……藍原が思っていたのはこういうのだったのだろう。
「お前、生意気なんだよ!!」
「ちっ! 先輩を敬えよ。1年坊が!!」
更衣室で、ガシっと胸倉をつかまれたが、バカと相手するのは時間の無駄。
バッと掴まれたを引きはがす。
「敬え? それなら、僕からボールを取ってから言ってくださいよ?」
その言葉を出した瞬間、拳が顔に飛んでくる。
見えていて、狙っているのはすぐわかって顔を逸らして避ける。
舌打ちの音と、血管の切れたような音が響いたような気がした。
「は? 避けんな!?」
「できないから、暴力ですか。程度が知れますね?」
青筋を立てて、殴りかかる先輩の拳をすべて避けて、ため息を吐く。
ほんと、邪魔だな。
藍原もこんな気持ちだったんだろう。
ただただ、邪魔。
しかも顔?
バレるようなとこ、殴ってんじゃねえよ。
暴力沙汰になったら、誰もサッカーなんてできない時代なのに……お前なにしてんの?
それから、レギュラーとの紅白戦に、1年生ながら選ばれた。
だが、仲間はあの先輩方だった。
プレー上で、いがみ合いなんて必要はないし、それはただのノイズにしかならない。
「よろしくな。新田」
「ええ、全力で胸をお借りします」
試合開始して、前半終了まで、一度として僕にパスが回ることはなかった。
点数は、1対3で負けている。
パスカットからドリブルして、1点を取ったはいいが、それ以外はすべてレギュラーチームに一方的に蹂躙されている。
「ははは、どうよ俺、結構いけてね?」
味方のはずの言葉が耳障りに感じる。
息もは乱れていても、練習着も汚れない。
全部かわされ、パスカットされ、ドリブルすらまともにできていない状態で何を言っている?
そもそも、少々活躍しただけで、イケてるわけないだろ。
――3点も取られている。
一方的に負けて……悔しさはないのか?
レギュラーチーム? あれで練習にすらなっているのか??
……去年の僕もその気持ちはあったから。言う資格なんてない。
頭を振って、考える。
こいつらが、僕にパスを回さないのは理解できたし、
バカ共は無視でいい。
邪魔するだけな奴らに、考える時間を割くのは無駄だ。
負けるために試合をするなんて、真剣にやっている以上する気はない。
……やるしかないか。
そう思っているとホイッスルが鳴る。
水分を飲み、タオルをこっそりと木の裏に隠す。
――勝つために、全力で。
後半が始まった。
だが、この後半のプレーは僕にとっても最も不本意で、
僕にとって苦い思い出になった。
1000文字制限おそるべし。
色々と追記。