ポケモンロード バイオレット・レクイエム 作:とり。@pktorisky
何も企んでいないと語るハイダイを疑うハルト。真偽を確かめるべく、ハルトはライドウとポケモン勝負をすることに。
-ユートピアの ライドウが 勝負を 仕掛けてきた!-
「おでのポケモンはこいつだ!ハリテヤマ!!」
ライドウが繰り出したのはつっぱりポケモンのハリテヤマ…に、よく似た機械の身体のパラドックスポケモンであった。
「…あれ?確か聖剣士って呼ばれる伝説のポケモンはコバルオン、ビリジオン、テラキオンの三体だったよね?」
「ヴレイはコバルオンに似たテツノカシラ、レフティはビリジオンに似たテツノイサハを使ってきたから、次はテラキオンに似たパラドックスポケモンが来ると思ってたけど…」
「テツノイワオのことか?アイツはつえーけどアイツが暴れたらこの街を壊しちまうかもしれないからな!今日はお休みだ!」
「それにそのポケモンの名前ってテツノカイナじゃなかったん?」
「そうともいうらしいな!でもおでにとってはこいつはハリテヤマ!姿が変わってもこいつはおでの一番の相棒だ!」
(姿が変わって?もしかして…)
「行くよ!テラパゴス!!」
そしてハルトが繰り出したのはテラスタルポケモンのテラパゴス。その分類通りテラスタルのような輝きを放つポケモンだ。
ボールから出るのと同時にノーマルフォルムからテラスタルフォルムへと姿を変えるテラパゴス。一方でハルトの手は小刻みに震えていた…
(そういえばハルトはこの世界に戻ってきてから一度もテラパゴスをボールから出していなかった…もしかして…)
(テラパゴスを見ると…どうしても未来での恐怖が蘇ってしまう…でも…)
「パゴ!」
テラパゴスはハルトに声をかける!
「…うん。そうだね…!」
(この恐怖も…乗り越えてみせる…!)
ポケモンロード バイオレット・レクイエム
Chapter7 第三の刺客
「こちらから行かせてもらうよ!テラパゴス!だいちのちから!」
テラパゴスが地面に向けて放ったエネルギーがテツノカイナの足元に集まるが…
「ハリテヤマ!地面に向かってつっぱりだ!!」
テツノカイナはその巨大な手でつっぱりを連発!地面から吹き出るエネルギーを強引に押し返してしまう!
「つっぱりで相殺した!?そんなのアリなん!?」
「下からがダメなら上からだ!テラパゴス!テラクラスター!!」
今度はテラパゴスの甲羅から上空に向けて輝くエネルギーが放たれる!そしてテツノカイナをめがけて降り注ぐが…
「つっぱりで撃ち落とせ!!」
大量のエネルギー波をテツノカイナは張り手で次々と落としていく!
「今度はテラクラスターを撃ち落とした!?いくらなんでも力技過ぎん!?」
(単なる力押しじゃない…あのテツノカイナは降り注ぐ攻撃の一つ一つを見切って被弾しそうなものだけを確実に撃ち落としてる!なんて動体視力…それにこんな事はトレーナーとポケモンの信頼関係が深くなきゃできない!)
「パゴ!?」
テラパゴスの目の前にテツノカイナが迫る!
(しかも撃ち落としながら距離まで詰めてきたか…!)
「隙ありだな!インファイト!!」
「甲羅でガード!!」
テツノカイナの激しいラッシュ攻撃がテラパゴスに襲い掛かる!テラパゴスは甲羅の中にこもって身を守るが、凄まじい打撃音が周囲に鳴り響き続ける!
「テラパゴスの甲羅はとても頑丈。でも流石にこれは…」
そして連続攻撃を終えて息切れするテツノカイナ。その時であった!
「隙ありだ。テラクラスター!」
「何!?」
(おでのハリテヤマの攻撃を耐えきったのか!?)
すぐさまテラパゴスは甲羅の中央から輝くエネルギーを放つ!今度は上空へ向かうエネルギー全てがテツノカイナに向けられて、その巨体を天高く吹っ飛ばす!
「ハリテヤマ!」
「だいちのちから!落下地点を狙って!」
「させねえぞ!ヘビーボンバー!」
テツノカイナの真下からエネルギーを放つテラパゴス。対するテツノカイナは身体を硬化させてお尻から着地!攻撃がぶつかりあい周囲に地響きが起こる!
「はどうだん!」
「つっぱり!」
エネルギー弾を放つテラパゴス。テツノカイナは張り手で迎え撃とうとするが、尻もちをついていたせいで反応が遅れる!
顔面に攻撃が直撃して倒れるテツノカイナ。ハイダイが判定を下す!
「テツノカイナ戦闘不能!テラパゴスの勝ち!この試合ハルトの勝ちなんだい!」
「ふう…よく頑張ったねテラパゴス」
ほっと胸をなでおろし、テラパゴスを撫でるハルト。
(あの恐怖にも…少しは抗えるようになったかな…)
「ありがとよハリテヤマ!戻って休んでくれ!」
ライドウは激励した後にテツノカイナをボールに戻した。
「…ヴレイやレフティは戦いは目的を果たすためのもの。だから人が傷つこうがお構いなしだった。でもあんたたちの戦いは『ポケモン勝負』。純粋に強さを求め正々堂々と競い合いたいって気持ちが伝わってきたよ」
ハルトはライドウの元へ歩いていき、そして手を差し伸べる。
「疑って悪かったね。あんたが何も企んでいないって信じるよ」
「本当か!ありがとよ!それに楽しい勝負だったぞ!」
ハルトとライドウは握手を交わす。
「うんうん!仲良しが一番だい!」
ポケモン勝負を終えた後、一行は再びハイダイ倶楽部へ。
「うっめー!勝負の後のメシは最高だな!オマエたちは食わねーのか?」
「いや、さっき食べたから…」
「あれだけ食べてまだ食べるん?見てるこっちまで胃もたれしてきた…」
ライドウの向かい側の席に座るハルトとボタンは飽きれた表情を浮かべた。
「それよりも…あんたはさっきぼくと一度話してみたいって言ってたよね?」
「お…そうだそうだ、大事なことを忘れるところだった。実はオマエたちに頼みてーことがあるんだ」
「頼みたいこと?」
「ヴレイにレフティ、それにフォーゼ…みんなを救ってくれねーか!?」
「救うって…」
「どういう事なん…?」
「オマエたちはおでたちの目的をもう知ってるんだっけか?」
「…未来の世界はテラスタルエネルギーの暴走によって滅びてしまった。だから過去の世界にやってきて、その元凶のテラスタル自体を消滅させようとしている」
「レフティが言ってた通りだ…オマエはそこまで知ってたんだな」
「そのためにアカデミーを襲撃し、秘密の地下通路の先にあるテラスタルコアを破壊して、代わりにラクリウムコアを設置した」
「ラクリウムをめぐる事件も元をたどればユートピアが黒幕だったね」
「おでたちはオマエたちの大事なものをたくさんぶっ壊しちまった。特にハルト、オマエとネモって子にはひどい目にあわせちまったし…おでたちを憎んでると思う」
「………」
「だけど…ヴレイもレフティも昔はいい奴だったんだ」
「そうなん!?」
「おう!ヴレイは物知りだけどかなりビビりでな。レフティも…高飛車な性格は変わってねーけど戦いは超苦手だったんだぜ。何より二人とも優しくて…でけーせいで周りからビビられてたおでと友達になってくれた。だけど…あの事件が二人を変えちまったんだ」
「…テラスタルエネルギーの暴走だね。ぼくの心が未来の世界で死にかけたのと同じように…」
「おでたちは生きるのに必死で…人やポケモンに優しくする余裕も無くなっちまった。それでもおでたちは生きようとしたけど…あの病にかかっちまったんだ」
「…テラスタル病か!」
「おでたちには助かる見込みは無かった。だけどおでたちにはもう一人友達がいた。おでたちのリーダー…フォーゼだ!」
「フォーゼ…そいつがユートピアのリーダー…!」
「フォーゼは天才だ!なんでも作れるし病気だって治せちまう!あいつなら何とかしてくれるかもしれねー!だからおでたちは死ぬ前にあいつに脳を…えーっと、なんだっけ?冷凍保存的なヤツ。えーっとゴールド…スリーパー…?」
「コールドスリープのこと?」
「そう!それだ!おでたちは脳をコールドスリープさせて…そしてこの機械の身体と合体させて蘇ったんだ!」
「クォークボディ…未来の世界でぼくが見た研究記録にはパラドックスポケモンを開発したこと、そして研究者の友の脳を移植したことが書かれていた」
「それがあなたたち、ヴレイ、レフティ、ライドウの三人…」
「おでの相棒のハリテヤマも、おでがコールドスリープした後に死んじまったんだけど…フォーゼはハリテヤマも生き返らせてくれたんだ!」
「だからテツノカイナをハリテヤマって呼んでたんね…」
「でも…おでたちが死んだ時はまだ人間もポケモンも少しは生き残っていた。だけど蘇った時には人もポケモンも滅んじまっていた…フォーゼでも大災害をどうにかする事はできなかったんだ…」
「だから最終手段に出た」
「それが歴史の改変…」
「おではヴレイたちみたいに頭はよくねーけど、このやり方が本当は良くないってことくらいは分かる。でも他に方法がねーと思ってたんだ…そんなある日、あのポケモン勝負を見ちまったんだ」
「あのポケモン勝負?」
「この前のオマエとネモのポケモン勝負だよ」
「…!あの勝負、あんたも見てたの?」
「おでたちユートピアはパルデア中を監視してるからな。オマエたちの勝負を見ておでは思い出したんだ。フォーゼ、ヴレイ、レフティ、そしておでの四人で楽しくポケモン勝負をしてた時のことを」
「そして信じてみたくなっちまったんだ。オマエたちならワクワクを思い出させて…あいつらを止めることができるんじゃないかってよ!」
「…ハルト。うちからもお願い。うちもユートピアも本当に悪い奴じゃないと思うし、できればもう戦いをやめさせたい」
「…あなたの気持ちは分かるよ。ぼくだって未来の世界…あの地獄を経験したからね。でもそのお願いは叶えられないかな」
「………」
「ハルト!?なんでなん!?」
「…ぼくは未来の世界で心を失いかけた。でもネモたちのおかげで心を取り戻すことができたんだ。そしてヴレイたちの心を取り戻すことができるのはぼくじゃない。友達であるライドウさん、あなただとぼくは思う」
「ねえライドウさん。あなたが説得してヴレイたちをやめさせることはできないん!?友達なんでしょ!?」
「それはできねえ!ヴレイもレフティもフォーゼも覚悟が決まっちまってる。おでが説得しても裏切ったとしてもアイツらは計画をやめる訳がねえ」
「そんな…」
「それに…おではみんなが今まで必死に頑張ってきたところをずっと見てきた!だから友達として最期までヴレイたちと一緒に戦ってやりてえ!これもおでの本心なんだ!」
「喋りすぎぞライドウ」
突如店内に現れたのは仮面で顔面の上半分を隠したフードの男であった。
「ヴレイ…!」
咄嗟にハルトはモンスターボールを構えてミライドンを繰り出す!
「…今日はこのバカを迎えにきただけだ。俺とて何の考えもなくむやみやたらにテロを起こしている訳ではない」
「………」
「準備が終わった。帰るぞ」
「…そうか。ハルト。ボタン。話を聞いてくれてありがとよ!」
「お客さん!!お代は!?」
するとヴレイはハイダイに大量の札束を渡す。
「これで足りるよな?」
「ってこれは多すぎなんだい!今お釣りを用意するから…」
「いらん。チップにでもしておけ」
ハイダイを振り払ってハイダイ倶楽部の外へ出るヴレイとヴレイについていくライドウ。二人をハルトは追いかける!
「…待って!最後に一つ教えて。もしあんたたちの計画が叶って歴史が変わったら…未来からきたポケモンたちはどうなるの?」
「…パラドックスポケモンは破滅の未来を生き抜くために造られたポケモンだ。破滅の運命が無くなれば消滅するだろうな」
「そんな!じゃあミライドンともお別れってことなん!?」
「アギャ?」
「…それはあんたたちも消滅するってことだよね?」
「…そうだ。その覚悟はとっくにしている。存在が歴史から消える事になろうとも…我々は破滅の未来を変えなければならない!」
「…そっか」
「同情でもしたか?」
「同情なんてしないよ。あんたたちにどんな事情があろうと、人やポケモンを傷付けていい理由にはならない。そして何より…」
ハルトはミライドンの頭を撫でる。
「ミライドンたちとお別れなんて絶対に嫌だからね!」
「ふ、それでいい。俺たちは敵同士。情けなど不要。我々の考えが誤ってると考えるのなら力づくで止めてみろ!…行くぞ」
「お、おう。じゃあな!ハルト!ボタン!」
そう言い残すとヴレイとライドウは何処かへ消えてしまった…
「行っちゃった…」
「…ユートピアは今まで戦ってきた誰よりも手ごわい敵だった。その理由がよく分かったよ」
「うちらが強い絆で結ばれているように…ユートピアにもユートピアの絆、そして強い信念と覚悟を持っているから…」
「でもぼくたちは負ける訳にはいかない。この世界を守るため。そして…あいつらのためにも!」
Chapter7 第三の刺客 ~Fin~
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