勝つ義務   作:eternalsnow

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第6話 逃げた答え。

 次の試合に勝てば、国立。

 いわゆる全国大会に出場になる。

 僕の目標で、同時にどこか虚しい目標だった。

 

 自業自得の結果だが、僕は孤立している。

 開き直っていても、僕が先輩たちに嫌われているのはわかっている。

 これほど、生意気でバカな奴を嫌わないわけがない。

 

 

「やっぱすげーなー新田ー」

「はは、恐悦至極。とでもいえばいい?」

「は! 言ってろ?

 スマブラでは別だかんな!」

 

 部活もないのに、わざわざ待ってくれている座間とだべりながら帰る。

 いつも以上にほっとしている自分に嫌気がさす。

 自分で選んで、全力を出すと決めて、また中途半端なことしてる気がする。

 

 赤信号に止まる。

 びゅんびゅんと車の風を感じる中、

 座間がにやにやと笑いながら言いやがった。

 

「でもさーあまりにガチじゃん。

 小学生以来だっけか?」

「……僕にも色々あったんだ」

「へー。やっぱ藍原さんのため? それとも、破壊神《相沢》の方?」

「は?」

 突然のバカの物言いにイラっとした。

 元々、僕たちが言い始めた相沢への『破壊神』という呼び名。

 僕たちを咎めて、説教してくれていたとわかった今では、不快に思える。

 

「図星か。

 まあうん、二人ともめっちゃかわいいし、キレイだからなー。

 うんうん。わかるわかる」

「……お前は何を言ってる?」

 首を上下にして、腕を組むバカを見て、ため息を吐く。

 ――そんなんじゃない。

 僕が藍原に思うのは、羨望だった。

 そして、相沢に思うのは……なんだ?

 

『あんたら! 今度こそマジにやりなさいよね!

 ユカリンだって、頑張ってるんだから!!』

 そう言われたのは僕に、じゃない。

『さい、ってーー!!』

 そう言われた。あの時、僕はどう、思った??

 ……今の僕は、相沢に誇れるだろうか?

 僕は、何をしてるんだ??

 

 

「……なあ新田ー」

「ん? なんだい?」

 珍しいにやにやの無い、真剣な表情にビクリとする。

「お前さー今、サッカーやってて、楽しいのか?」

「は?」

 

 楽しいか??? そんなの……。

「昔言ってただろ? 楽しければそれでいいってさ。

 あんとき、つまんない時の顔してたろー」

 ……どうしてわかった。その言葉が出なかった。

 当たり前だった。

 今、僕自身がその気持ちを問うていた時だった。

 だからこそ、その時間に空白が生まれて、失敗をした。

 

「っ! あぶねえ!!」

「は!? 何して……!? 座間!!」

 突然、突き飛ばされて、轟音が響いた。

 トラックが僕の居た位置を通過して、店に突っ込んでいた。

 同時に、突き飛ばしたはずの座間は、力なく倒れていた!

 

「おい! おい!! しっかりしろ!! おい!!」

「い、ってえ。ちぃ、ドジったーー」

 足を抑えながら表情を歪めている。

 足を見る、青くはれ上がっていて、足首が太ももと同じぐらい腫れあがっている。

 慌てて、携帯を取り出して119を押す。

 つながるまでの音が遠く、長く感じた。

 携帯を持つ手が震えて……息が浅くなる。

 早く、繋がれ……っ!

「●●交差点で事故です! すぐ来てください!!」

 つながったと同時に、場所を伝えた。

 座間の顔が、青い。

 今はアドレナリンが出ているだろうが、間違いなく足が折れている座間を僕は励ますぐらいしか、できなかった。

「救急車は呼んだ。すぐ来る。だから耐えてくれ」

「はは、おおげさだな……」

「大袈裟じゃない、少なくとも足は腫れてる。おとなしくしろ」

「……マジかよ」

 

 

 

 

 白い壁、何もない病室。

 6人の病室だが、他に人もおらず、実質個室状態の中、座間は両手を頭の後ろに回してベッドに寝転がっていた。

 足は吊り、見るからに痛々しかった。

 

「ちぇー全治1ヶ月だってさー。

 新田の試合と金川の試合に、藍原さんの応援行きたかったぜー……」

「……ごめん」

 ぶー垂れながら、僕の取ったノートを書き写しながら座間はいった。

 胸の奥が強く傷んだ。

 僕が、ぼーっとしていたから。

 

「は? 前、藍原にさー。

 友達だから、当然だって言ったの、お前じゃん」

 3年前のアレのこと?

 確かに、僕はそういった。

「それとこれとは――」

「違わねえって。

 友達で、反応できたから、体が動いた。そんだけ。

 ……国立って言うんだっけ?  控えてんだろ。練習しなくていいのかよ。

 国立の応援までには絶対治していくからさー」

 まったく、このバカは。

 救いようのない、お人好しめ。

 

「……わかった」

 だけど、僕には——

 ずるい答えしか、返せなかった。

 

 

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