B級ヒーロー くたびれハットマン   作:テムテムLvMAX

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5話 お手合わせ

先日のワクチンマン、あと知らないうちに巨人化したマルゴリとか言う筋肉兄弟と立て続けに怪人を一撃で仕留めてきたサイタマさん、ここ最近は期待と裏切りの連続らしく珍しく顔が不満げだった。

 

ハッキリ言ってなんも言えねぇ、2匹とも今の俺じゃひっくり返っても勝てない強さだ、ニュースで被害を見るたびにそう思う。

 

 

「かなり燃え尽きてますね」

 

「そうなんだよ……怪人討伐に燃えてた日が懐かしいと言うか、羨ましいと言うか……」

 

「手加減なしの本気で渡り合える存在は……今後現れるかと言うと……恐ろしく可能性の低い話ですね」

 

「ええ……」

 

「最強を目指して実際最強になったら辛いとは、贅沢な話です、そのまま孤高でしょうね」

 

「っぱ、そうか……」

 

 

ものによるかな……今後出てくるだろう怪人を目指す人間ガロウが凄く強くなるとか言えないしな、起きるかもしれない未来だけど未来は俺のせいで不確定になるだろうし……言わんとこ。

 

 

「ですが俺が強くなってたまに手合わせしに来ます、今は無理でも一発でもビビるような攻撃を編み出してみせます」

 

「おお〜〜……おぉ?」

 

「なんでそんなしけた顔を……」

 

「なんか……そんなライバルみたいな事言う奴に限って弱かった記憶が……」

 

「ま、おまけ程度に考えてくださいよ……お手合わせ頂いたら料理、ご馳走しますが如何ですか?」

 

「よし!いつでも来いよ!今でもいいぞ!」

 

 

無敵の男サイタマ、飯で釣れる。

 

やはり危機感とか恐怖が無いだけで普通に欲やら感情やらあるじゃないか、でも普段顔シケてるし感情が薄れてるのは本当だろうけど。

 

……今でもいいとか言ったよな……出ていく前にサイタマさんと手合わせしてみるか、この力に目覚めてから自分の全力を出し尽くすことは無かったしサイタマさんなら全く心配は無い。

 

 

「ではお言葉に甘えて今から手合わせしませんか、もちろんサイタマさんは手加減してください、俺死にます」

 

「お、おう、流石に人殺しにはなりたくねぇよ……」

 

 

話が纏った所で、Z市の廃墟街でも比較的広い空き地に来た、サイタマさんのパンチのおかげで空き地は多い。

 

 

「ルールはこうです、向かい合わせで始め、俺の技を受けてください、そしてサイタマさんが危ないと思ったら避けて構いません、反撃はしてもよいですが寸止めでお願います……本当に、それでタイムリミットは五分とします、よろしくお願いします」

 

「おう!あ、終わったらもずく食べたい、サラダとか」

 

「承知です、運動の後はさわやかな酸味のある海藻サラダにいたします」

 

『ほ、本当にやるのでござるか?某はまた死にかけるのでござるか?今度はマジに死ぬでござる?』

 

 

大丈夫!何度か死にかけるくらいどうってことない、むしろ強くなるさ、大丈夫、大丈夫………医療保険今から入れる?遺言残しとくから覚えといてね?

 

 

『今更遅いでござる!……して、こちらは完全に攻め手でござる、立ち回りはどうするので?』

 

「真っすぐ行ってぶった斬る、最上段から叩き斬る」

 

『示現流……いや言うならば怪人辞源流でござるな、前々から温めていた名前でござる』

 

「かい、ひとやめ、みなもと……それでかいじんじげん……上手いこと考えたな、洒落てると思う」

 

『お気に召したようで!むふふ、流派など好き勝手名乗ってよいのです、要は強さとオリジナリティでござる!』

 

 

わお、とっても今風な考えね、仙刀斎って本当に怪人なのか?

 

 

「なにモゴモゴしてんだよ〜始めるならさっさと始めよーぜ〜」

 

「おっと失礼しました、では、この石を投げ地面に落ちたらスタートでござる」

 

『口調移ってるでござるよ!』

 

「お、おう……ござる……完全に侍だな……くたびれさん」

 

 

長々と話すのもここで終わり、足元の石を拾って空高く投げた。

 

 

「行くぞ仙刀斎……本気だ」

 

『合点!』

 

 

相変わらず隙のない隙だらけの立ち姿なサイタマさんを尻目にして、俺は膝を曲げ腰を落とし腰に構えた刀に手を添えた。

 

初めは居合でいく、当然避けられるだろうから2の手で逆袈裟か……今回は示現流、いや怪人辞源流らしく一撃必殺を心掛け刀を振るおう。

 

投げた石が目の前を通る、地面に落ちる寸前に足に力を込める、その一瞬で時間の流れが遅く感じる、怪人化した身体ならばこの程度造作もない。

 

 

__カン…

 

 

石が地面に落ちた。

 

瞬間的に反応し地面を砕く踏み込みで、サイタマさんの喉元目掛け一直線に、跳ぶ。

 

 

「おっ」

 

 

渾身の居合がのれんを潜るような姿勢でかわされる、想定済みだ、直ぐ様返す刃で斜め上へと斬り上げるが……

 

 

「ほい」

 

 

ガニ股で半歩横にずれる動きでかわされた、全くカスリもしない。

 

 

『……』

 

「どうした仙刀斎、やる気なくなったか?」

 

『あの晩飯の献立が気になって人の話が聞こえない顔してる男に一発食らわせるために策を練ってるのでござる』

 

「そりゃいつもの顔だよ……」

 

 

仙刀斎もやる気出てきた所で、刀を上段に構え直し、胴体を軸として回転運動を加えて振り下ろすと、半笑いで避けられ、逃さぬとばかりに横長にすればスカート覗くようなしゃがみ方で避けられる。

 

 

「あ!警察!」

 

「えっ!」

 

「隙ありゃー!」

 

 

後頭部目掛けて刀を振り下ろすもびくともしない、頭部装甲硬すぎるだろ……。

 

 

『いたーっ!?ぎぇぇぇ!ヒビ!ヒビ入ってるでござる!』

 

「あ、ずる!」

 

 

引っかかる方が悪いのだ、立ち回りを変えて、至近距離での突きの連撃、突いて突いて突きまくるが、ワカメみたいな……この動きターちゃんで見た事あるぞ!

 

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃっ!」

 

「スルスルぬるぬる」

 

「当たんねーッ!」

 

「嘘つかれたので絶対当たってあげないぞ〜、ほれほれ当ててみ当ててみ」

 

『ちょっ……折れる……!』

 

 

イラぁ……!人を食ったような態度がたまに腹立つ男の顔向けて今以上に素早く素早く、更に素早く、突きという点の攻撃が面の攻撃になるほど高速で放つもサイタマさんの残像にすら掠らない。

 

 

「当ててみ当ててみ、ふふ」

 

『いたい!すこぶる痛い!死ぬっ、死ぬっ!力込めす……ぐぅ〜〜?!ヒビが、あぁ!ぎょえ〜〜〜っ……!』

 

「このクソったれ〜〜〜っ!」

 

 

当たらない俺の攻撃と段々と上手くなるサイタマさんの煽りに俺の感情が苛立ちに支配されていく……が、急に冷静になり、頭が冷えていく。

 

そして技を思いついた、俺は咄嗟にその技を実行に移す。

 

至近距離での突きを辞め、距離を取るためバックステップで跳ぶ、着地と同時に鞘に再びサイタマさんに向けて風の如く駆ける、右手に刀を握り左手は腰の鞘へと添える。

 

 

「なんだ動きが変わったな」

 

『そんな事したら某は折れる!折れるから!!!聞いてる?!』

 

 

真っすぐにただ加速しサイタマさんの頭部目掛け刀を振り下ろす、が避けられるがそれでもいい、振り下ろす勢いそのままに半回転し背中を見せる、と同時に鞘を突出しサイタマさんの腹部を狙った。

 

が、やはり避けられた、だがまだ続く、その姿勢から肩での体当たり、いわゆる鉄山靠のもどき。これも後ろへ下がる事で避けられたが……サイタマさんの背後には崩れたビルが壁になっていた。

 

 

「あ、壁だ」

 

「貰ったぁぁぁぁぁっ!」

 

『やめてぇぇぇぇぇぇぇっ!』

 

 

隙とも言えない隙だが、今最高の一撃を放つには十分だと判断して、刀を頭上に振り上げ両手で握り一気に振り下ろした、気合を込め、サイタマさんだけではなく後ろのビルやその向こうまで切っ先の先にある全てを斬る思いを込めるっ!

 

 

「万力斬!」

 

 

間違いなく渾身の力を込めた振り下ろし、当たればどんな怪人だって切れるだろう、間違いなく自信を持ってそう言える一撃だった。

 

 

__斬ッッッ!………ぱきん。

 

  

「よっこらせ」

 

 

避けられるが、自分では止められない勢いがついた刀はサイタマさんの背後にあったビルを真っ二つにし、なお止まらない剣撃はビルを越えた反対車線にある民家まで辿り着いた。

 

建物は崩壊しガラガラと崩れ落ちる、その光景に俺はえも言われぬ感情を抱いた、思ったより自分が強くなったことに少しだけ感激したのかもしれない。

 

 

__ピピピ、ピピピ……

 

 

「おっ時間だ」

 

「時間か……サイタマさん、ありがとうございました」

 

 

タイムリミットが来てしまった、しかしどの道渾身の一撃だったからあれ以上の戦闘は無理だった……。

 

仙刀斎にも礼を言おうと握る刀を見ると、半分なくなってた。

なぜかポッキリ半分になってしまっていた……いったい、どこで?

 

 

「あー……その、早めにヒビ入ってること言ってやりゃ良かったか……接着剤で直る……?」

 

『いたい……いたい……いたい……いたい……』

 

「あ、ああーーーーっ!!!折れてるぅーーーっ!?……う、あれ……あ……るぇ……らるれぇ………?」

 

「えっ?ちょ……おーい!また気絶か」

 

 

同時に俺も強烈な眠気が襲いかかりそのまま意識を失うように眠りについた、コンクリートに倒れ込む俺を介抱するサイタマさんの焦った顔が最後の光景だった。

 

 

 

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