ボニャテッリ家とやらに生まれ変わったらしい   作:義眼の人

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 人格出たので書きます。


生まれ変わったらしい

 三十歳ほどで不慮の事故で亡くなった私。それまで最高に人生エンジョイしていたため特に未練とかはなかったのだが、まだ人生は終わらないようだ。どうやら私は異世界転生したらしい。それもどうやらかなりの名家、ボニャテッリという家系らしい。今流行りのやつだ。つまり、ハーレム(女だけど)だ!俺TUEEだ!

 

 

 

 

 

 

 そんなことを考えながら、私が今世を生きるボニャテッリ・ヴァレンティーナという名前のまだ小さな体が吹き飛ばされ床を転がる。痛い。

 

「さっさと立て。剣を構えろ。敵は待ってはくれないぞ」

 

「……っ、はい、すみませ」

 

「遅い」

 

 謝罪の言葉を言い切る前に更に腹を蹴られ、吹き飛ばされる。その拍子に手から剣がずっぽ抜け、床を転がる。まずい。とっさに落とした剣を拾い上げようとした。だが、

 

 

「っ……」

 

「また離したな?」

 

「ご、ごめ……ッ」

 

「これで!!何度目だ!!いい加減にしろ!!何があっても!!何をされても!!武器から!!手を!!離すな!!」

 

 

 叱責とともに何度も顔面を殴られる。凄く痛い。

 どうやら名家は名家でも相当厳しいところに生まれたらしい。現在私は剣術の訓練で親にボコボコにされている。パレルモ、という名前の剣術らしいのだが、そもそも戦いの基礎の段階で躓いている。それはそうだ。これでも日本で一般人として平和に生きてきたのだ。そんな簡単に適応できるはずがなかろう。

 

 

「はぁ……構えろ」

 

「っ……、はい」

 

 

 その上まずい、と言えるのか分からないが、少なくとも今の私にとってはあまりよろしくないことがある。

 

 

「いっ……ああああああああああっ!!」

 

「またか。いい加減この程度の攻撃は防げるようになれ。その調子ではパレルモ剣術の習得なぞ夢のまた夢だぞ」

 

「ぐっ、ごめん……なさい……」

 

「覚えの悪い娘への折檻だ、しばらく腕はそのままでいろ」

 

「分かり、ました」

 

 

 そう、この世界技術力が異様に高いのだ。そのせいで訓練中に腕を落とされることなんてザラである。とっても痛い。

 にしてもこの世界の医療は本当にどうなっているのだ。以前は緑色の液体を注射されたかと思うと瞬く間に腕が生えてきた。……これ体に悪影響とかないよね?

 

 

 使用人の人に止血だけしてもらい、訓練室を出る。片腕分の重さがないためバランスを崩しそうになりながらもなんとか自室に辿り着いた。部屋に入ると鏡の前に置かれた椅子に座り、脱力する。凄い疲れた。

 

 ふと、鏡の中の自分を見る。この世界を生きる私が写っている。前世の私に比べてかなりの美形だ。やはり異世界は美形が多いのだろうか。まあ今は煤と擦り傷でグチャグチャなのだが。取り敢えず部屋にあるタオルで顔を拭く。これだけで大分マシになる。細かい傷は多分夕食辺りまではそのままだろう。あの緑の液体、全身の怪我が治るので腕と一緒に擦り傷なども消えるのである。本格的にどんな技術してんの?不思議ぱわーなのか?

 

 そんな考えても意味のなさそうな思考を打ち切り、夕食まで時間をつぶすことにした、のだが。

 

「腕ないんだった……」

 

 現在私は隻腕なのである。片腕でできそうな暇つぶしを考えて、改めて今世の世界と私についてのことをまとめなおしてみることにした。

 

 

 まずこの場所。どうやら都市と言うらしい。〇〇都市、とかではなく都市という固有名詞っぽいのだ。もしかしたら他に大きな街とかないのかもしれない。

 

 次に私の出自。先程も言ったがボニャテッリ家というところに生まれたヴァレンチーナ。それが今世の私。そしてボニャテッリ家は七大ファミリーという名家なんだとか。だがファミリーなんて名前から分かるように、名家は名家でもマフィアの名家である。そのせいか教育方針が大分荒っぽい。先程のように御年5歳の私が戦闘訓練でボコボコにされる程度には荒っぽい。

 

 あとは……文化かな?目上に対する敬い方が前世と違う。目を合わせてはいけない、はどこかの国の作法としてあった気がする。しかし目上の機嫌を損ねてはいけない、目上を疑ってはいけない、目上の許可なく話してはいけないなどは前世にはなかった敬い方である。因みに破ると腕を落とされたり舌を抜かれたりするらしい。怖い。

 

 

 そんなことを考えていると、夕食の時間になった。名家らしく食事も豪華なのだが、テーブルマナーの勉強も兼ねているためあまり楽しんで食べられないので少し残念だ。前世の知識があるためマジの子供と比べるとマシであるとは思うのだが、それでもかなり厳しく指導される。今世君私に優しくない。

 

 

「ヴァレンチーナ、少し付いて来なさい」

 

「はい、お父様」

 

 

 そんなこんなで食事(指導)を終わらせ、治してもらった腕を振りながら普段のように自室に戻ろうとしたところで我がお父様に呼び止められ、どこかへ先導される。

 

 

「どこへ行くのですか?」

 

 そうお父様に問いかける。5年間この家、というか館か?で暮らしてきたが、建物自体がかなり広い上に、今世で目撃してきた謎技術とマフィアの名家であるということにビビってあまり館を探検などはしなかったため、知らない場所は多々あるのだ。

 

「すぐに分かる」

 

 こちらを振り向きもせずにそう答えるお父様。因みに手には剣が握られている。……私もしかしてこのまま捨てられたりする!?いやでも玄関に向かってるわけではないしな……裏口とか……?

 そう思案しながら付いていくと、お父様は(私が存在を知らなかった)地下室へ入っていく。……私殺される!?一回死んだとはいえどうせなら二度目の生謳歌したいよ!?

 

 

「どうした」

 

「……いえ、すぐに行きます」

 

 

 せめて楽に死ねますよーに、と覚悟を決め、戦々恐々としながら地下室へ降りていく。薄暗いそこには、漫画やアニメでしか見たことがないような中世チックな牢が広がっていた。……座敷牢の刑ですか!?

 微妙に青ざめている私の様子など気にも留めずに歩いていくお父様。そして、ある牢の前で止まり、こちらに振り返る。

 

「お前は礼儀作法ならそれなりに出来るが、未だ剣術はからっきしだめだ。剣を降ること自体に躊躇いが見える」

 

 そう言いながら、手に持っていた剣を渡してくる。受け取りながら心の中で反論する。当たり前だろう。どんだけ平和な暮らしをしてきたと思ってるんだ。

 

「そしてそれは人を斬ることへの躊躇いだ。そんなくだらない躊躇いをいつまでも持っていられるわけにはいかない。いい加減基礎程度はできるようにならなければ困る」

 

 

 私の中で嫌な予感が湧き上がる。暗雲が垂れ込めるとはこのことなのだろうか。

 そんな私の心中など興味がないとばかりに、牢の鍵を開ける。人を切ることへの躊躇い。いつまでも持っていられるわけにはいかない。そして牢屋。私の中で急速に予測が組み立てられていく。いや、そんな訳がない。いくらなんでもそんな倫理観が欠如したことをするわけがない。

 

 

「ヴァレンチーナ。今からお前がコイツを殺せ」

 

 

 そんな私の期待とは裏腹に、お父様はいつもと変わらない声色で私に指示してくる。牢屋の中には手足を縛られた男が床に転がっていた。

 

 

「助けてくれ!!なんだってする!!俺が持ってる情報だってなんでも教える!!だから、助け」

 

 

 彼が最期まで言い切ることは出来なかった。なぜならお父様が男の舌を目にも止まらぬ早さで切り落としたからだ

 

 

「目上の許可なく発言した者は舌を引き抜く。まあ今回は切り落としただけだが、まあそこは慈悲だ」

 

「ぐぁぁァァァァァァ……痛えぇ……なんでだ!なんだってするって」

 

 

 ボロボロと涙を流しながら男は問いかける。その問いには答えず蹴りを入れるお父様。

 

「また許可なく発言したな。2度も連続で同じ不敬を働くなど本来ならば処刑されてもおかしくもない。今回は許してやるが、次はないぞ」

 

「ひっ……」

 

 

 もはや今の悲鳴が自分のものか男のものかも分からない。怖い。怖い。怖い。なぜこうも簡単に他人を傷つけられるんだ?どうして懇願に耳を貸さずに追い打ちをかけられるんだ?そして、なんで、私が。私がこの人を殺さないといけないんだ?

 

 

「コイツは親指に敵対した愚か者だ。本来はその場で殺されるはずだったのを私が引き取った。つまり、死んで当然の男だ」

 

「はっ、えっ、なん……」

 

「さっさとやれ。でなければ、そうだな……」

 

 

 そう言って少し考え込むお父様。私としてはそのままずっと考えていて欲しかったが、すぐにまた話し始める。

 

「アンプルは今確かそれなりにあるからな。コイツを殺すまでお前を斬りつける。痛いのは嫌だろう?」

 

 

 そう言いながら見せつけるように剣を抜き、こちらに向ける。今日の訓練でも斬られたのだ。どれだけ痛いかは分かっている。そして、私が彼を斬るまでそれがずっと続くということだ。

 

 

「……」

 

 

 迷いながら彼の元へ歩み寄る。この世界の5年と、かつての世界の一生を合わせても見たことがない恐怖を称えたその表情を見た。

 

「……っ」

 

 怖い。怖い、こわい。なんで、私が。こんなことを?

 

「な、なあ、お嬢ちゃん。助けてくれ。頼むよ。人殺しなんてしたくないんだろ!?」

 

「そうか、そんなにも切り刻まれたたいか。いいだろう」

 

 

 左腕に鋭い痛みが走る。見れば、腕がなくなっていた。痛い。そう感じた瞬間に、腕が生えてくる。ああ、コイツは本当に私がこの人を殺すまで斬りつけ続ける気なんだ。そうか。

 

 改めて男を見る。助けを求める顔を、目を、涙を。でも、そうだよね。仕方ないよね。痛いのも死ぬのも嫌だよね。でも、私も嫌だからさ。それに、ね。

 

 

「どうせ私は一回死んで、この人生はボーナスステージみたいなもんだし。そもそもここが現実かどうかだって怪しいんだ。だったらアタシが、何したっていいよね」

 

 そして、アタシは初めての殺人を犯した。

 

 

 

このときにお話し出来なかったのが残念ね。でも、貴方はまだこの世界で貴方として生きられていない。だからまたいつか、お話ししましょう?

 

 

 

 

 その後はひたすらにパレルモ剣術を習い、そして実践として敵を殺す日々を過ごしていた。そしてこれはボロボロになりながらも訓練していたある日のこと。

 

 

「遺物……ですか?」

 

「そうだ。オーディンの目という」

 

 

 訓練後にお父様に呼び止められ、遺物とやらの話を聞く。どうやらこの世界には遺跡と呼ばれるダンジョン的なものと、そこから発掘される特殊な物品である遺物とやらが存在しているらしい。そして、その遺物がこの家では代々受け継がれているのだとか。

 遺物という物自体は本で読んだことがあるので知っていたのだが、私とは縁遠いものだとばかり思っていた。だってそうだろう。パレルモ剣術で戦うことになるであろう私が、特殊な力を持つ遺物の剣なんかを持っても型が崩れるだけでいい影響はないと思っていたのだ。

 

 

「代々、今のお前ぐらいの年齢からコレをつけ、徐々に慣らしていく。最終的にコレの力と完璧なパレルモで敵を狩り尽くすことこそ、ボニャテッリ家の誇りだ」

 

「代々、ということはお父様もこれを使われているのですよね。ここにあるのは何なんですか?」

 

「この遺物は、本来は一つの物だったのが三つに分かれている。つまり、私のものと、これともう一つあるのだ」

 

 

 ほーん、と思う私。にしても義眼の遺物か。遺物ってかなりの力があるらしいけど何ができるんだろうか。そう思っていると早々に答え合わせがされた。

 

 

「この遺物を目に埋め込むと未来が見えるようになる」

 

「はえ?」

 

 

 そんな間抜けな声を思わず出した私は悪くない。あまりにもデタラメすぎるだろう。折れた翼の特異点かなにかなんじゃないだろうな。

 と思ってはいたが、どうやらそうでもないようだ。いつもより誇らしげなお父様の説明によると、目に映るものを高速で処理して擬似的に未来予知をしているのだとか。めっちゃ頭痛くなりそう。と思ったが、義眼が戦いのなかで加熱されるから今のうちから慣らしておけってことのようだ。

 

 

「そして、だ」

 

 

 なるほどなぁ。と納得していると、お父様が改めてこちらを見てくる。なんだろうか、また戦闘だろうか。

 

 

「その目をある程度扱えるようになれば、お前には親指に入ってもらう。いいな、ヴァレンチーナ」

 

「……はい、お父様」

 

 

 割と斜め上の事だった。まさかの就職である。まあマフィアを職と言っていいのかは謎であるが、まあとにかく独り立ちである。……もしかして訓練終わり!?毎回ボロボロにされる(最近はそうでもないが)この地獄の日々が終わるってこと!?やったあ!

 正直なところ一度目の人生を全力で謳歌して、未練とかなく死んだ後だからどうなってもいいけど、どうせなら楽しく生きたい。そして親指は階級絶対主義だ。それはつまり、だ。

 

 

 成り上がれば楽しく生きられるってことだな!!

 

 

 そんな発想と共に、予知眼の加熱に耐えながら数ヶ月訓練を行い、晴れて親指に就職したのだった。因みに親指に就職後、現時点で一番嬉しかったことは制服がかっこいいことだった。




 ネタバレすると愛は取り上げられます。
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