座間の怪我が完治して、
金川の応援に、幼馴染たちで向かうことにした。
当然のように相沢さんも混ざっていたが、彼女はポップコーン片手になにをしているのだろうか?
「……観戦気分か?」
「あ、春香、少し私にもちょうだい。
というか、新田くんは知らないの? 金川くんもヤバいんだよ?」
もぐもぐとポップコーンを一つ運びながら、藍原が相沢さんの代弁をする。
というか、相沢さん。
僕たちに色々言ってたくせに、リスみたいに頬張るなよ……。
「お、アリウープ。あいつ、身長《たっぱ》あるもんなー」
座間の言葉に試合会場を見ると、味方のパスを直接つかんで、バスケのゴールに叩き込む金川。
点をとっても、素早く後ろに下がりディフェンスの体制を取る。
「……タイミングとパスさえ合えば、アリウープなんて簡単だろ……」
「あはは、それは新田だけだね。
私じゃリングに届かないし、そのタイミングとパスが難しいのによく言いますなー」
ポップコーンを食べ終えたのか、僕の肩で頬杖を突いていう相沢さん。
近い、中学の時にボコられた記憶がよみがえるから離れてほしい。
……怖くて言えないけど。
「うん、私も無理。アリウープなんて身長の高いやつができる見得だね。
いいよねホント。私なんて四捨五入で150だよ?
春香はまだ160あるから、いいじゃない。
もっと身長がほしかったよー」
「いいじゃん、ちっちゃくてかわいいし」
言葉に反応して、空気が淀んだ。
バカ、座間!? それは藍原の地雷……。
「座間くん? なんていいました?」
機械仕掛けのような音が聞こえるような首の動きで、ロボットのように首を傾けた藍原。
こえーよ。
「すんません、二度と言いましぇん……」
「そうですわよ? 人の容姿をけなしたらダメよ?
分かったかしら、座間ぁ~!?」
背筋が凍り切った。
相沢《破壊神》が青筋を立てているのがしっかり見えてつい口に出す。
「こええよ、昔を思い出すからその口調をやめてくれ相沢さん」
「ああ、ごめんね。別に新田に怒ってるわけじゃないからいいじゃない」
「座間の失言は謝ったでしょ。許してあげてくれって」
「そうそう、いいんだよ春香。まぁ、二度目はないけどね」
やっぱ幼馴染の女性陣、こえーわ。
キュキュっとバスケのシューズ(バッシュ)がグリップする音と、バスケのボールがドリブルでリズムを刻む音。
軽快で、それでいて、見ているのが退屈になるほどだった。
蹂躙というほどではないが、
120対52の点差での金川のチーム……僕の学校の勝利。
圧倒的だった。
「さすがは、金川、安定して強い」
「……僕が安定してないみたいじゃないか」
呟くような相沢さんの言葉にすこし、むっときた。
「新田くんはコミュ障すぎません?
先輩を敬うのは私もできなかったから言いませんが、話しを聞くかぎり、あなたには十分に過失がありますよ?」
「ほんと、藍原にだけは、言われたくねー」
「なんでよ」
中学時代にイジメられて、ブチギレて先輩どころか先生たちが土下座して、『どうか、陸上を続けてください』って言わせた奴がいっても説得力は全くない。
まあ、今をときめく、参考記録とはいえ、高校最速女子だから藍原は。
体だけじゃなく、心もガキだよホント……。
「ん? なに、その顔?
新田くんは殴られたい顔してませんか?」
「は?」
僕は、思わず眉をひそめた。
こいつ、エスパーかよ。
「……応援というより、観戦だったかもしれんが、おめでとー金川」
「当然の結果だ、お前らに負けてはいられんからな」
大会のMVPのトロフィーを大事に入れ終えた金川と合流。
バスケの先輩たちも、僕と藍原を見たら、快く金川をこっちによこしてくれた。
仏頂面してるが、ところどころ嬉しいらしく笑みがこぼれている。
「幼馴染として、鼻が高いですわー。
いやーほんと、合コンとか呼んでくれよ、金川、新田」
「まあ、予定はないが、気が向いたらな」
「合コンなんかしない!」
座間のふざけた言葉につい、いつも通りの煽りを返し、金川の即答の否定を聞いて、
中学の時に似たやり取りを思い出し、二人の女子のしらーっとした視線を浴びながら笑い合う。
やっぱ、こいつらと一緒が一番楽しいな。