「何だか『Super Sonic Showdown』でも掛けたい気分だな……」
「しかし、あの鬼眼麗人よろしくな突き主体の剣技は見事ですね……壬生先輩がやった方が似合いそうですけど」
「ああ、
などと言いながらも、結局の所アキラの戦いは、とんでもない熱狂をこの場に与えている。
アイツがサッカー選手としてフィールドに立った場合も、こんな感じだったか……
動画共有サイトで見た様子を思い出す。そして壬生とて負けてはいなかったが。
「ーーー!!!」
得物の差は歴然であった。如何に竹刀を硬くしたり強化したとしても、それよりも強い情報体をぶつけられ続ければ、当たり続けていれば破断の時は訪れる。
砕けた勢い。振るった剣戟で前のめりになった所に光剣が突き刺さろうとしたが寸前で消去。どうやら森崎の時の二の舞はなさそうだ。
前のめりで倒れ伏す壬生紗耶香。腕を使い顔だけはあげながら息を吐く様子。
それが、あえぐようになってしまうのは魔法をここまで使ったが故か、それとも……アキラという規格外との戦いは、この状況を齎すのか分からないが、とりあえず勝敗は決した。
「そこまで!!!勝者!!石田アキラ!!」
十文字会頭の宣言を聞いて、ようやくのことで息を上の方に吐き出すアキラ。流れる汗とその表情を考えるに、どうやら壬生紗耶香は、かなりの強敵であったことは予想が付く。
「壬生もまた見事な戦いだった!! その剣の氷柱のように冴えわたる軌跡は横から見ていても凄まじかったのだからな!!」
その言葉を受けて、それでも悔しそうなとも、エリカを筆頭に拍手が鳴り響くも、そんな賞賛などいらないとでもいいそうな壬生の表情で……やはり二科として一年間踏ん張ってきただけに同じ二科の下級生に負けるのは屈辱ということか?
どう言い繕ったところで、四■の家に産まれた魔法師である達也には分からーーー。
「深雪、下がれ!!」
「お兄様!?」
いきなりな言葉、同時に深雪には分からないだろう変化があちこちで起こり、こちらにもやってくる脅威。
恐らく壬生を目印に投げ込まれたのだろう「何か」が天井のガラスを突き破って階下の闘技場へと落ちた。幸いにも見物人と下の決闘者には影響は無いようだが、投げ込まれたものは脅威である。
柔らかい床に落ちたそれが何かの有毒ガスを撒き散らそうとする前に。
「下がって壬生先輩」
即座に処理ーーーと言ってもアキラの技能では、催涙ガス弾とでもいうべきものの噴出を停止させるだけに留まったようだ。
続けて二つやって来た。これの処理に関してはーーー。
「えっ!?美月!?」
「ーーーもう1つは、リーナだな」
生徒会役員であるリーナはCADを携帯していただろうが、美月はどうやったのかという深雪の疑問に対して。
「美月はアキラの指導?とほどのことではないが、関わったことで視線を介した術の投射が出来るからな」
動画の早戻しよろしく催涙弾を外に投げ返したというより、本当に下手人の方に『戻した』ようだ。
そして達也と離れた所にいる真由美は外にいる下手人が返ってきた催涙弾でやられたのを見た。
「アキラ!! それ上!
「了解!!」
煙を吐かないままにした催涙弾が、移動魔法で元の穴付近に飛ぶと。
スパークで砕け散る催涙弾は白煙を穴に棚引かせるだけになった。
「結構無茶しますね」
「吐き出そうとする煙が有毒な気体かもしれんからな」
熱エネルギーで処理したのは、悪い判断ではない。
密閉空間で煙を吐き出されていれば別だっただろうが。
ともあれーーー。
(外は七草先輩が処理したか)
美月のガス弾投げかえしで驚いたテロリストであろう防毒マスクをつけた連中が全員倒れ伏していた。
何か氷の礫のようなものが、テロリストの身体に落ちている。
それを見た後に全体に目を向けると、あちこちで戦闘が起こっている。どこかで出来た爆発もこの大講堂に響いているほどだ。
「どうやら当校はテロリストに襲撃をされているようね。引き入れるとしても、どうやったのかは分からないけど……」
達也のやったことを理解していたわけではないだろうが近くにやってきた会長が言う。
「達也君と深雪さん、そしてアンジェリーナさんと石田君にはーーー周囲の敵の排除を求めます」
この中ではCAD持ちではあったが、それでも偏ったメンバー編成である。
「壬生さんが消えています。それも含めてのことです」
決してアキラも注意を怠ったわけではないだろうが、いつの間にか格闘場から消えていた。
「聞こえていたか!?アキラ!!」
「ああ、やりたくないがやらなくていい事ではないんだろうな」
階下からどうやって階上の話し声を聞いていたかは分からない。少しばかり混乱してざわめきを見せている中でも異色の経歴の魔法師は戦いの目を達也に見せている。
言葉こそなんか特車二課の
姿勢制御と着地の緩衝などを行ってアキラに合流する形で一年三人が降りたわけで。
「号令は君がかけなよ。俺は、そういうのガラじゃないんだ」
「キャプテン彰はガラじゃないか」
やれやれと思いながらも真正面から学外に出た。
大講堂の外ではそれなりに戦いが繰り広げられている様子だ。
とはいえ、だからと抜き足差し足忍び足で行くわけもなくーーー。少し歩くと……。
「居たぞ!!!」
誰を目当てに言ったのやら分からないが達也としては遭遇戦でアキラの格を見たいところだ。
瞬間、アキラは即座に空気弾を放つ。その数5つ。
3人のライフル持ちとナイフ持ちのテロリストが構えたのを見てーーー。
「ぶごぉ!」
ライフル持ちの顎をかちあげるように空気弾が炸裂。
暴発する危険性もあったが、同時に手を落とすように2発目も同時に食らわせた。
3つの空気弾はナイフ持ちをそれぞれ無力化していた。顔への直撃が主だ。
「見事だな」
「そうなのかね。生憎、君みたいに戦いなれていないから殺さない程度の手加減が分からん」
ぴくぴくと動いて無力化したテロリストを何か眠らせる魔法を使ったらしきアキラ。
精神干渉魔法かと思ったが、そういうのではないようだ。
「もしかしてリーナが教えたのか?」
「ソウヨ、ケン・グランパのオリジナル。
笑いながら言っているが……。
「あの降魔の剣とかいう電磁力だかを纏めたものといい、リーナはちょっとばかりアキラ君に甘い気がしますよ」
自分の身内(予定?)でもないのに、そんなホイホイ、自分の家の秘術を教えるとかちょっと、日本の魔法師の感覚としてはどうなんだ?とは深雪と達也も思ったりはしたが……。
「ニホンでは
分かってるじゃないか、と思うも少しだけ暗い顔をして口を開くリーナが見えてきた。
「ケドもーーーケンお祖父ちゃんが、USNAという「異国」でスクールを開校して多くの「外国人魔法師」に教導していった以上……そんなケチンボな人間にはなれないワヨ……」
その言葉に窘めた深雪も達也も二の句が継げなかった。
結局の所、この子の祖父を追放したのが、ときの日本政府及び当時の魔法師社会の面子であったというのならば、ある種の皮肉とはなっている。
九島健 師父が、その国で生きる上でそういう風な道を選んだというのならば、技術流出は仕方ない話だ。
似たような事例だが、「中国ミサイルの父」と呼ばれた男も一時期は米国に亡命するような形で市民権を取得していたのだが、アイゼンハワー政権と毛沢東との密約などで結局、中国に返されたような経緯があり、それこそが最終的に当時の中華人民共和国という共産党政権に核ミサイルを持たせる結果となったのだ。
生きるために、食っていくために自分の技能や知識を利用するのは仕方ないことなのだ。
何より……養わなければならない家族がいれば、尚の事である。
そんな風に結論づけた兄妹に対して既にリーナは目を未来に向けていた。
「ソレに……イマのアキラは魔法師としては本当に面白いセンスしているワ。当たり前に魔法歴が浅いからか
リーナの恍惚と陶酔をしたような言葉に、正直達也は戦慄する。
ヤツのいう空っぽとは、リーナの言う通り『詰め込み放題』と同じだ。
有名な歌でも「頭カラッポの方が夢詰め込める」と歌われているほど。
(生まれたときか、それから少ししてからお袋によって無理やりにモノを取っ払ってから「詰め物」をされた狭い容器しか持たない俺とは違うということか)
その処置が、達也を
これならせめて……天下取りのためとか、領土の守護や豊作のために妖怪か鬼神の生け贄に捧げられたというならば、まだ納得できたかもしれない。
まぁそれはともかくとしてーーー。
「つまり……「石田アキラ育成計画」をワタシは
「全部丸聞こえなんだがっ!!!」
怒るように言いながらも三人のテロリストの反応が消えたことでやってきた連中を次から次へと倒していくアキラに。スパークとエアブリットを交互に使っての使用で11人が倒れていた。
奇しくもサッカーでフィールドに入れるチームの最大人数である。
「働かせすぎたな」
ちょっとばかり怠けていたことを謝罪する。
とはいえ達也のやれることは殆ど無い。となれば疑問を解消するしか無くなる。
「そもそもコイツラの目的ってのは何なんだ?反魔法主義団体だとすれば、俺達を殺傷するだけの宗教的情熱も感じないんだが……」
アキラの言わんとするところは分かる。反魔法主義団体が日本に政治的、戦略的な敵対意識を持った国家の意を受けている連中であったとするならば、当然色々なものを盗もうとか思うだろうが……。
達也もその辺りを絞りきれない。
増援部隊を叩きのめしたアキラは、彼らの服を探り通信機を達也に投げ寄越した。
けたたましく様々な声が聞こえてくる。
彼らも色々と難儀していることは分かったが、それでも目的地が分からない。
そんな中……。
「彼らの狙いは図書館よ」
一言でこちらの迷いを断ち切った人間が現れた。
・
・
・
「中佐、そろそろ」
「ああ、では始めるとしようか」
応答し合う銀髪の少女と歴戦の勇士を思わせる傷だらけの顔を持った中年の偉丈夫とがーーー親子と思わせるようで、そうではない関係で応答し合う。
その2人を筆頭に最大の脅威となって襲いかかるものが解き放たれようとしていた……。
・
・
・
女子SSボード・バイアスロン部の部長たる五十嵐亜実は奮戦した。
自分の立場を理解した上で、自分を慕う後輩や切磋琢磨する同級生を守るために、テロリストたちに立ち向かった。
足元から発する乱気流で吹っ飛ばしたはずの作業着姿のテロリストたち、それで安堵していたのが良くなかったか…。
「部長!!」
いつでも冷静ーーーというよりも何事にも平淡でドライな北山雫という後輩の切羽詰まった声。
その足元の更に下ーーー硬いコンクリートの床を突き破って。
「へ、ヘ、ヘ、ヘビ!?」
機械仕掛けの爬虫類、ご丁寧にもアナコンダなど小氷期にいたった現在の世界でも生きているような恐ろしい大蛇を模したらしきものが3匹、あるいは3機現れた。
土煙を上げながらやってきたその大蛇は、視覚的にも明らかな恐ろしさを持って光井ほのかの恐怖を煽った。
その後には人間にもハッキリと聞こえる威嚇音を発してーーー。
「あぐっ!!頭が!!!」
キャスト・ジャマーではないが、それでも周囲の人間が頭を押さえる何かの音が放たれたて、全員が膝から崩れた時に。
『ダブルナイン!』『バ、バーストスパーク?』
少し遠くの方から聞こえた声より早く、直線的に放たれた九本の雷が、大蛇を焼き切るのであった。重々しい音とともにガラクタとなった機械が、地面にその体を投げていた。
自爆機構を疑う男子部員が調べているのを見ながらも、ほのかの目は下手人に向かう。
「アーユーセーフ?ホノカとシズクもダイジョウブ?」
「どうやらバイアスロン部は男女何事もなしか……」
やってきた一年の有名カップル(?)、どうやら先程の雷撃はこの2人だったらしい。
「こっちの安全確認及び敵勢力らしきものは倒せました。まぁ来る前に熨されたらしき人間が2人ほどいますが……」
『重傷でなければ放っておいていいぞ。そちらに一名寄越す』
通信機を使って渡辺委員長と会話しているらしき石田アキラは、その通話を切ってから告げる。
「風紀委員がこちらに来るようです。それまでにーーー」
「アッキー!! こわかったぁ!!」
「抱きつかないでくださいよ……本当に?」
抱きついた五十嵐部長を宥めながらも、昏倒しているテロリストを倒したのは誰なのか?最有力はやはり百家本流の部長に向くわけで周囲に目だけで問うてきた。
その疑問に対して雫だけが「犯人」というマーカーを五十嵐に向けるのであった。
「と、とにかく無事なら何よりです!光井さん的には司波達也君が白馬の王子様よろしく来てほしかったかもしれませんが……」
「いらない世話だよ!!」
「我々は他を見に行きますので、失礼!!」
「GOGOGO!!!」
五十嵐亜実を半ば無理矢理引き剥がして、「姉ちゃんから離れろ!」と叫ぶ同男子部の五十嵐鷹輔に預けてからリーナと共に遊軍よろしくあちこちに向かうようだ。
ちなみに……姫抱きでアッシーよろしくアキラは走っているわけだが……。
そして戦いは次なるステージへと向かう。