魔法科高校の退学希望者   作:無淵玄白

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第八話「A君(15)の戦争 5」

 

 

森崎は担架で運ばれていった。教職員たちもまさかこちら(一科生)に使うことになるとは……という表情をしていたかは分からないが、ともあれ勝つには勝ったわけで…。

 

「石田、少し話せるか?」

 

事情聴取が始まる。

 

「内容次第ですね」

 

「感想戦だ。もしくは尋問ととられるかもしれんが」

 

「いいですよ。勝って兜の緒を締めよ。とはフットボーラー時代からのクセなので」

 

何よりアキラは自分のやったことが他人からどう見られたのかを知りたいのだ。特に優秀な魔法師からならば何かを見出せるかもしれない。

 

「が、……彼女はいいのか?」

「こんな私闘に祝福のキスも何もないでしょ」

 

上の方で他の女子たちに取り押さえられるようになっているアンジェリーナに対しての対応を聞かれた。

 

アキラに勝利の報奨を!祝福のキスを!!とか叫んでいるのが、恥ずかしすぎる。

 

女子たちとしては乙女の唇を安売りすんな!というところか。

 

そんな上の様子に苦笑する十文字は何を考えてるのやらだ。

 

「クドウ・シールズ君とは、どういう関係なんだ?」

「入学式で席が隣になっただけだと思うんですけどね……」

 

あそこだけが騒がしいだけで他が…主に一科生が意気消沈気味なのが、いい気分だ。

 

ピッチで敵チームのフーリガンやウルトラスを黙らせるほどのプレーをキメて、魅せた瞬間に湧き上がる歓声は無いのが、なんとなく魔法の世界の「価値観」を示しているなぁと思いながら十文字会頭の後ろを着いていきながら考えるのだった。

 

 

案内されたのは、前にも来た生徒会室である。

居並ぶ面子はーーー俗に三巨頭と呼ばれる人々と市原鈴音会計である。

 

尋問してくるのは三年生だけであると思いつつも、あとから入ってくるはダリル服部。そしてーーー何故か、自分の隣に座るは満面の笑みを浮かべるアンジェリーナである。

 

何だかここまで来るとこの子が俺の魔法能力を変に底上げしているのではないか、某レキ(後の魔王の飼い犬)が愛らしいクリちゃん仮面(後の魔王夫人)よろしく使い魔のようにしているのではないかと疑ってくるが。

 

(違うな。何だか知らないが俺自身の力が上がっている……というより解放されているのか?分からん。ただこの世界の魔法というものの理屈がオーフェンを参考にしているというならば俺のは……)

 

確信ではないが推測を出しつつ、それをそのままに言うわけにもいかない。とりあえずすっとぼける所をすっとぼけつつこの尋問をすり抜ける。

 

「まずは見事な勝負でした石田君」

「そうなんですか?初めてやったので、よく分からないです」

 

会長に返すと、そういやそういう人間(魔法のシロウト)だったと苦い顔をされてしまう。

 

「いつぞやの勝負ぐらいしか魔法を使った戦いを俺は知りませんので、比較すべき基準が無いんですよ」

 

いつぞやの勝負という所で服部副会長を見るとわざとらしい咳払いをされて、「失礼」と返しておくのだった。

 

「しかし……お前は、どういう人間なんだ?10,11月頃から魔法塾に通って一高にやっとこすっとこ合格して二科生として合格したはずなのに、その後は一科生レベルの能力を出してくるわ……私たちを騙しているのか?」

「騙す動機が無いと思いますが」

「……そうだな。本当にそうだ」

 

渡辺風紀委員長は風紀委員長の割には相手の裏を掴むことに長けていないようだ。

表と裏、そのすべてを知らなければ何も分からない。

 

何か相手を操る術があったりするようだが、まぁ今はいい。

 

「お前から何かあるか?」

「とりあえず森崎君がどういう感じであるか。というかああなると何か後遺症とかあるんでしょうか?そして……俺の勝因って結局なんですかね?」

 

結構あったりした疑問を一挙にぶつける。

 

「とりあえず森崎は無事だ。あまりにもサイオンを使いすぎたことと、お前への恐怖でトラウマになるかどうかは本人次第だな……そしてお前の勝ち星の決まり手は「寄り切りからの突き落とし」というところだな」

「森崎君はアナタの怒涛の如きエア・ブリットの連射を防御するために、防御障壁を貼り続けて、そして疲労困憊になりました……もう少し早く決着を着けられなかったの?」

「まるで俺が生かさず殺さずの状態を続けていたかのような言い方だ」

「俺が壁で受け止めたお前の空気弾はかなりの硬さと重さを持っていた……こう言っては何だが、軽い魔法特性しか持たない森崎がよくあれだけのものを凌げていたと思うほどだ」

 

会長と会頭からの逆質問に、少しだけタネ明かしをすることに。

 

「まぁ俺とてあんな状態を続けるのもアレだなーと思って、それなりに工夫はしていましたよ。ただ最後の方に放った空気弾は威力を上げるーーーとでも言えばいいのか、そういう風にしてから放ちました」

 

その言葉になにかしていたのか?と誰もが驚く。

 

「空気弾の大気の比率とでも言えばいいものを弄って二酸化炭素の比率をあげていました。それが破裂した後には森崎君の周囲に滞留するようにはしていましたね」

 

中々に倒れてくれなかったのでと付け加えると、かなり恐ろしいことをしていたなコイツ。という目が向けられるのだった。

 

少し違うが、相手を呼吸困難に陥らせるという点では「窒息乱流」のようなことをしていたと思い、少しだけ疑問をぶつける。

 

「だが石田、確かにお前がそれをやったのは分かるが、そこまで二酸化炭素があの空間にあったか?」

「魔法でならば作るために何かの化学式を取っ払えるのかもしれませんが、俺の場合はそんな複雑なこと出来ないのでね……副会長もご存知の試合開始前の大ブーイングで発生した呼気でのそれがありましたので」

 

まるで沈没船の船室……ダイバーの人気スポットに溜まるダイバーの呼気を利用したかのようなことを言われて、確かにあの密閉された体育館とギャラリーの数ならばそれが上だろうと下だろうとどこにでも溜まるだろうことは分かるが。

 

(それを二科生であるコイツがやったというのが驚きだ……何より魔法のシロウトであるコイツが、だ)

 

服部が色々と懊悩している間にも話は進む。

 

「まぁとにかく。お前の戦いは見事なものだったーーーが、もう少しまともなデバイスを買っておけ。そうすれば勝負は早く着いたはずだ。実習そのものは筐体型のを操るが、己の魔法を登録して簡易に操れるものは必要だぞ」

「今度の休日にでも行きますよ。オススメの『ギャリック・オリバンダーの店』でもあるなら教えてくれると嬉しいですよ」

 

その言葉の軽快さと稚気を受けて少しだけ笑った一同。

 

しかしーーー。

 

「ネクストホリデーはデートね!アキラ!!」

 

なんで自分が同行すること前提で、この子は目を輝かせているんだよと思いながらも、所詮はシロウトなのでオブザーバーは欲しいなということで、ヨロシクするのだった。

 

返事は俺の腕に抱きつくというもので示してきたが、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。

 

だからとりあえず腕を取ってこちらに擦り寄ってくるアンジェリーナを無下には扱えないのだった。

 

 

「一番に聞きたいことがはぐらかされましたね」

「だが、どう聞くというんだ? 身体制御に詳しい市原こそヤツ自身のエイドスを探れないのか?」

「無茶を言いますね」

 

だが、この部屋に設えてあるあらゆるセンサー類で見ても、やはり石田アキラに何かしら特殊なモノを検知出来なかった。

 

生徒会室に入った時点でアキラは、決闘の前より高度な検知器で全身くまなく走査されていた。

 

結果はオールグリーン。爪楊枝ほどの凶器もなければ、生体危険物の反応もない。

 

驚いたことに、アキラは何かしらの視力、聴力、肥満及び内臓の矯正治療を受けた痕跡もなかった。

 

時代が進んでも発生している……いや進んだからこそ数多に発生している「現代病」の類もなく、今日日ここまで真っ新に生身な人間は珍しい。

 

もしかしたら、この事実が何かの真実を示してるのかもしれない。

 

だが、それはまだ推測以下のことでしかない。

 

唯一、誰かが魔法を掛けようとしたり(敵性魔法使用)自分に魔法を掛けた(自己強化魔法)瞬間に、石田の情報領域が巨大になっているという認識で良さそうだ。

 

結果として石田に魔法を通すことは不可能になる。あの戦いでは森崎が相手の情報領域に干渉をして「衝撃」を与える系統の術しか使わなかったから不明だが、他の術や放出系の術はどうなのかということが知りたかったりもした。

 

「なんにせよ普通ではないということか」

 

渡辺摩利もため息を吐きつつ、そう結論付けた。

 

「彼には『コトワリ』が無いのかもしれないわね」

「あらゆる意味での、『コトワリ』だな」

 

それは真由美や克人など力ある魔法師として作られた人間だけでなく、ある意味では魔法師が覚えるべき絶対の法則

 

魔法という道「理」は自分たちに当然としてあってそれを扱うための「理」屈が存在しており、それでも使うための資質という意味では壁が数多存在しており、それは魔法師一人一人で違う無「理」なのだと……当たり前のごとく教えられるはずなのだ。

 

……のはずだが、それを簡単に踏み越える存在……。

 

彼はその資格があるのか?

 

自分たち遺伝子操作や改良を施されて「資質」という名の「人工物」ばかりを付与されてきた自分たちを超える存在が、自分たちと真逆の存在であるなどーーー複雑な思いが克人と真由美の胸を突き刺すのであった。

 

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