魔法科高校の退学希望者   作:無淵玄白

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第六話「A君(15)の戦争 3」

 

 

「決闘だ!! 僕はお前に決闘を挑むぞ!!石田アキラ!!!」

 

なんでそうなる。食堂にて起こった『第二』のファーストコンタクトでワーストコンタクトを前に頭を痛めるのだった。

 

 

魔法科高校新年度4日目。早くも色々と面倒なこと……タツヤデモートと深く接触こそしていないが、何か妙なことになりつつあるなーと思い、それでもポーカーフェイスでやり過ごし、あからさまな嘆息などせずに過ごしていたのだが。

 

「アーキーラー♪HUNTING♪」

「つかまえた♪と言いたいのか?」

「ノンノン! 正しくは「つかまえちゃった♪」よ!!」

 

どうでもいいわ。一高駅前のバス停。コミューターで降りた場所に「待ち伏せ」していたアメリカン・ガールに辟易する。

 

人の腕を取ってすり寄ってくるアンジェリーナ。

 

本人としては、小中で出来なかったような男子とあけすけに接触できるクイーン・ビーとまではいかずとも、サイドキックスな立場になれたことを喜んでいるのかもしれないが……いや、殆どクイーン・ビーだ。

 

二人いるクイーン・ビーという異常事態に一高一年は、色々である。

 

それがアメリカのドラマに出てくるようなビッチ的なクイーン・ビーにならないことを祈るのみ。

 

だからこそ学園のヒーローであるジョックにしてギークにしてブレインでもある(総取りすぎ!)ようなタツヤデモートを選べばいいのに。

 

俺などよくてスラッカーの立場だ。

 

全くもって釣り合いが取れない。

 

「なぁシールズさん」

「アンジェリーナと言ってくれないと今後会話はしないワ」

「……アンジェリーナさん。正直言って俺は分かんないよ。なんで俺に構うんだよ?ライトノベルを読んでいる横顔が君の祖父と似ているからといって、そろそろ俺がどういう人間か分かってきただろ? 俺は本当に君と釣り合いが取れない男子だ」

「ソレはアナタの心持ちであってワタシの気持ちとは関係ないワ。それと「さん」はいらないワ」

 

説得が通じない。なんというか原作とは違ってこの世界の彼女はものすごく頑固だ。己の意思を曲げないとでも言えるか。その上で原作よりも茶目っ気がある感じだ。

 

元の世界では頑固と言うより意固地な感じだった。とはいえ軍人としての立場と訓練が若干ながらの道理を弁えた行動を取らせて、表面上は落ち着かせる時には落ち着かせていた。

 

そして何より『魔法師』らしく、『軍人』らしく……そんな通り一辺倒な価値観に準じていた。

 

まぁ考えるに司波兄妹なんていう厄ネタに関わったことが、その後の転落及び飼い殺しのような状態を続けさせていた原因ではある。

 

如何に強力な魔法師と言えど、それだけが拠り所となっていたからこその脆さとも言えるか。

 

家族関係もそちらでは司波兄妹と同じく悪い方だったらしいし。

 

(が、いまはそういう風なアンジェリーナ・シールズにいてほしい!なんでこの世界のアメリカは、このバクダン娘を必死こいてアンクル・サム(兵隊徴募)しなかったんだよ!!!)

 

そうであればタツヤデモートの愛人として仮初の結婚相手ロドルファス・レストレンジと結婚状態であっても托卵していただろうに。

 

バカめ!バカめと言ってやる!!(cv 沖田艦長)

 

「ソレに……アキラは別に魔法が使えないワケじゃないでしょ?」

 

少しだけ深く腕に擦り寄りながら探るように言うアンジェリーナに苦笑しながら言う。その一点だけでも俺はカーストが低いのだ。

 

「そりゃ使えてるだけで達者に使えているわけじゃないよ」

 

それこそが2人の間を分かつものだと何かロマンチックな表現で気持ち悪いが伝えたのだが……。

 

「エ゛……昨日、2科も実習(プラクティス)やったのヨネ?」

「そりゃやったけどーーー」

 

なんだか調子が狂う戸惑った顔だったが……。

 

「朝も早くからお盛んですねリーナ、石田君」

 

そんなことはお構いなしに歩いていた時に、突如、正面に現れた司波兄妹とその取り巻き連中。

 

俗にタツヤデモートと死喰い人たちのお出ましである。こいつらも待ち伏せしていたのかとげんなりする。

 

「ミユキ、ウラヤマシイ?」

「いいえ、まったく♪」

 

それで対抗するように実兄の腕を取るとか……。本当にインモラル(アニ)マルだなと内心でのみあきれる。

 

「で、アンタがF組の石田アキラ君ね!?」

「違いますと言って逃げたい気分だ」

 

けんか腰とも言える勢いよくこちらに聞いてくる死喰い人の1人たる赤毛の女だが。

 

「アンタこそダレなのよ!? アキラはワタシのモノよ!!」

「俺は俺だけのものだ……」

 

取られると思ったのか、牙を向いて赤毛の女を威嚇するアンジェリーナ。

 

その言葉に抗議してから、推移を見守る。

 

「エリカちゃん!失礼だよ!!」

「そ、そうかしら? まぁ1−Eの千葉エリカよ。以後よろしく」

 

よろしくされたくないです。メガネのビッグボインに嗜められてから自己紹介してくる千葉エリカ。

 

後にタツヤデモート率いる死喰い人の世界征服の尖兵の1人であり、切り込み隊長である。

 

「こっちのデッカイのが西城レオンハルト。で、こっちのデッカイおっぱいのメガネっ娘が柴田美月、どっちもE組だよ」

「エリカちゃん!!!!」

 

同性のクラスメイトに、とんでもないセクハラ含みの紹介をする千葉エリカと赤い顔で抗議した柴田美月に苦笑いをしていたのだが。

 

「ムムッ!なんだか負けてるワ!!」

 

なんか変な対抗心を持つアンジェリーナ。まぁ本質的に中の人が『貧しい』からか、理由は分からんが……とりあえず中の人同士は夫婦なんだから、西城レオンハルトは少し柴田美月をフォローした方がいいと思えた。

 

マァムを心配するクロコダインのように。

 

「石田アキラです。F組ですが……どうかしましたか?」

「そうじゃないんだが……昨日E組も実習に入ってな……それで噂の人物に会いたくなって」

「待ち伏せしていたと?」

 

どういう噂なのかは分からないが西城が語る通りならばそれは俺のようだ。

 

「石田、お前は演習をした後にお前の記録が掲示板にデカデカと表示されていただろ? アレだよ」

 

レオンハルトの後を継いだような司波達也の言葉でようやく思い出す。

 

「なんだ、E組の皆さんにも知られていたのかよ。なんだか恥ずかしいな……」

「恥ずかしい?」

「だってアレは、あいうえお順の出席番号で俺が一番最初だったからこそ出た「基準点」だろ。あんなもの参考にならないものだ」

 

そんな言葉を聞いた瞬間に殆ど全員がーーー。

 

『そんな漫才一番(M-1グランプリ)決めるような加減点法則あるわけないだろ!!』

 

そんな絶叫でアキラの勘違いを是正してくるのだった。

 

そうした様子は誰かに見られているのだった……。

 

 

そして昼食時。

食堂にて多くの面子を正面や横に侍らせながら(こちらの意思は無視)口を開く。

 

「つまり俺の出した記録は1科生の上位組にも届くものであると、そう言いたいわけね」

「そうだ。自覚していなかったのか?」

「まぁそうだね。そもそも俺と君など2科の実習授業は教師がいないじゃないか。だからどういう記録が最高で、どういう記録が最低なのかなんて基準が分かるわけがない」

 

握り飯を頬張って咀嚼してから司波達也の言葉に返すと、みんなが色んな表情を見せる。

 

アキラにとって初の魔法科高校の食堂メシは孤独のグルメ出来ずに、大会食となるのだった。

 

「もちろん失格点に関しては提示されているが、「上限」というものとか、平均的な数値とか、そういうものは提示されていない。それなのに詰るように言われてもな」

 

とはいえ、魔法能力の発現と向上というチート(これ)に関してはアキラも驚いてはいる。

 

転生カミサマ、名前はアースちゃんというあの幼女が何かしたのではないかと思いながらも、それを確認する術はない。

 

まさかこの世界での「健全な肉体」とやらは遺伝子改造などもなく自然体のままに、魔法を十二分以上に使えることと同義であるならば、転生特典にそんなものを求めるのではなかった。

 

いや行き先(転生先)がどこだか分からない以上、言っても仕方ないことだが。

 

「しかし、まぁ、お前は不思議だな……話によれば魔法師になってから半年にも満たないというのに、これだとは」

「元々は魔法とは縁のない人間だったからな。俺にとって想像しやすい「魔法」というのはこういうのに書かれているものだよ」

 

言いながらライトノベル……ロードス島戦記の表紙をタブレットに表示するのだった。

 

なんかアンジェリーナが。「ワタシがディードリットってことネ♪」とか言っているが、お前のような育ちまくったディードがいてたまるか!と言いたくはなるのだった。

 

「で、納得できたかい?」

「ああ……けど正直言えば複雑だ。俺とて身近に深雪という存在がいるから才能の有無とかある種のセンスというものが、努力を上回ることも知っているが……そういうのに小中から懊悩していた俺達を無知という素で追い越していくか、お前は」

 

恨めしそうに、と表現するのが正しいのか分からないが何とも暗い表情で自分を見る司波達也に何も言わない。

 

ここで覚悟と情熱がそのまま結果に繋がると信じているならそれは甘い夢だとか言う必要はない。この結果を誇りたくないし、そもそも1科生は2科生よりも高いレベルの実習をやっているのだから比較対象にもなりはしない。

 

うつむき気味の司波達也を心配そうに見つめる司波深雪と光井ほのかを怒らせるだろうから。

 

だから……。

 

「モウッ! マイダーリンはミラクルボーイ! ハナミチ・サクラギとかの類のマイボーイなのネ♪」

「俺は自分を天才だなんて自称していない。桜木は本当に確固たる多くの練習量からそうなれていくわけだし、そして君のダーリンじゃねぇ」

 

そもそもこんなの一過性の現象ではないかとアキラは思う。

 

魔法の実践及び結果というのは、例えるならば科学実験における同じ工程を何度やっても同じ結果が出るという普遍性と不変性ありきでのことしか認められないというのが原則にある。

 

IPS細胞は再現性があり、確実な制作過程があるからこそ色んなところから認められたが、STAP細胞は全く再現性がなく制作過程も不透明だったからこそ世から消えたわけだ。

 

前者が魔法に達者な連中だとすれば、アキラのは後者じゃなかろうかと思っているのだが。

 

「これから努力すればイイのよ!!」

(俺は努力したくないの!!)

 

それを言うわけにもいかず、喜色満面のアンジェリーナに対して苦虫を噛み潰すような顔をしていたらーーー。

 

「認めない!!お前なんか認められるものか!! お前みたいなふざけ半分の素人が、1科のトップである司波さんやアンジェリーナさんに並び立つほどの結果を出すなんて!!!」

 

自分達が食事をしている場所に向かってきた男が叫びながら抗議する。

 

「森崎君!?」

「ワタシをファーストネームで呼ばないで(NOTCALL)!」

 

いきなりこちらのテーブルにやってきたTHE・モブという顔をしている男。コイツの家を作った研究者たちは何かしらの容姿に対する遺伝子改良を施さなかったのだろうかというぐらいに平凡な顔をした男がいきり立って言ってくる。

 

「1科の一年生?、もしかして君のクラスメイトか?」

「ソーヨー」

 

お座なりな返事をするアンジェリーナの表情は平淡なものだ。コイツがあのテンションダウンの原因かなと思いながらも、とりあえず口を開く。

 

「一回限りなんじゃないの? たまたまその日の調子が良かっただけとも思えるし、そちらはそれすらも道理の範囲外だとして納得出来ない?」

「当たり前だ!! 魔法の世界に入って半年にも満たない人間が……」

「じゃあどうだったら君は納得できるんだい?」

 

なんとなーく展開は読めているのでうつむいて怒りに震えている同級生に聞くことに。望んだ言質だろう?ぐらいの感覚で放った言葉のあとには。

 

「決闘だ!! 僕は、お前に決闘を挑むぞ!!石田アキラ!!!」

 

望み通りの言葉が出てくるのだった。

 

片方では……

 

(なんでそうなる!?)

 

アキラがトラブルメーカーというわけではないだろうが、達也としては、食堂にて起こった森崎という人物との『第二』のファーストコンタクトでワーストコンタクトを前に頭を痛めるのだった。

 

(だが……ここでアキラの実力を知ることができれば御の字だ)

 

特に格闘技などをやっていた経歴も形跡もない。サッカーではJクラブのジュニアユースに所属していたぐらいは見えてきたが、どう見ても魔法に通じるようなものとは思えない。

 

故にーーー食堂での歓声がどういう意味を持つかはともかくとして、戦いのときは訪れるのだった。

 

 

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