僕には、何かに熱中したことはほとんどなかった。
一度で模倣でき、二度やれば欠点も見えて、三度目になればそれも修正できた。
だからこそ、僕は真剣になったことが少なかった。
僕の好きなサッカーだってそうだ。
ダイレクトボレーも空振ったことは、当然ないし、
ゴールポストに嫌われたことはあっても、枠を全く捕らえられないなんてことはなかった。
なんとなく、オーバーヘッドキックをしてみたときも、最初こそ地べたを舐めたが、次の2度目には着地まで完璧にこなせた。
喧嘩だってそうだ。
本気で殴り合って負けたことは、金川という僕の幼馴染だけだ。
大体のことはできるし、逆に専門的なことになると、完璧にこなそうと思うほどでもないから諦めて生きてきた。
それでも、普通に暮らすには十分すぎた。
「新田圭介。ポジションはミッドフィルダーです。
よろしくお願いします!」
いつもの僕とは思えない、はっきりした口調で叫ぶ。
いつもなら、ポジションはできるとこテキトーに。
とか言ってたはずだ。
だからこそ、今度は明確に、自分が全力を出せる場所を希望した。
攻撃も防御もできる。
漫画とかでも、某有名な主人公が活躍するポジションだ。
「あんたら! 今度こそマジにやりなさいよね!
ユカリンだって、頑張ってるんだから!!」
僕なんかを、本気で怒ってくれた。
クラスメイトの言葉だ。
バカをやってた僕たち全員に当てた言葉で、
ユカリンこと、彼女の親友で僕の幼馴染の藍原ユカリに当てた言葉なのかもしれない。
僕個人に向けて、言われた言葉ではないのは理解できていた。
——でもその熱は、なんだか僕の胸にまで伝わってきた。
髪型もしっかりして、今度こそ真剣にサッカーをやろうと思えた。
だから、今、僕はらしくないことをしているんだろう。
「では、1年はランニングだ!
グラウンド20周!!」
「おっす!」
僕は、本気になれるだろうか?
手加減しろと言われた僕に、全力を出し続けることができるのか?
あの、濁った眼で、見られ続けることができるのか??
笑いながら走り続けた、幼馴染の藍原が浮かんでくる。
心配そうにしてる顔。
笑っている友人。
楽しそうに笑う幼馴染たち……。
記憶していない。
――手を伸ばされ、突き放してしまった記憶。
……やれるさ。
僕にだって、意地ぐらいある。
インターハイでの優勝した藍原に負けないように。
あの笑顔に、負けないように――。
僕だって、できるさ。
できなきゃいけない。
だから――
今度は全国に行ってやるさ。
1000文字制限……。
色々追記――