ポケモンロード バイオレット・レクイエム 作:とり。@pktorisky
ーわたしはポケモン勝負が大好き!そしてわたしには一番のライバルがいます!ー
ーそれがハルト!ハルトはとっても好奇心旺盛でお人よし!そしてわたしと同じくらいポケモン勝負が大好き!ー
ーハルトは不思議な魅力の持ち主で、人もポケモンもみんな笑顔にしちゃいます!もちろんわたしもハルトのことが大好きです!ー
ーそんなハルトとのポケモン勝負がわたしの一番の楽しみ!ー
ネモはグレープアカデミー学生寮のとある部屋を訪れる。
「だったのに…」
ドアの鍵がかけられていないにも関わらず部屋には人やポケモンの気配は一切ない。そんな様子を見てネモは溜息をつき、ベッドに横たわる。
「ハルト…どこにいるの…?わたし…会いたいよ…」
ネモの視線の先にある学習机の上に放り出されているノート。その表紙には『ハルト』の名が記されていた。
ポケモンロード バイオレット・レクイエム
第1話 少女の涙
「おーいハルト。来てないかー?」
そう言いながらピクニック用のバスケットを持った一人の男子生徒が部屋に入ってきた。
「ってうおわ!?生徒会長!?なんでハルトのベッドで寝てるんだ!?」
「…ペパー?なんでここに?」
「それはこっちのセリフなんだが…というかオマエ…泣いてる?」
「え?」
ネモは人差し指を目元に当て、ようやく自分が涙を流していることに気づく。
「あれ?本当だ…どうして…?涙が止まらなくて…うっ…うっ…うわあああああああん!!」
「…なんだよ。無理してたのはオレだけじゃなかったのかよ」
「うっ…うっ…どういう事?」
「ハルトが行方不明になった時オレは滅茶苦茶へこんで気が狂いそうになった。だけどオマエはすぐにいつも通りに振舞うようになったし、それに他のトレーナーの特訓相手をよくするようになっただろ?確かうちの生徒じゃなかったような…」
「…ロイとアンの事かな?二人とも実りのあるトレーナーだよ。特にロイはわたしに勝ったこともあるくらいだし」
「だからオマエはもうハルトの事は吹っ切れたって思ってたんだ。そんなオマエを見てオレも立ち直らなきゃって焦ってたんだぜ?」
「そう簡単に割り切れないよ…ハルトはわたしの大切な人だもん」
「…だよな。その涙を見てオマエもオレと同じだって分かってちょっと安心したぜ」
「それとねペパー。わたしが笑顔でいるのもロイたちを鍛えてるのもハルトのためなんだよ」
「ハルトのため?」
「ハルトが帰ってきた時に一番の笑顔で迎えてあげたいし。それとロイたちのことを紹介してあげるんだ。わたしに負けないくらい強いライバルがいっぱい増えたらきっとハルトはびっくりして喜ぶでしょ!」
「ふふ…あはははは!オマエらしいな!」
「ちょっとー!笑わないでよー!わたし本気なんだよ!?」
「ふふ、悪い悪い!でもすげーよオマエ。つらいのに笑顔で振舞ってるだけじゃなくてハルトが帰ってきたときの事も考えてるなんてさ」
「それならペパーもだよ。この部屋掃除してるのあなたでしょ?」
「…!お見通しちゃんか…」
「だってこの部屋、ずっと使われてないはずなのにほこりもなくてピカピカなんだもん。そんなことするのペパーしかいないでしょ?」
「そうだな…ハルトなら何事もなかったみてーにしれっと帰ってくるかもしれない…その時に部屋が綺麗な方が嬉しいだろ?」
「それとそのバスケットの中身はサンドウィッチだよね?ハルトの分の」
「もちろん。アイツが帰ってきたらとびっきりうまいできたてのサンドウィッチを食わせてやりたいからな。だからこうやって毎日ハルトの部屋に来てるんだ」
「ペパーは優しいね」
「オマエもな。でもハルトは今日も帰ってこなかった」
「…もうハルトが行方不明になって一年か…」
「…なあネモ。サンドウィッチ食わないか?」
「…ありがとう。いただくね」
ペパーはサンドウィッチを二つに分け、その一つをネモに渡す。
「…ん!前よりもおいしくなってる…!」
「言っただろ?アイツにとびっきりうまいのを食わせてやりたいって」
「きっとハルトも食べたら喜ぶよ!…こうしてペパーと話すのも久しぶりだね」
「下手すりゃ一年ぶりか?特にオマエは色々あったからな…」
「…わたしたちってやっぱりハルトがいたおかげで繋がっていたんだね」
「そうだな…アイツがいなくなるだけでこんなに遠くなっちまうんだな…でもオマエとボタンは今もよく一緒にいるって聞いてるぜ?アイツはどうしてるんだ?」
「うーん、そんなに話はしてないかな。ボタンって話すのは得意な方じゃないし、隙あらばスマホロトムいじってるし」
「相変わらずだなアイツ…」
「でもね、この前ボタンのスマホロトムの画面をチラッと見ちゃったんだけど、ハルトの事を調べてたの」
「アイツもオレたちと同じ気持ちって事か…よっし!くよくよしてる場合じゃねーな!」
「そうだね!気分転換にポケモン勝負する?」
「オマエのそういう所も相変わらずだな。でもその勝負乗っ…」
その時…外から大きな爆発のような音が聞こえ部屋が大きく揺れ始める!
「何!?地震!?」
「伏せろネモ!!」
伏せて身を守るネモとペパーであったが、揺れが収まる気配はない。異様に感じたペパーは何とか立ち上がり、窓から外を見る。
「おい…どういうことだよあれ…」
続いてネモも立ち上がり外を見て衝撃を受ける。
「嘘でしょ…未来のパラドックスポケモン!?」
未来のパラドックスポケモン…パルデア地方の立ち入り禁止区域であるエリアゼロに生息している機械のような身体を持つ未知のポケモン。
厳重に管理されているエリアゼロからパラドックスポケモンが街中へ現れるのは本来ありえないことであるが、二人が驚愕した理由はそれだけではなかった。
「いくらなんでも…多すぎんだろ…!?」
数百体のパラドックスポケモンが暴れまわり、学校を破壊する。見慣れた景色が地獄のような光景へと変貌し始めていたのだ。
急いで部屋を出て走り出すネモとペパー。
「きゃあああああ!!!」「うわー!助けてくれー!!」
校内には既にパラドックスポケモンが侵入しており、学校の壁や床や天井を破壊していた。自分のポケモンを繰り出し身を守る生徒もいるものの、大半の生徒やポケモンたちは突然の異常事態で混乱していた。
「生徒を守るのは教師の役目です!キョジオーン!ワイドガード!」
一方でアカデミーの教師たちはポケモンを繰り出し応戦していた。
「ブリムオン!ひかりのかべ!」
先生たちのポケモンは防御技で生徒たちを守る!
「さあ!今のうちに避難したまえ!」
「は、はい!」
「ひでー光景だな…」
「わたしの宝物…みんなのアカデミーが…!」
「ネモさん!ペパーさん!」
「クラベル校長!」
二人の元へアカデミー校長のクラベルが走ってやってくる。
「校長先生!わたしも戦います!」
「ダメです!あなたの実力は私もよく知っていますが、未来ある若者をこれ以上危険にさらすことはできません!早く避難を!」
その時!ネモのスマホロトムに着信が入る!
「…ボタン!?」
『ネモ!今すぐグランドに行って!』
「え!?どういう事!?」
『そこに行けばこいつら止められるかもしれない!詳しくは後で話す!』
「…分かった。ごめんなさい校長先生。わたし、行かなきゃ…!」
「…生徒を守るのは教師の役目ですが、生徒の意思を尊重するのもまた教師の役目!モロバレル!!」
クラベルはきのこポケモンのモロバレルを繰り出した!
「辛い役回りをさせることをお許しください。いかりのこな!」
赤い粉を周囲に振りまくモロバレル。するとパラドックスポケモンたちがモロバレルを一斉に攻撃し始める!
「いかりのこなを使ったポケモンは周囲の攻撃の標的となります。さあ!今のうちに!」
「…ありがとうございます!」
「行こうぜ!ネモ!」
襲撃の影響でエレベーターを使うことはできない。二人は階段を登りつつ、ボタンとの通話を続けながら屋上にあるグランドを目指す。
「それでボタン!屋上に行けってどういう事なんだよ!?」
『学校を襲ったパラドックスポケモン。たぶん野生じゃないと思うん』
「なんだって!?」
『ネモ。あのポケモンたちを見て何か気づかなかった?』
「…そっか!もし野生ポケモンの群れが混乱して街に迷い込んできたのなら…あれだけの数なら混乱したポケモン同士での喧嘩が起きるのが普通なはず!」
『だけどあのポケモンたちは的確に破壊活動だけしてた』
「ってことは…アイツらに指示してる奴がいるってことか!?」
「でもあれだけの数のポケモンに同時に指示なんてできるのかな?」
『パラドックスポケモンってロボットみたいな身体してるでしょ?だからうちはこう考えたん。「電波を利用してまとめて指示を出している」んじゃないかって』
「…!」
『で、逆探知したらビンゴ。屋上から正体不明の電波が発信されてるのが検知されたって訳』
「なるほど…!流石はボタンだね!」
「…っと!」
グランドへ向かおうとするペパーたちの前に二体のパラドックスポケモンが立ちはだかる!
「テツノワダチ…こいつとは本当によく戦う事になるな…マフィティフ!スコヴィラン!」
ペパーも対抗すべく二体のポケモンを同時に繰り出す!
「マフィティフはくらいつく!スコヴィランはかえんほうしゃ!」
マフィティフたちの攻撃が命中し、テツノワダチたちは体勢を崩す!
「ここはオレたちが何とかする!早く行け!ネモ!!」
「ありがとうペパー!任せるよ!!」
そしてネモはついにグランドへと到着。乱闘が巻き起こる校内とは対照的にグランドは静寂に包まれていた。
「ほう。もうここまでたどり着くとはな」
「あなたは…!?」
ネモの目の前に現れたのは、フードの付いたローブを着て全身を隠した謎の男であった。
「俺はチーム・ユートピアのヴレイ。未来を導く者」
「あなたがアカデミーを襲った犯人?こんなこと今すぐやめて!!」
「断る。これはこの世界のため、そして未来のために必要な犠牲なのだからな」
「ふざけないで!!このアカデミーはみんなの思い出がいっぱい詰まった宝物なんだよ!?それを滅茶苦茶にするなんて…こんなの絶対間違ってる!!」
「そうか。どうやら君と俺は相知れないようだ。さてどうやって俺を止める?このまま無駄な説得を続けるつもりか?」
「ポケモン勝負であなたを倒してみせる!!」
そう告げるとネモはモンスターボールを取り出し、ヴレイに向けて構える!
「それでこそポケモントレーナーだ。良かろう。相手になってやる」
何処からともなくモンスターボールが現れ、ヴレイはそれを手に取りネモに向けて構える。
「わたしは許さない!みんなのアカデミーを…そしてハルトが帰ってくるこの場所を壊したあなたを!!絶対に!!!」
ネモVSヴレイの戦いが今、幕を開ける…!
To be contined…
ー次回「打ち砕かれし希望の光」ー