魔法科高校の退学希望者   作:無淵玄白

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多人もすなる転生といふものを、少人もしてみむとてするなり。

それの年(令和八年)のさつきの十日あまり七日の、子(ね)の時に門出す。


第一話「転生者はがけっぷち。」

 

いきなりだが、俺は転生した。

 

フカシこいてんじゃねーぞオメー…などとヤンキー辺りに言われそうな自白だが、本当にそうなのだから困ってしまう。

 

自分が死んだ経緯はよく覚えていないが、とりあえず転生特典(feat,転生カミサマ)に。

 

「丈夫で健康な身体。重篤な病気にも怪我もなく、ちょっとやそっとのことでは病気にならない身体を!!」

 

などと切望したのを思い出すにそういうことだろう。

 

さて、その上で困ったことに……転生先の世界を指定出来ずに、ウマいことやってチョーダイ!!(by転生カミサマ)などと言われたことだった。

 

赤ん坊の頃はあまりはっきりしなかった自我。

 

そして見えてきた世界から自分のいる『世界』を理解して絶望した。

 

この世界はーーーーー。

 

 

「ここは魔法師(メイジアン)の世界か……」

 

某仮面ライダー風に言ってみたが、本当にジーザス!としか思えない。

 

こんな地獄の一丁目一番地、アンドロメダ終着駅みたいな世界に来なくちゃならないのだ。

 

この世界は、生前は平成オタク全盛期を謳歌した自分からすれば……。

 

「作者はオーフェンのどこを読んだらば、こんな作品を書けるのだ」と頭を悩ませるものだった。

 

とりあえずオーフェンを読んで設定を思いついたというのはガセだと思いつつ、どうしたものかと思う。

 

一番に思うのは、この世界はヴォルデモート卿と死喰い人みたいな行動と価値観が持て囃される世界であり、魔法師にあらずんばヒトに非ずと言わんばかりの世界であるのだ。

 

だからといって、自分は魔法師になりたいとは考えられない。寧ろそういうのとは距離を置きたい。

 

転生者とはいえ、自分の精神衛生は一般的な日本人であるのだ。そんな己の目的の為ならば人殺しも躊躇わない。あるいは、人を大量出血も厭わないほどに傷つけるなんてことに耐えられない。

 

衝動的に相手を攻撃した後には、大概は後悔が待っているのだから。

 

まぁ状況次第かもしれないが、それでもこの世界で想定される状況は大抵が一方的な暴力ばかりだ。

 

幸いにも転生先の両親は魔法師ではなく両祖父母もそういったものとは縁遠い普通の人だ。

 

それを認識しつつも、どうやら自分があの『ヴォルデモート卿と死喰い人連中』と

同い年であることを理解して、全力でこの日常を守り、全力でこの非日常を回避する!!

 

その目的で第四王子私設兵ボークセン(?)のように生きていくと決意した8歳の頃であったーーーー。

 

それからおよそ7年後……。

 

『新入生答辞 司波深雪ーーー』

 

なんでこんな場面(シーン)を見ることになっているんだ。心底苦い想いを腹の底に沈めようとしていたというのに。

 

「フフフ、今回は負けちゃったケド、ネクストでは勝ッテ見せるワ。ってアキラ?ドウしたの?そんな顔をシテ?」

 

なんでこんな場面(シーン)にお前さんはいるんだ。あと半年以上もアメリカ大陸で待っていられなかったのかよなどと、心底苦しい想いを沈めること不可能で。

 

「シールズさん。こういう場では静かにするのがマナーですよ」

 

ビークワイエット!を優しく嗜めるように言って隣になぜか座ってきたマリモ羊羹娘とでもいうべき女子を黙らせてから式に集中する。

 

集中しつつも、何か見ていると気持ち悪くなってくるので新入生総代たる司波深雪をあまり見ないでおく。

 

前世において言ってはなんだが韓国や中国の美女たちのコンパニオン動画やポップアイドルの動画を連チャンで見た時に覚えるものを司波深雪からは感じるのだ。

 

(ジュビロ(?)が言っていた……キャラの造形で正しい線を描くようにと指導するも魂のこもったキャラクターは実はイビツであるべきだと!!)

 

バランスの取れすぎたものよりも、時にはアンバランスなものの方が人にとって魅力的に見えるのと同じ。

 

ラーメンなんて色んな意味でバランスを崩したものに人々が惹かれるのは、そこに人を惹きつけるものがあるからだ。

 

どうやら魔法師の感性とか美意識というのは、人が一般的に感じるものとはかけ離れていると思える。

 

そう思いつつ、入学式は終わっていく。

 

「アキラは何組?」

「F組」

 

いずれはタツヤデモート卿の率いる「死喰い人」に一員になるだろう女…恐らくベラトリックス・レストレンジな立ち位置で、タツヤデモートの子供を産むだろう女子に引っ付かれている現状に辟易しながらも、内心でガッツポーズ。

 

原作キャラとは縁もゆかりも無い組に入れたことでいくらでも避けることはできる。

 

もちろん、合同での授業はあるだろうが、どうせすべて自主練である。避けることは出来るとしてーーー。

 

「それじゃ」

 

タツヤデモートの愛人(予定)の前からいなくなるのだった。

 

「ハイハイーーーッテ!ナンデ帰るノ!?」

 

一度は快く送り出しておきながら、こちらの制服の裾を掴んできた女の子を煩わしく思いながら口を開く。

 

「いや、この後に俺の用事は無いし。シールズさんは一科生でなんかあの総代の子と張り合うようだからーーーアレ、君の用事だと思うよ」

 

親指でアンジェリーナ・クドウ・シールズの後ろを示すと生徒会役員共と思しき連中が、というかそうだと知っている連中がゾロゾロと司波深雪を引き連れながら、こちらにやってきた。

 

後ろを振り向き、その様子に驚いた彼女のスキを突いてアキラは離脱をした。

 

見事なまでの幕からの退場。そもそも俺のような端役以下の人間には重すぎる舞台(イタ)であるのだ。

 

用済みの役者がいつまでも舞台にいるなど見苦しいものだ。

 

(そもそも、この舞台は俺が上ることを望んだものじゃない)

 

捨鉢な考えともいえるものを吐き出しながら、世間一般では魔法大学付属、魔法師などでは俗に魔法科高校と呼ばれる場所に異物たるものは入学してしまったのだ。

 

 

遡ること半年前……。

 

既にモーレツ受験生になり、専科高校か普通高校かも決めようと選んでいた時期。

 

既に魔法師としての才能なんて適性検査でナッシングと判定されていた時にやってきたあり得ない

結果……。

 

この中学3年の受験高校を絞った時期に恐るべきことにそれなりの数値が出てしまった。

 

とりあえず魔法師になれるだけのサイオン操作の適正がである。

 

当初は、例えこんなもの出たとしても別に今さら公立の魔法塾になんて行けるわけもなし、どうでもいいとしていたのだが……。

 

「とりあえず試験だけでも受けてみてくれないか?記念受験としてな?な、頼むよ石田」

 

志望校には推薦を出しておくとした中学の担任の必死な言葉(+手叩きの懇願)に押し切られて、やむを得ず……本当に実質2ヶ月もない学習期間を塾で習い魔法大学付属への受験と相成ったわけだ。

 

詳しい所は分からなかったのだが、担任教師があそこまで懇願していたのは、自分のいた地区で今年度の魔法大学付属を受験する人間がいなかったからだ。

 

自分の同級生にもそういうサイオン操作の適性が認められて、塾に通っていた人間もいたのだが、どうやら聞くと彼らは受験することも拒否したようだ。

 

詳しい所は分からないが……色々あって自信を無くしたようだ。原因は分からんが、それはいいことだと思えた。

 

原作を知る転生者の身としては、どれだけ原作者が。

『魔法科高校は二科に入ったとしてもエリートです!』

 

なんてこと言っていたとしても現実にそれが何かの将来に結びつけるならば、やっぱり魔法を達者に使えなければ意味はないし、仮にそうでなければ本当に潰しが効かない進路だ。

 

結局のところ、新シリーズでも魔法師としてランクがあれば、なくても就職などで不利になるなんて設定が出てきたし、なんのために魔法大学付属及び魔法大学に通う意味があるのかと思う。

 

まぁそれはさておき、受験者ゼロという事態になった我が学区で地区なわけで、このままでは色々と体裁が悪い。

 

謂れなき嫌疑を担任は掛けられるかもしれない。

 

具体的には反魔法主義団体の一員、ないしシンパサイザーなのではないかということだ。この地区の中学生が魔法師を志さないのは、中等教育の現場でそういう思想偏向の教員がいるからでは?

 

なんて話が出てきかねないということを職員室を『盗み聞き』して知ってしまった。

 

とんでもない言いがかりだとしても、そういう方向に話が飛ぶかもしれないとのこと。

 

(今どきの中坊が、先コーの言う事すべてをまともに聞くわけないじゃないか)

 

魔法師連中に関わる人間は頭が固すぎる。

 

そう思いながら、まぁ記念受験の日となった。

受かるわけがねーよ。落ちた落ちた。ぐらいによろしくない結果だったはず……今考えてみれば、もう少し手抜きしておくべきだった。

 

幸いにもヴォルデモートと死喰い人連中とは別の試験会場だった。なんか英語混じりの日本語がうるせーな。なんかひよっちに声が似てんなーなどということを考えながら実技筆記ともに惨憺たるものだったはず……。

 

そう。本当ならば俺のような半端者が受かるわけが無かったはずなのにーーー。

 

あり得ないほどに多くの紙束と同時に届いた合格通知を貰った時の色んな人の顔に押されてこの学校に来ざるを得なかった。

 

本当に世間一般的には、魔法大学付属はエリート学校のようだった。

 

(その実態は知られていないわけか)

 

そのうち、忘却バッテリーの越境入学した名門部員のように…… 帰りたか、母ちゃんのカレー食べたか……とか博多弁で言っちゃうような実態だと知られる。

 

当然、自分は都内住みだが。そして普通に自宅登校になる。

 

とはいえ……。

 

(すぐに退学になるだろうな)

 

俺の魔法能力なんて大したものじゃない。なのに入学出来たことに疑問は尽きない。

 

まぁキグナスの乙女という別シリーズには唐橘(まもる)という魔法師になりたての男子がいたが……思うに、彼はもう少し魔法師という人種や魔法社会に対して分かっていない存在にしとけば良かったと思う。

 

話を進めるための狂言回しとか読者と同じ目線を持った存在ともいえるワトソン役などにしておけば良かったと思うのだが、どうにもこの世界はある種、どいつもこいつも自分たち(タツヤデモート一派)が知っている事物・物事の詳細をを知らないヤツは基本的人権すらないと言わんばかりに、頭の良くて分別と節操をわきまえた人間ばかりがヒトとして扱われているのだ。

 

(そんな世界なのだからクリーオウやガウリィになろうものなど徹底的に排除されるだろう)

 

つまりは俺だ。

 

そんなわけで、目まぐるしい日々の中でも迎えた入学式。紋章のない制服を着て少しだけ遅い時間に合わせる形で登校を果たす。

 

早々とやってきてベンチに座る闇の帝王とのエンカウントを避けて、流れのままに会場に入る。

 

二科生の席に座る闇の帝王とそのナオン(死語)どもを見ながらも特に感じずに離れたところに座る。

 

どうやら遅すぎたというほどではないが、かなり席は埋まっており更に言えば、同じ魔法塾の出身者同士でもグループが出来ている。

 

当然、ここでは俺はぼっちだ。

だって全員、受けなかったんだもの。

 

仕方無しに端っこの方の席に座り一人を楽しむことに。

 

この時ほど自分の迂闊を呪ったことはない。

 

お気に入りのラノベ……東京タブロイドを読んでいた時に。

 

「Sorry、トナリいいカシラ?」

 

「ああ、どうぞ」

 

特になんの気もなく返事をしてしまった。東京タブロイドから漂流伝説クリスタニアに変化させたタイミングだったからかもしれないが。

 

隣に来た人間に対する注意がそれていたのだ。

 

「ワオ! 伝説のHENTAIイラストレーターの扇情的な絵ネ!グランパの部屋にあったのを見たワ!」

 

人の見ているものを覗き込むなどプライバシーの侵害である。まぁ自分もシークレットモードで見ていなかったのも悪いが、その意見には異議を唱える。

 

「あのな。俺も確かにシークレットにしなかったのは悪かったが、うるし原先生をそういう風にーーー」

 

その後の言葉は出てこなかった。

 

なんでここに。とか

登場フライングとか原作破壊。とか

 

まぁ色々とあったが闇の帝王様の愛人ポジションにでもたどり着くだろう原作キャラが、こちらの顔をキラキラした目で見ているのだった。

 

(俺じゃなくてマリスやレイルズを見ろよ!)

 

漂流伝説クリスタニアという電撃文庫黎明期のレジェンド作品に対するリスペクトを現役(?)の電撃文庫キャラに求めたくなるのだった。

 

 

「あの人、大丈夫かなー。確かに丈夫な身体を与えて送り出したし、覚えてるかどうかわかんない転生特典も与えたけどなー。不安だなー」

 

転生神とでもいうべき存在がいる場所と他の世界の時間の流れは同一ではない。そんな訳で、既に15年を過ぎた男の人生とは別に数時間前のことのように思い出していた。

 

確かに死因からして、それを求めるのは分かっていたが……。

 

転生神の持つカミサマタブレットには、転生前の男のすべてが書かれていた。

 

それによると。

 

◯◯◯ ◯◯ 享年3X歳

 

ーーー死因 

 

敵兵が放ったガス弾及びそれに引火する新型の大型爆弾による窒息からの爆死・焼死ーーー

 

 

そう書かれていたのだった。

 

 





というわけで転生というジャンルで初めて書いた作品。

作品のテイストとしては、アイとま!と被っておりますが、こっちは色々と原作知識ありということで、アレよりもツッコんだ作品ということになっておりますので、ご一読いただければ幸いです
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