魔法科高校の退学希望者   作:無淵玄白

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さて、どっちが勝つか。海の日という祝日に感謝


第二六話「煙火の前触れ」

 

校長先生……百山東と二科生の対談という名の演説は、二科の一年クラスを「狂」というだけのものに巻き込んでいた。

 

それは待ち望んでいた「光」ではあった。もちろんまだ空手形に終わる可能性はあった。

 

けれども、嬉しさはあるのだ。決して自分たちの学校のトップは二科を見捨ててはいなかったのだと。

 

(まさか、こういう裏事情を明かすのが……十師族でも数字持ちなどの家でもなく、アキラのような新米さんだとはな)

 

四葉の魔法師……などと自負出来るほどフォーマルな魔法、アンビシャスな魔法に達者ではない「ぼますか」な達也だが、少々の嫉妬もある。

 

「まさかこんな裏事情があっただなんてな。達也は知っていたか?」

 

「いや、全く噂すら耳にしたことはなかった」

 

「物知りな達也君ですら知らなかったことだなんてね」

 

おれを何だと思ってるんだ。そう言いたくなるレオとエリカの言葉、もちろん軍部や政府は否定するかもしれないし、何より百山校長の壮大な作り話という可能性もあるが……。

 

(アキラの疑問は不意のものだ。もちろんその疑問を持った人間が出てきた場合に備えてあったものかもしれないが……)

 

あれだけの言葉を演技で即興のアドリブでやっているなら、相当な古狸だ。

 

「だが普通に考えれば、どうにかこうにかこの学科でも教導する人を確保しようとするだろ。校長先生の言葉が正しければ、その動きすら封じられていたということだ」

 

だが、時が進むにつれて、主にデバイスの進化が、検体の確保よりも、魔法師の頭数を要求していった。しかし、それでも様々なしがらみが歩みを鈍化させていた。

 

そこに強烈な劇薬がカンフル剤として打ち込まれた。

 

ある意味では魔法の世界の「桜木花道」とでも言うべき存在が。

 

「ところで美月は?」

 

「リーナが子作り云々というところで行ったよ」

 

「そうか」

 

恋は盲目というか、アキラはいい男すぎるのかもしれない。

 

話は終局へと移る。

 

☆★ ☆★ ☆★

 

「結局、あの横浜での火災首謀は一高の卒業生だったんですか」

 

「しかも2科ノ」

 

「ああ……それこそが、今回キミと話したかった原因だ」

 

懺悔の時が来たと思った校長先生。こうなる前になんとかしたかったというのは、分かるような気がする。

 

「私を悪党だと思うかね?」

 

「さて、ただ校長先生はこうなる前になんとかしたかったというのは分かりますよ。けれど、長い間で醸成された優越意識は先から後に引き継がれていった……まぁ絵に描いた餅じゃ腹は膨れませんから」

 

先の自分の言葉を少し否定するが、それでも理想だけではダメなのだろう。

 

「もしかして、二科創設するからには、アンジェリーナの祖父殿を日本に戻したかったのでは?」

「ソウなんですか?」

 

寝耳に水という感じだろうか?想像していなかったアンジェリーナが疑問を投げる。

 

「個人的な思惑があったからこそ、そういう裏側を掴みきれなかった」

 

そのことが最大の懺悔だったようだ。

 

「キミと同じく自分をはぐれもののオーフェンなどと自嘲の自称しながらもーーー金髪のボインちゃんと仲良くなりにいくぜ。などと、アホなことを宣って前向きにアメリカに追放された親友を日本に一度でも帰国させたかった」

 

どうやら自分の不意の言動は、予想外に校長先生の心に響いたようだ。

 

まぁオーフェン及びエンジェル・ハウリングなど秋田禎信先生の作品群が、「なぜか」この世界では出版されていないのだから、こんな言動するのが2人もいるとは思わなかったのだろう……。

 

「ーーーで、ワタシのマムが産まれてワタシが産まれたってワケ!」

 

半世紀以上も前のネットミームを引用しながら、ドヤ顔をするアンジェリーナに、遺伝子の結実ってスゴイなーとしか思えなかった。(宇宙猫状態)

 

「以上が、君と話したかったことの全てだ。私の内面にも切り込めるとは、中々な少年だったな」

 

「いや、ただ色んな創作物読んでいるからじゃないすかね」

 

ライトノベルの表紙を端末に表示しつつ、そんなことを言って誤魔化しておく。踏み込みすぎたかと思いつつも……。

 

「まぁ、既に昼休み時間をオーバーしている。そろそろ終わらせようーーー最後に君の前途には苦労は絶えないだろう。望まぬ形で入った世界かもしれんが……君にはアンジェリーナ君の祖父のように期待している」

 

「やれるだけやってみますよ。なりたかったもの、目指した人生ではないですが、超人として逃げ続けるわけにいかないならば、戦うしかないんでしょうね」

 

そういうことだった。

 

アンジェリーナの祖父だって望んで米国に渡ったわけではない。けれど、そこで立ち向かうことを止めなかったからこそ……。

 

(原作のアンジー・シリウスという軍人ではなく、ただの魔法使いの美少女が出来たわけなのだから)

 

そういう女の子と出会えさせてくれたことに感謝を覚えて、とりあえず頑張ってみようと思うのだった。

 

「ウーン、なんか今アキラから愛されてる気がする。ラブオーラを全身の細胞で受け止めてる気がするワ♪」

 

「進撃の巨人よろしくタイタニック・ドウルを大量に用意して日本にやってくるそうだ」

 

これ以上、アンジェリーナの祖父を刺激するのは良くないと感じて失礼しますと一礼をしてから腕に巻き付くアンジェリーナをそのままに校長室を辞するのだった。

 

「アリガトウ、アキラ。グランパのことを理解してくれて」

「同時に苦悩の種を植え付けて申し訳ない限りだけどね」

 

校長室を出て少し廊下を歩くと美月に背中に抱きつかれて。

 

『私が腰を取ります!!』とかむにゅんむにゅんとおっぱいを背中におしつけながら、意味不明なことを言われたり大量の生徒たちからやんやんや言われたが……。

 

最後に代表してやってきたのは、七草会長だった。

 

「あなたはどうしたいのこの学校……いえ魔法科高校を?」

 

「なにも分からんので、何も言えません。ただ俺の存在で二科生が伸びるのが嫌ならば、一科生が暇な時に指導すればいいのでは? 時に下の連中の面倒を見るのもトップ選手の務めだと俺は教えられてきましたので、まぁ魔法の世界に馴染まない考えならば仕方ありませんが」

 

「それはーーー」

 

こちらの返答に苦悩を見せた会長だがーーー。

 

「堂々と公然と『ぼますか』な司波達也くんといちゃつくチャンスだと思いますけど?」

「ーーーいい考えね!!!」

 

その頭に眠る煩悩を刺激することで、考えを揺さぶることにするのだった。

 

(さて、俺のやったことで原作の流れがどうなるのかな?)

 

司波深雪と七草真由美が一触即発になりつつある状況の中……。

 

それとなく、というかアキラの前に出たくても出れない様子で迷っているポニーテールの女子。恐らく2010年代の電撃文庫を代表するキャラの嫁の声をしているだろう人がどう出るのか? それをなんとなく気にするのだった。

 

 

 

「はっきり言えば石田アキラくんは本当にそういう広義の意味でのソーサラス・アデプト……異能力者の関わりが辿れる限りの家系図では居ない家の生まれだね」

 

調べるだけ調べたよと宣う坊主の言葉を疑うわけではないが……。

 

「石のエレメンツなんてことはないんでしょうか?」

 

「深雪……」

 

確かにアキラのファンタジックな思考回路に則れば「石」も確かに『属性』なものに分類されるだろう。

 

サガフロ2には石の術があったのだから。

 

それはともかくとして。

 

「しかし、だとしたらば何なんですかね?」

 

「突然変異的に出てくる第一世代もまた家系図を辿っていけば、どこかでそういうのと関わりを持ったという存在がいるようだけどね。そう考えると……1つの存在が考えられる」

 

庵の縁側に座りながら坊主……九重八雲は語る。

 

「キリスト教で言うところのメシア(救世主)、日本や東洋の価値観で言えば神子(かみこ)……そういう存在なんじゃないかな?」

 

「メシア、ですか……」

 

にわかには信じがたい単語が夜の寺で非常に似つかわしくないままに出てきたものだ。

 

教義的なものでも何でも良いが一応は九重寺も「寺」という体裁がある以上、忍術を教えていても仏教が主だろうに。

 

「まぁ、そうとしか考えられない。そして確証こそ無いがね。そういう存在は時に日本だけでなく世界のあちこちに出てくるんだよ。まぁ自分をそういう存在だと勘違いした独裁者やエセ教祖なんかもいるんだけどね」

 

そう言われてみれば、分からんでもないがどうしてもそういうのを信じきれないものだ。

 

「なんにせよ。これ以上は僕よりもキミたち(現代魔法師)の分野の話じゃないかな? 恐らくだけど彼の遺伝情報は、奇跡的にどんな魔法師よりも洗練されたものになっているとかね」

 

遺伝子のパッチワークデザインで狙った能力開発を行うのではなく、超自然的に何もせずともそんなものを備えて現世に生誕する存在。

 

確かに神子と言うに相応しい……。

 

「さて、以上でいいかな?」

 

「ええ……大変、興味深い話でした」

 

帰宅を促すかのような八雲に応じつつも、達也の「目」は庵の中を見ていた。

 

(誰かがいる?)

 

誰であるかを問うーーーのは、不躾で、今後の八雲との関係を悪くするかもしれない。

こんな夜も更けている時間に、この怪しい坊主に会いに来る『老人』だ。

よっぽどの人間だろうと思いながらも、今は素直に妹と共に帰宅するのだった。

 

ーーーそんな規格外の兄妹が完全に九重寺から出て念のために彼に見られないための「結界」(無意味)を張ってから、庵の中に入り込む。

 

「お待たせしました」

「いや、構わん。先客はあちらだったのだろう。ならば仕方あるまい」

 

茶器を用意しながら、庵の中で待機してもらっていた老人を出迎える。

 

灰色の太い眉にどんぐり眼。眉目秀麗というタイプではないが、風格のある顔立ちだ。ただ、白く濁った左目が相対する者に異様な圧迫感を与える。異相という印象もこの左目によるところが大きいに違いない。

 

見た目だけならば、庵の客のほうが八雲よりも老人に見えるが、実年齢は逆だ。

 

「それであなたがやって来るということは余程のことなのでしょうな」

「お主の率直な意見を聞きたくてな。先程まで『あの兄妹』の話題にも出ていた少年のことだ」

「聞こえていたと思われますが、私にもわかりませんよ。ただ……1つ言えるのならば、やはり神子としか言えぬかと」

 

その言葉に唸るような声を上げる老人。信じがたいことを信じたくない。という抗いにも思える。

 

「入道閣下ならば、既に石田アキラの遺伝子情報などは手に入れているはずでは?」

 

「無論、結果として分かったことは……お主にも教えられんよ」

 

それは余程の『事実』なのだと八雲は気づけた。

 

「では何ゆえ、拙僧の寺を訪れたので?」

 

この男の言うことならば、恐らく石田アキラを抹殺しろなどと言うとも思っていたのだが、予想外の歯切れの悪いところを感じる。

 

恐らく『長老』たちの間でも意見が割れているのだろう。

 

「石田アキラの『格』を知るまでは、『他の組織』『魔法家』にちょっかいを掛けさせないように、ヤツを陰から守ってもらいたい」

 

その言葉は予想外。しかし、その事情が説明される……。

 

 

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