「……どんな子?」

俺はそう聞くと木曾が答えてくれた。

「……まずは俺と榛名。今は遠征中で居ないけどもう一人…」

「それから…お前だな。」

指を刺されて、思わず首をすくめる。

「え?俺?」

木曾は頷いた。

「だって口調が男っぽいもん。」「…あっ…」

そういえばそうだった…。

「じゃあ……艦娘ってみんな女の子って事か?」

「まあ、そうなるな。」

そうかぁ……。なんか変な感じだなぁ……俺男なのに女になってるし……

「…さて、まだ提督に会ってなかったよな。執務室まで案内するよ。」

「ああ、うん。じゃあ頼むよ。」

木曾が立ち上がったのを見て、俺も立って木曾の後を着いて行った。

 

「着いたぞ。」「早ッ」

僅か5秒程で辿り着いた。どうやらすぐ隣にあったようだ。木曾がドアをノックして中に入る。

「提督、今日配属の艦娘を連れてきた。入っていいか?」

『いいよ。』

「失礼しまーす……って……」

俺は執務室に入る。内装はシンプルで勲章が飾ってある棚に客人をもてなす机とソファ、奥の方に仕事用の机があり、そこに白い軍服に帽子を被った青年が居た。

「やあ、こんにちは。俺は提督。よろしくねー。」

「あ、どうも。」

俺は頭を下げる。

「……で?この子が?」

提督は俺を見ながら言う。

「ああ、今日配属の艦娘だ。」

木曾にそう言われると、提督は俺に手を差し出してきた。俺もそれに応じて手を出すと、握手した。

「よろしくな!……えっと……」

提督は何かに気づいたように俺の名前を聞く。

「……え?いや、名前は……」

「あれ……?記憶喪失……?」

「それもあるんですけど…その……」

「?」

俺は、提督に自分の事について話した。

「なるほど……じゃあ、名前が無いと困るな……。」

「……はい。」

「うーん……あ、そうだ。この艦娘名簿で名前調べるよ。ちょっと待っててね。」

提督は名簿で調べ始めた。すると木曾に肩を叩かれ、小声で話してきた。

「こうすると提督は長くなる。今のうちにどっか歩いとけ。」

「そんなに?」

「熱中したら抜け出せない主義なんだよ。」

「…あー…うん分かった。」

 

俺は木曾に言われて執務室を後にした。

 

………

 

 

 

 

 

俺はそのまま外を歩く事にした。

外には桜の木が植えてあった。どうやら春らしい。

「…それにしても…」

俺はベンチに座る。そのまま風を感じながら空を見上げた。

 

(俺は一体なんなんだろう…)

(この身体になって…俺は何ができるんだろう…)

 

悩んでいると、警報の音が聞こえてきた。

「!?」

俺は思わず立ち上がって辺りを見回す。

 

『緊急連絡!緊急連絡!近海に深海棲艦の部隊の奇襲を確認!出撃可能な艦娘はすぐに格納庫へ!』

 

「…格納庫?」

俺が辺りを見回すと、レンガの建物に向かって走る艦娘達が居た。

「あっちか!」

俺もそのまま向こうに走り出した。だが、「勝手に動くな!」と言われそうだったがまあ緊急事態なので気にしない事にした。

 

そのまま走っていると、海の方から爆発音がした。

「な、なんだよアレ!?」

俺が目を凝らして海の上に浮かんでいるシルエットを見つめてみた。

 

そこには海に浮かぶという現実ではありえないような事が起こっていた。

「アレが…深海棲艦?」

俺はその名前を呟いた。

初めて見たが、随分と姿がバラバラだなと感じた。

モンスターのような見た目だけかと思ったが、俺たちのように女性の見た目をした深海棲艦も居た。

「とにかく…近くに行って見てみるしかないか…!」

俺は爆発音がした場所に近づく。建物の入り口辺りが破壊されてボロボロになっていた。

足元に置かれていた鉄パイプを拾って臨時の武器にする。

 

「…!」

すると、俺の目の前に深海棲艦の一体が迫ってきた。小さい体だったが大きな口を開いて攻撃してくるが、俺は鉄パイプで叩きつけて攻撃する。

そのまま折れた鉄パイプを捨て、目玉を掴んでそのまま投げ飛ばした。

目玉が抜けた深海棲艦はそのまま海に落下していった。

 

「や、やった……!」

 

 

 

 

……………………

 

その頃、木曾や榛名が格納庫に行っている間、提督は名簿から一つの名前を見つけた。

「あったあった。ちょうど特徴とも一致してる。」

 

……そして提督はその名前を呟いた。

 

 

 

「夕雲型駆逐艦 3番艦…」

 

風雲(かざぐも)か…」

 

 




【次回予告】
遂に明かされる少女の名前。
 そして、鎮守府に迫る脅威。
  風雲、遂に戦場へと立つ!

次回、蒼穹の艦隊 PHASE-2『その名は風雲』。

風と共に出撃せよ!
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