魔法科高校の退学希望者   作:無淵玄白

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第三話「帝王様はしらんぷり。」

 

入った喫茶店には、やはり先客がいた。エンカウントしたくない相手が。

 

そのことを顔に出さずに、やり過ごそうとしたのだが……。

 

「リーナ、あなたもここに来たの?」

 

やはり声掛けしてくるのはあちらだ。こいつらにアンジェリーナを預けて俺がトンズラこくのもいいだろう。

 

椅子から立ち上がった司波深雪総代を無表情で見ながらも、自分の腕を取っているこの子がどうするのやらと思っているとーーー。

 

「ハイ、ミユキ。ワタシもこのカフェに入店したワ」

 

当たり前の事実を言い合う2人の美少女を見てもシラケる想いを覚えていたのだが。

 

「ソレじゃ、席に着きましょうアキラ」

「ああ」

 

意外とデリカシーとかは理解していたのか死喰い人連中から遠く離れた席に着こうとするアンジェリーナ。

 

まぁ、今から自分は別れ話ではないが、当たり前にこのアメリカ人を自分の人生から切り離さなければいけないのだ。

 

何やら言いたげな顔をしているタツヤデモートとその死喰い人たちの顔を一瞥してから着席する。

 

「ご注文は?」

「クリームソーダをオネガイします」

「烏龍茶で」

 

純日本人ではないだろう店長がお冷を置いてからカウンターに戻っていくのを見てから何から話したものか分からない。

 

がーーーそれでも切り出してきたのは、アンジェリーナからだった。

 

「アキラは……ワタシのことキライ?」

「出会ってまだ2日も経っていない。けどもあんまり好きにはなれそうにないーーーなんでそう思ったの?」

 

まっすぐこちらを見ながら聞いてくることに少しだけ苦しそうになりながらも問い返す。

 

「ダッテ、ワタシが会おうとしてもビミョーに会えないというか……食堂にだって来なかったジャナイ」

「言ったでしょ。無用なトラブルを避けるために俺は弁当をおふくろ……母に作ってもらって外で食べていたってな」

 

おふくろの意味ぐらい分かる。バッグじゃないことぐらいと小声でこちらの言い直しに抗議されたが、取り合わずに続ける。

 

「シールズさんが、会おうとしても会えないからそんな風に思っているだけだよ」

「被害妄想だって言いたいノ?」

 

当然、意図的に避けているが、そんなことは当たり前に言えるわけもない。

 

タイミング良くマスターから烏龍茶とクリームソーダが届けられた。

 

十分に離れたところで話を続ける。

 

「なんでそんな風に俺と会おうとするの?俺は君が「手違い」で座った2科生の席位置にいた本物の2科生だ。俺にーーー君が惹かれるようなものがあるとは思えない。だって君は優れた魔法師で容姿も優れている……俺みたいな平凡な人間で劣った能力値しか持っていないならば単純にからかわれているだけだって方がよっぽどしっくり来る」

 

あるいはあとで「ドッキリ成功!」とかプラカードを持って俺を絶望させるためにやっているのではないかと……当然、この子がそういう子ではないことは分かっている。

 

ただ原作とは違うから変わっている可能性はあるとしておく。

 

「……ソンナニ自分を悪く言わないでヨ。悲しくなるワ」

「けど本当にそうだよ。君みたいな子が俺に構う理由が分からない。俺はマーティ・マクフライでもピーター・パーカーでもないんだ。それは教えてくれないのか?」

 

有名なアメリカ映画の主人公やアメコミヒーローの本来の名前を言うことで、自分は彼らとは違うとするのだった。

 

それに意を決してアンジェリーナは口を開く。

 

「アキラの顔……レトロなライトノベルを読んでいる時の横顔が……ワタシのグランパ……祖父であるクドウ・ケンに似ていたの」

 

先程のおふくろに対する意趣返しなのかグランパを言い直したアンジェリーナに問う。

 

「君の祖父殿に?」

「イエス、グランマに聞いてみたらば、それはグランパが……戦争経験者だからだって教えてくれたワ」

 

アンジェリーナの語るところ……祖父は、日本から追い出されて米国……まだUSAーーーアメリカ合衆国でしかなかった頃にやってきて日本の魔法師ということも相まって、永住権ないし市民権を得るために軍人として戦うことを選ばざるをえなかったそうだ。

 

鉄血を消費することで「そこ」で生きる権利を取っていく。その覚悟は凄まじい。かつてのWW2でのアメリカにあった日系部隊と同じである。

 

「ただソレでも、やっぱり元々はそんな風に手荒なことをやれるヒトじゃなかったから段々と心を病んでいったらしいワ……」

 

そんなクドウ・ケンの心の安らぎとなれたのが日本から持ち込んだ電子書籍ではあるがライトノベルだったようだ。

 

スニーカー文庫や電撃文庫の後ろの方にある角川源義の発刊の辞は一人の青年を兵士から人間に戻す文化の力があったようだ。

 

(俺の場合もそうだったかな……)

 

過酷な戦■でも人間性を保てたのは文化の力ゆえだ。

 

だが。

 

「君の祖父はそうでも、俺は違うよ。戦場に行ったこともない。ただ単にライトノベルが好きなだけの未成年だ」

 

事実は明かせない。

 

「ウン…分かってるワ。ただ見えていたフェイスに惹かれちゃったノ」

 

その赤い顔は勘弁願うわ。

 

「ソレにワタシ、多分だけどアキラが考えているようなキラキラしたクイーン・ビーじゃないワヨ。ミドルスクールではドッチかといえばボッチだったモノ」

 

少しだけ暗い顔をしてアンジェリーナが語る所によれば、どうやらあちらでは魔法師の学生というのはかなり稀有らしくて、どちらかといえば上・下・同級生及び教師からも、少し腫れ物扱いだったと語る。

 

その言葉を真実とするならば……この世界にアンジー・シリウスを名乗るアイドル大統領な『たやマさん』は存在していないということだ。

 

「だから、日本の魔法大学付属を受験したの?」

 

「最初は、ボストンとか色々とUSNAのトコロを受験しようと思っていたんダケド……グランパが」

 

ーーーグランパの故郷、ジャパンに行ってみたらどうだい? グランパの友達がプリンシパルをやっている魔法のハイスクールがあるからなーーーそこでならばアンジェリーナのやりたいことも見つかるかもしれないーーー

 

ということを言われてここに来たということだ。

 

少しだけ笑顔になったアンジェリーナを見て言葉を継ごうとしたのだが。

 

「じゃあ良かったじゃないか。なんやかんやと第一高校ってのは魔法教育の……な、なんだよ。その顔は?」

 

彼女にとってのベストプレイス。居心地のよい『ふんばり温泉』で存分にオーバーソウルして魔法師としてよみがえってくれやという想いを打ち消すように、またもや暗い顔をしていることで表情が変わりやすい子だと思ってしまうのだ。

 

「タシカニ、確かに……ソウナンだけどーーーワタシのいるA組は……そのウェルシーな家の子ばっかりで、チョットね…」

 

ちょっとばかり場違い感も覚えているとのことだ。

 

魔法師の軍人ではなく普通の魔法女子としての彼女は、こうなるのか……クリームソーダのアイスをぱくつく原作キャラに思う。

 

「あっちにいるのは、そのA組のヒトじゃない?」

 

アキラからすれば後ろにいるタツヤデモート一派にいるクラスメイトに聞こえてもいいのかと問う。

 

「いいワよ……イマサラだもの」

 

何かあったのかなと思いつつもアキラの感想は。

 

「なんというかめんどくさい女だなー」

「What's!?」

 

烏龍茶を飲んでから、そう答えると驚いた顔と言葉を発っするアンジェリーナ。

 

構わずに口を開く。

 

「まだ入学式から1日しか経っていないのに、そんな風に何も分かち合えるものがないなんて諦めるなよ。日本の魔法科高校は同じ人間がいると思って飛び込んだキミの新天地(フロンティア)だろ? だったらもう少しすれば違うものが見えるだろうさ」

 

「ソウかしら?」

 

「適当な助言だから違っていたらば殴りに来てもいいよ」

 

原作を知っている身としては、アンジェリーナ・クドウ・シールズが、どれだけ思い悩んでいても、そっちに付き、その魔法師な価値観に馴染むことは分かっている。

 

だからーーー。

 

(とっととベラトリックス・レストレンジとして連れていきやがれ!!闇の帝王よぉ!!)

 

心のなかでのみ後ろの方でこちらに対して耳を大きくしているだろう男に言うのだった。

 

「ソウネ……ちょっとカルチャーショックすぎて、驚いていたダケかもしれないワ」

 

少しだけ落ち着いたアンジェリーナが笑顔になったのに特に感じず続ける。

 

「USNAがどういう状況かは知らないが、日本では魔法師はいろいろな分野で重宝されているらしいからな。そうでなくても何か社会のアチコチの産業にいるとかナントカ、中には会社を設立しているヒトもいるんじゃないかな?」

 

「ソウなのネ……ってフシギなんだけど、何だかアキラってそういう魔法師していない感じがするワ」

 

「仰っている意味が、ヨクワカリマセン」

 

「モウッ!! 感じ取ってヨ!!このフィーリング!!」

 

片言の日本語で言ったことで癇に障らせたかもしれない。

 

「言いたいことは分かるよ。要は俺が魔法師を外側から見ている。他人事な感覚として語っているのが不思議なんだろ?」

 

「ソウヨ! アキラだって魔法師ーーーメイジストなのに、なんかフシギだわアナタ……」

 

感性が豊かというよりも、俺が少し話しすぎたのだろう。アンジェリーナに言ってしまうことにした。

 

「君の身の上話を聞いた手前、何も言わずに済ますというのも体裁が悪いからな。俺のことも言っておこう。聞きたくないな「キカせて!」ーーー分かった」

 

余計な口を開かずに背中(せな)で語り、背中(せな)で泣くのが漢道だと思うも、女が知りたいというならば語るのも人情というもの。

 

自分が魔法科高校を受験した経緯、そして魔法師としてとんでもなくペーペーであることを……。

 

後ろの方の連中が控えめなBGMが流れている店内でも、それを又聞いたのか少しだけ驚いているのを感じる。

 

聞かされたアンジェリーナは、そんな日本の魔法師とは違い感心した様子を見せている。

 

「ソウだったのネ……ケドそれってスゴイことじゃないカシラ?ビギナーが合格したのヨ。アキラはそれを誇れないの(PRIDE)?」

「どうだろう。どちらにせよ俺は新入生200人中200位のワーストワンなわけだ。こんなの誇れるような称号じゃないよ」

 

通知された成績によれば、そういうことだ。

 

誰か自分より成績よいのが通知が来て2科だと知って入学辞退したりしたからこの結果でも入れたということを疑った方が早いと思ったりもしている。

 

そして、その後に四方山話とまではいかずとも色々と話して6時ぐらいで、その日はお開きとなった。

 

ちなみに言えば、その間ーーータツヤデモートとその一派たる死喰い人たちは、こちらに接触してこなかった。

 

別にいいけど。

 

そうして入学2日目は終わり、3日目は……。

 

ーーー突然のメール失礼します。第一高校生徒会のものですが、石田君のアドレスで間違いないでしょうか?

 

ーーーはい、そうです。石田アキラです。

 

ーーー本日の昼食。よろしければ生徒会室にて一緒に食べませんか? 少しお話したいこともありますので

 

ーーーすみません。友人と昼食を取ることになってますので、お断りします。

 

というやり取りを端末でしたというのに……。

 

「なんで無理矢理引っ張るんだよ!?」

「友人とランチなんて真っ赤なウソじゃない!!」

「違う!俺にはいるんだ。とてつもなく大事な親友!!ーーーエア友達のトモくんがな!!」

「げふっ!!!」

 

そのセリフが生徒会室にいた女子の……多分、上級生を悶絶させてしまうのだった。

 

 

 

 





というわけで初回ブーストの三話分を挙げ終えましたが、ペースは緩やかになりますので、応援次第ということで今後ともよろしくお願いします
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