オシャメとサメ   作:なかりょた

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学校に弁当忘れるのたまにあるよねェ!!

あいつと初めて会った日、あたしとカリンはいつも通りヴィクトリア家政の依頼をこなしていた。依頼でエーテリアスに遭遇したっていうハプニングはあったけど、対処できる範囲だった。

 

 けど、帰り道にエーテリアスの群れに襲撃された。

 

 たしかに小型のエーテリアスが群れを成して襲ってくることはあるけど、数が異常だった。おおよそ30体。

 

 あたしとカリンで15体は倒せたけど、二人とも限界だった。

 

 もう駄目だと思って、カリンだけでも逃がそうとしたとき、あいつが現れた。

 

 あいつはなんでかわからないけど、あたしの足元から現れてエーテリアスの群れに突っ込んでいった。

 

 しかも素手で、エーテリアスを殴り飛ばしてた。

 

 は?

 

 あたしでも武器使わないとできないのに、素手で戦う人なんて見たことない。

 

 それも驚いたけど、それより驚いたのはあいつが傷つくのを恐れていないことだった。

 

 最初は痛みを感じていないのかなと思ってたけど、あいつは戦闘のあと右手をかばってた。本人は無意識だろうけど。

 

 あたしは戦うあいつを見ながら、深い眠りに落ちた。

 

 なんで?

 

 いつもなら知らない人の前では寝ないのに。

 

 命の恩人だから?

 

 同じサメのシリオンだから?

 

 それとも・・・・

 

 考えるのはやめよう。今やあいつは同僚なのだ。同僚にこんな気持ちを少しでも抱いてるってばれたら、リナにからかわれる。

 

 それより、あいつボスに学校通えって言われてたけど、どこ学校に行くんだろ?

 

 ってか学校いったことなくて、貯金も家もない、しかも痛みに鈍感って完全に虐待とかだよね?

 

 あいつの体、傷だらけだったし。

 

 「あ、あのエレンさん、今日の放課後っ―—」

 

 あれ、誰だっけ。

 

 前の席の男子が話しかけてきた。名前なんだっけ?

 

 まあいっか、興味ないし。

 

 てか気軽に名前で呼ばないでほしいんだけど。

 

 睨み返してやろうと思ったところで、先生が教室に入ってきた。ナイスタイミング。

 

 「よし、お前ら席につけ。ホームルームを始める。っと、その前に今日は転校生がいる。おい、入ってこい」

 

 へぇ、ビームと同じクラスなんだ。ふーん。

 

 あ、こら尻尾が勝手に動いちゃう。

 

 「俺の名前はビーム!よろしく!」

 

 満面の笑みでビームは言ってるけど、あの笑顔の裏でどんだけのことを経験してきたんだろう。

 

 にしてもほかの女子も盛り上がってるな。まあ顔だけっていうか、顔の下半分だけ見ればあいつイケメンだもんね。

 

 「エ、エレンさん機嫌悪い?」

 

 「は?なんで?」

 

 「だって、尻尾バシバシ床に叩いてたから」

 

 どうやら無意識のうちに床を尻尾で叩いてたらしい。

 

 なんであいつのためにここまでカロリー消費しなきゃいけないんだろう。馬鹿らし。

 

 「じゃあ席はジョーの隣でいいか?」

 

 なんか勝手に話進んでるし。まあ別にいいけど。

 

 近くの方が仕事のこととか話しやすいし、あとあいつはほっといたら何するかわかんないから見守っとかないと。

 

 「よろしくな!」

 

 「・・よろしく。昨日はボスの家で寝たの?どうだった?」

 

 「おォ、ライカンさんのベッドやべぇな!ふかふかだったぜェ!」

 

 っ!

 

 ベッドも使ったことなかったんだ。

 

 やっぱりこいつには私が常識とか教えないと、変な大人に騙されちゃう。

 

 「へぇ、よかったね。とりあえず教科書見せてあげるから机寄せて」

 

 「サンキュな!」

 

 昼休みになってルビーたちと一緒にご飯を食べようとしたら、あいつが縋るような目でこっちを見てきた。

 

 ・・・もしかして。

 

 「あんた、弁当は?」

 

 「・・・忘れちゃって」

 

 「財布は?」

 

 「まだこっちのお金もってなくて」

 

 「・・スマホ決済は?」

 

 「スマホ持ってなくて・・・」

 

 「・・・はあ、ちょっとまってて」

 

 本当は屋上集合だったけど、教室集合に変えよ。

 

 いつもの仲良しグループにメッセージを送る。そして、ビームの机に自分の机をくっつける。

 

 「・・?」

 

 「おかず分けてあげる。あとは自分でどうにかして」

 

 「・・!!」

 

 なんかこいつ見てると、犬の世話をしてる気分になる。

 

 しばらくするとルビーたちがやってきた。

 

 「あー!今日はなんで教室で食べるのかなぁって思ってたらそういうことかぁ」

 

 「何?悪い?別にこいつは一応同じサメのシリオンだし、助けてあげようと思っただけ!」

 

 「ふーん、まあいいや!ねえねえビームくん、私のおかずもいる?あげるよ?」

 

 「え、いいのかァ!くれ!」

 

 「私のもあげるよお」

 

 「私のもよかったらどうぞ」

 

 「ふふ、なんだかワンちゃんみたいんだねぇ、ビームくん」

 

 ルビーやモナたちからもおかずをもらって、完全に手なずけられてる。まあ犬みたいなのはわかるけど。

 

 「ていうかさぁ、二人は知り合いみたいだけどどういう関係?」

 

 あたしとビームとルビーたちで昼ご飯を食べてると、ルビーが突然そんなことを質問してきた。

 

 「あァ?俺とエレンの関係?っ!!なにすんだよエレン!」

 

 「うるさい、あんたは黙ってて」

 

 変なことを言いかねないので、あいつの背中をたたいてやった。力加減は間違えたかもしれないけど、それはごめん。

 

 「別に、こいつとは昔あったことがあるだけ」

 

 「えぇ、本当?エレンが男子で名前呼び許してるのなんて、エレンの前の子とビームくんぐらいじゃない?」

 

 「あいつは勝手に呼んでるだけ、私は許可した覚えはない」

 

 「じゃあビーム君は許可したんだ?」

 

 「・・・・・」

 

 「ふふ、へえ、ほーん?」

 

 ルビーとモナと凛がにやにやとあたしとビームを見つめてくる。

 

 むかつく。

 

 ビームがマイペースにご飯食べてるのもむかつく。

 

 そんなことがありつつも無事放課後になった。今日はバイトがある日だから、あいつも連れて行かなきゃ。

 

 「今日、バイトだからついてきて」

 

 あいつと一緒に教室を出ると、教室中がざわつくのがわかる。

 

 「おい、ジョーさんが男子と帰ってるぞ!」

 

 「エレンちゃんが男子と帰ってる珍し」

 

 別になにもないっつうの。

 

 バイト仲間と一緒にバ先に行くだけだから。

 

 ・・なのになんで私の顔はこんなに熱くなってるんだろ。最悪。

 

 ヴィクトリア家政のホームにつくと、リナさんが先に待ってた。

 

 「ビームさんの執事服なんとか間に合わせることができましたわ。どうでしょう?自信作ですわ」

 

 リナさんから執事服を受け取って、あいつは奥に着替えに行った。

 

 「どうでしたか?エレン、学校でのビームくんは」

 

 「別に、普通。でも学校にあるいろんな物に目を輝かせてたよ。・・やっぱりあいつ学校に・・・」

 

 「エレン、あの子の事情は知りませんが私たちにできることは普通に接することです。」

 

 「おォ、着てきたぜ。でもこれ堅苦しいぜェ、ボタン2個開けていいかァ?」

 

 「かまいませんよ」

 

 なんかあいつがちゃんとした執事服着てるの見ると、ギャップで・・・

 

 「・・・似合ってんじゃん」

 

 その日の店は大繁盛だった。

 

 あいつは特に女性客から大人気だった。まあこういう系統うちにいなかったしね。

 

 「エレン、尻尾が暴れてますわ、体調でも悪いんですか?」

 

 「別に、なんでもない」

 

 その日の仕事も終えて、家に帰ろうとしたとき、

 

 「おォ、エレン途中まで送るぜェ!」

 

 「別に近いからいいよ。あんたこそここら辺の地理に詳しくないんだから余計な事しない方がいいんじゃないの?」

 

 「大丈夫だぜ!ライカンさんの匂いはもう覚えたから、家にならいつでも帰れるぜ!さすがサメのシリオンだぜ!」

 

 「・・・私はそれできないんだケド」

 

 何それ便利じゃん。

 

 まああいつは顔の上半分がサメだから、そっちの方の機能が発達してるのかな?私は逆に尻尾が生えてるし。

 

 「じゃあ、途中までよろしく」

 

 あいつと途中まで一緒に帰る。

 

 その途中で、気になったことを聞いてみる。

 

 「あのさ、あたしの場合だったら動くとすごくお腹減って眠くなっちゃうんだけどさ、あんたはそういうのあるの?」

 

 「・・・・あァ、うーん。強いて言うなら、血かァ?」

 

 「血?」

 

 「おォ、怪我したり動きすぎたりすると血が必要になるんだぜェ!すまねェ、気持ちわりぃよなァ?」

 

 気持ち悪い?

 

 たしかに意外だったけど、気持ち悪いとは思わないな。

 

 「あたしはそうは思わないよ。にしても血か。サメっぽくてかっこいいじゃん」

 

 「本当かァ!サンキュ!」

 

 やばい、今の顔は・・・こうなんか来る。母性がとても刺激される。

 

 「ここまででいいよ、じゃあまた明日」

 

 「おォ、また明日な!」

 

 明日の学校がちょっと楽しみになったかも。

 

 ちょっとだけだけど。




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