魔法科高校の退学希望者   作:無淵玄白

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第十七話「デート・ザ・アフター」

 

 

「オイシカッタワー♪ まさか本場の天ぷらが、こんなにまでスゴイものだなんて知らなかったワヨ!」

 

「ご満足いただけて何より。天ぷらは、やはり油が要だからな。ネタ選びも重要だが」

 

何より油にこだわってこそ、あの絶妙な味わいは生まれる。江戸元禄から文明深化があろうと、時代に合わせて使われてきた菜種油などが、それを再現した。

リーナのリクエストもあって渋谷から離れて浅草で十九世紀から続いている老舗の天麩羅屋に行ったわけだが、両親から教えられたその店の味は、アメリカ人の舌も魅了した。

 

ちょっとした「YOUは何しに日本へ?」「世界!ニッポン行きたいヒト応援団」というところだろうか。

 

事実、天つゆではなく、藻塩で食べる通なものは知らなかったようだ。

 

「ワタシのリクエスト聞いてもらったから、次はアキラが行きたいところに付き合うワ」

「ふむ」

 

言われて時間を確認、明日は登校日なことを考えれば、あまり長い時間連れ回すのは、アンジェリーナの同居人にとって精神衛生的によくない。明日の準備を考えつつ、行くべきデートスポットは。

 

「それじゃカラオケにでも行くか」

「ワオ、ジャパンの学生の定番ネ、グランパから聞いてるワ」

 

あちらには密室タイプの飲食店という体での歌うたいの場所はないのかな?と考えたところで。

 

「おジィちゃんが言っていた。ニホンのカラオケボックスは、ガールとボーイが『にゃんにゃん』するトコロだと!!」

「お前の爺さんは何を孫娘に教えてんだよ!?」

 

なんか天の道を行き総てを司らんばかりの言い方であったが……とりあえず間違いは正す。

 

「確かに2020年代までは、そういうことはあったようだけど、いまの時代にそんなことをやればあっさりバレるからな」

「けど、イチャつくぐらいは出来るでしょ?」

 

別に部屋自体を監視・盗聴しているわけではないが、それでもある種の粗相をやった場合の検知器はあるわけで、そんなことをすれば退学確定である。

 

ネットカフェなどで行われていたそういう低俗なことは、現代ではあり得ない。リスクとリターンが釣り合わないのだから。

 

「まぁそうだけどね」

「ーーー経験者?」

「いいえ、全く!!」

 

何か怖い笑顔で聞いてくるアンジェリーナに、全力で否定しつつ……。

 

「歌わない?」

「歌うワヨ!ワタシのフォニックゲインが上がったSONGをアキラに聞かせてアゲル♪」

 

どうやらこの世界でもアンジェリーナ・クドウ・シールズは歌うたいの女の子だったようだ。

 

「モチロン、アキラも歌ってネ♪」

「俺、あんまり歌が得意じゃないんだよ」

 

結局、それが女の子たちとカラオケデートをしなかった理由なわけだが……。

 

結論から言えば大成功すぎた。

 

本来の世界でも軍隊よりも、魔法よりも、ワタシの歌を聞けー!!などとバサラ者になっていた方が良かったんじゃないかというほどにアンジェリーナは歌うたいだったのだ。

 

『アキラも歌ってよー。ワタシばかりがマイク使っているとツカれちゃうー』

 

ダル絡みというほどではないが、そんなことを言ってくる。

一時間ぶっ通しで曲を入れた女の言葉とは思えないとはアキラの素直な感想である。

 

とはいえ、間奏というのは必要なので、自分でも歌える曲を入れたりはしたのだが……。

 

それでも結局2人だけだというのに4時間も延長してしまったことで、すっかり外は暗くなってしまってた。

 

「ウーン! やっぱり思いっきりシャウトすると気持ちいいワ!」

「楽しんでくれたみたいで何よりだ」

 

固まった体を解す「伸び」をしながら満面の笑みでそんなことを言うアンジェリーナ。どうやら最後にいいデートフィニッシュは出来たようだ。

 

コミューター乗降場である「バス停」に赴きながら、そんなことを考える。

 

他にも自分たちと同じく街で遊んでいたらしき男女やこの休日でも出勤していたらしき人々の姿を見ながら口を開く。

 

「今日はありがとうなアンジェリーナ。俺の用事に付き合わせてしまって」

「ソンナコト言わないで、アキラとデート出来たことがスゴく嬉しかったノ」

 

腕に抱きつくアンジェリーナの言葉に。

 

「俺も楽しくて嬉しかったよ」

 

自分の素直な気持ちを表しておくのだった。

 

「〜〜〜♪♪」

 

その言葉を受けて感極まったのか、いっそう身体を寄せてくる。

 

そうしながらも……コミューターはやってきたわけで。

 

「ソレじゃまた明日ガッコウで会いましょう(See You Again)♪」

「ああ、お休み」

 

2台やってきたそれに乗りながらあまり長く挨拶していると次の乗客の邪魔になりそうなので、手短に挨拶をしたわけだが……その際に投げキッスするのは、どうかと思いながらも、素直にそれを受け取る仕草を取ってアンジェリーナの気持ちを和らいでおく。

 

機械的な自動輸送システムは過たず、何も変わらず自宅近くへと到着するのだった。

少し歩いているともう一台コミューターが到着したようだが、構わずに歩みを止めないでおく。

そして辿り着いた自宅にて自動的なホームシステムが、帰宅した者を受け入れる。

 

開け放たれたドア。

 

無人だと分かっていても「ただいまー」と言ってからアキラは家に入る。

 

アンジェリーナもそれに続いて「オジャましまーす♪」と言ってから家に入る。

 

……いやいや、まてまてまて、これは孔明(?)の罠だ。

 

「なーーー」

「ナンデ、ココにいるかといえば……アキラのデバイスのアフターサービスのタメよ♪ イロイロと教えてあげるワ」

 

色々と困惑を覚えながらも、入り込んだアンジェリーナが、どうしてここにいるのかワケワカメになりながらも最大の疑問を解決すべく頭をフル回転させる。

 

「どうやって住所をーーーあっ!? 『死銃』(デス・ガン)か!?」

「別にサクシニルコリンは打ち込まないから安心して」

 

このセキュリティ万能の時代にSAOの手段で自宅にやってきた赤眼のザザならぬ、蒼眼のリーナとでも言えばいい人間に、どう言えばいいのか分からぬ。

 

あのショップでアキラの背中に抱きつくと同時に、どうやらアキラの住所…送り先もも見ていたようだ。とはいえ、そこまで長い時間でも記録を取っていたわけでもなかろうに、しかもUSNA住まいで東京の地理に明るくないのに……そこまでされては恐ろしさなどよりも恥ずかしさを覚える。

 

(俺はそこまで執着されるような男か?)

 

妙な心地になりながらも、一晩いるつもりだと理解して、明日の疑問を投げかける。

 

「制服とかどうするんだ?」

「ソレならーーーー」

 

タイミングを図っていたかのようにキャリアドローンがやって来て、石田家に届けられた。

 

とりあえず送り先の家主であるアキラが受け取らなければいけないわけで、電子の受け取り書にサインをすると荷物だけをおいて飛び去る。

 

届け先記入の伝票。これまた電子的な書類を見ると送り主のところにーーー。

 

『アンジェリーナを4946(シクヨロ)ッ!』

 

古っ!と言いたくなるような死語をキャラ文字と共に付けてきた女性の名前は……。

 

「流石はシルヴィ、ナイスタイミング!」

 

原作におけるアンジェリーナの姉貴分でありお世話係の部下とも言える女性だった。

所属や経歴こそ違えど、どうやらこちらでもそういう関係性に落ち着いているようだ。

 

「中身見たい?」

「君の衣類だろ。見るわけにいくかよ」

 

ちゃんと伝票には中身が何であるか記載されており、詳細こそ分からずとも推測は出来た。

 

「このシルヴィアっていうヒトが、日本での君の保護者なんだろうけど」

 

未成年の外泊を普通に許すとか、流石は自由の国アメリカーーーと思えばいいのか、何なのかともあれ……。

 

「アキラ、入れてくれる?」

 

最後の確認で不安そうな顔をさせたことに苦笑。

 

「どうぞ、上がってください。親は出張中だからいない」

「ーーーソ、ソウなのネ。緊張するワ」

 

別に何もするつもりはないが、少しだけ警告するが……。

 

「なんで俺によりかかるの?」

 

緊張するとか言いながらも距離を縮めてくるアンジェリーナの行動は摩訶不思議アドベンチャーである。

 

「アキラに甘えたいの」

 

そう言われては、どうしようもなくて結局……同級生の女子を自分の家で一泊させるというかなりアナーキーなことをして、お袋のいいつけを数日で破ってしまうのだった。

 

 

「ふむ。そんな人物が本当にいるのか?」

 

「眉唾でしょうが、真由美お嬢様やご友人である克人殿の反応から察するに、間違いないかと」

 

第一世代でありながら、百家支流の森崎家の長男を倒したという人間。

 

まだ噂程度であり、かつ森崎家やそれと同調する数字持ち多い一高の一科生たちが、自主的な『箝口令』で口を噤んでいるからこそあまり魔法の家の人間の間で、表には出ていないが、その他の人間たちの間では既に話題に上っているも七草家の家宰、執事ともいえる名倉と同じく眉唾と捉えられている。

 

「……どうしたものやら」

 

「すでに数字落ちの家は詳細を掴もうとしている様子です」

 

「あなたも?」

 

「私には既に身内はおりませんし、七草家に仕えて禄を食んでいる身。不義理は犯せませんよ」

 

その言葉を受けて……もう一人くらい彼に挑みかかる百家の人間がいれば真価も分かりそうだが、そう都合よくいかないだろう。

 

そして七草弘一にとって遣る方無いものは……。

 

「……」

 

(くだん)の石田アキラという男子が都内でデートする様子。そしてその隣にいる外国人の女子ーーーは自分の恩師の又姪であるとのこと。

 

問題はそこではなく……そんな仲睦まじい様子の2人は過日の自分と甲信地方に居を構えている一族の姫君とのことを思い返させるものだった。

 

彼女とは2歳違いだから、仮に同じ高校に入学したとするならば。

 

『こんな美少女と一年間しか一緒にいられないなら、3年生(最終学年)としても、こりゃ気合い入れて思い出作りしないとーーーって思うのサ…!』

 

などとキザったらしく言っていただろう。

そんな弘一の妄想(ザ・青春時代)の言葉を目の前の執事とここにはいない長女が聞けば。

 

『クサっ!!!』

 

と大声で言っていただろう。そんな弘一は、結局のところ一先ず様子見で済ますことにした。

 

だが、この件に関して一番騒がしくなっていたのは北陸の一色家であり、まさか師補十八家が、この件を耳にしているなどとは思いもよらなかったりする。

 

そんなこんなで魔法科高校2095年は二週目を迎えていく……。

 

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