俺とTS幼馴染の四十九日 作:あいうえお
「何言ってるんだよ」
「分からない?要は、君に女の子の服を着て女の子になりきって欲しいんだよ」
しれっと学校に先回りしていた亡霊は、しれっと隣に並びそんな事を言った。
「何故」
「勿論理由はあるよ、聞きたい?」
「是が非でも聞きたいな。自分の身に関わる事だし」
振り払う事が出来る火の粉なら振り払っておきたい。と言うか、純粋に知りたい。何故そんな事をしなきゃいけないのか。
「少し長くなるよ」
そう前置きをして、幼馴染は口を開いた。いつも通りの口調で。
「四十九日法要って知ってる?」
「あー確か、故人が亡くなってからの日数だよな。その儀式だっけか詳しくは知らない」
「そう。補足をすれば、その日にちまでに成仏出来るか出来ないかが決まるらしいんだけど。条件があってね」
「条件?」
「そう、それが僕が
嘘だろ、何がどうしてそうなるんだ。
「それが、現世の未練を完全に断ち切る事。もう悔いが無い状態でいないと、地縛霊とか悪しき者になってしまうらしいんだよ」
「成程」
「それで僕は未練を断ち切る為に女の子にして貰った訳」
「なるほ……ん?」
待って待て。その発言はつまりそう言う事か?
「お前は、女の子になりたかったのか?」
「男子校で、ずっと女の子との出会いが無いから存在しないなら生み出せば良いやって言う発想の転換で。生きてた頃はこっそり、ちょくちょく女装をしていたんだよ」
君は知らないだろうけど。と言う幼馴染をまじまじと見てしまう。全くもって知らなかった。何でも知ってると思っていただけにこのダメージはでかい気がする。
「それでも満たされなかった。だから、身体から作り替えて貰って女の子になって来たんだ。まぁ、この体も後一ヶ月ちょいの運命だと思うと勿体無い気もするけどね」
「正直まだ混乱してるけど、お前が女の子になりたかったって言うのが未練ならもう解決しただろ」
「未練が一つで終わる訳が無いでしょ。まだ未練タラタラだよ、人間の欲望を舐めない方が良い。まだやりたい事があるその中の一つが……」
「女の子と友達になって一緒に遊ぶ事。と言っても、本物の女の子と遊ぶのは難しいから君で妥協するのさ」
「いや、友達になれば良いだろ」
これまで幽霊とか見てない俺がはっきり見えてるんだから他の人に見えるんじゃないのか?
「どうやってさ。僕は死んでるし、今の体は幽体だから他の人には見えない状態なのにどうやって?」
「ナンパもそう言う行為も出来ないじゃん」
「そもそも好意を持たれないよ。君は空気にアイラブユーって囁くの?」
空気は愛してるしなければ生きていけないけど、直接そう言った覚えは少なくとも記憶には無い。
「無いな。だから、俺に女装をして欲しいと」
「まぁ、無理にとは言わないよ。嫌なら……」
「やるよ。人生、色々な経験しておいた方が良い筈だし」
だからそんな顔するな。頼むから。
「本当?じゃあ、今日の放課後。僕の家に寄ってくれる。そこで何処に出しても問題の無い最高の女の子にしてあげるからさ!」
先程の葬式の様な表情の暗さから一転して鼻歌を歌い出しそうな機嫌の良さで、俺の側から離れて何処かへ消えた。
「頭おかしくなりそう」
台風が去った後、ボソッと独り言を呟いた後。俺は、自分の教室へと向かった。