魔法科高校の退学希望者   作:無淵玄白

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あまり関係ないがキグナスの乙女たちの最新刊の刊行が去年の3月って……。

まぁ読んでいて、ヤマもタニもない話だとは思っていた。

別に劣等生本編みたいにスラッシュダークな演出を出せってわけじゃないが……完成された関係性の2人じゃ何も変化が起こらないからな


第二一話「マギア・スクールパニック3」

 

「で、結局勝算はあるのか?」

「そんなもん分からん」

 

原作とは違い、西城・千葉が課題完了に四苦八苦することはなかったというのに、なぜか課題室、演習室での昼食となったこの環境からタツヤデモートに関することは原作通りの「イベント」に収束するのかと考えたが……。

 

「食堂に行けば色々と五月蝿そうだぞ」

 

そんな理由だった。

 

「まぁ地ベタリアンやっても床は大丈夫だが……勝算に関しちゃ分からん。だって相手方がどういう魔法師なのかなんて情報はないし、だからと言わなくてもいいぞ」

「イイの?」

「いいよ。勝負はフェアにーーーってわけじゃないが、一科生ならば魔法使用は森崎氏と同じく達者だろうしな」

 

何かアドバイスでもするつもりだったのか?と思うアンジェリーナに返しながら、挑戦者として青コーナーに立つ気概でいるのだった。

 

「けどよ。アキラは一人なのにあっちは五人って……」

 

提示された勝負形式に対して引いているらしき西城レオンハルト。吹っ掛けられたケンカだが、どうでもいい。

 

そのうえで、いまさらながらの疑問を解こうと思う。

 

「魔法は重ね掛け出来ないんだっけか?」

「そうですね。この場合、5人全員が石田君にそれぞれの魔法をかければ、それはある種の魔法の相殺を齎します」

「けれど使う魔法。特に加重系統の術は相克が発生しにくいから、5人全員分の重さが襲うことも出来るよ」

 

原作知識の再確認を一科生である司波深雪と光井ほのかでやってから「疑問への回答ありがとう」と言ってから、想定されるのは。

 

(スリートップにツーバックというところかな?)

 

攻撃に3守備に2。

 

もしかしたら一科生の誇りとかでA4-D1ということもあるかもしれないが……。

 

「相手の出方なんて分かんないな。まぁ新しいデバイスの試し打ちのいい機会だと思っておくさ」

 

そんな気楽でいいのかよ。と達也など一同は想いながらも勝負事の場数と舞台では世界にまでいった男のルーティンを信じるしかないだろう。

 

「勝ってよ。アキラ、特にミスターイガラシは、コテンパンに叩いて」

 

基本的に多くの人間をファーストネームで呼ぶアンジェリーナが他人行儀にそんな呼び方をする上に嫌悪も露に言うのを不可解に思う。

 

「なんかあったの?」

 

アンジェリーナではなくA組の女子三人に問うと少し言いづらそうにする光井、司波だが。

 

「簡単に言えばーーー」

 

北山雫によってアンジェリーナと五十嵐鷹輔との「確執」が伝えられる。

 

感想としては……。

 

「女子への口説き方としては0点だ」

「まぁ、そうよね」

 

自分も何か思い当たるフシがあるのか、同じく暗い顔をした千葉エリカ。考えてみるに彼女も姓は違った時期があるから、そういう自分の出生で哀れむように言い寄られたことがあるのかもしれない。

 

原作を思い出すにそういうことだろう。

 

「けれどアキラ君は、ちゃんと結果を出して他の人にも、魔法行使のテクニックを教授している。それなのに、あんな風に……」

 

「今回は違う理由だと思うけどね」

 

アンジェリーナと美月という原因に言いながらも。

 

「大丈夫、とりあえずやってみるさ」

 

巌流島の決闘ほど気合いを入れるものでもないし、優勝のシャーレもトロフィーも無いが。

 

「エエ、期待しているわ。昨夜からのワタシとの愛の共同作業の成果を見せてネ♪」

 

女の心意気が籠もった『カタナ」(CAD)のためにも勝利は取ろうと思うのだった。

 

そんなアキラとは別に達也は……

 

(一度も試していないのに大丈夫なんだろうか?)

 

技師としては色々と懸念は多い。

 

だがーーー。

 

(アキラの本質を知るにはいいのかもしれない) 

 

いまだに見えぬ巨大な情報体……魔法を掛けられる、掛けた瞬間に顕現するものなど、全てを知るにはーーー。

 

そして、戦いのゴングが鳴る。

 

 

昼食前にデバイスの管財課から自分の私物を受け取ったアキラは、それが確実に自分のものであると理解してから前と同じバトルフィールドへと向かう。

 

こちらは制服のままだが、あちらは自前なのか、支給品なのか、魔法を使う際のボディスーツを着ていた。

 

5人全員がアキラを全力で誅殺しに来るという状況に恐怖を覚えるーーーなんてことはない。

 

前世において、あちこちから向けられる殺意と殺気と銃弾の雨霰の中でも必死に生きてきた。

 

明日もお気に入りのライトノベルを読むために。

戸川純が出るヒットスタジオを楽しみにして生きたいと述べた次元妖怪のように。

 

(まぁ、その経験が生きるような世界じゃないだろ)

 

思ってから前回と同じく審判役である十文字の説明を聞く。

 

「あちらは人数が人数なだけに普通よりも「陣地」が広い。それに応じて石田の陣地もそれなりに広いーーーが、所詮は1人分でしかない。大丈夫か?」

 

「それがルールならば従いますよ」

 

言葉の後にはノータッチルールでのお互いの土俵が、床に光ることで示されてそれを確認。

 

問題はない。土俵から叩き出されずに相手を土俵から叩き出せばいいだけだ。

 

もっともそれだけの事象干渉力がアキラにあるのか……。

 

あの金属球の実習で美月の干渉力は森崎に優ったからこそ、ああなったわけだが……。

 

(さて、コイツらはどうだ?)

 

魔法師としての筋肉、筋力(マッスルパワー)が無い森崎と同列に扱えるのか、どうか……。

 

会頭の説明は既に終わり、そしてカウントダウンが進む中、アキラもCasting Assistant DeviceーーーCADを指を滑らせて起動させる。

 

あちらは既に陣を組んでいる。

 

陣形は✖️の形ともいえる。中心に一人を置いて、4つの頂点に術者を配置する形。

 

五十嵐が中央かと思えばアキラから見て後衛ではあるが、やろうとしていることは分かった。

 

(狙いやすいところから狙うか)

 

名前は知らないが、なよっ、としたのが多い一団の中では何か剛毅というか体格分厚い十文字系統の人間が中央にいる。まぁそれでも多少程度で十文字には及ばないのだが……。

 

普通に考えれば、こいつがディフェンスを担当する術者だ。

 

仮称・ブタゴリラないしガチゴリラとしておき、カウントアップと同時に魔法式が発動してーーー。

 

「行くぞ!!ブタゴリラーーー!!!」

「誰がブタゴリラ(熊田薫)じゃああ!!!」

 

叫ぶブタゴリラに構わず魔法式によって作り出された空気の球をアキラは思いっきり蹴り出した。

 

足元に作り出したそれはあまりにも無駄ごとであり、やるとしてもこちらとの中間地点で魔法式を発生させた方がいいに決まっている。

 

飛距離をわざわざ長くして相手に届く距離を延ばすなど無意味。

 

……しかし。しかしである。

 

世の中、何事も合理的な考えだけで済ませられるほど容易いことではない。

 

例え自己加速魔法に長けた魔法師の動体視力や加速に対する耐Gの性能が通常の人間以上であっても……飛び来る高速物体、それも明確な意思を持って唸りを上げてやってくるものに即座に対処出来るほどの即応性や敏捷性はなかった。

 

迫りくる砲弾のような球ーーージュニアユースであっても、世界を経験したその蹴りから繰り出されたシュートは、またたく間にブタゴリラこと、東郷雄一の顔面めがけて飛び込んでいき、彼が全体に対して張っていた領域強化の障壁を砕きながら、最後の要たる雄一にヒット。

 

その時のことを後にブタゴリラ……もとい東郷雄一は語る。

 

「光に貫かれたとしか思えなかったーーー」と。

 

顔面に飛び込んで、叩き込まれた空気の球はその勢いのままに東郷雄一を空中で一回転させて頭から床に叩きつけられたあとは気絶した。

 

その際の音たるや、もうとんでもなかったし、何の抵抗も出来ずに一科生がやられたことに仰天するしかなく、即座にサイドに控えていた渡辺委員長による移動魔法で動かなくなった東郷が土俵からいなくなる。

 

怪我の治療のためピッチ外に運ばれたようなものではあるが、そんな生易しいものではなく、様子から起き上がることは出来ずタオルを顔面の半分に掛けられている様子だ。

 

「よそ見していていいのかよ!」

 

気付けというほどではないが、吐き捨てるように言う。

その間にもターンは進んでおり、アキラは情報強化を発動、自分を硬くしていた。相手の動揺につけこんだ形だ。

 

「ーーー!」

 

しまった。という顔をしている残り4人の一科生だが。

 

「オレが東郷の代わりになる。オフェンスを頼む!!」

 

「おう!!!」

 

切り替えたらしき五十嵐の言葉。発動する対物障壁。先程の東郷よりは狭いが、その範囲に応じて陣を狭めての態勢を整えた形だ。

 

(3トップに1バックか)

 

こちらに発動する魔法の数々、あらかじめ取り決めていなければ魔法の相克で不発に終わっていたはずだから、特に何も言わずに使う魔法を分担していたのは流石。

 

(まぁ個別の人間相手に移動魔法や氷結などを促すような情報体改変じゃそうなるからな)

 

風縋と加重魔法。その二重呪法が重なることはなく、アキラをことごとく襲うも。

 

ーーーガラスが割れるような音と共に、術であり現象が霧散する。放った方は驚くばかりだ。

 

「も、森崎の言った通り!硬すぎてでかすぎる!!」

「それどころか、俺達の魔法が!!」

 

この戦いに期してアドバイザーとなっていた男の存在が知れたが、ともあれ数秒ほど「踊る」ことにした。

 

それがどう出るかは分からんが、まぁとりあえず少し「実験」することにした。

 

 

戦いの様子を今回は客席側から見ることにした達也は、驚きしかなかった。

 

「エア・ブリット一発で防御と攻撃を同時に成し遂げてる」

 

「石田君のエア・ブリットはそれだけの干渉力があるということでしょうか?」

 

「ーーーそうなんだろうな」

 

深雪の疑問に明朗なことはまだ言えない。ただ最初のお互いの行動ターンに、挑戦者側である1科生チームは、防御と攻撃を分担して行っていた。

 

事実、東郷雄一というのは恐らく十轟(とうごう)のエクストラなのだろうが、岬とは違い1科生レベルの魔法力は有していた。

 

事実、展開されていた防御障壁はかなり硬く厚いものだったはずだ。

 

対するアキラの最初に選択した行動は攻撃である。

アキラとて昼食時の会話で攻撃分担があるのは分かっていたはずなのに。

 

何故か形成した空気弾を足元に待機させた上で、サッカーキックの要領で蹴り飛ばすという無駄ごとを含んでいたというのに……。

 

(そのシュートはあっさりと東郷の壁をぶち壊した上にその途上にある攻撃側の魔法式まで行き掛けの駄賃とばかりに壊したうえで顔面に直撃させた)

 

飛んできたシュートの速度にも驚いていて、自分たちの魔法がキャンセルしたと思っているのか、その時点では気づけていなかったようだ。

 

そして、驚きに固まる連中を尻目に、やはり情報強化などの己への硬さを高めるとそれだけで、アキラは絶対防御状態となる。

 

(アストロンを掛けたまま戦闘が出来るようなものか)

 

あるいはメタル系モンスターの硬さを手に入れるとも言える。分かりやすい表現を頭の中で言っておくと、階下に変化が起こる。

 

無駄打ちとも言えるが、それでも攻撃し続けるしかないA組男子たち4人だが。

 

対するアキラは、とんでもないことをしていた。

 

「アイツーーー」

「ーーー踊ってやがる!!!」

 

その動きは、蝶のように舞い、蜂のように刺すの名言でこの2095年でも有名な伝説のボクサーの足さばきであった。

 

「アリ・シャッフル」

 

達也の呟きは、アキラの行動へのブーイングと熱狂の半々の大音声の中に消えるものであった。

  

 

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