勝つ義務   作:eternalsnow

3 / 15
第3話 敬意の条件

 ……藍原が思っていたのはこういうのだったのだろう。

 

「お前、生意気なんだよ!!」

「ちっ! 先輩を敬えよ。1年坊が!!」

 更衣室で、ガシっと胸倉をつかまれたが、バカと相手するのは時間の無駄。

 バッと掴まれたを引きはがす。

 

 

「敬え? それなら、僕からボールを取ってから言ってくださいよ?」

 その言葉を出した瞬間、拳が顔に飛んでくる。

 見えていて、狙っているのはすぐわかって顔を逸らして避ける。

 

 舌打ちの音と、血管の切れたような音が響いたような気がした。

 

「は? 避けんな!?」

「できないから、暴力ですか。程度が知れますね?」

 青筋を立てて、殴りかかる先輩の拳をすべて避けて、ため息を吐く。

 ほんと、邪魔だな。

 藍原もこんな気持ちだったんだろう。

 ただただ、邪魔。

 

 しかも顔?

 バレるようなとこ、殴ってんじゃねえよ。

 

 暴力沙汰になったら、誰もサッカーなんてできない時代なのに……お前なにしてんの?

 

 

 

 

 

 

 それから、レギュラーとの紅白戦に、1年生ながら選ばれた。

 だが、仲間はあの先輩方だった。

 プレー上で、いがみ合いなんて必要はないし、それはただのノイズにしかならない。

 

「よろしくな。新田」

「ええ、全力で胸をお借りします」

 

 試合開始して、前半終了まで、一度として僕にパスが回ることはなかった。

 点数は、1対3で負けている。

 パスカットからドリブルして、1点を取ったはいいが、それ以外はすべてレギュラーチームに一方的に蹂躙されている。

 

「ははは、どうよ俺、結構いけてね?」

 

 味方のはずの言葉が耳障りに感じる。

 

 息もは乱れていても、練習着も汚れない。

 全部かわされ、パスカットされ、ドリブルすらまともにできていない状態で何を言っている?

 

 そもそも、少々活躍しただけで、イケてるわけないだろ。

 ――3点も取られている。

 

 一方的に負けて……悔しさはないのか?

 レギュラーチーム? あれで練習にすらなっているのか??

 ……去年の僕もその気持ちはあったから。言う資格なんてない。

 頭を振って、考える。

 

 こいつらが、僕にパスを回さないのは理解できたし、

 バカ共は無視でいい。

 

 邪魔するだけな奴らに、考える時間を割くのは無駄だ。

 

 負けるために試合をするなんて、真剣にやっている以上する気はない。

 ……やるしかないか。

 

 そう思っているとホイッスルが鳴る。

 水分を飲み、タオルをこっそりと木の裏に隠す。

 

 ――勝つために、全力で。

 

 後半が始まった。

 だが、この後半のプレーは僕にとっても最も不本意で、

 僕にとって苦い思い出になった。

 

 

 

 

 

 




1000文字制限おそるべし。

色々と追記。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。