一週間の休校明けの一高は普段通りを取り戻していた。
自分は関わっていないが、どうやら土建屋を兼任している十文字会頭の家や様々な土木建築関連の魔法師の家が総出で動き回り、校舎も校庭も以前通りに戻っていたのだ。
流石にタツヤデモートも再成とやらを表立って使えなかったのだろうか?はたまた知らぬ内に直っているということもあったのでは?と邪推する。
朝方職人さんがやってきたら、いつの間にか作業が進んでいるという小人さん現象の体でやったーーーと考えるのは少々、虫が良すぎると言うか。アレがそんなことをやるとは考えにくいので想像を忘却しつつ、再開する魔法大学付属第一高校はーーー。
まぁいつも通り?だった。あれだけのことが起こったあとでも平常通りを取り戻すように始まったわけだが……。
とりあえず変化として二科生にも普通に校章入りの制服が支給された。
一科生と何も変わらぬそれが来たわけだが……。
アキラだけは着用拒否して紋無しの制服でいいや、いつ退学になるか分からぬワーストワンとして、作中で何度も警察手帳を返上する(未遂)こと多いモッズコート着用の刑事のように、しばらくはそれでいたのだが。
『黙って着ろ』
『っ…!!』
部活連棟に呼び出してきた十文字会頭の有無を言わせぬ言葉を前に驚愕。
『十文字会頭っていつもそうですね…!俺のようなシロウトをなんだと思ってるんですか!?』(cvヅラ子)
などというやり取りのあとには、結局着せられることを有無を言わせず了承されるのだった。
『俺はお前が魏王曹丕が漢王朝の皇帝から進んで禅譲するかのようなことを望んでいるのかと思っていた』
そこまで意地が悪いわけではないのだが、そう思われていたならば改める必要はあるか。
(
そんな風な納得をしておくのだった。
そんなことを考えながらの一週間は波乱はそれなりにあり。
その次の一週間には何故かロボ研の連中が出してきたーーー。
『我が人造人間15号!!名称は『ドーパミン君』!!この神経伝達物質の一つを名付けられた彼の実力に、怯えろ!竦め!!その魔法を発揮できずに敗れされぇ!!』
ドーパミン君の腹から出てくる小さいドーパミン君。略してドパガキとでも言うべきものに引っ付かれそうになりながらも。
躱しながら考えるに、要は機械なのでーーー。
『イマよアキラ!! ジケルドを!!』
『ネタバレするんじゃなーい!!』
とは言うものの対象者に強烈な磁力を付与させる術をドパガキとドーパミン君に放つとS極とN極がくっつくように一纏めになったところに。
『我は放つ光の白刃!!』
雷をそのままにビームのように放つ。こんな光熱波でも熱衝撃波でもないものに、その術名は相応しくないというオーフェンガチ勢として苦衷の思いでいたのだが。
『うわあああ!! コルチゾンくーーん!!!』
神経伝達物質から副腎ホルモンの一つに名前が代わってしまった哀れな人造人間の最後はあっけない破壊であった。
ちなみにロボ研の部長であるそばかす顔の先輩は平河千秋の姉らしかった。
何故挑まれたかは……分からないが。
『なんでだろうね。石田君みたいなイケメンに構ってほしかったんじゃない?』
妹に聞いても平河氏の心は分からなかった。ちなみに、言った妹は当の姉に赤い顔をされながら怒られていたことは追記しておく。
そんなこんなあったりなんだりしながら、世間一般の高校生にしては波瀾万丈かもしれなかった二週間。その中で……普段通りに家に帰ると。
「ただいまー」
「あっ。おかえりなさーい。おふろにする?食事にする?それともーーータ・ワ・シ?」
誰も居ないと思われた自宅に出た知らない人間。しかもそれが露出度高い巫女服?らしきコスプレ衣装とも取れるものを着た女の子(withタワシ)がいたとなれば、パタンと扉を閉じた(電子制御)あとには、ポリスメンに連絡しようとするのは当たり前だったのだが。
「ちょいとーー!!先に話聞いてくれんの!?めぐみさんから聞いてないん?」
何も聞いていないが、とにかく巫女服らしき胸元見せ過ぎな女の子に家に引っ張られてしまう。(チカラつよっ!!)
そして居間のキャビネットにて……。
「親戚でもない、ただの仕事上の付き合いで知り合った家の娘をこの家に住ませる!?」
『そうよー、そこにいる「高山陽菜」ちゃんは私と父さんが飛騨高山でちょっと仕事した時に現地で知り合った魔法師の家の子でね。来年度から魔法大学付属に通わせたいそうだから、東京に慣れさせるためにも、ってね』
通信機器の向こうにいる母、
眠そうにしていないところから察するにあちらは深夜1時。太平洋側にいると見た。まぁ本当の所は分からない。
ともあれ眠たそうな雰囲気を見せずに母は話してくれたので……。
「親御さんも随分と不用心な。俺みたいな年頃の男に拐かされるとか考えないのか?」
そんな感想で「一人暮らし」に考えを変えてくれるようにしたかったのだが。
「ああ、それならば寧ろ「ソトの血」を入れてこいと父ちゃんと母ちゃんにいわれてるんよ。うち、まだ
ニコニコ笑顔で赤みがかった黒髪の美少女は言ってくるのだ。
ここまでの会話とかの訛りから察するに、お袋の言う通り岐阜の方の子なんだと思う。アキラが理解できたのはその地方の選手とも戦ったり国際試合で同じピッチに立った人間もいたからだ。
そして、この日本の人口を特殊な事情がない限り、都市圏に集めた時代でもそのような……俗に因習村とは言わずとも、限られたコミュニティで生きているとは……有名なアニメ映画での
『まぁ最初は、流石にね。私も考えはしたわ。とはいえ陽菜ちゃんの両親が提供しようとしていた一人暮らしの界隈は、まぁあまり治安が良くなさそうだったからね。それだったら郊外とまではいかずともベッドタウンの方に、ってことよ♪」
その言葉に最初の候補地は中野の方かな?と考えつつ、これ以上の抗弁は無理だろうと思っていた矢先ーーー、母はとんでもないことを告げてきた。
『それに、アキラ。あんた私の言いつけ破って魔法大学付属の女の子連れ込んでるそうじゃなーい。いまさら、そんなこと気にするような息子じゃないでしょ?』
あっさりバレとるがな。
母であるめぐみも呆れ顔をする事実は、魔法科高校の一部の界隈で。
「石田ん家はどうやら(魔法)ギャルの溜まり場になってるらしい」
などと言われているそうだ。
いや、確かにリーナや美月が休日ないし、暇な平日にやって来る(デート後)ことはあったが。
「アキラ兄ちゃん、えらいプレイボーイやん」
「身の危険を感じるならば、一人暮らししたほうがいいよ」
「いんや、英雄色を好むというやら。ウチもがんばる!」
どうしよう。なんか変に気合を入れているこの子をどうしたものやら。
『ご近所さんから聞いていたのよ。ウチの息子が何かご迷惑おかけしてませんかー?って、大勢で騒ぐようにBBQとかやって迷惑かけていないからね。ヨシとする』
そこが母親にとっては懸念事項だったようだ。とはいえ、まぁ迂闊と言えば迂闊であったか。いや、別に隠そうとするほうがやましいことをしている気分なのだが。
『それじゃ陽菜ちゃんと仲良くしてね。予定通りならば来年度には第一高校を受験する予定だから先輩としてしっかりね』
むしろ魔法師としては俺のほうが後輩だから、その辺りで先輩風を吹かせるなんてことは出来ないと……言ったところで母はわかるまいとして「分かった」とだけ言うと「じゃねー」とカルい調子で最後に通信は切れたのだった。
終わってから一息ついて陽菜に向き直る。
「ーーー事情は分かった。とりあえず使う部屋は母さんから聞いている?」
「うん、使ってない部屋を指示されたよ」
「荷物は入れたの?」
その言葉に頷く。どうやら種々のことはいいのだが……。
「この九尾の狐を模したらしきコレはなんなんだ?」
『ミココーン!』
アキラの足下にて頬を寄せながら吠えてくる尻尾が九本も生えている明らかに既存の生物とは違うキツネらしき生物?と思われるものに疑問を呈する。
「ああ、それはうちが作ったゴーレムなんよ。勾玉2つを使って動かしとるんやけど、なんやアキラ兄ちゃん気に入られとるやん♪」
ゴーレム……確か、ちょっと前に授業の座学(当然自習)で習った限りでは、古式魔法の分野では無機物の人形を遠隔操作する術式と習った。
現代魔法では、あまり研究されていない分野だが、それでも「何かを操る」「操作する」という意味では少しばかり興味を持たれている。
その時は、俺も「ぴこぴこリナちゃん」を操れる時が来るのかと思ったが……現代魔法がこの分野に興味を失ったのは、コスパとタイパの悪さというロマン無きクソな理由であった。
「無機物に、ここまでの生物的な挙動をさせていて、陽菜ちゃんは「陽菜でええよ」疲れないのか?」
その理由の一つに先に上げたコスパ。要するに無機物の人形に生物的な挙動をさせるだけのメリットが無かったのだ。
例えば物資輸送において、馬から騾馬ーーー汽車、列車、電車、新幹線と段階を踏んでいったのはヒトとモノの両面の大量輸送という点において、それが優れていたからだ。
何より馬は骨折してしまえば、安楽死させるのが上策なぐらいに治療が難しい生き物なのだ。
想定される状況次第かもしれんが、総じて
「うちのヒ・ミ・ツ♡ということでカンベンしてや。タマモは危険やないよ」
これ以上は魔法師としてのルール破りか。人差し指を立ててウインクしながら「ヒ・ミ・ツ♡」とかいう陽菜の小悪魔な仕草にやられたわけではない。
「サイオンセンサーは反応しなかったのか……」
「えっ?そんなものが都会にはあるん?」
この子の両親は上京する娘に何も教えなかったのかと思いながらも……。
「じゃあとりあえず陽菜が我が家の一員になった記念に……外食するか?」
「ええの!?」
「冷蔵庫の食料は俺1人分を想定しているのもあるから、リクエストはある?」
「それやったら焼き肉!!」
陽菜がとんでもない肉食系女子であることが分かった瞬間であった。
「それじゃ着替えてね。汚れても大丈夫なように黒系統の服がいいかも」
この時代の洗濯技術と魔法の便利さを応用すればそうでもないかもしれないが、とりあえず手間は惜しむ。
「わかった。ちなみにミニスカートとショーパンどっちがええ?」
その2択しかないのか?と問うのも無粋かと思い、言わずに。
「ショーパンにしとくといいよ」
「アキラ兄ちゃんの好みはショーパンっ、と」
「変なことメモするな」
窘めつつも陽菜という名前なだけにショートパンツの方がいいのではないかと思っての発言だった。
というか、春とはいえ寒くないのか?これが山育ちゆえの気温に左右されない健康法か?
疑問はあれども、巫女服の立派な「おべべ」を着替えて喜色満面の陽菜を連れて近場の焼肉屋に赴く。
俗に
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『では、この案でいくのですね?』
『ああ、我々は異論ない』
『一色殿はよろしいので?』
『ーーーそのような海のものとも山のものとも知れぬ馬の骨には預けられん』
『そうですか、ではーーー「手筈通り」に』
アキラどころか殆どの人間に関知されないところで、恐るべき策謀が巡っていくのであった……。