B級ヒーロー くたびれハットマン   作:テムテムLvMAX

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よん話 真面目な話

「つまり、くたびれさんは怪人になったってことか?」

 

「そうなります」

 

「人間だけど、怪人って……分からん、でも悪いことしないんならそれでもいいんじゃね」

 

 

死ぬ気で怪人化の事を話したら意外にもあっさりと認めてもらえた、サイタマさんは怪人だからと殴っている分別のないヒーローではないのだろう、多分、俺はそう信じるぞ。

 

 

「あ、悪い事するなら殴るからな」

 

「ヒュッ」

 

「気絶した……なんでだ!?」

 

 

あれからまた数日が経つ、体調の変化は大きい、何せ身体機能のあらゆる面が半分怪人となった事で強化された訳だ、俺の意識以上の事が起きている、制御がまだまだ甘く増大した身体機能に慣れるために、怪人を積極的に狩っている。

 

 

「よく聞け人間、俺様は……」

 

「チェストーッ!」

 

「めぎゃぁ?!」

 

「軽い首だ、奪った命のために死ぬんだ」

 

 

怪人とは、欲深な人間が変化する者たち、または古代生物などの総称、だが俺としては分け隔てなく人類の敵として認識している。

俺のように心ある怪人など生まれようはずがない、凄まじく運のよいご都合主義のような奇跡が起きたからこそ今俺がいる、そう思えるほど稀な事例だと思う。

 

 

『今の怪人で25体目、慣れてきましたな……ですが少し突撃癖が出てきたように見受けられるでござる』

 

「ああ、実践でいきなり戦えるようになったからな、成長速度は申し分ないだろう、癖の方は意識して解消する」

 

『不幸な事故とは言え、怪人にしてしまったことに少し後悔しているのでござる……』

 

「お互い命の恩人だろ、今はそれでチャラにしよう」

 

『くたびれ殿……かたじけない』

 

 

身体の変化は進んでいる、半分怪人というだけで成長速度が増加していく、戦えば戦うほど昨日の俺より強くなっていく、だけど自惚れは感じないし全能感も感じない……むしろ顕著になったのはサイタマさんと俺の間にある隔絶した強さの壁、強くなればなるほどその頂が見えない。

 

頼もしい反面、恐ろしくもある。

 

 

「お前かぁ?この辺で怪人を狩っ……ピギャ!?」

 

『基本通りの居合、形になるまでもう少しですな』

 

「雑魚怪人を輪切りにする程度なら使える技だ、だが強者は簡単に見切ってくるだろう」

 

『そもそも抜刀術自体が護身に通じる技、抜いて振ったほうが強いのは自明でごさろう』

 

「夢も希望もないや」

 

 

……と言うかまた新手か、今日だけで何体来るんだ、目に付いた奴から倒しているが……まぁいい仙刀斎と俺の力を合わせれば負けはない、ま、そもそも負けてもいいからな、生き残るのが俺の力の本質なんだから。

 

刀を一振、血を拭ってから鞘へ収める、あいにく道路が死体で通行止めになるが、走る車はない。

それを乗り越えて見慣れたマントとスーツのサイタマさんが現れた。

 

 

「よー、やってんなー」

 

「サイタマさん、おかえりなさい」

 

「さっき怪人やっつけてきたんだけどさ、ワク……なんとかマン?みたいなやつ、すげー強そうだったのにまた一撃で終わっちまった……」

 

 

ワクチンマンかな?だとするとジェノスとの出会いも近いか、そろそろ退去する準備を始めなければ。

 

あとヒーロー協会も登録を進めないと、怪人となった以上普通の職業では満たされないだろう、それにこれから起こりうる脅威に対して俺の力も役に立てたい。

 

 

「サイタマさん、いきなりなんですが……俺、この数日で出ていくことになるかと思います」

 

「え!嘘!ちょっと待って!もうアンタの飯食えなくなるのか!」

 

「Z市から出ていくわけではないのでご飯程度何時でも作りに来ます」

 

「ほ……なら、頑張れよ!記憶喪失で大変だろうけどくたびれさんなら大丈夫だろ」

 

 

露骨な飯の心配に思わず笑ってしまいそうになる、だけどそれだけ気に入ってもらえたのが嬉しい、このサイタマさんとの縁が続けば御の字、俺の平和のために仲良くしておこう。

 

 

「所で……なんか雰囲気変わった?くたびれさん」

 

「……そう言われれば確かに、身体は締まって来ましたし目つきもかなり鋭くなりました、でも心は変わってないです、ええ」

 

「じ〜………」

 

「な、なんです?」

 

「帽子取ってみ」

 

 

言われるがまま帽子を脱ぐとサイタマさんは俺の頭部に視線を向けて固まった。

 

 

「なんか……髪、伸びてね?」

 

「気の所為では?」

 

「いや嘘だろ!絶対ありえないだろ!なんで肩までしかなかった髪がこの数日で腰まで伸びてんだよ!おかしくね!?」

 

「言われてみれば…………髪の怪人なんでしょうかね、俺」

 

「オレにも分けろよ〜っ!」

 

『この男を怪人にするなど、考えたくもないですな……あるいはもうなっているやも』

 

 

髪のために怪人に……なりそうだな、意外と。

 

指摘されるまで変化が分からないほど俺は鈍感だったか?あれ、これが怪人化の副作用か?

 

 

「分かんねぇ」

 

『いやいや、多分元の性格と思うでござる……』

 

「う!ら!や!ま!し!い!〜〜っ……!」

 

 

サイタマさんの身体には言葉遊びで言うが、神が宿っているという、恐らく神と髪は同居できないんだと思うよ、そう思っていた方が精神的によいと思う。うん。

 

 

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