ポケモンロード バイオレット・レクイエム   作:とり。@pktorisky

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 アカデミーを襲撃した謎の男ヴレイとの激闘で重傷を負ってしまったネモ。命の灯が尽きようとした…その時であった。
「イナズマドライブ!!!」
 突如天から降り注ぐ紫に輝く雷。テツノカシラに強烈な強烈な電撃が襲い掛かる。
「何…だと…!?」
 意識を失いかけていたネモであったが、その雷で再び目を覚ます。そして…
「………………!」
 ネモの目に映ったのは…ボロボロになった制服を着た小柄な少年の後ろ姿。そしてネモにとっては見慣れた後ろ姿であった。
「…ハルト………!」

ポケモンロード バイオレット・レクイエム

Chapter1 争乱の幕開け


第3話 救世主の凱旋

 ハルトは振り返りながらしゃがみ、ネモの方へ身体を向ける。

「ネモ…こんなにボロボロになるまで戦って…ここからはぼくたちに任せて」

 ネモに応急処置を施すハルト。そして動けないネモを抱えて近くの壁に寄りかからせる姿勢にして休ませると、再び戦いの場へと戻っていく。

「馬鹿な…貴様は俺が時空の彼方へと葬り去ったはず!何故生きている!?」

「………」

「答える気はないか。ならばここで再び葬り去るのみ!」

「コフュオオオオオオン!!!」

「アギャ!」

 ハルトのパートナーポケモンはミライドン。機械のような身体を持ち、人懐っこい性格のドラゴンだが、その最大の秘密は…

「最強のパラドックスポケモン、テツノオロチか。だがその特性ハドロンエンジンのおかげで特性クォークチャージが発動し、テツノカシラはさらにパワーアップする!」

「そんな事は百も承知さ。行くよミライドン」

「アギャア!」

「テツノイサハ!タキオンカッター!連射・分散!」

 テツノカシラの周囲に大量の刃が出現する!

(さっきよりも…はるかに多い…!さっきの戦いでは…本気すら出していなかったというの…!?)

(この攻撃…避けようとすればネモを巻き込みかねない。なら…)

「全弾撃ち落とす。ほうでん!」

 迫りくるタキオンカッターに対しミライドンは自分の周囲に電撃を発生させるわざ『ほうでん』を放つ!

「ミライドン左、次は前方右上、そして後方左下」

 ハルトの指示を受けミライドンは電撃をコントロールして…

「全弾撃ち落とした…だと!?」

(すごい…ハルト…前よりも…もっともっと…強くなってる…!)

「りゅうのはどう!」

「受け止めろ!」

 ミライドンの口から竜の形をしたエネルギー波が放たれる。この攻撃をテツノカシラは受け止める。

「何故はがねタイプには効果はいまひとつのドラゴン技を…む!?」

 雷を身にまとったミライドンがテツノカシラに迫る!

「囮か…!」

「イナズマドライブ!」

「ちい!ワイドフォース!!」

 ミライドンのイナズマドライブが命中。しかしテツノカシラも負けじと周囲にサイコパワーを発生させ、ミライドンを吹き飛ばす!

「大丈夫?」

「アギャ!」

「体勢を立て直すぞ。テツノカシラ!めいそう!」

 テツノカシラは静かに精神統一を始めた。

(能力を上げる技…このまま戦いが長引けばネモがもたない。こうなったら…)

 ハルトはテラスタルオーブを取り出す!

(…!あいつに…テラスタルしちゃ…ダメ…!)

「…ぁ……ぇ…」

(声が…出ない…このままじゃ…!)

「…ふっ」

 戦いが自分に優位になる事を確信し、不敵な笑みを浮かべるヴレイ。しかし…

「………」

(…ハルト…?)

「はあ……はあ……はあ…はあ…!」

 ネモはハルトの異変に気が付く。テラスタルオーブを持った右手が震え、そして呼吸が異様なほど早まっていたのだ。

「…っ…!イナズマドライブ!」

 ハルトはテラスタルを使わず、そのままミライドンに攻撃を指示する!

(テラスタルしなかった…?)

「タキオンカッター!一点集中!!」

 ミライドンとテツノカシラの攻撃が激突し…相殺する!

「互角か…」

 その時であった!地下から轟音が鳴り響き、大地が大きく揺れる!

「なんだ!?」

「…どうした?…了解した」

(誰かと通話している?)

 そして通話を終えたヴレイが指を鳴らすと、テツノカシラがボールへと戻っていく!

「!?」

 

 さらに異変が起きたのは屋上のバトルコートだけではなかった。

「校内で暴れてたパラドックスポケモンが…」

「ボールに戻っていく…!?」

 そしてパラドックスポケモンが入ったボールはどこかに転送されてしまう!

 

「どういうこと…?」

「我々の目的は達成された。もうここに用はないということだ」

 ヴレイはひこうタイプのパラドックスポケモン『テツノコウベ』をボールから出す。

「だがハルト!次こそは貴様を必ず葬り去る!この勝負は預けておくぞ!」

 そう告げるとテツノコウベの背に乗りヴレイは飛び去っていくが、ハルトはヴレイを追いかけようとはせず、すぐにネモの側へと駆け寄る!

「…ネモ!!」

 すると屋上に二人のトレーナーが駆けつけてきた。

「おーい!」

「大丈夫かーって…」

「「ハルト!?」」

 やってきたペパーとボタンはハルトの姿を見て驚くが…

「話は後で!今はネモを助けるの手伝って!」

 

「くそっ!せっかくハルトが帰ってきたってのに!」

「ネモがこんなひどい目に合うなんて…あんまりだし…」

「………」

 重傷を負ったネモを病院へと運んだハルトたち。すぐに手術が始まり、待合室には重い空気が漂っていた。

「くっ…ぼくがもっと早く駆けつけてれば…」

「いやこれはうちの責任!敵を甘く見過ぎてた…うちがネモにあいつを倒させようとしなければ…!」

「二人とも自分を責めないでください」

 待合室へとやってきたクラベルは落ち着かせるようにハルトたちに語りかける。

「生徒に重傷を負わせてしまった責任は校長である私にあります。お二人のせいではありません」

「………」

「それにネモさんがもし敵に立ち向かっていなければ他の被害者や犠牲者が出た可能性も考えられます。三人ともそれぞれ考え、それぞれが最も正しいと思った行動をした。私はあなたたちが間違ったことをしたとは思いませんよ」

「クラベル校長…」

「ネモさんの事は私に任せてください。ハルトさんはご実家に戻られた方が良いでしょう。もう夜遅いですし、何よりあなたは一年間も行方不明だったのです。心配しているお母さまを安心させてください」

「…分かりました」

「お二人はどうしますか?学生寮はあの有様ですが、どこか泊まる場所を手配しましょうか?」

「えと、大丈夫です。スター団のみんなの所に泊めてもらうんで…ペパーも一緒に泊めさせてってうちから頼んでおく」

「んじゃ、お言葉に甘えるとするかな。ありがとなボタン」

 

 こうして三人は病院を後にすることにした。

「さてと。ハルト、家まで送るぜ」

「え?すぐそばだし一人で大丈夫だよ?」

「っていうのは建前でうちら、ハルトと話したいんよ」

「オマエんちに着くまで一年間に何があったのか、教えてくれよ!」

「一年間…あの時からそんなに経つんだ…そう…だね…話すよ…」

 友に語ろうとするハルトの脳裏に浮かんだのは…地平線の果てまで結晶が続く異様な光景。指先から結晶へと変化していく自らの手。

「はあ…はあ…はあ…」

「ハルト…?」

 そしてフラッシュバックして襲い掛かる苦しみ、激痛、そして絶望。

「はあっ…はあっ…はあっ…」

「ハルト!?大丈夫!?」

「ハルト!?しっかりしろ!!」

 呼吸は過度に早まり、身体は震え、目線が泳ぎ始め虚ろになる瞳。苦しみもがくハルトにボタンとペパーは必死に声をかけるが…

「っ………」

「「ハルト!!!」」

ーハルトの めのまえが まっくらに なったー

 

 一方、パルデア地方の某所。暗闇の中に無数の機械が並ぶ建造物の中へと、謎の男ヴレイが仲間の男と共に足を踏み入れた。

「戻ってきたぞ」

「おかえり。作戦はどうだったのかしら?」

 中で待っていた、ローブを着た長身細身の女性が問いかける。

「おう!バッチリだぞ!!」

 ヴレイの後ろに立っていた大男が元気な声で答える。

「バッチリではない。問題大ありだ。ハルト…まさか奴が生きていたとは…!」

「やはり彼は本物の『救世主』。そう簡単に抹消する事は出来ないようですね」

 建造物の奥にあるのはカプセル状の巨大な機械。そして機械の中に入っている謎の人物が答えた。

「その冷静な反応…君にとっては想定内だったということか」

「…どんな脅威が立ちはだかろうと我々は止まる訳にはいきません。真なる未来へと導くために…!」

 

Chapter1 争乱の幕開け ~Fin~

 

ーNext Chapter「友のために」ー

 

ー次回「心の傷」ー

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