「それで、大丈夫だった?」
ここが杖と剣のウィストリアの世界という衝撃の事実に俺がしばらく呆然としていたら、おそらくさっき庇った時に怪我を追わなかったかどうか心配になったのか、怪我は大丈夫かと聞かれた。
『あ、あぁ。さっき助けてくれたから特に怪我とかもないと思う。』
「よかった。そういえば、じこしょうかいがまだだったね。ぼくの名前はウィル・セルフォルト、ここの先にある孤児院に住んでるんだ。」
「私はエルファリア・アルヴィス・セルフォルト、私もウィルと一緒の孤児院で暮らしてるよ。」
『う、うん。よろしく、さっきは助けてありがとう。』
「うん、無事で良かったよ。それで君の名前は?」
『俺の名前は・・・・名前・・・』
あ、あれ?ここがウィストリアの世界ってなると、多分あっちの世界の名前を言っても不自然だよな多分。どうしよう・・・
「?どうしたの?」
名前・・・名前・・・・名前・・・・・
『俺の・・・名前は、ライト。ライト・カーサー』
とっさに思いついただけだが今はとりあえずこれでいいだろう、と考えているとエルフィが話しかけてくる。
「そういえばライトはなんで一人だけで森にいたの?」
「たしかに、ライトはどうしてこんなところに?」
う〜ん。これはどう答えるべきか。あることないこと言うと後からが面倒くさそうだし気がついたら森の中に居たって言うか。これなら別に間違ったことは言ってないし大丈夫だろ。
『その〜実は・・・俺もなんでこんなところにいるのか分からなくて、気がついたらこの森にいたんだ』
「「え?」」
二人が目をパチクリしながら信じられないといった様子でこちらを見てくる。
「ねぇ、もしかしてライトって親に捨てられちゃったの?」
「ちょ!?ちょっとエルフィ!?」
あ、もしかしてこれ俺のこと捨て子的なやつだと思われてるのか。よくよく考えてみれば、気がついたら見知らぬ森に子供一人って捨てられたと考えられても仕方ないのかも。ちょっと言い方間違えたかもな。
「エルフィ、どうする?」
「うぅ〜ん。あ、そうだ!孤児院に連れて行こうよ!
『え?』
「大丈夫、大丈夫!このエルフィお姉ちゃんに任せて!ほらウィルも行こう!」
『ちょ!?』
「エルフィ〜待ってよ〜」
そう言ってエルフィは俺とウィルの手を取って半ば無理やりといった形で俺達を引っ張っていくように進んで行く。無理やり引っ張られる中で俺は心のなかでただずっとこう思っていた。
どうしてこうなった!!!
ーーーーー
あれから俺はエルフィに連れて行かれてしばらく森の中を進み、おそらくウィストリアの中で登場したであろう例の孤児院についた。到着後はウィルとエルフィが事情を一緒に説明してくれたおかげか、この孤児院に居てもいいということになった。
その際に孤児院の院長にはいろいろと事情を聞かれたが、何も分からないと言ったらすぐに引き下がってくれたので助かった。それで今俺は何をしているかというと
『・・・』
ペラ・・・ペラ・・・
ふむふむ、この世界の文化にはこんなものもあるのか。やっぱりあっちの世界とは風習も常識も何もかもが違うんだな。
俺は庭のすみっこに座りながら、孤児院に置いている本の中で目についた物を何冊か借りてきて、一人黙々と読み進めこの世界についての情報収集を行っていた。
文字自体が読めるかどうか心配だったけど、何故か最初から頭の中に知識が埋め込まれてるみたいに理解できたからなんとかここの本も読み進められそうだしなんとかなりそうだ。
ちなみに、この孤児院に来てからもうなんやかんや1週間くらいたったがいくつか分かったことがある。
・今はいわゆる本編開始の12年前(ウィル達が4歳)であること。
・会話はまるで翻訳されているかのように、こっちが日本語で喋っても意味を理解してもらえていること。そして逆に向こうの喋っていることも理解できること。
・俺自身の種族がリザンスだということ。
基本的な情報はおそらく知ることができただろうが、そうなると俺には一つどうしても考えないといけないことがあった。
いろいろこの世界について分かってきたこともあるけどやっぱりこれから俺自身がどうしていくってのは決めないとだよな〜。
いきなり自身の全く知らない環境に放り込まれたこともあり、俺は今後の方針をどうするのか決めあぐねていた。
ウィストリアの世界って言ったらやっぱりリガーデンに行って学院に入学してみたいけどそもそも俺が行くことができるかも分かんないしな。
そしてしばらく本を捲る手を止めて悩んでいると、こっちに近づいてくる二人組みに気づいたのでとりあえず本を閉じてそっちの方に体を向ける。
「ねぇ、ねぇ、ライトも一緒に遊ばない?」
ウィルが俺の前まで来るとそう言って遊びに行こうと誘ってくれた。隣にいる少女も同様に言ってくれる。
「私もまだライトと遊んだことないから遊びたい!」
『ちょっとちょっと!?ふたりとも!?そんなに近づかなくても分かったから!一旦下がって!』
二人は目の前までグイグイと近づいて来て喋りかけて来たが、俺は咄嗟に少し離れさせた。しかし、純粋に善意100%の笑顔で誘ってくれた二人を見て俺はそれに応えないとと思い、さっきまで読んでいた本を抱えて立ち上がると
『あ~ちなみになにするんだ?』
「え〜っと、まずはね!・・・」
・・・
「まて〜エルフィー、ライトー!!」
「そうかんたんには捕まんないよ〜。」
『そうだぞー!鬼さんこ〜ちら〜』
・・・
「ライトォ〜たすけてぇ〜。」
「「「ウィルもみ〜つけた!」」」
『アハハ、こりゃひでぇ』
・・・
それからは日が暮れるまで遊んだ。鬼ごっこだったり、かくれんぼだったりをご飯だから戻りなさいと言われるまで遊んだからもうクタクタだ。ちなみにウィルは原作通りエルフィの分身魔法でめちゃくちゃにされていたので俺よりも疲れていそうだった。
そのまま寝る時間になると俺達は布団に思いっきりダイブしてゴロゴロし始める。
『はぁ〜疲れた。』
「うん・・・今日はぼくもさすがにつかれたよ。エルフィがいつも以上に元気いっぱいだったから・・・」
「しょうがないじゃん。はじめてライトが私達と遊んでくれたんだから。ここに来てからライトはずっと本読んでばっかだったんだもん。」
『ごめんって。明日からも一緒に遊ぶからさ。』
布団にくるまってからもしばらく話していたが、徐々にまぶたが重くなってくる。どうやら体はもう休息を欲してきたようだ。それは横にいる二人も同じだったようでもう気がついたら眠ってしまっていた。
同様に俺も目を閉じると俺はこの世界に来てからのことを振り返る。なんやかんやたった1週間でたくさんこの二人に振り回されてたが悪い気はしなかった。それは俺が心の中で未だに自身の憧れていた世界に実際にいることが嬉しいからなんだろう。
寝るまでの短い時間で考えていると、今日遊ぶ前にこの世界でどうしていくか迷っていたのを思い出す。あのときはまだ特に定まっていなかったが今は違う。なんとなくだが、当面の目標は決まった。それは
あっちの世界で見ることのできなかったこの
そうして俺の意識は深い深い眠りの底に落ちていった。