ポケモンロード バイオレット・レクイエム 作:とり。@pktorisky
「アカデミーは封鎖中か…」
「そりゃあれだけの事件があればね。警察とかも色々調べてるんじゃないん?」
「どうする?事情を話して入れてもらうか?」
「うちら子供だし帰れって言われそう。こっそり入っちゃう?」
「おやおやー?ペパーさんにボタンさんじゃないですかあ!」
「アンタは…!」
ポケモンロード バイオレット・レクイエム
Chapter2 友のために
三人はアカデミーの敷地内へと足を踏み入れた。
「とんとん拍子で中に入れちゃった…」
「校長や理事長に頼んで根回ししてもらったかいがありましたあ」
「ありがとうございます!ジニア先生!」
ネモとペパーに声をかけてきたのは眼鏡と無造作な髪型や白衣が特徴的なジニア。ハルトやネモが一年生の時のクラス担任も務めていた、アカデミーの生物学教師だ。
「ところで二人は何しにアカデミーに?ハルトさんは一緒じゃないんですかあ?」
「実は…」
ボタンたちはジニアに事情を説明した。
「ネモさんだけでなくハルトさんの身にもそんなことがあったんですね…」
「だからアカデミーを襲った犯人の手掛かりを探しに来たんだ」
「ハルトやネモが苦しんでる今、これがうちらにできる『かたきうち』なんです!」
「なるほど…では目的はぼくと一緒ですねえ」
「先生も敵の事を調べに来たのか?」
「はあい。アカデミーを襲ったパラドックスポケモンたちには不審な点がありましたあ。ぼくは元々研究畑の人間ですからねえ。気になったことは調べなきゃ気が済まない性分なんですよお。それに…」
「それに?」
「ネモさんもハルトさんもぼくの大切な教え子です。二人が傷付けられて怒ってるのはあなたたちだけじゃないんですよッ…!」
「ジニア先生…」
普段はおっとりとした性格のジニアであったが、想いを話している時は真剣な瞳をしていた。そして拳を握りしめる様子から、ジニアが抱く強い怒りがペパーとボタンにも伝わってきた。
「さてさて。ぼくたちなりの『かたきうち』を始めるとしましょう!っうわあっとっと!!」
張り切って校内に入ろうとするが、瓦礫につまずきジニアは転んでしまう。
「…この人に頼って大丈夫かな?」
「うーん…?」
こうしてアカデミー内を調べ始めた三人。
「そういえばさっき言ってた『不審な点』ってなんなんですか?」
「実は今回の事件で重傷を負ったのはネモさんだけ。犠牲者はおらず他は軽い怪我をした人が数人いる程度だったんですよお」
「そうなん!?てっきりネモみたいな重傷者…それどころか死者も出てると思ってた…」
「先生たちが頑張ってみんなを守ったおかげだな!」
「…いえ、パラドックスポケモンたちはこちらが攻撃を仕掛けたら反撃してくる程度で、明らかに建物ばかりを狙っていたんです」
「もし今回の事件がアカデミーに恨みを抱く人間によるテロだったら…建物だけじゃなくて生徒やポケモンも無差別に攻撃するはず…」
「でも普通ならポケモンで人間を直接攻撃するのってためらわねーかな?」
「犯人のヴレイはネモをボロボロにしてアカデミーを滅茶苦茶にしたんだよ?そんな奴に良心なんてあると思うん?」
「…それもそうだな。ん?でもネモやオレには攻撃してきたような…」
「うちらが作戦の邪魔をしてくることを察知して、一部のパラドックスポケモンに妨害指示を出したのかも」
「なるほど…」
「つまり『アカデミーを破壊すること』自体が犯人の目的だったと推察できるわけですねえ」
「アカデミーの破壊か…でも何のために?」
「ところでボタンさん。一年前のアカデミー襲撃事件は覚えていますか?」
「もちろん。エクスプローラーズが校内バトル大会で警備が手薄になった隙を狙って侵入してアカデミーのデータを盗んでいった…あの時はうちも戦ったけどしてやられて…悔しかったからよーく覚えてます」
「そういえばあの時ハルトは丁度ブルーベリー学園に留学してていなかったんだよな。アイツ、いつも肝心な時にいないような…」
「…そっか!前のアカデミー襲撃の目的がデータを盗むことだったみたいに、今回も何かを盗むのが目的なのかも…!」
「あるいは何かを探していたとも考えられますねえ」
「何かを探すって?」
「例えば…アカデミーの壁の中に伝説のポケモンが隠されていたー!なーんてことがあったらアカデミーを破壊して探していたと考えられませんかねえ?」
「いや伝説のポケモンが埋まってたは流石にねーだろ…」
「例えですよお例え」
「でもヴレイはハルトと決着が付く前に撤収したみたいなんよね」
「その何かが見つかったから撤収したかもしれねーってことか」
「ジニア先生。アカデミーから盗まれたものとか分かりますか?」
「うーん…アカデミーには膨大な数の書物や希少品がありますし、これだけ荒らされてる状態じゃあすぐには分かりませんねえ…ですが痕跡を探ることはできますよお」
するとジニアはバッグから懐中電灯のようなものを取り出した。
「あしあとライト~」
「普通の懐中電灯と何が違うんです?」
「このライトを当てると隠れた足跡が見つかる優れものなんですよお。本来はポケモン調査のための道具でその仕組みは…」
「あー詳しい説明はまた今度でお願いします」
「はあい。それでそれでこのライトを床に当てると…」
「…足跡がいっぱい浮かび上がってきた!」
「でもこれじゃあどれが誰の足跡か分からねーんじゃ?」
「ここで足跡の向きに注目でえす」
「向き…?あ!たくさん足跡があるのに全部出口の方を向いてる!」
「そっか…アカデミーの生徒やポケモンはみんな逃げようとしたから…」
「足跡はみんな出口や窓がある方を向いている訳ですねえ」
「…ねえ!この足跡…」
ボタンは大きな二つの足跡を見つける。
「この足跡だけアカデミーの奥に向かってる…?」
「でけー足跡だな…大きな靴跡に…もう一つはポケモンのか?」
「大きさからして屋上へ向かったペパーさんやネモさんの足跡ではありませんねえ。サワロ先生の足跡はこれくらい大きいですが、あの時サワロ先生は生徒を守るために戦っていてロビーからほとんど動いていませんでしたあ。そして犯人はネモさんを襲った男の他にもいる可能性が高いのでえ…」
「この足跡はもう一人の犯人の…!」
「足跡をたどってみましょうかあ」
こうして三人は足跡をたどって歩き始めたが…
「校内のあっちこっちを歩き回ったね…」
「犯人もお目当てのものを見つけるのに苦労したようですねえ」
「だけど…行き止まりか?」
「いえ…足元を見てくださあい」
ペパーたちの目の前には壊れた大きな本棚が倒れているだけだが…足元の床が他の床と形状が違うことに気づく。
「これって床下に大きな扉が…?なんかありそうじゃない?」
「そこに壊れた本棚があります。どうやらこの扉は本棚の奥に隠されていて、犯人は本棚を壊してようやく見つけたようですねえ」
「よし!開けてみるか!みんな!手伝ってくれ!」
手持ちのポケモンたちをボールから出すペパー。そして背負っていたバッグからロープを取り出し、扉に結び付けて…
「せーのっと!!」
ペパーはポケモンたちと一緒に思いっきり引っ張る!すると重たい扉が開く!
「よし!よくやったみんな!」
ペパーはポケモンたちをボールに戻す。
「おー。ナイスジョブ」
「てかちょっとは手伝えよボタン」
「うちは分析担当。力仕事は男子に任せた」
「おーい。あんまりオレを雑用係にしすぎると飯作ってやんねーぞ」
「それよりもこれを見てくださあい」
扉の向こうにあったのは大きな穴。中は真っ暗であった。
「なんだこの穴…底が全然見えねーぞ…」
「どこに繋がってるんだろ…?」
「犯人もこの奥へと向かったようですねえ。行ってみましょうかあ」
「…この穴の中に飛び込むんですか?」
「まさかあ。こういう時は…トロピウス!」
ジニアはフルーツポケモンのトロピウスを繰り出した!
「トロピウス?ジニア先生そんなポケモン持ってたのか?」
「学校最強大会の時は手持ちに入れてませんでしたよね?」
「シンオウ地方に行った時にノモセ大湿原で捕まえた子です。戦うのはちょっと苦手なんですけど、フィールドワークでは大活躍なんですよお」
するとジニアはトロピウスの背に乗る。
「トロピウスの『そらをとぶ』で降りましょうかあ。二人とも乗ってくださあい」
「…不謹慎かもしれねーけどちょっと面白くなってきたな」
「同感。じゃあ行こっか。アカデミーの秘密の地下へ!」
To be continued…
ー次回「アンダー・ザ・アカデミー」ー