勝つ義務   作:eternalsnow

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第8話 まだ、行ける。

 国立を賭けた最後の戦い。

 声援も、励ましの言葉も、頭の中は勝利以外になかった。

 

 油断せずに、全力で。

 今は、それだけしか考えられなかった。

 じゃないと、座間に顔向けできそうにない。

 

「10番だ! 10番を徹底マークしろ!」

 分かり切っていることだ。

 僕がどれだけ、バカなことをしてきたツケが回ってきた。

 常に3人がべったりと張り付いている。

 徹底的なマーク。

 僕にボールを触れさせない、あるいは、僕の場所にボールを近づけない。

 ある意味で、最も正しい行為だろう。

 

「く、この!」

 ユニフォームを引っ張ってくるが、体勢と足の速度を変えることで、避ける。ただ、ボールを呼び込んでもドリブルする隙間はあまりにもない。

 

「っ! 新田!」

 この状況で、僕にボールを出してくる先輩。

 一瞬、僕からボールに目が入った。

 その瞬間に、ワンツーのように先輩にボールを返した。

 

「ちぃ!」

 圧をかけるように相手が、僕のユニフォームを引っ張るが、体をひねることで手を剥がす。

 もう一度返してくれたボールをダイレクトでゴールに叩き込んだ。

 

「うぉー! さすが新田ーー!!」

「3人じゃダメだ! 松田! お前も新田につけ!」

 

 相手チームの監督の怒号と、僕のマークは4人になった。

 明確なフィールドに穴ができる。

 先輩たちは、それになんで気づかない?

 僕が一人で抜けるより、明らかに楽だろうに。

 

 なにより、この追加できた奴がヤバい。

 徹底マークなのに、先んじて潰してくる。僕へのパスだけを弾いているのか…理解できない。

 圧力とパスカットを巧につかって、淡々とこなし続ける仕事人。

 こいつは、間違いなく上手い。

 

「やりにくい、な!」

「当たり前だ、俺はお前をやりにくくするために、こんなマークをしてるんだからな!」

 

 体のこなしが上手い。

 的確に嫌な場所と、ポジションに付く。

 ……そうか、テコと重心を利用しているのか?

 理解して、模倣を始める。

 

「っく!?」

「やめてよね。こんな徹底マークしても、僕が止められるわけないじゃないか!」

 重心を調整して、伸ばせない足側にボールを回して走り抜ける。

 足の速さは間違いなく互角でも、走り出す一歩の速さが僕の方が早かった。

 

「おりゃあ!!」

 右からくる相手チームのスライディングにボールを当て、左脚を振り抜いてゴールネットを揺らした。

 よし、2点。

 前半終了間際に奪ったこのゴールはデカい。

 

 ハーフタイムの間、

 2対1。

 さっきの1点で、相手の意気は消沈している。

 畳みかけるのは、今という時。

 落ち着いてやればいい。

 明確に、相手はうまくとも、僕には届いてない。

 

 足の違和感はある。なんども足はスパイクで削られているが、

 まだ、行ける。

 

 

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