ポケモンロード バイオレット・レクイエム 作:とり。@pktorisky
スグリから預かったカミツオロチの活躍で、ついにネモはハルトを追い詰める。
「………行くよ」
「ニャオーン!!」
「マスカーニャ…!」
そんな状況でハルトはマジシャンポケモンのマスカーニャを繰り出したのであった…!
ポケモンロード バイオレット・レクイエム
Chapter6 闇を乗り越えて
-チャンピオンの ネモ-
手持ちポケモン:残り2体
バトルポケモン:ヨノワール
-ポケモントレーナーの ハルト
手持ちポケモン:残り1体
バトルポケモン:マスカーニャ
「ここでマスカーニャか…!」
「ハルトの最初のパートナーポケモン…!」
「一番付き合いの長い子で来たね…!ヨノワール!かげうち!」
「つじぎり!」
素早い影を放つヨノワールであったが、マスカーニャは攻撃を容易く引き裂き急接近!斬撃が炸裂し、倒れたヨノワールを確認し、クラベルが判定を下す!
「ヨノワール戦闘不能!マスカーニャの勝ち!」
「ありがとうヨノワール。カミツオロチの活躍もあなたのおかげだよ」
ネモの代わりにペパーはヨノワールをボールに戻す。
「これでお互いに残り一体だね。最後のポケモンを繰り出しなよ」
(ハルトは少しずつ心を取り戻してきてはいるけど、まだ一押し足りない。でもこの子なら…ワクワクを思い出させてくれるはず!)
「ペパー。ボタン」
三体目に繰り出すポケモンのボールを二人に手渡すネモ。
「行くぜ!」「お願い!」
そしてペパーとボタンは二人で一緒にボールを投げる!
「ウェニ!」
ボールからダンサーポケモンのウェーニバルが華麗なステップと共に現れる!
「ウェーニバル…」
「ふふ。あの時と一緒だね」
「…ネモの家のビーチでやった、ぼくの初めてのポケモン勝負。ぼくはニャオハ、ネモはクワッスで戦ったね」
「あの勝負から…わたしとあなたの宝さがしは始まったんだ」
「でも戦いは無情だよね。もうぼくの勝利は確定したのだから」
「…どうしてそう言い切れるの?」
「マスカーニャとウェーニバルではマスカーニャの方がスピードは上。しかもウェーニバルは近接戦を得意としているのに対し、ぼくのマスカーニャの必殺技のトリックフラワーは遠距離攻撃だ」
「トリックフラワーはくさタイプのわざ…みずタイプのウェーニバルには効果はバツグンだな…」
「その通り。耐久型のポケモンならともかく、ウェーニバルはスピード型のポケモン。トリックフラワーを耐えることはできない」
「だったら避けるか攻撃技で相殺するとか…」
「それも無理だね。トリックフラワーは射程範囲内にいる限り追尾し、相手の急所を狙う。空中や水中にいれば射程範囲外にはなるけど…ウェーニバルの脚力でも空は飛べないし、この辺りには潜って逃げれるような大きな水辺も無い」
「そして攻撃技で相殺しても多少はダメージを受けるし、何より距離を詰めることができないね」
「ネモもそれは理解した上でウェーニバルを繰り出したんだね」
「…だけどわたしたちには最後の手が残ってる」
「…テラスタルだね。ウェーニバルのタイプを変えてトリックフラワーに耐えて接近、かくとう技でマスカーニャを一撃で倒す。それがネモの勝ち筋。だけど…」
「わたしのテラスタルオーブはヴレイとの戦いで壊れてしまった」
「ペパーやボタンのテラスタルオーブを借りるって手もある。だけど二人のオーブもレフティのゼロスタルでパワーを奪われたから今は使えないよね?」
「そこまで見通してるなんて…!」
「それとラクリウム・コアのせいでこのパルデアのテラスタルエネルギー自体が今は弱まっている。テラスタルオーブがあったとしてもテラスタルするのは難しいだろうね」
「くそ!ここまでやっても…オレたちの想いはハルトに届かないのかよ…!」
「…あなたの言う通り、正直ここからあなたに勝つ方法は今のわたしには思いつかない。でもねハルト。ポケモン勝負は最後まで何が起こるか分からない!だからドキドキして楽しいんだよ!」
「この状況で…ネモは奇跡でも起こして逆転するつもり?らしくないね。ネモは色んな戦術を試してはいるけど、無計画で行き当たりばったりな戦いはしないよね」
「ハルトこそらしくないよ。あなただって今まで負けそうになった経験はあるでしょ?そんな状況でもあなたは諦めずに戦って、時には奇跡を起こして勝利した」
「…昔はそうだったよ。でも未来での戦いでぼくが負ければ、ぼくのポケモンまで死なせてしまう。仲間の命まで懸かっていたんだ。そんな状況で奇跡を信じるなんて無責任なことはできなかった」
「でもねハルト。あなたが未来の世界からこの世界に帰ってこれたのも…あなたがわたしたちとまた会いたいと強く願ったからこそ起こせた奇跡なんじゃないかな?」
「…!」
「だからわたしは思うんだ!強い想いがあれば奇跡だって起こせるって!」
「…じゃあ起こしてみなよ。今ここで奇跡を!」
「うん!ウェーニバル!そしてペパー!ボタン!わたしは信じるよ!あなたたちと一緒なら!ハルトの心を蝕む闇を打ち砕く!そんな奇跡だって起こせるって!」
「…なんかべたなセリフ。でもこういう展開…うちも嫌いじゃない!」
「オレも信じるぜ!オレたちの友情パワーが起こす奇跡を!」
「みんなの想い…届いて…!」
ネモが強く願った…その時であった!突如強い光が刺し始める!
「…!?」
「うおっ!?なんだ!?」
「この輝きって…」
「もしかして…!」
光源はネモのバッグの中であった。急いでバッグを開くネモ。そこには光り輝くテラスタルオーブがあった。
「あのテラスタルオーブは…壊れたはずでは!?」
審判として見守っていたクラベルもこの事態には驚きを隠せなかった。
そしてテラスタルオーブの割れ目は少しずつ消えていき…元の形へと戻っていく!
(そういえば…未来でハルトさんが見た研究記録には『テラスタルは人やポケモンの願いに呼応する』と書かれてたそうです。ハルトさんを救いたい!ネモさんたちみんなの強い願いがテラスタルと共鳴し…まさに奇跡を起こしたということですか…!)
「テラスタルッ…!」
ネモが手に持つテラスタルオーブを見て顔をしかめるハルト。ネモはハルトに対して静かに語る。
「ハルト。あなたは未来の世界でテラスタルに絶望と恐怖を植え付けられてしまったのかもしれない。でもテラスタルは…私たちを繋いでくれた希望の光でもある!」
「希望の…光…」
「行くよ!本当の楽しい勝負はこれから!!」
テラスタルオーブを持ったネモの手にペパーとボタンも手を重ねる!
「光れ!かがやけ!」
「オレと!」
「うちと!」
「わたしたちの!」
「「「最高の宝物!!」」」
そして三人は一緒にテラスタルオーブをウェーニバルに向けて投げる!
ウェーニバルは結晶に包まれて光り輝く身体へと変化していく!そしてその頭部には拳のような形のシンボルが浮かび上がっていた!
(至近攻撃を喰らったらぼくの負けだ!)
「最大パワーでトリックフラワー拡散!ウェーニバルを近づけさせるな!!」
たくさんの種子をウェーニバルに向けて飛ばすマスカーニャ。そしてそれぞれの種子が連鎖するように爆発を起こす!
ウェーニバルは優雅に舞いながら攻撃を受け流し、時には受け止め、確実にマスカーニャに接近していく!
「くっ…!」
そしてマスカーニャの目の前まで迫るウェーニバル。ウェーニバルのテラスタルの光を見てハルトにある記憶が蘇る。
しかしその記憶は絶望の未来の光景ではなく、もっともっと前の思い出であった。
『ハルト!楽しいね!わたし!とっておき使っちゃう!』
ハルトとネモが二回目に勝負した時、ネモはハルトにテラスタルを披露した。
初めて見たテラスタルに対し、ハルトはある感情を浮かべた。
「きれい…」
「インファイト!!!」
ウェーニバルの蹴りと翼の打撃による華麗かつ激しい連撃が叩き込まれ…マスカーニャは吹っ飛ばされる!
「…は!」
思わず見入ってしまっていたクラベルであったが、フィールドに倒れているマスカーニャを確認し、そして判定を下す!
「マスカーニャ戦闘不能!ウェーニバルの勝ち!ハルトさんのポケモンが全て戦闘不能になったため、この勝負、ネモさんたちの勝利です!!」
「…勝った…のか?オレたちが…」
「ハルトに…?全然実感湧かん…」
「それよりハルトは!?」
すぐにハルトの方を向くネモ。
「…ありがとうマスカーニャ」
倒れているマスカーニャをボールに戻すハルトは静かに声をかけつつボールに戻す。
「ぼくたちの…負けか…」
「ハルト…」
「ふふ…あはははははははは!!」
「!?」
「ネモとスグリとみんなの作戦とか!最後の奇跡のテラスタルとか!すごすぎるよ!!」
そう語るハルトの瞳はテラスタルのようにキラキラと輝いていた…!
「ハルトが…ハルトが…!」
「ハルトが笑った!!」
そしてハルトにネモは問いかける。
「ね?ハルト!ポケモン勝負って本当に楽しいでしょ?」
「…うん!負けてちょっと悔しいけど…でもこんなワクワクしたの一年ぶりだよ!そっか…これがポケモン勝負だったんだ…!」
勝負を終えて握手をかわすハルトとネモ。そんな様子を見てクラベルは涙を流していた。
「これが絆の力…皆さん本当によく頑張りました…!」
「お預かりしたポケモンはみんな元気になりましたよ!」
勝負のあと、ポケモンセンターでポケモンたちを回復させるハルトとネモ。
「「ありがとうございます」」
ハルトたちがポケモンセンターの受付嬢からモンスターボールを受け取ると…
「にゃーお!」
「ぽに!」
ハルトのボールから二体のポケモンが飛び出した!
「マスカーニャ!?オーガポン!?」
さらに他のボールの中のポケモンたちも一斉に飛び出す!
「アギャ!!」
「ミライドン!?それにみんなまでどうしたの!?」
ポケモンたちはハルトを抱きしめたり、顔を舐めたり、腕にしがみついたり…それぞれ愛情を示しているようであった。
「ハルトの心が帰ってくるのを待っていたのはわたしたちだけじゃない。ハルトのポケモンたちもみんな待ってたんだよ」
「ポケモンたちも…そっか…みんなの気持ちに気づけなくてごめん。そしてありがとう…ずっとぼくの側にいてくれて…!」
「アギャ!」「ニャー!」「ぽにおーん!」
「みんなにも迷惑をかけちゃったね」
「迷惑だなんてとんでもないよ!」
「うちらは今までハルトにたくさん助けてもらった。そのお返しをしただけ」
「それにオレたちはダチだ!困ったときはお互い様だろ?」
「ネモ…ペパー…ボタン…ポケモンたちもみんな…大好きだよ!」
「「ハルト!!」」
三人もまたハルトをぎゅっと抱きしめる。ネモに至っては無理して車椅子から飛び出してハルトに飛びつくほどであった。
(やっと…やっと…帰ってきた…!)
(その笑顔で人やポケモンを繋いでくれる…!)
(わたしたちの大好きな…本当のハルトが…!)
そしてキタカミの里では…
「カミツオロチ!お疲れ様!」
ネモの元から帰ってきたカミツオロチをスグリは激励した。
「ハルトやオーガポンに勝っちゃうなんて大金星じゃない!」
「オロッチュ!」
ゼイユに褒められたオロチュたちはみんな得意げな表情だ。
「あら?この子手紙を持ってるじゃない」
「本当だ。えーっと…ハルトからだべ!」
カミツオロチを介して手渡された手紙。そこにはスグリとゼイユへのハルトからの感謝の気持ちがつづられていたのであった!
その頃、パルデアの某所では…
「はあ…あたくしたちには時間が無いっていうのに。待たなきゃいけないってのも嫌になっちゃいますわね」
ため息をついたのは身体の一部が機械になっている女性、レフティ。そう、ここはハルトたちと相反するユートピアのアジトであった。
「あの計画を実施するのには時間がかかる。仕方があるまい」
同じくユートピアのヴレイがレフティに対して答える。
「ところで…ライドウ、さっきから何してるのかしら?」
ユートピアのアジトには無数のモニターがあり、パルデア地方各地の様子が映し出されている。そして大柄な男が眺めているモニターには、ハルトやネモたちの様子が映し出されていた。
「う…う…うおおおおおおおおおおおおんおんおんおん!!!!」
大男の大声がアジトに鳴り響くのであった…!
Chapter6 闇を乗り越えて ~Fin~
ーNext Chapter「第三の刺客」ー
ー次回「ガチグマとモモワロウ」ー