『君が遺した食卓』   作:狂った自販機

12 / 22
アッシュ2話でアッシュに絡んでたコーヒーのんでた男がヴァンです。

アッシュは裏解決屋の事はほぼ知りません




ヴァンとアッシュ

ヴァン・アークライドから見たアッシュ・クロードの第一印象は。

 

「なんか危なっかしい兄ちゃん」。

 

それだった。

 

 

最初に会った時。

 

アッシュはまだ、

《モンマルト》へ来始めたばかりだった。

 

疲れた顔。

 

愛想笑い。

 

染み付いた謝罪癖。

 

誰かが大きい声を出すと、

肩が揺れる。

 

ヴァンはそういう人間を見慣れていた。

 

“追い詰められて壊れかけてる奴”。

 

そういう匂いがした。

 

 

だから。

 

最初は少し気にしていた。

 

仕事で店へ寄った時。

 

アッシュが皿を運びながら、

客へ何度も頭を下げている。

 

「すみません!」

 

「お待たせしました!」

 

必要以上に下手だ。

 

ヴァンはコーヒーを飲みながら、

小さく呟く。

 

「……生きづらそうだな」

 

 

だが。

 

何度か店へ通う内に、

少し印象が変わる。

 

 

ある日。

 

アッシュはビクトルに怒鳴られていた。

 

「だからタイミング見ろっつってんだろ!!」

 

「すみません!!」

 

しょんぼりしている。

 

普通なら。

 

そのうち消える。

 

ヴァンはそう思っていた。

 

だが。

 

次来た時もいる。

 

また怒鳴られてる。

 

さらに次もいる。

 

しかも。

 

少しずつ成長している。

 

 

「……へぇ」

 

ヴァンは少し感心した。

 

根性だけはある。

 

いや。

 

違う。

 

多分。

 

ここへ居たいのだ。

 

 

ヴァンは人を見る。

 

仕事柄、

他人の嘘や本音へ敏感だった。

 

だから分かった。

 

アッシュは、

ポーレットへ好意がある。

 

分かりやすいくらい。

 

視線でバレている。

 

隠せていない。

 

 

だが。

 

途中から変わっていく。

 

店の空気を見て動く。

 

客を見ている。

 

ユメへ自然に接している。

 

料理へ熱が入っている。

 

“女目当て”だけじゃなくなっていた。

 

そこはヴァンも好感を持っていた。

 

 

ある時。

 

ヴァンは営業後に店へ寄った。

 

すると。

 

厨房でアッシュが真剣な顔をしている。

 

料理の試作だった。

 

ビクトルはいない。

 

なのに手を抜かない。

 

何度も味を見る。

 

失敗する。

 

作り直す。

 

その姿を見て、

ヴァンは少し笑った。

 

「お前、ほんと真面目だな」

 

アッシュが飛び上がる。

 

「ヴァ、ヴァンさん!?」

 

「いや潜入捜査じゃねぇんだからその反応やめろ」

 

「だって気づかなくて……!」

 

ヴァンは試作を一口食べる。

 

少し考えて。

 

「……悪くねぇ」

 

アッシュの顔が明るくなる。

 

その反応が、

妙に犬っぽかった。

 

 

ヴァンは思う。

 

この男。

 

かなり自己評価が低い。

 

多分。

 

昔かなり潰されたタイプだ。

 

だから。

 

褒められる事に慣れてない。

 

認められる事にも慣れてない。

 

 

でも。

 

だからこそ。

 

今の《モンマルト》が、

アッシュにとってどれだけ大事かも分かる。

 

居場所なのだ。

 

ようやく見つけた。

 

自分が“いていい”と思える場所。

 

 

だからヴァンは、

あまり茶化さなかった。

 

珍しく。

 

本当に珍しく。

 

 

ただ。

 

時々ニヤニヤしながら言う。

 

「で、いつ告るんだ?」

 

「ぶっ!!?」

 

アッシュが盛大にむせる。

 

「な、なな何の話ですか!?」

 

「分かりやす過ぎんだろ」

 

「ち、違っ……いや違わないですけど……!」

 

耳まで真っ赤。

 

ヴァンは笑う。

 

「まぁ焦んな」

 

「お前、不器用だけど誠実だしな」

 

「……え」

 

「ちゃんと見てる奴は見てるだろ」

 

その言葉に。

 

アッシュは少しだけ黙る。

 

ヴァンは気づいていた。

 

アッシュは、

まだ自分を信じ切れていない。

 

だから。

 

ほんの少しだけ。

 

背中を押してやりたかった。

 

 

ヴァン自身。

 

綺麗な人間ではない。

 

だからこそ分かる。

 

この男は。

 

多分、

誰かのためなら命を投げ出せるタイプだ。

 

しかも。

 

躊躇なく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。