『ありがとう父さん、助かったよ!』
『気にするな、息子のためだ。ヴィクトリア家政に依頼するぐらい安いものさ』
『それでさ、聞いてよ父さん。今日助けてくれた奴、両方ともサメのシリオンだったんだ
よ』
『……サメ?珍しいな』
『しかも片方のやつは変なんだ。地面から急に出てきてさ。顔の上半分がサメみたいに
なってて――』
『……尻尾はあったか?』
『え?いや、そういえばなかったな。シリオンなのに珍しいよな』
『…………』
病室に沈黙が落ちる。
男は笑みを浮かべたまま、ゆっくり息子へ視線を向けた。
『父さん?』
『いや、少し気になってね。それで、その男は他に何かしていた?』
『うーん、ホロウの地面を泳ぐみたいに移動してたかな?』
『――そうか』
『まあでも命の恩人には違いないよ。最近はあんな凄いやつもいるんだな』
『……ああ、そうだな』
男は静かに立ち上がる。
『それより、早く退院してくれよ。お前に任せたい仕事も残っている』
『えぇ?どうせまた研究所関係だろ?俺しばらくホロウ近づきたくないんだけど』
『はは、そう言うな』
男は軽く笑い、病室を後にする。
扉が閉まる。
その瞬間、男の表情から笑みが消えた。
廊下を歩きながら端末を取り出す。
数秒後、通信が繋がった。
『……私だ』
『BM-01の目撃情報が入った』
『特徴は一致している。顔面変異、尾部欠損、地中潜航能力……生存していたらしい』
通信の向こうで、誰かが何かを言う。
男は小さく目を細めた。
『ああ、ヴィクトリア家政と接触している可能性が高い』
『……次は失敗するな』
『こちらももうこれ以上、進展のない研究に金を出す気はない』
通信を切る。
男は窓の外に広がる新エリー都を見下ろした。
『なぜ今になって出てきた、BM-01……』
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前世でも頑なに電子決済を使わない人がいたけど、そういう人は是非新エリー都に来てほしい、発狂するから。はい、俺が今いる新エリー都、現金で払える所がほぼないんですね。っていうか札束やら小銭やらをこの世界に来てから一度も見ていません。そのおかげで無事初任給をもらえたのに待ったく実感がわきません。
「ライカンさん、一緒にコンビニ行かねェかァ?」
「いいですよ、準備するので少々お待ちを」
ライカンさんを誘ってコンビニに行こう。もし一人で行って決済の仕方とかわからなかったら詰むしね。
「お待たせしました。行きましょう」
ライカンさんと一緒に夜道を歩く。いやぁイケケモはどんな場面でも絵になりますねぇ。
「・・学校はどうですか?楽しいですか?」
「あァ、おかげさまでなァ!友達も増えたしいいことばっかりだぜェ!こんなに楽しいな
らもっと行きたかったなァ!」
中学と高校合わせて6年とか短すぎでしょ。あと倍は欲しいね。
「・・・・っ。そ、そうですか!まだ2年もあるんです、これからを楽しみましょう!」
「それもそうだなァ!」
ライカンさんとしばらく雑談してたらコンビニについた。ん?嗅ぎ慣れた匂いがするな?
「え、ボス?・・とビーム?」
はい、皆さんシャッターチャンス!オフのエレンちゃんですよ!黒パーカーがよう似合ってますわ。
「よォ、エレン!こんばんわだなァ!」
「ん。あんたらもコンビニ?」
「おォ!初めての給料だからなァ!」
「……へぇ、初任給でコンビニとか、なんかあんたっぽいね」
エレンは小さく笑いながら、自動ドアをくぐっていく。俺とライカンさんもその後ろに続いた。
店内に入った瞬間、いろんな匂いが一気に鼻へ飛び込んでくる。揚げ物、甘い菓子、パン、コーヒー、肉まん。うおぉ、文明ってすげぇ。
「……なんかテンション高くない?」
「だってよォ、全部うまそうなんだぜェ!?」
「子供か」
エレンが呆れたように言う。いや実際、この体でコンビニ来るの初めてだし、前世でも田舎過ぎてコンビニとか最低限しか行かなかったからな。とりあえず店内を一周する。新作のお菓子、謎味のエナドリ、やたら種類の多いアイス。見てるだけで楽しい。
「……あ」
ふと、エレンが棚からシャークグミを取った。
「あんたこれ好きそう」
「サメだからかァ?」
「サメだから」
「偏見だぜェ……でも食う!」
結局、カゴの中には大量のお菓子と飲み物が入っていた。いやぁ買いすぎたか?まあ初任給だしヨシ。
そしてレジへ向かう。
『お会計、3860ディニーです』
「おォ、ついに決済かァ……!」
俺はスマホを取り出す。
……取り出したはいいものの。
「……?」
固まった。
「どうしたの?」
「えっとォ……これ、どうやって払うんだァ?」
沈黙が場を支配する。
エレンがゆっくり瞬きをする。
「……は?」
「いやだからァ、このスマホでどうやって金払うんだァ?」
ペイ〇イ系かと思ったけど違ったかぁ
「…………」
エレンがライカンさんを見る。ライカンさんもこちらを見ていた。
その空気が、なんか妙だった。
「ビームくん」
「おォ?」
「スマホ決済を使ったことが……ないのですか?」
「ないぜェ!」
「……交通機関は?」
「乗ったことねェな!」
この世界では。
「ネット通販は?」
スマホの使い方がわからない俺にそれをしろと?
「……?」
「…………」
ライカンさんが静かに目を伏せた。
エレンはというと、なんかすごい微妙な顔をしている。やめろ、その捨てられた子犬を見るみたいな顔。
「……あんた今までどうやって生きてきたの」
「気合い?」
「気合いって・・・」
エレンが額を押さえる。
その横で、ライカンさんがそっと端末を受け取った。
「……こうです。まずここを開いて、認証。それから――」
「おぉ〜〜〜!!」
すげぇ!そのボタンか!便利を追求しすぎて逆に不便だよ!
「便利だなァこれ!」
「……それが普通なんだよ」
「ちなみにビームくん、口座の残高確認はできますか?」
「あァ!それならたぶんこれかァ?」
適当に画面を開く。
『残高:287,440ディニー』
「おォ、増えてるぜェ!」
「増えてるぜェじゃないのよ……」
エレンが深いため息を吐いた。
「……あんた絶対、一人で生きていけないでしょ」
「失礼だなァ!今日だってちゃんと一人で学校行けたぜェ!」
「途中で迷子になってルビーに保護されたって聞いたけど」
「…………」
なんで知ってんの?いやあれは人生初のさぼりを実行したらルビーに見つかっただけでぇ・・・エレンが呆れたように笑うでも、その目は少しだけ優しかった。
ライカンさんもどこか安心したように小さく息を吐く。
「……少しずつ覚えていけばいいのですよ、ビームくん」
「おォ!」
この後、お菓子を買いすぎちゃったのでヴィクトリア家政のみんなを電話でたたき起こして菓子パを開催しました。
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薄暗い研究室。無数のモニターにはホロウ内部の観測映像が映し出されていた。
その中心で、白衣の男が苛立ったように端末を睨みつける。
『BM-01の目撃情報から既に二週間です』
『目撃地点周辺のホロウ、地上監視網、搬送ルート、シリオン登録データ、全て洗いましたが該当なし』
『監視カメラにもほとんど映っていません』
『映っても数秒です。住居や活動場所の特定までは・・・』
「・・・っクソ!!」
男がいらだちをあらわにする。
モニターには、実験時に撮られた似顔絵データが表示されていた。
“顔面上部サメ型変異”“尾部欠損”
その横には、ホロウ内部で撮影された数秒だけの映像。
地面へ沈む、サメの顔をした少年。
男は忌々しそうに舌打ちした。
「だから私は反対だったんだ」
「余計な感情などというノイズを入れるから、命令系統より自己判断を優先する」
『ですが、そうでないと我々の悲願は・・・』
「黙れ!!」
男は机を叩く。
「BM-01は本来、“最も制御された成功体”になるはずだった」
「それが今や、好き勝手に地上を歩き回っている。もし、見つけられたとして、だれがあれを止められる?」
研究室が沈黙に包まれる。
その時、一人の研究員が恐る恐る口を開いた。
『……キメラを投入しますか?』
部屋の空気が変わる。
何人かの研究員が露骨に顔をしかめた。
『まだ調整不足です』
『短時間しか活動できない上、侵食速度も早い』
『あれは失敗作でしょう』
『だがBM-01ほどの索敵能力に対抗できる個体は他にない』
男はしばらく考え込む。
「・・・やつを捕獲するためにはそれぐらい必要かもしれんな」
『ッ、しかし――』
「ただし絶対に殺すな」
空気が凍る。
男はモニター越しにビームの静止画を見つめながら続けた。
「BM-01は唯一の成功例だ」
「失えば、計画そのものが止まる」
『ですが、もし抵抗した場合は?』
その質問に、男は一瞬だけ黙った。そして静かに口を開く。
「……可能な限り四肢を損傷させろ」
『!』
『脳と心臓さえ無事なら再利用できる』
淡々とした声。
まるで人間ではなく、部品の話をしているようだった。
『ですがBM-01が暴走した場合、キメラでも勝てるかどうか――』
「問題ない、あれは感情がある程度制御してくれる。キメラが負けることはない、はずだ」
研究員が青ざめながら俯く。
誰もその先を言わない。
言えなかった。
モニターの端には、古い実験記録が一瞬だけ映っている。
“BM-01 暴走事故”
“職員死亡 13名”
“拘束区画半壊”
だが次の瞬間には別画面へ切り替わった。
男は静かに目を細める。
「……あれは本来、人類がホロウで生き残るための希望だった」
「だからこそ、必ず回収する」
モニターの中で、サメの顔をした少年が笑っていた。
その笑顔を見つめながら、男は小さく呟く。
「今度こそ逃がさんぞ、我々の“希望”」
いい感じに自分の中でプロットはできたのでそれに従って書いていきます。お楽しみに!!