魔法科高校の退学希望者   作:無淵玄白

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そろそろコミケかぁ……


第三一話「闘争の最中で……」

 

 

とんでもない攻防、いままではアキラのことをどこか侮っていた人間たちは驚愕に心を彩られる。

 

確かに魔法は達者だし運動神経も敏なものがあることは存じている。というかサッカーのワールドクラスのプレーヤーだった男だ。 

 

長じれば日本代表として活躍していただろう人物だ。まぁそれはともかくとして……。 

 

魔法を使う使わないに関わらず、ある種の格闘のセンスとは、そういう通常の運動神経とは別のものがある。

 

そんなわけで……。

 

「あの空気圧を操作して作ったらしき剣は、リーナが教えたの?」

 

「正確にはForceField、日本語で言えば力場を操作してエネルギーを纏めたモノがアレの正体ヨ。ワタシがアキラに教えたのはエレクトリックフィールド……磁場、電場とでも言うべきものを操作してのものダケド」

 

その言葉にあの魔法は放出と収束の系統魔法を応用して発生させているのだと気づく。

 

不可視の剣(インビジブル・ブレイド)とでも言うべきものは、如何に魔法師の目が一般人より魔法を捉えやすいとはいえ、中々に難儀するものだ。

 

「デートのアフターで訪問したアキラのハウスでイチャイチャしながら教えました♪(ver.裸ワイシャツ)」

 

いつ教えたとか誰も聞かなかったが疑問は氷解した。満面の笑みで言うリーナにやれやれと思うも……。

 

「にしても、殆どぶっつけ本番で術式を展開するとか天才かアイツは?」

 

次なる疑問が浮かんだレオに対して。

 

「ううん、レオ君は知らないだろうけどアキラ君は自習室を借りて登録された術式とか、それをどういう過程で動かすべきかとかね。やってきたんだよ」

 

美月が必死な目で証言する。

 

「美月はなんでそれを知ってるの?」

 

「放課後のトレーニングに付き合っていたから、もちろん部活優先だけどいい被写体やインスピレーションが欲しいからアキラ君に付き合っていたの♪(放課後アオハルタイム)」

 

赤い顔をしながら、頬を押さえる美月に対して……。

 

「ミヅキイイイィ」

「リーナアァァ」

 

どんな相手にも若干敬称を付け気味の美月が呼び捨てにするとは、こりゃ本格的だなと思いながら。

 

少し違うが、巨乳と爆乳の女からチカラを得ているようなアキラはどこの『生後0ヶ月の最強魔王』(母乳を吸うことで強くなる)だとエリカは思った。

 

「レオ、2人の険悪な視線がバチバチとぶつかる中間地点の電場ならぬ雷場を手にして電磁抜刀とかしてみて♪」

「無茶振りの極み!俺はどこの装甲悪鬼だ!?」

 

そう言いながらも、やれるものならばやってみたいと思うのは魔法師の性なのか。

 

戦いは、アキラが優勢を取っていたが……。

 

「流石は全中2位の実力者ね。見えない剣と言えど、重さも尋常ではなかろうと……二十合も撃ち合えば対応するわよね」

 

とはいえ、その二十合の間に刻まれた爪痕は流れる汗と肌も顕な部分が見える壬生の衣服から分かる。

 

「アマチュアどころか素人のアーツ(武術)だもの」

 

剣道において考えられる攻撃箇所は面、小手、左胴、右胴、喉への突き。

 

もちろん今やっている試合は、魔法もありきだからとてつもない跳躍からの「龍槌閃」とか反転しての後頭部を打つようなものも出来るだろうが……。

 

距離を取るためか、空気弾の再展開。しかも普通よりも強いのかまるで風の円月輪のように気流が回転した輪っかのようなものが放たれる。

 

打風輪とでもいうべきもので間合いを取ったアキラ。

 

「アキラでも後退することがあるんだな」

 

サッカーでも相手の攻撃の際に守備をしないヤツなどいない。ファンタジスタなど時代の遺物である。

 

なんかどっかで「げふっ!覇穹封神演義!!」とかいう何か別れた旦那を思い出したらしき声が聞こえたが、まぁそれはさておき。

 

飛び来る鋭利な刃物も同然の風のチャクラムを強化か硬化させた竹刀で砕きながら、何かを投げつけて無効化していた。

 

「折り紙で作った鶴か?」「手裏剣もあるわね」

 

紙を硬化させた上で投擲したのだろうが、随分と達者に当てたものだ。

 

レオとエリカの感想を言っている間にも……アキラは何かをやっている。

 

力場の剣は不可視でかつ重く……しかし、アキラには剣の理は無い。

 

ならばどうするかーーー。

 

「我掲げるは降魔の剣!!」

 

その声が呪文だったのか、何なのか分からないが再び展開した同じだったはずの魔法式が変化を果たして不可視の剣はーーーー刃渡り二メートルはある閃光の剣と化していた。

 

 

「本当にヤツは規格外だな……」

 

「だが壬生とて負けてはいない。例え見えぬ剣であっても剣に生きてきたあの子が武技で負けるわけがないんだ」

 

贔屓目で見ているとも取れる渡辺の言を聞きながらも、いつでも魔法で止める準備をしていた克人は、その発動をキャンセルしておいた。

 

決着は、どんな形であれ当事者同士で着けるべきだと思えたからだ。

 

「あいつはいつも『俺には何も無い』などと言って自分は虚ろだと言うが……案外、それこそが魔法師としての、いや人間としての最終回答なのかもしれんな」

 

「そういうものかしら?」

 

「全てのモノは『無』または『虚無』から始まる。キリスト教の創世神話も『主』が何も無いところに「天」と「地」を確かな形にして()()に分けたところから始まる。また北欧神話でもギンヌンガガプという世界の始まりの前から存在していた「穴」とも「裂け目」とも言える「虚ろ」な場所から始まった」

 

そこまで言ってから克人は言葉を区切り、再び続ける。

 

「この日本の創世神話でもイザナギとイザナミという夫婦神にして『兄妹神』が形が定まっていないまだ「なんでもないもの」を天の沼矛でかき混ぜることによって国産みが成されたとされている」

 

「けど、それは……昔の人達の創造でしかないはずよ。本当にそんなことがあったと思えないわ」

 

「そうだな。仮にそれがあったとすればかなりオカルティズムに走ったものだが……しかし、昔の人々は分かっていたのかもしれんーーー全ては無から始まる。「0」という数字の概念が世界を大きく飛躍させていったように無こそが無限の原資だということに」

 

その概念は現代魔法の発動におけるコード……起動式においても重要なものだからだ。そう言われては納得せざるを得ないものだが……。

 

「以上……ここまで語っといてなんだが俺にも本当の所は分からんよ。ただ石田アキラという人物を読み解けば読み解くほどに、俺とてーーーーーーー」

 

出した結論を不明としながらも、何かを言おうとタメている十文字……そして吐き出した言葉は。

 

「ーーー俺とてもしかしたらば、このスワベなボイスに相応しいアトベなヴィジュアルになれたかもしれない。遺伝子を弄くったから親父共々こんな厳つい顔になったのだ……」

 

三巨頭の周囲にいた生徒たちが全員ズッコケた瞬間だった。ちなみに言った当人はすごく思い悩んだ顔をしていたりする。

 

「流石にそれは筋違いだと思うわよ十文字君…」

 

『新』の完結記念か?などと邪推しながらも戦いは少しだけ変わっていく。流石に、これ以上の接近戦を嫌ったらしき石田アキラは空気弾の変化なのか、風のカッター……チャクラムとでもいうべきものを作り出して、壬生の接近を遠ざけようとする。

 

「行け!!打風輪(だふうりん)!!!(cv 小野◯章)……というところか」

「げふっ!覇穹・封神演義!!」

 

およそ美少女が出してはいけない声で何故か大ダメージを負ったらしき、真由美を見ながらも、摩利はジャッジを下す。

 

武芸者としてはこの時点でアキラは負けだが、それでも仕切り直しの類だったらしく、がっつりと壬生を見ながら後ろに前進したアキラは、降魔の剣というものを再展開する。

 

しかし、それは先ほどとは違っていた。展開された魔法式の構成を全て読むことは出来ない。同時に起動式を読み込むほどの目利きは達也ぐらいだが、しかしこれほどまでに変化していれば魔法師ならば誰もが気付く。

 

板状のCADを手首に固定している関係でか、右腕を斜め上段へと振り上げた。展開する魔法式の重さは予想外だったのか左手を右腕に保持しながら彼は叫んだ。

 

「我掲げるは降魔の剣──!」

 

瞬間、ぶわっと後ろ髪が総気立ち、掌の中に発生した超磁場にあたりの空気が細かく振動を始める。

そして、彼の手の中に、先程とは真逆の完全に万人が見える形での光剣が発生した。

 

それを再び片手で保持するも下ろした腕が見せた動き。祈りを捧げるように起立させて掲げ持つ仕草。

西洋拵えの護拳付きのレイピアかサーベルで決闘の瞬間を待つ騎士のような動きを見せた瞬間に。

 

「ーーー」

 

無言を貫いていた市原鈴音が、何故か笑いを隠すかのように持っていた端末で口元を隠すのだった。だが目が笑っているのは隠せていないので摩利を筆頭に何人かはそれを目撃していた。

 

そうしていると、その光剣を前にした壬生は明らかに緊張をしている。

 

「十文字ッ!!」

 

これは既にレフェリーストップをかける事態のはずだ。少し前に高周波振動剣を放とうとした桐原と似た状況にして異なる。

 

だが、あれの威力が「ビリっと」する程度なわけがない。

 

止めろ!止めてくれ!!と思う渡辺だったが。

 

「ーーー」

 

その光剣を前にして笑みを浮かべる壬生を見てしまった。

 

そして再びの戦いは始まる。

 

 

此度の戦いでアキラが課した制約とでも言うべきものは接近戦を演じる上での自分のポテンシャルの確認である。

 

当たり前だがアキラは転生して以来、そういう格闘に関することは鍛えていない。

 

確かにサッカーは当たりの強いスポーツであるが、格闘のスキルとはそこに無い。

 

一部の人間はサッカーはスポーツではなく格闘技だと言うものもいるが、そんなことはない。

 

足の延長線で戦うサッカーと手の延長も使うグラップリングとの違い、更に得物を持つか否かの違いを知るためだったのだ。

 

達人級の相手との戦いは凄まじかった。

 

成程、壬生紗耶香の剣は理詰めの剣だ。しかしーーー

 

力と速さだけに頼ることはなくとも剣に感情が伴いすぎている。ゆえにアキラのような素人でも「読み」が働く。

 

どこを狙うかを理解していればパスカットの要領で防げる。それだけだ。

 

全中で見ていたこの人の剣とは全く違っていたのだ。なぜこうなったのかを分からぬほど鈍くはない。

 

(だが、やはり修正してくるか)

 

傲慢が過ぎるわ!と罵った後のアキラの力場の剣に対応するために、本来の理詰めの剣に立ち返った様子。終始、感情を昂ぶらせていたことを理解したようだ。

 

(もっとも、そうなれば本当に怖ぇな。このヒトの剣は……)

 

正確に針を通すかのようにこちらの弱所を突いてくる剣は氷柱のように鋭い。と思えばこちらの数手先を見据えて防御を崩すように動くこともある。こちらの意気、戦気を崩すような剣も放ってくる。

 

(何が活人剣だ。本物の殺人剣じゃねえか!)

 

原作で桐原が言っていた言葉を打ち消しにしたくなるほどに、この人の剣はそちらだと気付く。

 

(やれるか?)

 

事ここに至れば、アキラも自分の「技」を出すしかない。もっともそれはーーー本当に見て、そして数日程度の経験ではあったが。

 

『そ、そこまで言うならば見せてあげてもよろしくてよ』

 

試合を見に来ないでくれと言ってきた一輪の花。「短髪」で女っ気を見せないほどに髪を短くした少女が見せて、少しだけ教えてくれたサーベルの技ぐらいだ。

 

それをトレースするためには、この剣ではダメだ。

 

一旦距離を取る。逃げと言うなかれ、これは戦術的撤退だ。

 

気流の歯車とでも言うべきものを空気弾の応用で変化させて放ちながら距離を取ってから再度の魔法式の展開。

 

先程は磁場を制御する形で纏めやすいようにしたものだが、今度は意図的にエネルギーを暴走気味に解き放った上で剣とする。

 

オーフェンでは第四部でようやく日の目を見ることになった「閃光の剣」を見せることに。

展開させようとする魔法式の重さに苦慮して手を剣と化す方の腕に反対の手を添えながら、構成を差し込んで自分の理想を解き放つ。

 

「我掲げるは降魔の剣──!」

 

手刀を剣の延長線上にするような得物を手にするも……。

 

気をつけ(ラッサンブレー)(サリュー)を忘れずに!』

 

と注意されたことを忘れずに剣を掲げた。

 

そして見ると、壬生はボロボロになりながらもアキラの放った風の歯車様(爆)たちを凌ぎきったようだ。

 

ここで止めるか?無言で問いかける。しかし壬生紗耶香は、笑みを浮かべてから構えを取る。

 

どうやらやる気のようで何よりの壬生に対して、アキラは、『電光石火』の突きを放った。

 

アイリスの技を再現したくて若干、魔法を使ってチートだが、それでも放った五指を揃えての手刀剣は、光剣を竹刀で受けた壬生を楽しませているようだ。

 

 

剣士と素人の戦いが佳境を迎えていた頃に……。

 

 

『では予定通りに』

『ああ、委細承知だ』

 

策謀を巡らす者たちは、遂に動き出すのであったーーー。

 

 

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