勝つ義務   作:eternalsnow

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後日談 最後の未練

 

 吹き荒れた、桜の花びらは、空を舞った。

 

「旅立ちの季節、ねえ……」

 

 プロの世界に足を踏み入れる前に、一踏ん切りをつけるため、

 僕は一人、学校で佇んでいた。

 

 本来の卒業式は、もっと先だ。

 プロの練習のため、キャンプ地に向かわなくてはいけなくて。

 だからこそ、最後に一言伝えなくてはいけなかった。

 

 

「はい? 新田? どしたの?

 プロの練習に参加するって言ってなかった?」

「相沢さん、ちょっと時間あるかな?」

「え、うん。なに?」

 

 桜の吹雪が舞った。

 学校が僕を歓迎してるとは思えないけど、しっかり言葉を残しておかないと後悔しそうだった。

 思わず、手を伸ばした。

 

「僕さ、言わなきゃいけないことがあるんだ」

「……うん。なに?」

 相沢さんはいつもより、少し頬を赤らめた。

 理解できているんだろう。だからこそ、僕はこの言葉を言わなくちゃいけない。

 

「僕さ、」

「うん。」

 戸惑いながらも、僕は一言だけ伝えることにした。

「藍原さんに振られちゃった……慰めて……」

「死ね」

 

 

 ……理解していたことではあったのだ。

 いや、まあ。

 

「藍原、僕と付き合ってくれ」

「え、ごめん、私、彼氏いるし」

「あ、うん。ごめん」

 

 僕が好きになるほどの女性だから、彼氏ぐらいいるだろそりゃ。

「最後の大会の時みたいに、慰めて~つらい、死にそう」

 

「死ねって言ってるの、分かって?」

 

 ああ、ホント、僕はどうしようもない。

 半端モノだよ。

 

 だって、川口なんて奴、聞いたこともない奴だったんだぜ?

 ――クラスメイトでもない、同級生にも名簿もない。

 

 好きな人に、突然だれか分からん人が彼氏と紹介された――僕の心はボロボロだった。 

 

 

 

 

 

「ホント、よかったわ。

 なら、俺は未練ないな、じゃあな新田。プロの世界でがんばってくれ……。

 おまえ、そろそろ相沢さんから離れたら?

 金川がそろそろキレるぞ?」

「お前、ひとの彼女に何してる!!」

「あ、ははは……やっぱりバカ三人組は、バカ三人組のままだね。

 川口くん、じゃあいこっか。

 バカたちはほっといてさ」

「え、あ、うん」

 

「おい、新田が泣き崩れたぞ!」

「ひでぇ、藍原さんと川口のやつ、トドメ差しやがった!」

「いいから離れろ新田!!」

「はーなーしーてーー! 気持ちはわかるけど、私だって選ぶ権利があるのーーー!」

「うぁあああああああん! 絶対プロで見返してやるぅううう!!」

 

 

 

 

 叫ぶ声が木霊する。

 けど、僕はとても大切なモノをこぼした。

 

 川口と藍原じゃない。

 

 

 金川でも相沢でもない。

 

 あれ?

 

 

 

 

 

 

 僕は、誰といつも……一緒に居たんだ?

 




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