ポケモンロード バイオレット・レクイエム   作:とり。@pktorisky

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「…あれ…?ここは…?」
 目を覚ましたハルトの元にあったのはふかふかのベッドに毛布。
「ハルトっ!!」
 そして抱擁。その暖かい感触をハルトは覚えていた。
「ママ…?」
「心配したのよ!?本当に…本当に無事で良かった…!うっ…うっ…」
 抱きしめながら涙を流す母を見て、ハルトの涙腺も段々と緩んでくる。
「うっ…うっ…うわああああああああん!!!」
 大きな声で泣くハルト。彼は心の奥底にしまっていた想いを全て、大粒の涙と共に流したのであった。

ポケモンロード バイオレット・レクイエム



Chapter2 友のために
第4話 心の傷


(ぼくの家…ぼくの部屋…ここに戻ってきたのも一年ぶりか…)

「お、丁度いいタイミングでお目覚めちゃんか!」

 ハルトの部屋にペパーとボタンが入ってきた。ミライドンも一緒だ。

(こういう時はお友達だけにした方が色々話しやすいわよね)

「ママはちょっと買い物に行こうかな。何かあったらすぐに連絡してね」

「うん。ありがとうママ」

 ハルトの母が出ていった後、ハルトは時計と窓に目を向ける。時刻は10時過ぎ、そして窓からは日差しが差している。

「確かぼくは倒れちゃって…随分長い間眠ってたみたいだね…ぼくを家まで運んでくれてありがとう。迷惑かけちゃったね」

「迷惑なんかじゃないよ。おかげでハルトの家に泊めてもらえたし」

「それよりハルト…すまねえ!」

「ええ!?なんで謝るの!?」

「うちらは軽い気持ちでハルトの過去を聞こうとしちゃった」

「でも凄く辛いことがあったんだよな…」

「トラウマを思い出させちゃって本当にごめんなさい」

「そんなに謝らないで!二人は事情を知らなかったから仕方ないことなんだし!それに…過去を乗り越えられていないぼくのせいでもあるから…」

「ハルト…」

「そうだハルト。腹減ってねーか?オマエに元気になってほしくてサンドウィッチ作ったんだ。食えるか?」

「うん。ありがとう。頂くよ」

 ペパーがバスケットから取り出したサンドウィッチを受け取ると、ハルトは一口ずつゆっくりと食べ始める。

「まともな食事をしたのも一年ぶりかも…懐かしいな…優しい…ペパーの味だ…うっ…うう…」

「ハルト?」

「あれ…涙が出てきて…うわあああああん!!」

「ハルト!?大丈夫か!?」

 再び大粒の涙を流し泣き始めるハルトを見て、流石に驚き心配する二人。

「うっ…ごめん…美味しいサンドウィッチを食べる…当たり前のことができるのが…本当に嬉しくて…」

「ハルト…」

 するとペパーとボタンはハルトを優しく抱きしめる。

「過去の事は無理に話さなくていい。でも思いっきり泣いていいんよ」

「オレたちはその涙も受け止めてやるからよ」

「ペパー…ボタン…うわあああああああああん!!」

 

 そしてハルトも泣き止み、サンドウィッチも食べ終わって…

「さて、オレたちはそろそろ行くとするかな。ハルト。冷蔵庫の中にいくつか作り置きの料理を入れておいた。腹が減ったら温めて食ってくれ」

「もしかしてサンドウィッチ以外の料理も作れるようになったの?」

「おう!オマエに美味いもん食わせたいからな!一年間料理修行してレパートリーを増やしたんだぜ!」

「ぼくは料理苦手だから尊敬しちゃうよ…ありがとうペパー」

「それとハルト。アカデミーはしばらくお休みらしいし、今はしっかり休んで」

「そういう訳にはいかないよ。ぼくも戦わなきゃ…」

「…うちね、いじめを受けてトラウマになったことがあるの。スター大作戦でいじめがなくなった今だって思い出してしんどくなることもある。人が心に負った傷って簡単には治らないんよ」

「心の傷…」

「ハルトはきっとうちよりもすごく辛い経験をしたんだと思う。そしてその心の傷はあなたが思っているよりずっと深い。だからねハルト、あいつらのことはうちらに任せて」

「それによ。オレたちはオマエに返しきれないほどの恩があるんだ。たまには借りを返させてくれよ」

「…分かったよ。じゃあ任せるよ。ペパー、ボタン」

「うん。じゃあね。何かあったら連絡してね」

「作り置きの料理がなくなった時も呼んでくれ!また美味いもん作ってやるからよ!」

「うん。ありがとう。二人とも」

 

「さてペパー。ハルトを見てどう思った?」

 ハルトと別れたボタンは歩きながらペパーに問いかける。

「どうって…相当ヤバいってのはオレにも伝わってきたな。あいつまともに食ったのは一年ぶりって言ってたよな?サンドウィッチを食っただけで泣き出すなんて、マジで何があったんだ…?」

「それと服がボロボロだったのも昨日の戦いのせいじゃなさそうだよね…おなかとか背中とか見えちゃってたけど痛々しい傷跡もあった」

「マジか。気づかなかったぜ…そういえば倒れたあいつを背負った時、やたら軽かったような…」

「そして話そうとしただけで失神するほどのトラウマ。ハルトってメンタルもかなり強いはずなのに…滅茶苦茶過酷な事があったのは間違いないと思う…」

「だったらなおさらアイツが元気になるまでオレたちが頑張らねーと!で、何するんだボタン?」

「ネモの『かたきうち』!って言いたいところだけど…」

「正直勝てる気がしねーんだよなあ…オレたちよりずっと強いネモですら歯が立たねーとか強すぎんだろ…」

「うーん…うちとペパーのタッグで2VS1ならワンチャン…」

「本当にワンチャンあんのか?」

「えと、相手の攻撃が全部外れてこっちの攻撃が全部急所に当たれば…」

「ノーチャンだろそれ…」

「うーん…あ」

「どうしたボタン?」

「ハルトって料理は苦手だよね?」

「ああ。というかアイツがサンドウィッチを作ろうとすると何故か爆発するから下手以前の問題な気もするが…」

「でもペパーは料理が得意。そして特技でハルトを元気づけた」

「それがどうした?」

「ハルトにはハルト、うちにはうちの得意なことがある。無理に戦おうとするんじゃなくて、うちらにできることをするのが一番じゃないかな」

「なるほどな…オマエの言う通りだな!」

「さっきはペパーがハルトを元気づけたから、今度はうちの番!うちの得意なことは…ハッキングと分析!」

 するとボタンはスマホロトムを取り出した。

「昨日の戦いの時…ネモにはテレビ通話を繋ぎっぱなしにしてもらってた。映像は途中で切れちゃってるけど…敵の情報を何か掴めるかも!」

「なるほど!じゃ分析開始だな!」

 二人は近くのベンチに腰をかけ、動画の再生を始めた。

 

『俺はチーム・ユートピアのヴレイ。未来を導く者』

「こいつがアカデミーを襲った犯人か…フードの付いたローブを着てて姿は全然見えねーな」

「チームってことは単独犯ではなさそうだよね」

「こいつにも仲間がいるって事か…ますますやばそうだぜ」

 ボタンは動画を進める。するとネモとヴレイの戦いが始まった。

「テツノカシラ…初めて見るパラドックスポケモンだね…タイプははがね・エスパーみたいだけど…」

「相性有利だったとはいえネモのポケモンを二匹もあっさり倒すなんてな…」

「それでもネモは健闘して何とか一匹は倒した。だけど…」

 

『コフュオオオオオオオオオオン!!!!』

「まさかの二体目はズルすぎんだろ…」

「それも超巨大サイズだからね…」

「そういえばオレとハルトが前に戦ったテツノワダチは秘伝スパイスでデカくなってたんだよな…こいつも秘伝スパイスでデカくなったヌシポケモンなのか?」

「どうだろ?」

 

 その後も映像を見続ける二人。テツノカシラの攻撃の余波を受け、ネモが血を流しながらボロボロになる様子も残っていた。

「うっ…」

 思わず吐き気を催してしまうボタン。ペパーの顔色も悪くなる。

「リアルな血見るのってかなりきついな…それがダチのならなおさらだ…」

「でも何かヒントがあるかもしれない以上、目を逸らさないようにしないと…!」

 

『滅びの輝きを喰らい!真なる未来へ導け!!』

『ゼロスタル!!』

「…一番気になるのはやっぱりここよね」

「ゼロスタルってなんなんだ?テラスタルを吸収しちまうなんて…」

「あいつが持ってる球体…ストロングスフィアに見た目は似てて使うとピンクの霧が発生するのも一緒だけど…」

「ストロングスフィアの話はオレも聞いたことがあるぜ。確か使うとポケモンが強くなるけど、ポケモンへの負荷がでかくて使いすぎるとトレーナーとの絆も失われる…ってやべー代物だったよな?」

「うん。でもストロングスフィアにはテラスタルを吸収する力なんてなかったし、よく見ると形状も違う…あれは別物かも。テラスタルオーブにも見た目は似てるし『ゼロスタルオーブ』って呼んでおこうかな…」

「ゼロスタルオーブか…」

「それとこの後の発言…」

 

『君の健闘に敬意を表し、一つ教えてあげよう』

『パルデアの救世主…ハルトは俺が殺した』

「ハルトが生きてたってことは殺害には失敗したみたいだけど…ああなっちゃったのと関係してるのは間違いないよね…」

「ハルトもネモもアカデミーも滅茶苦茶にしやがって…アイツ…絶対許せないぜ…!」

 

「で、そのあとハルトが助けにきたみたいなんだけど…通話は切れちゃってる。凄い攻撃でスマホロトムもやられちゃったみたい」

「うーん…あんま詳しいことは分からなかったな…」

「ただ一つ気になることがあるんだよね」

「気になること?」

「敵の目的。なんでアカデミーを襲撃したんだろ?」

「ハルトの命を狙ってたみたいだし…まさかネモも殺す気だったとか!?」

「それが目的なら暗殺とかもっと簡単な方法を選ぶと思う。アカデミーを破壊する必要が全くない」

「じゃあアカデミーに恨みがあったとか?」

「それはあり得そうなんだけど、なーんか違和感あるんよね…」

「違和感か…そいつの正体が分かれば…」

「敵のことも分かるかもしれない。だから…」

 

「うちらで調べてみよう。アカデミーを」

 こうしてペパーとボタンは半壊したアカデミーにやってきたのであった。

 

To be contined…

 

ー次回「アカデミーの秘密」ー

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