ウィストリアの混じりモノ   作:ロクた

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魔法の修行

 

『・・・・・』

 

辺りが暗闇と静寂に包まれ木々が生い茂る森の中、俺は今日も一人で瞑想をしていた。姿勢を正し、目を閉じて魔力操作のための感覚以外の感覚を遮断してそれのみに集中する。

 

修行を始めてかれこれ5年ほど経過したが、俺は初めて魔力の修行を始めたあの日から毎日欠かさずに続けている。それほどの年月を毎日鍛え続けていれば流石に魔力の扱いというのにも慣れてくる。

 

それこそ始めたばかりのころは魔力を引き出すことさえも苦戦するほどだったが、今は意識すればすぐに出せるほどにも成長した。それだけではなく2年ほど前からは常に体から漏れ出る微小な魔力すらも体から漏れ出させずに自身の中を血管のように循環させ続ける修行も行っている。

 

心臓・・・腹・・・肩・・・指先・・・繰り返せ、繰り返せ、巡らせ続けろ。体の中で循環させ続けろ・・・

 

感じる魔力を全て漏れ出ないようにするのは想像の何倍も難しく、額などから汗がかなり出続けるほどに気力を使うものだ。

 

そしてしばらく経つと俺は瞑想を止めて目を開ける。1時間ほどぶっ続けで行っていたせいか、体の緊張を解いたことで疲労が一気に襲ってくる。グゥーっと腕を上に伸ばして伸びをすると、よいしょと言いながら立ち上がる。

 

『ふぅ・・・今日の瞑想はここまでにしとくか。それにしても魔力操作の精度はかなり上達してきたな。』

 

少し疲れたこともあり多少の休憩を取る。その合間に軽く体を伸ばしたり、ひねったりなど軽い準備体操のようなものを行うと

 

『さてと、次は・・・』

 

俺は近くにある手頃な大きさの石を拾い上げて腕を振りかぶると、まるでボールを投げるかのように正面に思いっきり投げつける。

 

『フンッ!!!』

 

凄まじいスピードと轟音とともに石は飛んでいき、正面の大木をいとも容易く貫通した。幹にぽっかりと綺麗な空洞を残したまま、更に後ろの木々たちにも空洞を作りながら飛んでいくと5本目の木を貫通したところで次の木に受け止められる。

 

『よしっしゃ!!!今回は五本か、新記録だ。』

 

俺はただの石を投げただけなのに、なぜ何本の木を貫通するほどの威力となったかって?それは魔力で自身の身体能力を向上させたからだ。

 

以前にふと、ウィストリアの漫画内の描写で明らかに人間の素の身体能力のスペックでは出せない力を出していたり、絶対に喰らったら大怪我を負うような攻撃を少しの出血だけで済ませている部分があったのを思い出したのがきっかけでもしかして、と思って試行錯誤を行った結果このような芸当ができるようになった。

 

強化を行いたい身体の部分に魔力を集中させて細胞と一体化するように溶け込ませていき、その筋肉を強化するイメージで強化を行うのが俺のやり方だ。ただしこれは俺が先程まで行っていた魔力を漏れ出ないようにする修行の副産物として得たものだ。

 

魔力を体全体にめぐらせていた最中にふと五感が鋭くなった感覚にお陥りそのまま動いてみた結果、普段なら絶対に出せないような力が出たことがきっかけで見つけ出したのだ。

 

『魔力を一点に集中・・・一点に集中・・・そして、溶け込ませて・・・』

 

もっと自然に魔力を巡らせろ。・・・身体の限界を超える力を生み出せ!

 

先程の石を投げるために強化した時は腕全体と肩の周辺の強化を行ったが、今度は両足に力を込めて、更に魔力を巡らせていき・・・

 

ドンッ!!!

 

そして思いっきり森の中を駆け出すと木々の少ないかろうじて獣道と呼べるような小さい隙間を縫ってとてつもない速さで駆けていく。踏みしめた地面には俺の足が着地するたびに小さなクレーターのような物ができていった。

 

このやり方は強化する範囲をできるだけ狭めることで負担が少なくなり、同時に効果もより高くなるのだ。

 

ちなみにここは孤児院の近くの最初に修行を行っていた場所からはそこそこ離れた場所である。なぜなら身体強化の修行をするに当たって、もし何かの表紙で騒音がなってしまった際にバレる可能性を考慮したためだ。

 

もっと・・・もっと、魔力を足に集中させろ!

 

・・・

 

・・・・・

 

・・・・・・・

 

スピードを徐々に落としていき、ちょうど最初に瞑想を行っていた場所に着いたタイミングで走っていた体を止める。森の中を全力で走りつつ、同時に身体強化のために高度な魔力操作を行ったせいか体はもう汗でビショビショだった。

 

『はぁ、はぁ、はぁ。・・・ふぅ』

 

荒くなった息をもとに戻すように整えていると、そろそろ修行を始めてから数時間ほど経ったことに気づく。

 

『やっば、もうこんな時間か。そろそろ孤児院に戻らないと。』

 

こんな夜中の時間に修行してるのを運が良いのかまだバレてないが、できるだけ早く戻ったほうが良いだろう。

 

『本当はアレの開発の続きもしたかったけど今日はお預けだな。』

 

俺はこの数年の修行をほとんど魔力操作とそれに近い物の修行にしか費やしていない。それこそ、魔力の循環やそれによる強化などがいい例だ。魔法自体の修行はしていないのか、と思わず聞かれそうだがもちろんそれには理由がある。

 

この世界で一般的に元素魔法と言われる火や水、風などの魔法の修行もやってはいるのだが、いかんせん俺は上手く使えないのだ。できても精々ちょっとしたライター程度の火やそよ風を生み出せる程度である。

 

そして修行を切り上げると、俺は孤児院に戻っていく。が、その際にも身体強化を全身に行いながら帰る。修行時ほどの強化ではないが多少なら負担なく強化し続けられるようになっている。なのでここ最近は、修行の一環として日常的に強化をかけ続けて生活している。

 

そして孤児院の近くまで戻ってきたが、俺は前方に人影があることに気づくとサッと近場の木の後ろに隠れて様子を見る。もしや強盗のたぐいかと思ったが、よく見てみれば見知った顔だったことで安堵の息を零す。俺はその人影の前に足を進めていき・・・

 

『よっ。ウィル、こんな夜中にどうしたんだ?』

 

「!?・・・ライト?」

 

そこにいたのはウィルだった。しかしその姿はいつもと違いまるで何か考え事をしていたかのようで、空を眺めてボーっとしていた。

 

『いつもならこの時間には寝てるはずじゃなかったか?』

 

「あはは、ちょっと目が覚めちゃってね。ライトこそどうしてこんな時間に?」

 

ギクッ!!!

 

『・・・俺も目が覚めて眠れないからちょっと散歩でもしようかなと。』

 

言えない・・・こんな夜中に一人で修行してるとか。

 

ちなみにこの数年間の夜中の修行は誰にも言わずに秘密にしている。あくまでこれは俺がやりたいからやってることだし、バレたら確実にまずいからだ。

 

「ライトも眠れなかったんだね。だったらお互いに眠くなるまでちょっと話さない?」

 

『分かった。なら立ち話も何だしどっかに座って話そう。』

 

「ありがとね。ライト。」

 

『いいんだよ。話してれば眠気も来るだろうしな。』

 

そしてウィルと一緒に近くの備え付けの3人ほどが座れるくらいのベンチに座ると、両者の間に沈黙が走る。

 

「・・・」

 

『・・・』

 

気まずい。いつもなら何かしらの言葉が出てくるが今日に限って何故か言葉が出てこない。

 

『・・・ウィr』

 

「ライト・・・エルフィは「至高の五杖(マギア・ヴェンデ)」になれると思う?」

 

俺が口を開こうとした瞬間、それよりも先にウィルが口を開き質問をしてくる。ウィルの様子を思わず見るとその姿は、とても弱々しくいつもの元気なウィルではなかった。だが、質問されたのならそれにはしっかり答えるべきだろう

 

『まぁ、なれるだろうな。エルフィなら、この世界の魔導士(メイジ)の頂点に。』

 

「だよね・・・やっぱりライトもそう思うよね。」

 

 

『どうしたんだ?急にそんなこと聞いてきて。』

 

「ライトはあの約束覚えてる?3人で夕日を見に行こうって約束した」

 

『そりゃあ・・・忘れてる訳ないだろ。』

 

「エルフィは、きっとあの約束がなくても至高の五杖(マギア・ヴェンデ)になって夕日を見に行けると思う。でもさ、魔法が使えない僕は・・・」

 

『ウィル・・・』

 

「・・・今までも魔法を使うためにいろいろ頑張ってきたけど全部が空回りしてるみたいに感じるんだ。なんで僕だけが魔法を使えないのかな、なんでみんなみたいに小さな火とか氷とかですら出せないのかなってずっと思ってる。」

 

『・・・』

 

「最近つい考えちゃうんだ。魔法の使えない僕は夕日を見に行くどころか、エルフィと一緒にいることでさえ不可能なんじゃないかなって。」

 

ウィルの話を俺はただ黙って聞いていたが、話せば話すほどウィルから覇気のようなものが抜けていって、まるで自分には無理だといい聞かせているようにも感じた。

 

「やっぱり僕じゃ、エルフィの隣にh・・・」

 

『なぁ、ウィル。お前は今、自分が魔法を使える想像が出来るか?』

 

「え?」

 

『出来るのか?』

 

「・・・うん。なんとなくだけど」

 

『なら、大丈夫だな。お前がエルフィの隣りに立っていられるのは不可能なんかじゃない。』

 

「ライト?」

 

『いいかウィル、よく聞け。不可能ってのは何もかもを諦めて、全ての可能性を投げ出した奴が使う言葉だ。だからこそ、諦めないなら人はいくらでも「可能性」って言う魔法を現実に持ってこれるんだ。』

 

「!!!」

 

『だから、自分の未来の姿って言う可能性をお前自身の中に持ち続けているなら大丈夫だ。それを忘れなければ、諦めることをしなければお前にできないことはないさ。』

 

「・・・そう、か。そうだよね。諦めなければきっとエルフィにも追いつけるよね!」

 

そう独り言のように話すウィルはすでにいつもの元気ある姿に戻っており、先程までの弱々しい様子が嘘のようだった。その吹っ切れた姿をみて俺は内心で安堵する。

 

『さて、そろそろ戻るか。流石にいろいろ話してた眠くなってきた。』

 

「そうだね、そうしよっか。」

 

そのまま俺達は孤児院の中にこっそりと戻り何事もなかったかのようにお互いに眠りについた。

 

・・・

 

・・・・・

 

・・・・・・・

 

それからまたしばらく経ったある日、俺は一枚の紙をただ呆然と眺めていた。これ自体がいつかここに来ることは予想していたが、その枚数と宛先に驚いたのだ。一つはエルフィに、もう一つはウィルに、そして俺にも・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これは・・・リガーデン魔法学院への推薦状?』

 

 

 

 

 




※最後の方にミスがあったので少し修正しました
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