ポケモンロード バイオレット・レクイエム   作:とり。@pktorisky

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 ネモとハルトのポケモン勝負の二日後。ネモが入院する病院の近くにある公園のバトルフィールドにて、ネモとハルトは再び対峙する。
「ネモ。キミが望むならぼくは何度でもポケモン勝負は受けるけど…前みたいに勝負を楽しむことはできないよ」
「わたしはそうは思わないな。だってポケモン勝負は何が起こるか分からない!ワクワクするものだから!」
 怪我が治っておらず車椅子が必要なネモの代わりにボールを投げるため、ネモの右隣に立つペパー。それだけではなく今回はボタンもネモの左隣に立つ。
「ネモ。今回ハルトと戦うのはオマエだけど…」
「うちらもハルトの笑顔を取り戻したい。だから側にいるから!」
「…うん!」
 そして四人の元へやってきた人物がもう一人。
「審判は私が務めましょう!」
「クラベル校長!お願いします!」
(強い絆で結ばれたあなたたちならハルトさんの笑顔を取り戻せる…私はそう信じています。頼みましたよ。ネモさん、ペパーさん、ボタンさん)
「ルールは使用ポケモン三体のシングルバトル!よろしいですね?」
「はい!」
 ハルトもクラベルの確認に対して無言で頷く。
(この前の勝負ではわたしは自分の迷いを晴らすため…自分のために戦ったからハルトに全く敵わなかったんだ。でも今は違う!)
「ハルト!わたしは…いや、わたしたちはあなたのために戦う!この勝負であなたの笑顔を取り戻してみせる!!」
「それでは…勝負開始です!!」

ポケモンロード バイオレット・レクイエム

Chapter6 闇を乗り越えて


第18話 託された切り札

ーポケモントレーナーの ハルトが 勝負を しかけてきた!ー

 勝負が始まったと同時にハルトの目が変わる!

「相変わらずすげー殺気だな…だけど…」

 ペパーとボタンはネモに目を向ける。

「ネモはひるんでない!この前とは全然違う!」

「ペパー!お願い!」

「おうよ!いっけー!」

「行け」

 ネモに代わりボールを投げポケモンを繰り出すペパー。そしてハルトも同時にボールを投げ、二人のポケモンが同時に繰り出される!

「ぽにおーん!」

「ハルトの一体目のオーガポン。あのお面は確か…」

「いどのめん。悲しみを象徴するみずタイプの姿だね…」

「悲しみ…まるで闇に囚われている今のハルトの心みたい…」

「で、こっちの一体目は…」

「フォォォォォン!!!」

 黒い巨体と大きな両手、赤い一つ目と腹部にある大きな口が特徴的なポケモンが雄たけびをあげる!

「ヨノワール…」

(ネモさんは常に様々なバトルスタイルを研究していますが、ここ一番の大勝負ではスピードやパワーに優れたポケモンを中心としたチームにすることが多いです。彼女にとって一番手になじむのがシンプルな速攻なのでしょう。しかし…)

(ヨノワールは遅い代わりに打たれ強く、からめ手を得意とするポケモン…)

「前にヨノワールがパートナーのトレーナーに助けてもらったことがあってね、育ててみたくなったんだ。どう?わたしがこういう子を繰り出すなんて意外でしょ?」

「…ぼくもネモも速攻を得意とするトレーナー。そしてスピード型のポケモン同士の対決は一撃で勝負が決まりやすい。速攻対決ではぼくの方が上手だから今回はディフェンス型のポケモンで戦うスタイルに変えたんだね」

「…焦らず冷静だね」

(ハルトの笑顔を取り戻すにはハルトの予想を超える戦術でワクワクさせるのが一番だと思うけど…流石に繰り出すポケモンを変えるくらいじゃ驚いてくれないね。でもこれは序の口!)

「さっさと終わらせるよ。ツタこんぼう」

「ガード!」

 オーガポンはこん棒を手にしてジャンプ!こん棒は水をまとい、ヨノワールに向けて振り下ろされる!対する両腕を顔の前に構え防御姿勢で迎え撃つ!

「フォ…フォオオオオ…!!」

 オーガポンのパワフルな攻撃に押し出されるヨノワールだったが…ヨノワールは倒れず、オーガポンの攻撃が止まる!

「よっしゃ!なんとか耐えた!」

「仕留めきれなかったか…」

「今だ!トリックルーム!!」

 ヨノワールが大きく両手を振るとバトルフィールドの周囲に時空の歪みによって壁が発生、まるで一つの大きな部屋のように包み込む!

(やっぱりこの技か…ヨノワール相手に長期戦は危険…)

「次で仕留めるよ。オーガポン、ツタ…」

「ヨノワール!戻って!」

「…!」

 ペパーはネモに代わりヨノワールをボールに戻す。

(トリックルーム状態ならヨノワールは動きやすいはず。このまま戦い続けても良さそうなのに…何か狙っているのか?)

「オーガポン。そのままツタこんぼうを構えて。ボールから出てきた瞬間に叩き潰すよ」

 オーガポンは頷いた後、ハルトに言われた通りにこん棒を大きく上げ、すぐに振り下ろせるように構える!

「ボタン!あの子を出すよ!」

「…うん。行って!」

 今度はボタンがネモに代わりボールを投げてポケモンを繰り出す!

「今だ」

 ボールから出てきた瞬間を狙ってこん棒を振り下ろすオーガポン。しかしボールから現れたポケモンは無数の長くうねる何かで攻撃を受け止める!

「触手…いや、これは首…!?」

「「オロッチュ!!!」」

「ぽに!?」

 ボールから現れたポケモンがおたけびをあげる。同時に驚き、咄嗟に距離を取るオーガポン。大きなリンゴの中に七匹のオロチュが共生するそのポケモンの名は…

「カミツオロチ…!?しかもこの子は…まさか…」

「やっと驚いてくれたね。そう、スグリのカミツオロチだよ!」

 

 ハルトとの再戦の前日。ネモはスグリとゼイユと再び通話していた。

『あのさネモ…ハルトとの戦いに俺のカミツオロチも連れていってくれねえか?』

「スグリのカミツオロチを?」

『カミツオロチはスグのエース!確かにスグの最強のポケモンがチームに加わればハルトにも勝てるかもしれないわね!』

『俺たちは今キタカミにいるからパルデアには行けないけど…ポケモンなら通信交換ですぐにそっちに行ける』

「でもいいの?その子はあなたにとって一番大事なポケモンでしょ?」

『むしろ一番大事だからだべ。俺もハルトにまた笑って欲しい!だから俺の想いの分もネモに託したい!』

『スグの分だけじゃないわ!あたしの分の想いもこの子に託すわよ!キタカミやブルーベリー学園での思い出を理解らせてやりなさい!!』

「…わかった。二人の想い、受け取らせてもらうよ!」

 

「行くよ!きまぐレーザー!」

 五匹のオロチュたちのうち一匹がレーザーを放ちオーガポンを吹き飛ばす!続いて他のオロチュたちもレーザーを放ち始める!

「ツタこんぼうで振り払って!」

 水流を帯びたこん棒を振り回すオーガポン。レーザーのうち三発は振り払うものの、二発は命中してしまう!

「く…レーザーを打つタイミングがバラバラで読めない…!」

「オーガポンはとってもパワフルだけど、攻撃をする時の動きが大振りで隙がある。その隙をすばしっこさでカバーしてるんだけど…」

「トリックルーム発動中は素早さが逆転する!」

「カミツオロチの遅さをカバーできるだけじゃなくてオーガポンのスピードも封じられる!一石二ポッポって訳だぜ!」

「カミツオロチに繋げるためのトリックルームってことか…!」

「この作戦はね…わたしとスグリとゼイユ、ペパーとボタンの五人で作戦を考えたんだ!」

「このポケモン勝負はネモとハルトだけの戦いじゃない!うちら五人の想いが乗っかってるん!」

「オマエの笑顔を取り戻したい!オレたちみんなの願いがな!」

「みんなの…願い…だけど…」

 オーガポンはレーザーを被弾しながらもカミツオロチに接近していた!

「攻撃範囲に入った…じゃれつく!」

「オロフ!オロミ!オロヨ!ガード!!」

 全身で飛び掛かるオーガポンに対し、三匹のオロチュたちが受け身の体勢になって攻撃を受け止める!

「な!?」

「オロヒとオロイツ!オーガポンを捕らえて!」

 そして二匹のオロチュは口から樹液を放ってオーガポンの動きを封じる!

「しまった!」

「今だよ!きまぐレーザー!一斉射撃!!」

 身動きが取れないオーガポンに対し、頭部のオロチュ全員が同時にレーザーを放つ!光線の太さはバラバラに放たれた時とは比べ物にならないほど太く、威力は絶大であった!

「オロチュたちはとってもきまぐれだけど…」

「オロチたちみんなの息がピッタリ合った時はスゲーパワーを発揮するんだぜ!」

(このタイミングで息を合わせてくるなんて…!)

「オーガポン!!」

 きまぐレーザーを喰らって吹っ飛ばされたオーガポンの元へ駆け寄るハルト。オーガポンの仮面は外れて気絶してしまっていた。そしてクラベルが判定を下す!

「オーガポン戦闘不能!カミツオロチの勝ち!!」

 

「よっしゃあ!先制点を取った!」

「すご…オーガポンに勝っちゃった…!」

「…これがこの時代の戦いで良かった。もし未来の世界だったら…」

「…ぽに!ぽにお!!」

「…ごめんオーガポン。戻って休んでて」

「ぽにお…!」

 ハルトはオーガポンをボールに戻す。

(今オーガポンは何かを訴えかけていました。ですがハルトさんはそれを見落とした…ポケモンを愛しよく観察していた以前のハルトさんならあり得ないミスです。それほど未来の世界での絶望がハルトさんの心に植え付けた傷は根深いのでしょう…しかし…!)

「…それぞれのオロチュたちに別々の指示を出すのはカミツオロチに相当慣れたトレーナーじゃないとできないのに、カミツオロチはネモの指示に応えていた。それにオーガポンの弱点を研究し尽くしてる事といい…ネモじゃなくてスグリと戦ってるみたいだ…」

「ふふ。わたしもスグリもハルトに勝ちたいって想いは一緒だからね。あなたが未来の世界に行っていた一年間に何度もブルーベリー学園に行ってスグリと特訓してたんだ。ポケモン勝負したり、トレーニングしたり、ポケモン勝負の戦略を話し合ったりしてね」

「それでネモはスグリの戦い方を覚えたんだね」

「それだけじゃないよ。ポケモン勝負は人とポケモンの間に絆を生み出すけど…その絆は自分のポケモンだけじゃない。時には相手のポケモンとだって絆が生まれるんだ」

「スグリと何度も戦ってるうちにネモとカミツオロチもダチになったって事だな!」

「うん!だからわたしを信じて戦ってくれたんだ。ね?カミツオロチ!」

 カミツオロチのオロチュたちはにっこり笑ってうなずいた。

「ポケモン勝負は敵を傷付け合うものじゃない。人と人、人とポケモン、ポケモンとポケモンが互いに分かりあってみんなを繋ぐものなんだ。それを思い出して!ハルト!」

「………」

(確かにハルトを蝕む心の闇は根深い。でも少しずつハルトはワクワクを取り戻し始めている…わたしにはそう感じる!)

「この調子で行くよ!カミツオロチ!!」

「オロッチュ!!」

 

「勝負を再開しようか。行け。メガヤンマ」

 ハルトはオニトンボポケモンのメガヤンマを繰り出した!

「くさタイプに有利なむし・ひこうタイプ…セオリー通りで来たね」

「でもトリックルームの効果はまだ続いているし!」

「攻撃あるのみだぜ!!」

「カミツオロチ!きまぐレーザー!!」

 オロチュたちは一斉にレーザーを放つ!

「よっしゃ!また息ぴったりの最大パワーだ!」

「受け止めて」

 オロチュたちの放ったレーザーがメガヤンマに襲い掛かるが…なんとか耐える!

「最大パワーの攻撃を防御したり避けたりしようとしなかったん!?」

「トリックルーム状態じゃメガヤンマは速く動けないからね。それに七匹のオロチュたち全員が攻撃態勢になったって事は…」

「しまった!今はガードできない!!」

「むしのさざめき!」

 メガヤンマのはねから放たれる衝撃波がカミツオロチに直撃!倒れたカミツオロチを確認し、クラベルが判定を下す。

「カミツオロチ戦闘不能!メガヤンマの勝ち!」

 そしてバトルフィールドに発生していた時空の歪みも消えていく…

「一瞬の隙も逃さねーか…やっぱハルトは強いな…」

「しかもトリックルームの効果も切れちゃったね…」

「でもカミツオロチのおかげでオーガポンを倒してメガヤンマにも大ダメージを与えられた!ありがとう!ナイスファイトだったよ!」

 ネモはカミツオロチを激励。そして自由に動けないネモの代わりにボタンがカミツオロチをボールに戻した。そして…

「ヨノワール!」

「エア…」

「かげうち!」

 ネモに代わりペパーが投げたボールから繰り出されるヨノワールは、ボールから出た直後に拳を大地にぶつける!すると影が瞬時に伸びていき、メガヤンマが動こうとする前に撃ち落とす!

「メガヤンマ戦闘不能!ヨノワールの勝ち!」

(やっぱり先制攻撃は覚えているか…)

「すまない。メガヤンマ」

 ハルトはメガヤンマをボールに戻す。

「これで残り一体!もしかしたらハルトに勝てるんじゃねーか!?」

「ペパー。目的忘れてる。ただ勝つんじゃなくてハルトの心を取り戻さないと意味ないん」

「あ…そうだったな。つい熱くなっちまったぜ」

「それにハルトはこの状況でも逆転してくる。わたしたちはそれをさらに乗り越えてハルトのワクワクを思い出させないといけない」

「そしてハルトはまだ三体目のポケモンを出していない」

「ハルトの最後のポケモン…どいつを繰り出すんだ…?」

「………行くよ」

 手に持ったモンスターボールを無言で見つめた後、三体目のポケモンを繰り出すハルト。ボールの中から現れたのは…

「ニャオーン!!」

「マスカーニャ…!」

 

To be continued…

 

次回「きらめく絆の奇跡」

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