紅白戦。
要は、1年生の能力はどれぐらいか。
先輩たちに「高さ」を知らしめるつもりで、始まる蹂躙劇だ。
僕たちにとっては、実力をアピールできる場。
ただ、その意図は半分当たりで、半分外れた。
開幕から、先輩たちのパスをカットした。
明らかに目でパス先を見てからのパス。取れないほうがおかしい。
速度も早いなら、難しいかもしれないが、どうということはない。
簡単に、足元にボールは収まる。
ワンタッチで、ボールを前に蹴りだした。
味方のフォワードにボールを回し、かなり前目に出したが、念のためバックスピンを入れていたため、ボールはつながった。
フォワードの彼は……上にシュートを外したか。まあいい。失敗はある。
「ドンマイドンマイ、次ー頼むぜー」
声掛けをして、しっかり先輩たちの動きを確認する。
動揺はしてるが、動きはわかりやすい。
次のプレー、ゴールキックから再開。
背の高い先輩と競り合い、優位なポジションをキープして、ボールを前に落とす。
味方のフォローは……ないのか。
落としたボールを払い上げ、一度体ごと空中に。
タックルする先輩を躱して、ドリブル開始する。
基本一対一なのは、多分僕の突破力を見てるのかな?
フェイントを織り交ぜ、ターンを使いながら、ガンガン前に出る。
さっきの彼は……おい。なんで前に出てないのさ。
仕方なく、そのままドリブルして、先輩たちをかわし、キーパーと一対一。
逆サイドにシュートを決めた。
しかし胸に湧くのは、喜びではなかった。
まわりの声も、まるで遠くの音に思えた。
(こんなものか……)
なんて悪い言葉が聞こえてくる。
悪い癖だ。
『あんたら! 今度こそマジにやりなさいよね!』
そう言われた記憶がよみがえる。
油断は、なしでいかないと――。
前半15分。
……僕は全力を尽くした。
すでに3得点を決めて、見学側に回されてしまった。
「新田の実力は見た、見学していなさい」
監督に言われた言葉だった。
……要は、やりすぎで、ほかの1年の能力が見れないから大人しくしてろ。
そう、遠回しに言われてしまった。
「すごいねー、新田くん。先輩相手にハットトリックなんて!」
「はは、ありがと」
同い年の女子マネが、黄色い声を上げて寄ってきた。
当たり障りのない言葉を返して、試合を眺める。
何もできなくて、つまらないな。
『すごいよなー新田は』
『天才って、こういうことなんだろうな』
誰かが言う言葉がうっすら聞こえる。僕は天才なんかじゃない。
ただの要領のいい半端モノだ。
本当の天才は、僕なんかのことを言うんじゃない。
他の幼馴染たちのことを言う言葉だ。
『なんかね。疲れちゃったの』
幼馴染の藍原の言っていた。ノイズって、こういうのか。
確かに、これはノイズだな。
ただただ、うっとおしくて、邪魔だ。