国立を賭けた最後の戦い。
声援も、励ましの言葉も、頭の中は勝利以外になかった。
油断せずに、全力で。
今は、それだけしか考えられなかった。
じゃないと、座間に顔向けできそうにない。
「10番だ! 10番を徹底マークしろ!」
分かり切っていることだ。
僕がどれだけ、バカなことをしてきたツケが回ってきた。
常に3人がべったりと張り付いている。
徹底的なマーク。
僕にボールを触れさせない、あるいは、僕の場所にボールを近づけない。
ある意味で、最も正しい行為だろう。
「く、この!」
ユニフォームを引っ張ってくるが、体勢と足の速度を変えることで、避ける。ただ、ボールを呼び込んでもドリブルする隙間はあまりにもない。
「っ! 新田!」
この状況で、僕にボールを出してくる先輩。
一瞬、僕からボールに目が入った。
その瞬間に、ワンツーのように先輩にボールを返した。
「ちぃ!」
圧をかけるように相手が、僕のユニフォームを引っ張るが、体をひねることで手を剥がす。
もう一度返してくれたボールをダイレクトでゴールに叩き込んだ。
「うぉー! さすが新田ーー!!」
「3人じゃダメだ! 松田! お前も新田につけ!」
相手チームの監督の怒号と、僕のマークは4人になった。
明確なフィールドに穴ができる。
先輩たちは、それになんで気づかない?
僕が一人で抜けるより、明らかに楽だろうに。
なにより、この追加できた奴がヤバい。
徹底マークなのに、先んじて潰してくる。僕へのパスだけを弾いているのか…理解できない。
圧力とパスカットを巧につかって、淡々とこなし続ける仕事人。
こいつは、間違いなく上手い。
「やりにくい、な!」
「当たり前だ、俺はお前をやりにくくするために、こんなマークをしてるんだからな!」
体のこなしが上手い。
的確に嫌な場所と、ポジションに付く。
……そうか、テコと重心を利用しているのか?
理解して、模倣を始める。
「っく!?」
「やめてよね。こんな徹底マークしても、僕が止められるわけないじゃないか!」
重心を調整して、伸ばせない足側にボールを回して走り抜ける。
足の速さは間違いなく互角でも、走り出す一歩の速さが僕の方が早かった。
「おりゃあ!!」
右からくる相手チームのスライディングにボールを当て、左脚を振り抜いてゴールネットを揺らした。
よし、2点。
前半終了間際に奪ったこのゴールはデカい。
ハーフタイムの間、
2対1。
さっきの1点で、相手の意気は消沈している。
畳みかけるのは、今という時。
落ち着いてやればいい。
明確に、相手はうまくとも、僕には届いてない。
足の違和感はある。なんども足はスパイクで削られているが、
まだ、行ける。