勝つ義務   作:eternalsnow

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第9話 天才ではない

 僕は、天才ではないと痛感した。

 

 足が重い。

 息が、きれる。

 ――心臓が掴まれてるみたいに、痛てぇ。

 

 こんな相手を引きはがせなくなってきている。

 ぶつかられ、体格もあってか少し弾き飛ばされそうになる。

 ――ちぃ!!

 

「よーし! そのままだ!

 10番は明らかに消耗してる!!」

 相手の監督の言葉が耳が大きく残る。

 ああ、実際、消耗はしてる。

 僕が一番それをよくわかってる。

 けどさ。

 僕が、このまま終わると……思っているのはあまりにも浅はかだ!!

 

「新田!!」

 先輩からのボール。

 周りも考えず、その足元を狙うかのように渡される――パス。

 カットしようとする相手の位置を、すっと入れ替えて、かかとでボールの機動を変えて、フォワードの先輩に送り出す。

 

 

「く、スルー!」

 焦りながら、ボールに意識が向いたときに、相手が前へと駆けだした。

 そう――。

 今、この瞬間だけ、僕のマークは外れた!

「待て! 10番から目を逸らすな!!」

「おそい!」

 声より先に走り出す。

 ユニフォームを掴まれたが、引きはがす。

 

 放たれた先輩のシュートは、キーパーに弾かれたが……横に弾き切れてない。

 先輩のシュートを弾いたこぼれ球を、ダイレクトでボレーシュート!!

「させん!!」

 

 だが、キーパーの逆には、さっきの松田がスライディングしている。

「見えている!」

 

 キーパーの頭上へと叩き込んだ。

 反応してはいたが、ギリギリのボールはポストに当たり真下に弾かれながら、フォークのようにゴールへと吸い込まれた。

 

「ぐっ!?」

「3点! やった新田! ハットトリック!!」

 

 歓声の中で、相沢と座間の声が聞こえた気がした。

 ――入院中の、座間がいるわけ、ないのに。

 

 

 

 ――汗が滝のように出た。

 結果としては、5対3。

 試合終了の長いホイッスルを聞いて、崩れ落ちるように倒れ込んだ。

 自然と空に手を伸ばした。

 

「……負けたよ」

 相手チームで最もヤバいマークをしてた松田が、僕の手を掴んだ。

 立つように引っ張り上げられると、ふっと笑った。

「まさか、俺の技術を使われるとは思わなかった。

 次は負けん」

 なんというか、負けず嫌いなところは、金川に似てるな。

 眉をひそめ、ひょいと持ち上げられる。

 

 ふっと笑みを浮かべている姿を見て――。

 

 松田、松田ね。よく覚えておこう。

 ……次はもっと強くなってくるだろう。

 

 絞り込まれた筋肉。

 彼もまた、楽しかったのだろう。

 

 

「はは、今度も勝ちますよ」

 ちゃんと笑えたかな?

 目を瞑り、腰に手を当てた松田は、首を横に振った。

 

「……敬語はいい。一応言っておくが、俺も1年だからな」

 え、同い年!?

 

「え!?」

 

 




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