ボニャテッリ家とやらに生まれ変わったらしい 作:義眼の人
今回辺りから本編をちょくちょく見ながらなので更新が更に間が開くかもしれません。先に謝っておきます。ごめんなさい。
10章のフロアマネージャークソ強くね?
追記
作者の勘違いが発覚したので少しだけ描写が変わりました。ストーリーは変わってません。教えてくれた方ありがとう。
今日は初めてヨシヒデちゃんに剣術の授業をする日だ。つまり、私はあの子の師匠になるというわけだ。
ここは威厳を見せねば、と姿勢を正し、私の元へ歩み寄ってきたヨシヒデちゃんに言う。
「改めて挨拶しよっか。私は……」
「お母さん!」
「は〜いお母さんだよ〜」
そう言ってヨシヒデちゃんを抱き上げくるくる回る。キャッキャ、と楽しそうに笑う。可愛い。
威厳?そんなのどうでもいい。私の愛娘やぞ。
「なんで私が何か言う前にお母さんって言ってくれたの?」
抱き上げたままそう問いかける。
「?だって、何度も寝かしつけてくれたから!」
そう言われなるほど、と納得する。彼女が新生児の頃、小指の廊下に時折押しかけ、ヨシヒデちゃんのことをあやしたり寝かしつけたりしていたのだ。
弟の時も似たようなことをしていたので特に苦では無かったが、塩見さんからのなんだお前という目線が痛かった。
因みに私がヨシヒデちゃんにお母さん呼びされたことに驚いたのは単純にこの子の自我が目覚める前にリアンさんに引き剥がされた、と言うと語弊があるのだが、まあ禁止されたためである。
赤ちゃんの記憶力とは侮れないものだ。そう思いながらヨシヒデちゃんを降ろす。
「よし。それじゃ授業を始めよっか。こっちおいで?」
そう言って子供用の木刀が置いてある場所まで行く。
キョロキョロと周りを見回しているのがとても可愛いが、早いとこ授業を進めなければ。
「私は、ヨシヒデちゃんに剣術を教えるヴァレンチーナ。お母さんで良いよ」
「お母さん!」
「うんうんお母さんだね」
笑顔で私を呼ぶヨシヒデちゃんの頭を思わず撫でる。そこで我に返る。違う、授業進めないといけないんだわ。
深呼吸して、気持ちを切り替える。頭から手を離すと、しょんぼりした顔をされる。
……私は屈しないぞ!授業を進めるんだ!
結局頭を撫でながら説明を続けることにした。
「剣術っていうのは色々あってね。私が教えるのはパレルモ剣術っていうものでね」
「ぱれるも?」
そう、と返事をして私は剣を抜き、構えをとる。こんな感じかな。そう言って軽く型を見せる。パレルモ剣術は敵の攻撃を流したり弾いたりするのがメインの戦い方なので敵の動きに合わせて動きが変わったりする。なのであんまり型に縛られてもよくないが説明にはなるだろう。
「……ていうのを、まあそのうちできるようになろうねって感じ」
「わあ……」
ヨシヒデちゃんの目が輝いている、気がする。正直ほかの剣術なんて知らないが、今まで戦ってきた人たちの戦い方と比べパレルモは割と派手な剣術だ。娘にいいところを見せたかったのもあるのでうまくいって何よりだ。
「こう?」
「もう少し姿勢を低くしてみて……そう、そんな感じ」
剣術を教えるとはいっても、流石にこんな子供に剣を振らせるのは怖いので、取り敢えず構えから教えていく。
私の初めての部下のアイクに以前剣を教えていたことがあるので、それを思い出しながら教えていく。勿論その時よりも優しめに。
……にしても偉く筋がいい。私が小さい頃剣術を教わっていたときより確実にコツを掴むのが早い。私の時は超スパルタ教育だったので初日からボコボコにされたが。
ああ、よく思い出せる。嫌な気分にやるから思い出すのやめよ。
「さて、今日はここまでかな」
その後、軽く剣の振り方やパレルモの基本的な動きの説明を終えてそう言うと、驚いた顔で固まる。
「え、もう?」
「あんまり初めから詰め込んでも疲れちゃうからね。残りの時間は……お菓子でも食べる?」
「食べるー!」
目を輝かせて答えるヨシヒデちゃん。とても可愛い。
先に椅子に座らせ、お菓子を取りに行き戻ってくる。因みにお菓子はカステラ。アイスと迷ったが以前人魚アイスとかいう冒涜的なものを見かけたためなんとなく手が伸びなかった。
あの見た目の生物……生物……?をアイスにするとか正気じゃないだろ。
「懐かしいな」
「お母さんもちっちゃい頃食べてたの?」
「ん?あー、そうだね……まあ、そんな感じかな?」
かなり口籠ってから答える。食べたとは言っても前世の話な上、初めて食べたのは10歳の頃なので割と大きくなってからなのだ。
素直にそうと言っていいかあれなところである。が、まあ前世は私の産まれる前なので小さい頃で良いはずだ。
「お母さん、カステラ好きなの?」
「ん?どうして?」
「だって、今までで一番嬉しそうだよ?」
そう言われ顔を触る。無意識に笑っていた。どうやら私にはカードゲームは向いていなさそうである。
「うん。私の一番好きなお菓子だよ。ヨシヒデちゃんは何が好き?」
「私は……」
そんな風に娘と過ごした。幸せである。
後日リアンさんに甘やかしすぎだと怒られたのはまた別の話。
ヨシヒデちゃんが泣きながら私の廊下に来た。
思わず面食らったが、気を取り直してしゃがみ込む。そして、
「落ち着いて。大丈夫だよ」
優しくハグをして頭を撫でる。事情も聞きたいが、ひとまず落ち着かせるところからだ。
わんわんと泣いているヨシヒデちゃんを宥めながら原因を考えてみる。……確か、カリストさんの授業始まったのってさっきじゃなかったっけ?
そのことに思い至り、私は全てを察して考えるのをやめた。
「怖かったよね」
頭をぽんぽんと撫でながらそう優しく聴くと、ヨシヒデちゃんは泣きながら頷く。その様子に思わずクソ、と呟きそうになる。
ここは私が前世で過ごした日本とは違う。人間の体を使った芸術もあるし、カニバリズムも当たり前である。これでも私はそれなりの長さをここで生きてきた。だから、大半のことは割り切っている。それでも、
「何も思わないわけじゃないよね」
小さな声で、そう呟いた。
「こんにちは、カリストさん」
「おや、私のギャラリーにようこそ、ヴァレンチーナ。どうしましたか?」
そう言ってこちらに歩み寄ってくる。顔には笑みを浮かべている。さぞかし機嫌が良さそうだ。
ふぅ、と息を整える。咄嗟に剣を抜けるよう意識を向けながら話を始める。
「少し、お願いしたいことがあるんですが」
「私にお願いですか?」
そう驚いた声色で言われる。ええ、と返すと、座ってお話ししましょうか、と言われ、案内された椅子にテーブルを挟んで向かい合って座る。
「それで、内容は一体?」
そう促される。良かった、話を聞いてくれる人で。最悪この時点でマエストロの私に貴方のような者が頼みなど!とか言われて斬りかかられるところまで考えてたからな。
「今日、ヨシヒデの授業をしたんですよね」
「ええ、それが何か?」
さも当たり前のような顔でそう返してくる。薬指の中だと話が通じる方であるが、それでも薬指は薬指である。親方ともなれば尚更。
「ヨシヒデちゃん、泣きながら私の廊下に来たんですけど」
「ヨシヒデにも言いましたが、泣くというのは表層の部分しか見れていないからです。本質を見られるようになれば変わりますとも」
まあ言いたいことは分かる。芸術は理解した人にはしっかり意図が伝わるが、理解してない人には不気味に映る。割とそんなものだ。
まあ私は理解してないが。
それと同じできちんと薬指の芸術の本質を理解してもらい、しっかり作品を見てほしいのだろう。
まあ材料が死体じゃなければの話なんだけど。
取り敢えず私としては親の趣味を子供に押し付けるなと言いたいが、恐らくこの蜘蛛の巣という場所に産まれてしまったヨシヒデちゃんは、嫌でも学ばなければならないだろう。なら、せめてこうしよう。
「それでお願いなんですが、ヨシヒデちゃんに教える内容に関して、ヨシヒデが見ても怖がらないような刺激の少ない内容から教えてえもらえませんか?」
一瞬固まってから、微かに震えながらこちらを向き直るカリストさん。
「マエストロであるこの私の、教育方針にご不満が?」
キレてらっしゃる。まあ素人に口出されるのは嫌なのだろう。
「もともと薬指で産まれた子ならそれで良いかも知れませんが、あの子は違います」
「違わないでしょう。ヨシヒデは私の子です」
「違いますよ、私達五本指の親方の子です」
あまり聞き入れられなさそうなので仕方ない。
「私の頼みを聞いてくれれば、私の体を材料に使っていいですよ」
そう言うとほお、と言ってこちらを見てくる。どうやら興味は引けたようだ。
「初めて会ったとき、ギャラリーで言ってましたよね、身体派の作品について。骨で枠を作り筋肉の収縮で表現をする。これでも私は元アンダーボスです。この体は貴重な材料になるのでは?」
「……面白いですね。何処まで使っていいのですか?」
「脳以外なら。あと、材料取り終わったらk社のアンプル使ってください。後は好きにしてくれていいですよ」
ふむ、と顎に手を当てて考え、
「良いでしょう」
そう言われた。
細かく約束の中身と私を材料として使う日を決め、立ち上がる。
「時間を取らせてすみません」
「いえ、面白い話ができましたから」
彼にお辞儀をしてから廊下を出る。
そこで気付いた。薬指の作品で刺激の少ないものとかあるのか……?と。
急に不安になったがないわけではないだろう。
そう、これでいいはずだ。ヨシヒデちゃんがまた泣くことはないはずだ。そう思いながら自分の廊下に戻る。
私の頼みをしっかり聞いてくれたのか、それともヨシヒデちゃんが強い子なのかは分からないが、その後カリストさんの授業の後私のもとに泣きながら来ることは無くなったので、ひとまずよかったということにしておこう。
ちなみに私の体を材料に使ったカリストさんに酒と煙草は程々にしたほうがいいですよ、と言われた。解せぬ。
「お母さん!」
ヨシヒデちゃんが笑顔でトコトコと走ってくる。どうしたの?としゃがみ込んで問いかけると、
「私ね!学校行くことになったの!」
「学校?」
「そう!」
いくらなんでも端的すぎる。いや稀によくいる異様に話の長い大人より良いか。
詳しく話を聞くと、カリストさんに学校に行きたい、と強請ったら薬指の学院に行けることになったようだ。
んー、不安。というか薬指の学院って色々と大丈夫なのか?いや、本人が喜んでるしこれは過保護なのか……?
私には分からない……。
うごご、と頭を抱えているとヨシヒデちゃんに頭を撫でられた。ホントいい子。
「リアンさんとかはなんて言ってた?」
「好きにしろって言ってた、てカリストお父さんが」
まあ、指令が特に何も言っていないから取り返しのつかないことは起こらないのだろう。多分。
私は指令のことは気に食わないがあれが生む結果は認めているのだ。
ひとまず頑張ってね、と言っておいた。
しばらくは楽しそうに学院に行っていたので、私は微笑ましく見守っていた。
だが、いつかからヨシヒデちゃんは行かなくなった。それも、沈んだ様子だ。いじめを疑ったが、この子はマティアスさんの中指式英才教育によって殴り返すタイプだ。
個人的には教育方針を改めてほしいが、この世界割と物騒だからな……と思ってあまり口出しができない。
さて、これからどうしようか、と考えながら剣術を教える。どうにか元気づけるのは決まりとして。事情を聴くべきか、聴かざるべきか。
暫く悩んでから、行動に移す。
「よし、いい感じだよ。ヨシヒデちゃん、今日の練習は終わりだよ」
「分かった」
彼女から木刀を受け取りながら問いかける。
「ところで、お腹空いてない?」
ヨシヒデちゃんがそんなに、と言いかけたところでお腹が鳴る。私ではないよ?
目線を合わせて、
「ご飯作るけど、一緒に作る?」
と聞いてみる。
「一緒に?」
「一緒に」
少し悩んだあと、頷いたのでよし、と言って2人で後から作ったキッチンへ向かう。
ヨシヒデちゃんに野菜を洗ってもらい、皮を剥いて大雑把に切る。そしてそれをヨシヒデちゃんに渡し、切り方を教えながら細かく切っていく。
「こう?」
「そうそう。上手いよ」
えへへ、と嬉しそうに笑うヨシヒデちゃん。年相応な笑顔が見られて私は嬉しいよ。
その後鍋に入れてカレールーを入れて煮込む。
「さて、あとは待つだけだよ」
そう言いながらヨシヒデちゃんの視線に合わせて屈みこみ、
「少しは気が紛れた?」
そう話す。首をかしげているヨシヒデちゃんににこりと笑って
「何かあったんでしょ?どうにかすることはできないけど、何かしてると、例えば手を動かすと少しは嫌なことを忘れられるよ。覚えておくといいかもね」
少し首を傾げ、分かりやすく驚いた顔をする。
「え……なんで……」
「なんで分かったのかって?」
コクコクと頷くヨシヒデちゃんにウインクをして、
「お母さんにはお見通しだよ」
そう微笑みかけた。
その夜カッコつけすぎたかもしれないと一人悶えた。
そしてカリストさんに事の顛末を聞きキレ散らかした。
しかし、一般中指はこんなもんだよなあ、言っても聞かないよなあ。と思ったのでマティアスさんには子供の教育に悪いからあんまり過激なことは駄目ですよ、という話をした。
中指の義理が過激だぁ?と笑ってたので多分伝わってない。
蜘蛛の巣入りたての時のいい人イメージが消し飛んでしまった。
子供の喧嘩に介入して教師殺すってなんだよ、あの頭中指め!!
話に出てきたアイクは2話に出てきた部下です。書きたい欲が溢れてきたのでそのうち掘り下げするかもしれません。
子供を愛でるのはコレでいいのか……?小さい子供と関わることがないから分からない