ここは取らねばならないところだった。
次、スウェーデン戦である。
ただ勝てたとして……いや、先のことは分からん。
どっちにせよ上がっていけば強いのと戦うようなんだから
翌日、朝の支度はいつも通りなわけもなく、少しの混乱はあれども、何とか一高前へと向かうコミューターに乗り込んだ後には。
「アキラのスケベ♪」
「時間差で、そんなこと言われるとは思わなかった」
まさかこのタイミングで言ってくるとは恐るべき恋愛策士(?)やで。
などと考えつつも、色々あってラッキースケベで見えた、見てしまったアンジェリーナのカラダは原作以上のものに思えた。2次元的なものを3次元に起こすとこうなるのか的な感覚かもしれんが。
「ワタシのカラダを見た感想は?」
「それを今、このタイミングで聞くのかよ」
「アキラの視線がチョットやらしいモノに感じたからヨ」
セリフは不満を申すものだが、語調はからかうような調子とか、本当にこの子は。
「すごすぎた……流石はアメリカンというところか」
「そう言ってくれるとウレシイわ」
男に一度ではあるがヌードを見られて、嬉しいのかよ。
ただそんな色々と規格外なアンジェリーナに思うことは少しある……。
「アンジェリーナはやっぱり美少女だよな。如何に魔法師とはいえ、仲良くなりたいと思うヤツはUSNAの学校でいなかったのか?」
俗に「そのおっぱいでぼっちは無理でしょ」ということだ。容姿もすぐれているし、海外に行くことも多かったアキラからすれば、こんな子がそういう風なのが少々、疑問に思えるのだ。
まぁ……原作において多くの大人が懸念していることが、起こった可能性はあるのだが。
こちらの率直な感想に顔を真赤にしたアンジェリーナ。しかし、自分の言葉に少しだけ暗くなる。
「well……確かにそういう風なのはいたワ。けど、なんかイヤだったのヨ。ソシテ……そういうのってメイジアンだけのスクールでも同じだってチョットショックだったカラ」
「ーーーまぁ俺で良ければ、甘えてくれ。何も出来ないけど」
「ソレだけでワタシは癒されてるノ……」
狭いコミューター内にて密着しながらも、今日はいつものツインテールをロールしたものではなかった。
別にローラー…ロールブラシの類がなかったわけでもなく、準備に時間がかかったわけでもない。かつ、デート時のような髪に出来ないわけでもなかった。
実際、手伝うことも出来たのだが……。魔法科高校の女子制服であるマーメイド服でお袋の化粧台を使わせていたのだが、少し考えてから……。
『今日はストレートでいくワ。そういう気分なのよ。ブラッシングプリーズ♪』
『元の髪型だけに少しウェーブかかるのは仕方ないぞ』
『ノープロブレム。任せるワ♪』
そう言って男子に髪を梳かせるという高度なテクニックをやってくるアンジェリーナ。そんなわけで、艶っぽいことはなかったというのに、妙にカラミが多かった昨晩からの早朝ではあった。
そんなこんなしている内に、一高前に停車したことで、荷物を持ち登校の準備となったわけだが。
運が悪いのか、運が良いのか。自分たちとほぼ同タイムで登校となったのは司波達也・深雪のインモラルブラザー&シスターである。
自分たちより少し早く停車所で荷物を持ち降車した2人は同じ
「ーーー」
「ーーー」
絶句という単語が似合う表情をした2人だが。
「おはようお二人さん」
「グッドモーニング!」
すっとぼけるように普通の挨拶をしておくのだったがーーー。
「おはようございますーーーと返してから、石田君とリーナが同じ車で登校した……?」
「…つまり同伴登校か?おはよう」
やはり誤魔化しきれなかったか。
「まぁ色々とあって」
「ソーヨー、シークレットなプライベートだからネ♪」
探るなと暗に示すように、人差し指を立てながら言うが……。
「そうですか……って納得できるわけがないでしょ!髪型だってツインテールロールから今日はロングヘアスタイルにしているし、どう考えてもクラスで質問攻めにあいますからね!」
当たり前のように、そういうことが通じる模範生(疑問アリ)ではなかった。
司波深雪の言葉はアンジェリーナの身を案じての言葉だと理解したのでアキラは泥をかぶることにした。
「んじゃ正直に言ってしまっていいよアンジェリーナ。俺が君を家に連れ込んだんだから」
「エー、それじゃワタシが男にホイホイついていった
アキラの気遣いを台無しにするーーーというより分かっていてそういう風に言ったのかな?
なんとでも取れる上目遣いで、アキラを見ながら言うアンジェリーナの発言を受けて。
「ーーー深雪、これ以上ここで何かを言っても意味はない」
「フォロー頼めます?」
「言われなくてもしますよ……」
男2人の窘めを受けて表情を変える司波深雪。
何か知らんが学年総代的には奔放な魔法女子というのが、もしかしたらアンジェリーナの評価なのかも、もしくは俺が女にだらしないチャラ男、ヤリ◯ンとか思われているのかもしれんとアキラは想像しつつ、登校は行われる。
無論、首席と次席がどちらも男(一方は実兄)の腕に絡まりながらというのが付くわけだが。
波乱の予感の月曜日が始まるーーー。
・
・
・
・
「じゃあリーナさんとデートした後にそのまま家に連れ込んだんですね!?」
「そ、その理解でよろしいです」
F組の教室にやってきたE組の爆乳眼鏡っ娘の怒りの顔にどうしても苦しくなる。
美月の怒気に慄くアキラは、いつも以上に完全で究極な注目の的であった。
自分の机を叩きながら言ってくる美月の胸が否応なく揺れる光景に男として来るものはあるが、それを抑えておく。
なんか岬は美月の付き添いとしてやってきた千葉エリカと話しているわけだが。
美月の顔は怒りだけでなく少し泣きそうな顔に見えるのは、気のせいではあるまい。
「まさかデバイス…CADを買うためなんて……前から約束していたんですか?」
詰るとまでは言わんが、なんだか悪いことをした気分になる美月のセリフ。
とりあえず語るべきことは語らねばなるまい。
「ネクストホリデーにアドバイザーとして付き合うとは言われていた。森崎君との戦いの後に三巨頭に呼び出された時にね。まぁ俺も忘れていたとまでは言わんが、少し失念はしていたし、ここの授業はメチャクチャすごいからな」
ただでさえ魔法師としての期間がまだ浅い。シロウトのアキラが、忙殺されていたのは間違いなかった。
アンジェリーナも自分の予定ですっかり忘れているものだと思っていた。クラスメイトーーー特に仲が良いだろう北山や光井辺りに誘われている可能性もあったというのに……。
「なにげない口約束を覚えていてくれたからな。無下には扱えないよ」
「それは分かりますけどーーー」
女の子に悲しい顔をさせるのは、ちょっと心苦しい。特に腕を自分の手で抑える不安を紛らわせようとしている動作を取られては……。
そんな美月の助け舟なのか、千葉エリカがやってくる。
「まぁまぁ。あんまり美月をいじめないでよアキラ君」
「そんなつもりは無かったんだけどね」
「実を言えば、アキラ君のCADが、ロースペックなのは私達も認識していたんだ。だから美月にそれを理由に遊びに、デートに誘ったらばとは言っていたんだよーーーコンドーム持参で」
「エリカちゃん!!!」
ここにも、肉食系女子がいたよ。と若干呆れながらも、まぁ用心はしておくだろう。俺とて男子なのだから。
ともあれ、赤い顔をしている美月は、咳払いしてから口を開く。
「それに私、魔法工学とかすごく興味あります。達也さんほどまだ達者じゃないけど、アキラ君の助けになりたいですから」
「嬉しいけど、俺なんか気にせず自分の修練に励んでよ。なんかすごく悪い……」
自分に構って人生を決めないでほしい、他人の人生を縛るなどアキラには出来ない。
(美月もいずれは吉田幹比古というキャラと『懇ろ』になるわけだから……)
ふと、こう言うと自慢かもしれないが、こんなに目立っているアキラに、E組にいるであろう吉田幹比古という少年が接触してこないのは、少々妙な気分にもなる。
「次の実習授業は俺たちE組との合同授業だ。今は美月のアプローチを受けてもらおうか」
タツヤデモートの言葉を受けて美月は立ち上がったアキラの腕に自分の腕を絡めてくる。昨日から今日の朝にかけて腕に巻き付いてきた女の子とはまた違う感触に。
最低だ。俺って。
美月のバストは規格外だと思うその心に、旧劇のシンちゃんのように自己嫌悪に陥りそうになるのだった。
・
・
・
遠く……北陸の地にて一人の少女が思い悩んでいた。
魔法大学付属第三高校、通称「三高」
石川県金沢市にあるその学校に2095年に入学した少女は入学当初から同級生及び上級生から話題に上がること多い人間だった。
魔法の家としての家柄、そして純日本人ではありえない髪の色は金。
少女はハーフであった。
それもフランス人と日本の魔法師の混血である。
そんな少女はその容姿に違わず、麗しくそして気高い。
魔法家の姫騎士と称されて、向ける瞳は多くの人間に冷たい一瞥をくれる。
有象無象の人間を相手にしない冷たい瞳。
価値あるものにしか向けられない瞳。
その瞳に多くの男子生徒が灯るのを期待して、そして多くが叶わないだろうと諦めてきた。
なんせ地元民ばかりなのだから、よほどの「お上りさん」でもない限り、その少女を口説き、その心と瞳にほのかな熱の塊を宿すことは出来ないと理解していた。
だがそんな少女は、彼らの努力を無視するように、一人の少年の姿を灯していた。
それは、ちょっとした偶然から知り得たこと。本来ならば知るはずはない。
だが、日本に帰ってきて以来、彼のことは調べてきたのだ。
異国で出会ったサムライ。
母方の祖父の危篤という報せを受けて様々な『特例』と『制限』を受けながらも初めて降り立ったフランスという異国。
その中心、花の都パリにて彼と出会ったのだ。
それは本当に運命の出会いなのではないかと思えた。
パリサンジェルマンのユースチームと戦い、自国贔屓のパリジャン、パリジェンヌを熱狂させるほどのプレーで沸かせる。
自分と同じく外国人…日本人でありながら外国で敢然と、毅然と戦う姿に勇気を貰ったのだ。
それなのに……。
「アキラくん……私を騙していたんですか?」
自分も隠し事をしていたのは間違いない、だが、それでも……。
師補十八家の1つ、一色家の『次女』……一色愛梨は胸を締め付けられる想いを覚えていたのだった。
はい。多くのヒトが予想していたキャラの登場です。
もうちょっと明確な登場を九校戦まで焦らそうかと思っていましたが、色々と匂わせが多すぎたので、彼女の現状を示そうと思いました。