俺とTS幼馴染の四十九日 作:あいうえお
ある日、幼馴染が死んだ。
死因はよくあるトラックの運転手によるよそ見運転らしい。正直そんな事はどうでも良い。謝られたって、あの時俺が休まなければとか反省してもアイツは帰ってこないのだから全てが無駄だ。全部がどうでも良い。そう思って、過ごしていた幼馴染が死んでから七日が経ったある日。
学校へ登校しようとすると、知らない女の子が立っていた。その子は人目を惹く様な容姿をした可愛い顔をしているが、何故か学ランを着ている。本当に何で?取り敢えず、知らない顔だから、そのまま通り過ぎようとすると。
「ちょっと待ちなよ。折角待ってたんだから、いつもみたいに一緒に行行かない?」
まるで旧友の様にその子は馴れ馴れしく俺に話しかけて来た。俺はこの子のことを何も知らないのに。彼女は、俺の事を知ってる違和感。
「あの、どちら様ですか?」
俺は、極めて冷静に対応しようと心がけた。きっと人違いかなんかだろう。改めて顔を合わせても、その顔に見覚えは無いから俺はそう確信した。だからこそ、その後に出された彼女の言葉に反応が少し遅れてしまった。
「僕だよ。君の幼馴染の佐之楓」
一週間会ってないから、忘れたのか?と悲しそうに笑うその姿は確かに幼馴染の面影があった。だが俺の幼馴染の性別は間違いなく、男だった筈だ。それに。
「いや、お前は……」
そこから先の言葉は言えなかった。分かっていても、どうしても認めたく無かったから。心の中で、実は生きているんじゃないかと思っていたからだ。それを自分の言葉で否定して仕舞えば、取り付く島も無い様な気がした。
「そうだね、僕は確かに間違い様の無く確実に死んだ。あの日、あのトラックに轢かれてしっかりあの世へ逝ったよ」
それを本人に否定されれば、もうぐうの音も出ない。何故なら本人がそう言っているのだから。漫画でもそうだろ?原作者が言う事が正しいのと同じで、本人が言えばそうなんだと飲み込むしか無い。
「ただ、どうも問題があったみたいでね。死んでから迷惑をかけるのは、忍びないけど幼馴染の君にしか頼めない用事があって今日は来たんだ」
一週間。たった、一週間だ。だけど幼少期から、毎日一緒にいてほぼ家族の様な関係だったせいで。その特徴的な喋り方を聞くと涙が出てくる。
「もう、泣かないでよ。全く……子供じゃないんだからさ」
うるさい、そう思いながらも涙は止まらなかった。だから、何も言わずに俺は黙って涙を流した。
「やれやれ……泣く仕事は終わったかな?それともお腹が空いてるなら、哺乳瓶にミルクでも入れようか」
「誰が赤ちゃんだ。誰が」
見た目は変わっても、中身は変わらない。そう思うと、自然と笑顔が出てくる。が、泣いたり笑ったりと。これでは本当に赤ん坊と変わらないので一旦心を落ち着かせる。
「ふぅ……。ところで、なんか用があったんだっけか?」
「そうそう!そうだった、そうだった。君が突然赤ちゃんになったから用件を忘れてたよ」
「死んで女の亡霊になって現れた奴には言われたくねえよ」
改めて言葉にすると、訳が分からない。まずどうしてそうなったんだと聞きたいが、俺に用事があるみたいだし、先に終わらせるか。後からゆっくり聞こう。
「でさ……その、だね」
「なんだよ、急にモジモジして」
「いやぁ、ちょっとね……。準備は良い?」
準備?
「何でもやるからさっさと言ってくれ。学校が終わる」
「分かった。諸事情で暫く女装して欲しかったんだけど、受け入れて貰えるみたいで助かるよ」
ありがとうと花が咲く様な笑顔で微笑み現場を後にする幼馴染と対照的に。俺はその言葉を理解出来ずその場でずっと、味のしないガムの様に反芻していた。もう二度とその場のノリで返事はしないと学んだ俺は、全てを忘れて学校に向かう事にした。