ボニャテッリ家とやらに生まれ変わったらしい 作:義眼の人
マティアスが中指なのに義理を重んじてないのでこういう親指がいてもいいと思うんですよ。
なんか親方達モノローグないから何考えてるのかいまいち分からない、辛い。
ゴッドファーザーに呼び出され、左遷を命じられました私です。悲しいね。
呼び出しの内容はソルダートを庇ったことに関する話。何を考えてその行動をしたのかと問われ、親指の人的資源を失うわけにはいかないと思った、と説明した。勿論礼儀はちゃんとした。
それに対してゴッドファーザーには親指の資源守るのは良いがアンダーボスとして不適切な行動である。が、お前は強いからただ処分するのは勿体無い。なので新たに作られる蜘蛛の巣に行ってこちらの指示で動いてもらう、とのこと。
色々言っていたが上下守んないからお前左遷な?てことだと思われる。
因みにお父様には非常に怒られた。
「パレルモを伝授され、家宝まで継承しておきながら、このような醜態を晒すとはな。」
「お前が受け継いだ遺物と剣には、お前の不名誉な残り香が染み付いているから回収はしない。」
「アンダーボスに昇格してから、わずか三日で罷免された者などヴァレンチーナ、お前だけだろう。」
「お前は一家の恥だ。ボニャテッリはお前から愛を取り上げる。」
原文ママである。
まあ正直あの家から愛を貰った記憶は無いが。前世の記憶があったため人格形成に大きく影響を受けたわけでもなく、特に帰属意識もない。……こうしてみるともはや他人である。
まあそんなこんなで蜘蛛の巣とやらに異動になった私は、内心ウキウキしていた。なんでかって?礼儀をそこまでちゃんとやらなくていいからだ。
異動先の蜘蛛の巣の中では立場は不問である、という話だ。非常にありがたい。
部下には礼儀とかいいよ、のスタンスだったため何を今更、という感じかもしれない。しかし、私はカポとして活動していた時間が一番長かったのだが、意外と目上と関わることが多いのだ。アンダーボスに上級のカポ、敵として相対する地位の高い人、あと地位の高い依頼人など。非常に怠かった。
それに左遷されたってことは蜘蛛の巣とやらは実質窓際部署である。前世の会社の同期が窓際部署の所属だったのだが、正直羨ましかった。私自身には縁がなかったが。
まあ要するに憧れていたのだ、窓際に。早く着任日にならないかな。と考えながら待った。
「お前が親指のヴァレンチーナだな?」
「待って思ってたのと違う人がいるんだけど」
着任日に指示された場所に行くと黒スーツの男がいた。えぇ……誰この人。親指の構成員でもなさげだしマジで何なの……?
「俺はリアン。人差し指の親方だ」
「なんて?」
なんだろう、転生した事と転生後にこの世界のヤバさを知った事の次ぐらいには驚いてる。何?人差し指なの?黒スーツなのに?親方って何?
そう疑問符を浮かべていると諸々の説明をされる。ざっくり言うと五本指の共同計画で、それぞれの指の者を親方として迎え入れている、とのこと。ゴッドファーザーさんなんで説明してくれないの?と思うが口には出さないでおく。回り回って最終的に粛清とかされたくないから。
まあそこは納得したのだが、
「それで、なんでこんなよく分からない場所に呼ばれたんです?」
そう問う。私達が今いるのは特に何かがあるわけではない裏路地の一角。こんなよく分からない場所に五本指全部関わった大規模な組織があるとは思えない。
「この扉だ」
そう言ってリアンさんが近くのボロボロの民家の扉を開ける。……何故?と思ったのも束の間。扉を開けたその中は明らかに目の前の民家とは違う場所だった。
「……もしかして薬指の技術?確か……」
「廊下だ」
「そうそう、それ。……?」
スッキリした、という顔でリアンさんの方を向くと、その瞬間ピピ、と鳴った妙な端末?のようなものを覗き込んでいた。なにそれ?と聞こうとしたところで、リアンさんが妙な筒を取り出し、そこから黒い液体が噴出して……!?
「あっぶな!」
それが形状を変え、バスターソードに形を変える。変化している最中に前傾姿勢となり、こちらへ駆けてくる。完全に変わった瞬間、構えをとり、私に斬り掛かってきた。咄嗟に剣で軌道をそらす。
「何するんですか!」
と冷や汗を流しながら抗議する。が、冷や汗をかいたのは斬りかかられたからではない。いや。勿論それもあるのだが、何よりも。
未来が見えるのが、遅い。バスターソードに変わった辺りでやっと動きが見えた。いつもは相手が動く前に見えるのに。
今度は武器が手斧に変わり、頭を狙って振り下ろされる。が、それを防いで距離を取る。
「何なのマジで!?」
「ふむ」
またさっきの端末がピピ、と鳴り、リアンさんがそれを見る。 警戒しながら煙草を口に咥える。噂には聞いたことがあったけど、端末から指令が届く人差し指ってやつか。
そう思っていると液体が筒に戻り、それをしまうリアンさん。何だコイツマジで。
「指令の指示でな。お前を殺す気で攻撃しろとのことだ。そしてそれは達成した。もう警戒を解くと良い」
「やっぱ指令か。同じ指令が来ない保証がどこにあるんだ?」
「ふむ、ないな」
「なら警戒させてもらう」
好きにしろ、と言って扉の先に進んでいくリアンさん。なんだろう、人差し指と一緒にいると疲れるな。そこで、先日の件を思い出し、
「ちょっと聞いていいか?」
警戒しながらもリアンさんに続いて扉へ入りながらダメ元でそう問いかける。
「何だ?」
「おたくの構成員が親指のコスプレして混ざってたことがあるんだが、なにか知らないか?」
「司令の意志だろう」
言うと思った、とため息をついてリアンさんに付いていく。すると、酒瓶が大量に並べられたバーのような部屋に付く。
「ここが親指の廊下だ、好きに使って良い」
「この酒は?」
「親指の親方が酒が好きだから用意しろと頼まれた」
「……誰に?」
「親指のコンシリエーレに」
そうか、コンシリエーレか。因みにコンシリエーレとはゴッドファーザーの相談役兼秘書のようなものだ。
「……マジでなんで?」
さあな、とだけ言ってリアンさんが入ってきた扉とは別の扉から出ていこうとしていくが、途中で止まり、振り返る。
「この扉から他の親方のところに行ける。使うかは知らないが覚えておくと良い」
「他の……って、え、五本指皆ここにいるんですか?」
「廊下は繋がっていたほうが楽だからな」
そう言って出ていった。マジかよ。今世で一番マジかよって言ってると思うわ。
そんなことを考えながら廊下を見て回る。
「うわぁ……」
高い酒が大量に置いてある。これいくらになるんだよ……と軽く引く。前世であったものもいくつかある。が、いつもの安酒はない。どうやらこれを準備した人とは酒の趣味は合わなさそうだ。
その後、全体を軽く見てから、次にすることを考える。そして、決めた。
「よし、挨拶回り行こ!」
まずは中指の廊下に行くことにした。理由は薬指にはあんまり良いイメージなく、小指はそもそもよく分からないため下手に近づいて地雷踏みたくない。いや、まあ中指にもいいイメージそこまでないけどね?
そんなことを考えながら中指の廊下へ入る。そこには大量の未開封のおもちゃが並んでいた。
おー、と思いながらも、すいませーん、と入り口付近で声をかける
「あぁ?誰だお前」
「どうも、今日ここに来た親指の親方、ヴァレンチーナです。よろしくお願いします」
そう言いながら軽く頭を下げる。
「親指……?お前がか?」
「そう。あ、もしかして帽子取ったほうが良かったですか?」
「いや、それはいいんだが……」
中指の親方、鎖でぐるぐる巻のデカい剣を持った大男だ。……屋内でサングラスかける意味あるのか?
「……俺はマティアス。中指の親方だ。親方同士の仲良くしようじゃねえか!」
そう言って肩を組もうとしてくる。セクハラですよ?と冗談めかして笑いながら避ける。
「にしても、すごい量のおもちゃですね。これ全部集めたんですか?」
「ああ、欲しいもんは手に入れないと気が済まないタチでなぁ」
「コレクター気質ってやつですね。にしてもこれだけで集めるなんて凄いですね」
そう言うとマティアスさんは機嫌良さそうに笑う。
「お前のとこの廊下はどうなってんだ?」
「バーみたいになってました」
そう言うと驚いたような顔をする。いやまあ目元見えないけど。
「お前酒飲むのか!今度一杯やろうぜ!」
「いいですね。私のところやたらと高い酒用意してあったんでそれ開けましょ」
そんな風に雑談をする。そして流れで、もし他の指に所属するなら中指だろうと個人的に思っている。その話をしてみるとへえ?と面白そう、といった雰囲気でこちらを見る。
「親指がそんな事言ってて良いのか?」
「まあ、もしもの話なので」
「中指の理由は?」
「義理とか大事じゃないですか」
そう言うとマティアスさんは大笑いした。
「不敬って理由で部下の粛清する親指の親方が義理を語るか!」
「確かに」
そんなこんなで話を終え、廊下から出る。なんか、思ったよりまともだったな。私の異動の原因からここ、蜘蛛の巣が指に適合出来なかった人が集まる場所と仮定すると、所謂現代人的な価値観の人が多かったりするのかもしれない。
いや〜この世界に染まりきってない人が同僚とか嬉しいな〜。
後に薬指のスクールを壊滅させた話を聞いて認識を改めるのはまた別の話。
次は薬指の廊下、なのだが。
「うわ、なにこれ……」
ドン引きである。恐らく人の体を使って作られたであろうオブジェが並んでいた。ひえぇ……。
「おや、始めまして。私は薬指親方、カリストと申します。貴方は……親指の親方であっていましたか?」
そう言って奥から歩いてきた白い服で帽子を被った男が歩いて、私の前でお辞儀をする。あ、ご丁寧にどうも、とこちらもお辞儀をして自己紹介をする。
「親指の親方、ヴァレンチーナです。よろしくお願いします」
そう挨拶をすると、怪訝そうな顔をされる。
「……本当に親指なのですか?」
「一応これでも元アンダーボスなんですよ?」
「にしては、偉ぶったりしないのですね」
失礼な、と言い返したいが親指はそういう組織なのではは、と愛想笑いをする。
話題を変えようと周りを見渡す。
「にしても、ここは広いですね。置いてある展示物全てカリストさんが?」
「ええ、見ていかれますか?」
いや、大丈夫です、と返したいのをぐっと堪える。下手に断ると軋轢を生みかねない。それはまずい。
私は人と話すのが割と好きだ。そのため、ただでさえ同僚少ないのにそこと険悪とか辛い。既にリアンさんとは関わりたくないのに、更に減らすわけにはいかない。
「……そうですね、少し見学させてもらいます」
「いいですね。では、私が案内しましょう」
そうしてカリストさんの案内のもと展示物を見て回る。私の目にはおぞましく映るのだが、カリストさんはそれらの作品を嬉々として紹介する。
説明を聞いていると、どうやらカリストさんは人体の構造にかなり詳しいようだ。その才能を医学方面に活かしてほしい。いや、そもそもこの世界医学とかあるのか?
ざっくりと見て回り、入ってきた扉の前に戻ってくる。
「いかがでしたか?」
そう聞いてくるカリストさん。うーん、困った。正直に言うか、それっぽくお世辞を言うか。
本音を言えば薬指の感性は理解できないのだが、カリストさんの紹介を聞いていると、かなり拘っていることは伝わってくる。うーむ……。
迷った末正直に話した。私みたいな素人には刺激が強いかな〜、と。
そう言うとカリストさんは少し残念そうな顔をしたが、次の作品では貴方にも満足していただける作品を作ってみせましょう、と逆に火が付いたようだ。
「そういえば、もうじき産まれるそうですよ」
そう切り出される。……何が?
「産まれる?何がです?」
そう言うとカリストさんが驚いた顔でこちらを見る。何だ何だ。
「貴方、蜘蛛の巣の目的を知らないんですか?」
「……そう言えば聞いてないですね」
手で顔を覆われた。そんなに?いやまあ自分のいる組織の目的知らないはヤバいかもしれないけどさ。
「ここ、蜘蛛の巣の目的は子を育てることです」
「子?孤児院的な話……なわけないか。待って、産まれるってそういうことですか?」
「ええ、小指の親方が今身籠っている子が生まれたら、その子を親方で育てる、と言うのがここの目的てす」
はあ?と思わず言った私は悪くないと思う。
全ての指の親方で、赤ちゃんを囲む。
「……ぴゃあ!」
可愛い。前世の私に子供はいなかったが、年の離れた弟はいたので赤ちゃん自体に馴染みはある。
「……この子か」
「そうだ。あなたの血を受け継いだ……尊い子だ」
リアンさんと塩見さんがそう話している。なんというか、あの人にも尊いという感情あったんだなって。
「この子の感じる時間に対する感覚と適正は、実に絶妙だ。地慧星、あなたなんかとは……比べ物にならないほどに」
「……」
前言撤回。素晴らしい才能があるから、ってだけの話だった。子どもは無条件で愛するべきだろ何言ってるんだ。
「しばらくは、自分だけの世界観で適度に時間を持つ期間を置くつもりだ」
「なんでそう分かりにくい言い方をすんですか。要は、ある程度大きくなるまでは私達がなにか教えたりはしないってことですね?」
少しため息を付きながらそう言う。
「ふふ……私たちが丹精込めて削るほど、価値は高まるでしょう」
「こいつ見ろよ、今俺を見て笑ったぞ!なっ?みんな見たか?」
カリストさんとマティアスさんが覗き込みながら言う。
「でもさ……なんて呼べばいいんだ?」
「それはこれから相談すべき問題ですね。私は個人的に、エリサという名がいいと思うのですが」
「いい名前だと思いますけど、そういうのはやっぱり産みの親に相談しないと……」
そう言いながら塩見さんに視線を向ける。件の塩見さんはため息をついて、
「好きにしろ」
と言う。
「ええ……」
そんな声が漏れる。その時、聞き覚えのあるビープ音がなり、一瞬身構える。
「……あ。子供の名前はヨシヒデがいいだろう」
「それは……指令ですよね」
「ああ」
思わずため息を付く。舌打ちを堪えただけ偉いだろ。
「塩見さん、大丈夫ですか?」
「好きにしろ、と言ったはずだ」
塩見さん、もう少し自分の子供に興味持ちましょ?
「……まあ、従うしかないですよね」
「ヴァレンチーナ、あなたは相変わらず指令がお嫌いなようですね」
大きく頷きたくなるのを堪える。流石に人差し指の目の前で指令死ね!とか言えない。いやまあ態度に出てるから遅いかも知れないが。
「……むぁ!」
「こいつ……ヨシヒデって名前が気に入ったみてぇだな?よし!今日からお前の名前はヨシヒデだ。ヨシヒデ!」
「……」
塩見さんが苦々しい、とでも言いたそうな顔でヨシヒデちゃんを見ている。
「地慧星、しばらくの間この子はあなたが預かっていろ」
「よりによって……なぜ私なんだ?」
「そりゃあ、あなたの血縁だからな。目以外はそっくりの」
「そういう質問じゃない。私が言いたいのは……なぜよりによって……!」
「……「よりによって」という単語ほど、ここに落とされた俺たちにとって無意味な言葉はない」
塩見さんは余程ヨシヒデちゃんが嫌いなようだ。自分の子供なのに……。まあ、私は親の愛とかは前世含めあまり覚えがないからあまり口出しはしないが。
「ひゃあ~!今こいつが片手でガラガラ持ち上げるの、見たか?」
マティアスさんはもう少し空気読んでくれ、マジで。せめて諌めるとかさぁ!
「まあまあ、塩見さん。私も一緒にお世話しますから……」
「……落ちぶれた家の放蕩娘ごときが、これ以上一言でも──」
「おいおい、喧嘩するなら掛け金おいてけよ。おい、止めねえのか?」
塩見さんに睨まれ、マティアスさんにヤジを入れられる。おかしいよこの集団。
「いや、喧嘩する気は……」
「こうやって胸倉を掴みながら、じわじわ絡み合っていくんだ。縁と業が絡まり続ければ、いつの間にか蜘蛛の巣が出来上がる」
「いやだから私は……」
「ついに得られた子供のために、各々が最善を尽くす時だな」
「まあ、もういいです……」
私は諦めた。
「……最初で最後の頼みだ。どうか、私には似るなよ」
私には似るな、か。やはり関係は複雑なんだろうか。私としてはせめて子どもは愛してあげてほしいが……まあ、彼女が愛さないなら、せめて私が愛そう。
「元気に育ってね、ヨシヒデちゃん」
そう微笑んだ。
一応偽恥に目的が知らされていなかったのには理由があります。そのうち書くかもしれないし書かなければそのうち後書きとかで明かす予定。
親方に敬語、の設定を作った結果常識人なのも相まってイシュメールみたいになってしまった。文面からは分かりづらいですが敬語ではあるものの気の抜けたフニャッとした話し方をしてます。その辺も次回書きたい。