ポケモンロード バイオレット・レクイエム 作:とり。@pktorisky
「君は我々にとって最大の脅威。悪いがこの時代から消えてもらう!」
周囲の景色が歪み、ハルトの背後に突如現れた古いゲーム機のような見た目の機械。ハルトはその機械に見覚えがあった。
「タイムマシン!?何でここに!?」
タイムマシンが輝き出すと周囲の景色が歪みだし、空に巨大な渦が発生する!
「うわああああああああああ!!!」
そして巨大な渦はハルトを飲み込み、そのまま消滅してしまう!
「ふふふ…さらばだ。パルデアの救世主よ」
ポケモンロード バイオレット・レクイエム
Chapter5 ハルトの追憶
「っ…ここは…?」
倒れていたが目を覚ますハルト。立ち上がって周囲を見渡すと、そこには無数のクリスタルのような結晶が広がっていた。
「綺麗…!これってテラスタル結晶…だよね?右も左も下も…それどころか地平線の先までテラスタル結晶が広がっているような…少なくともてらす池ではないよね?ん?」
ハルトは自分の足元に開いたモンスターボールが二つ転がっている事に気が付いた。
「モモワロウとガチグマのボール…壊れちゃってるみたいだね。そういえばモンスターボールに入っているポケモンって持ち主のトレーナーが死亡すると自動的に壊れて野生の状態になるってジニア先生が前に話していたような…」
そしてハルトはこれまでに起きたことを思い浮かべる。
(あのヴレイって男のタイムマシンに巻き込まれてぼくは異なる時代に飛ばされた。たぶんモモワロウとガチグマは元の時代に残ったままだ。そして元の時代にぼくはいなくなったから死亡したものとみなされ、二匹は野生の状態に戻ってしまったってところかな…モモワロウたちの事は心配だけど…でも!)
「過去にせよ未来にせよこれってタイムスリップでしょ!?くー!SFみたいでワクワクしてきたー!!ミライドン!!」
ハルトはボールからミライドンを繰り出した!
「アギャ!」
「元の時代に戻るためにまずは色んなところを冒険しないとだね!行こう!!」
こうして探索を始めたハルト。時には自らの足で歩いて。時にはミライドンに乗って駆け抜けて、さらに天を飛び回った。しかし…
「もう…五時間くらいは走ったよね?どういう事なの…景色が…全く変わらない…?」
後ろを振り返り自分たちが歩いてきた道にあるのはテラスタル結晶。前を向いても先にあるのはテラスタル結晶。そして空を飛んで地上を見ても地平線の先までテラスタル結晶が延々と続く…そんな景色が続いていたのだ。
ハルトは近くにあるテラスタル結晶に手を触れてある事を確認する。
「道に迷って同じところをグルグル回ってる可能性も考えていくつかのテラスタル結晶に目印を付けたけど…目印は無い。つまり前には確実に進んでいるはず…」
最初は光り輝く美しい景色に感動していたハルトであったが、延々と続く変わらない光景に恐怖を感じ始めていた。
「それに…木や花…植物が一切ない。それどころか川や海、小さな湧き水すら一切ない…これってかなりヤバいんじゃ…?」
その時、ハルトのお腹がぐるる~と音を立てる。
「お腹空いたな…ちょっと休憩しよっか」
バッグの中からハルトはサンドウィッチを取り出す。そして半分に分けてミライドンに渡そうとするが…
「…アギャ?」
「あれ?お腹空いてないの?」
「アギャ!」
「おかしいな…ミライドンって食いしん坊でいつもお腹を空かせているのに…ん?」
ミライドンの機械のような身体には光る粒子が流れている透明な器官がある。そんな器官を見てハルトはある事に気が付く。
「そういえばこの世界、空にキラキラ光る粒子みたいなものが舞ってるよな…ミライドンの身体に流れている粒子と似ているような…?」
その時であった!結晶を叩き壊しながら複数の何かが近づいてきた!
「「ウィ・ルドン・ファー!」」
「テツノワダチ!?しかも五体!どうやらぼくたちはこいつらの縄張りに入っちゃったみたいだね…ミライドン!」
「アギャア!」
そして数分後…
「ふう…何とか撒けたね…」
「アギャア…」
「さてと…一回状況を整理しよう。まず未来のパラドックスポケモンのテツノワダチがいたって事は…ここは未来の世界って事だよね?ミライドン、キミは未来の世界からぼくたちの時代に来たみたいだけど、この時代がキミの故郷なのかい?」
「アギャッス!」
人にはポケモンの言葉は分からない。しかしハルトにはミライドンが頷いているように思えた。
「それとこの未来の世界には人はいない。水や植物もほとんどない…ミライドン、キミはこんな過酷な世界で生きていたんだね」
「ギャッス」
そしてハルトは自分のバッグを開いて食糧を確認する。
「この食糧が尽きたらぼくだけでなく、ぼくのポケモンたちまで飢え死んでしまう。その前に元の世界に帰る方法を見つけなきゃいけないって事か…想像していたよりずっと厳しいサバイバルになりそうだね…」
それからハルトはマスカーニャが入っているモンスターボールを見つける。
「モンスターボールの中に入っているポケモンは冬眠のような状態になる。ボールから出さない限り体力は減らないし、お腹が空く事もない。そして不幸中の幸いなのはこの未来の世界では何故かミライドンはお腹が空かないこと」
「アギャ?」
「つまり生き残るには他のポケモンはなるべく出さないようにして、ミライドン一匹で切り抜けるのが一番って事かな…頼りにしてるよ。ミライドン」
「アギャ!」
ハルトは元の時代に戻る方法を見つけるため、ミライドンに乗って走り続けた。少しでも手掛かりを見つけるため、可能な限り遠くへ。
パラドックスポケモンに襲われた時は最低限の被害になるように考えて戦った。
しかし走っても走っても景色は変わらない。残りの食糧と水ばかりが少しずつ減っていき、一週間経過したのであった…
「はあ…はあ…」
「アギャ…」
座り込むハルトを見て心配するミライドン。ハルトは前向きで明るい性格であったが、その心は崩れ始めていた…
『ハルト!!』
「…!!」
そんな時、ハルトの脳裏にある光景が蘇った…
『ハルト!またポケモン勝負しようよ!』
『ハルト!それより腹減ってるだろ?まずは飯にしようぜ!』
『二人ともグイグイ行き過ぎ。ハルト困ってるし』
「ネモ…ペパー…ボタン…!」
『ハルト!またポケモン勝負さしよ!』
『スグ!アンタは弟なんだから譲りなさい!まずはあたしに付き合いなさいよ!』
『わやじゃ…』
「スグリ…ゼイユ…!」
「みんなと…やりたい事が…まだまだいっぱいある…こんなところで…諦めて…たまるか…!」
大好きな友にまた会いたい。その一心でハルトが立ち上がろうとした…その時であった。
「っっっああああっっっ!!」
「アギャ!?」
激痛が走り転んでしまうハルト。ハルトは痛みを覚えた左足へと目を向けると…
「な…何…これ…!?」
自らの身体を見て恐怖を覚えるハルト。左足のふくらはぎの一部が硬化し、透き通った形状に…まるでテラスタル結晶のような外見に変貌していたのだ…
それからハルトの身体のテラスタル結晶化が始まった。一日ごとに少しずつ、激痛と共にじわりじわりと美しい結晶はハルトの身体を浸食していく。
ハルトの心と身体は限界を迎えつつあった。それでも少年は力を振り絞り、ミライドンの背に乗って走り続けた。
元の時代に戻って友と再会する。そんな奇跡が起こることを信じて…
(…ぼくが未来に来てからどれくらいが経ったんだろう?)
(身体はほとんど…テラスタル結晶化しちゃったかな…息はできるけど…手足は動かないし…声すらほとんど出ない…もう痛みも分からないや…)
もはやハルトにはミライドンに掴まる力すら残っていなかった。そんなハルトを両手で抱えてミライドンはゆっくりと進む。
(…ここは?)
視界もぼんやりしていたハルトであったが、目の前に広がる光景が今まで見てきた光景とは異なる事には気づいていた。
(大きな門に…広場…長い階段…その先に大きな建物…この街は…)
「テーブル…シティ…」
友と出会い、多くのことを学んだ。まさにハルトにとっての青春を象徴する街。しかしハルトの知るテーブルシティとは明らかに異なる点があった。
大きな門も。建物も。道路も階段も。そして街のシンボルであるアカデミーも。全てがテラスタル結晶化していたのだ。
そして街中には『人間のような形をしたテラスタル結晶の残骸』も転がっていた。
(薄々察してはいたけど…この未来の世界は…人類が滅んだ後の世界…ぼくたちが生きた世界は…やがて滅びるってことか…それもテラスタルによって…)
(大好きな街が…滅んだ光景を見るのは…かなりきついな…)
(…視界もぼやけてきた…ぼくの旅も…人生も…ここで終わりなのかな…マスカーニャ…みんな…巻き込んじゃってごめん…)
(元の世界に…帰りたかった…ぼくはまだ…死にたくないよ…)
(何も見えないし…何も聞こえない…虚無…ぼくは死んだのかな…?)
(死後の世界って…天国とか地獄じゃないんだ…)
(それとも…ぼくはまだ生きてるのか?もう何も分からないや…)
(ッッッッ!!!!!)
(ぐあああああああああああッ!!!!!あああああああッッッ!!!!うあぁあああああああああああああッッッ!!!!!)
突如ハルトの全身に激痛が走り始める。それは身体がテラスタル結晶化した時とは比べ物にならない程であった。
まるで生きたまま全身を灼熱の炎で燃やされ、体内をぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、巨大なギロチンでバラバラに切断されるような感覚。しかし死ぬ事はできず激痛が襲い続ける。最早ハルトには思考する余力すらなかった。
「ぐああああああああああああああああッッッ!!!!」
そんな地獄が延々と続いたある日、ハルトは異変に気が付く。
(あれ…?今…喉が…動いた…声が…出てる…?)
「ああああああああああああああああッッッ!!!」
それからさらに時は流れ…
「うッああああああああああッッッ!!!」
「アギャ!!!」
(今のは…ぼくの叫び声?それに…ミライドンの声が…聞こえた?)
「音に反応した。どうやら聴覚が回復したようだ」
(ミライドンの他に…誰かいる…?この男の人の声…どこかで聞いたことがあるような…)
「ううううううううッッッ!!!!」
「…まだ意思疎通を取るのは厳しいようだ」
「あああああああッッッ!!!」
ハルトは激痛に思わず拳を握りしめ、そしてのたうち回り始める。
(身体が…動いた…!)
「ふむ、身体能力も少しずつ回復し始めているようだね…」
「はあ…はあ…はあ…」
(痛みは治まってきたけど…今度は…身体が…熱い…)
「39.3℃の高熱。身体の免疫機能も活動を再開したようだな」
「うっ…おえええええええ…」
「激しい嘔吐…消化器官も復活しつつあるようだ。脱水症状を避けるために水分を補給させるとしよう」
(ここには…水もあるのか…?)
そして…
「…っ!まぶし…光が…見える…」
「アギャア!!」
ハルトの目が見えている事に気づきミライドンは喜ぶ!
「視力も回復。これでキミの病は完治した。常人離れした身体と精神力…興味深いね」
ミライドンと共にいたのはサイバーチックなデザインのボディスーツに白衣というスタイルの男性。ハルトは彼の事を知っていた。
「…やっぱりあなただったんですね。フトゥー博士」
「改めてハロー、ハルト。またキミに会える日が来るとはね」
To be contined…
-次回「未来での再会」-