ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない   作:なはた

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第10話

 

―――予期せぬ、しかしとても充実した時を過ごせたと断言出来よう伊藤さん家でのお泊まりから約2週間後。クール系うすほそ美少女こと私……おっと未だ完全に自己暗示が抜けきってないようですね?三度唱えただけでもこの効力、もしもその倍の数やろうものなら性別だけでなく己の認識も女性に染まってしまうでしょう。お兄ちゃんはおしまい!ならぬ翔太くんはおしまい!となる事間違いありません……改めてことエリザは現在ボスからの命令で、街外れの工場地帯に現れていた。

 

 

もう6月も終わりを迎えようとしている今日この頃、ジメジメとした気候が俺はあまり好きではないので出来れば月と一緒に梅雨も明けてほしいものだが……残念な事にまだもうちっとだけ続くんじゃと言わんばかりに雨が降り注いでいる。つまり前回の屋上テラスに続き雨の中での戦闘になるというわけだ……天候というシチュエーションが同じ事から俺の脳内であの戦いが連想させられる。

 

 

『だ、大丈夫……だからっ』

 

 

「……あの顔」

 

 

俺にフォレストソードを破壊され、勢いを殺せずそのままコンクリートの壁へ思いっきり衝突してしまったマジカルアメリア。敵幹部でありながら魔法少女の心配をするだなんて変な話だと未だに思うが、俺はあの瞬間にアメリアが浮かべたまるで己の自信や矜持。それらを丸ごと粉々にへし折られ絶望したかのような表情が忘れられずにいて……何とも言い表せない感情に襲われていたそのとき、いつも通り3人の魔法少女が現れた……のだが。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

普段なら開口一番に「見つけたよエリザ!」と大きく声を上げるマジカルリリィ、18禁ワードを真顔で平然と言いのけるヘンタイ☆マジカルソフィア、両者が神妙な面持ちで黙り込んでいた。どこか普段と違う空気を醸し出している魔法少女達に疑問に抱き、残り一人であるマジカルアメリアに視線を向けると……

 

 

「……っ!?」

 

 

マジカルアメリアもまた2人と同様に無言、けれど共通しているのはあくまで表面上だけ。こちらを真っすぐに見つめるその瞳は炎を錯覚させるかの如く燃え盛っていて、底知れない強い覚悟を感じ俺は思わず口には出さずともそのオーラについ圧倒されてしまった。前回の戦闘時の、いや―――今までの彼女とは明らかに違う。

 

 

そう頭で理解した瞬間、マジカルアメリアが口を開き。

 

 

「―――行くよ、ソフィア、リリィ」

 

 

力強く凛とした声色で戦闘開始の合図を告げると、リリィとソフィアはそれに反応するように静かに頷き両者動き出して……どうやら前回と同様にアメリアの作戦に従っているようだ……意図は分かったが、それにしてもまるで別人かのようなアメリアが引っかかって仕方ない。

 

 

俺も彼女達に僅かに遅れを取る形で、心にザワつきを抱きながらステッキを構える。

 

 

「リリィ・ストレートスラッシュ!」

 

「……カウントレス・レーザー」

 

 

放たれたピンク色の巨大な刃が一直線にこちらへ向かってきて、俺はそれに対し即座にレーザーを放ち相殺した。

 

 

「リリィ・ハートバースト!」

 

 

そして間髪入れずに追撃となる無数のピンク色ハート型のエネルギー弾を上空へ放ち、それらはぐるりとを宙を舞うように頭上から俺をめがけて飛んで……いやちょっと待て。何かおかしいぞ?

 

 

「ソフィア・クリスタルコールド」

 

 

絶対零度の冷気を纏う巨大な氷の結晶が豪音と共にリリィ・ハートバーストと同様俺の方へ向かって……

 

 

「また、同じ……?」

 

 

魔法少女側には聞こえぬよう小声で呟く、俺が抱いた疑問。それは―――リリィとソフィアの行動が前回の屋上テラス時と全く同じなのだ、技を放つ順番やタイミングまで変わらぬ様は完全にデジャブと言えよう。俺がレーザーの照射する方向を分散させ操れる事は既に把握しているはず、作戦を立てているならそんなの計算済みに決まってる。まさか同じ攻め方なんてするわけ……前回の流れに乗っとるなら二つの攻撃を囮にして、アメリアがフォレスト・ソードを握り右から回り込むように俺の元へ向かってくる。

 

 

エネルギー弾と巨大な氷の結晶から視線を逸らし、アメリアは今何をしているのかと必死に目で追えば……

 

 

「アメリア・フォレストソード……!」

 

「……やっぱり」

 

 

アメリアはステッキを地面に突き立て、彼女の足元が振動し輝く光の剣が地面から現れた。そして両手で力強く握ると、右から回り込み……方向まで一緒だなんて……まさか相手が二度も同じ手で攻めては来ないだろうと俺が思う上での裏読み?

 

 

……色々と腑に落ちない点はあるが、どちらにしろレーザーで迎撃しなければ俺は攻撃を食らってしまう。ここは悪いけどっ……!

 

 

俺はエテルネルステッキを力強く握り、脳内でレーザーの照射方向を一本一本定めながら唱える。

 

 

「カウントレス・レーザー」

 

 

レーザーは分散し、それぞれリリィとソフィアの放った攻撃の元へ向かい大きな爆発音と砕け散る氷の音が同時に響き渡る。後はアメリアのフォレストソードの元へ……

 

 

「……なっ」

 

「か、かかった……!」

 

 

アメリアはまるで獲物を罠にハメたかのような喜びの声を漏らし、彼女は自ら剣を手放すと丸腰となってしまった。己へ一直線に向かってくるレーザーに対し、怯えもせずゆっくりと瞳を閉じ……そして感情を乗せた優しく温かな声で。

 

 

「―――アメリア・フォレストウォール」

 

 

そう告げると地面から緑色に輝く、大樹のような分厚い光の障壁が現れドガァァァン!!と鼓膜を揺らす激しい爆発音が響くが俺の放った漆黒のレーザーは、元より威力を相当手加減しているとはいえアメリアのフォレストウォールに完全に防がれ火花を散らして消え去ってしまった。そして同タイミングで緑の障壁もフッと消滅し、その立ち込める爆煙の中から彼女は地面に自ら落とした剣を拾ったのか一気に距離を縮めて突っ込んできた。その踏み込みの速さは前回の比ではない。

 

 

アメリアは声を大きくして叫ぶ。

 

 

「わ、私はどうやったらエリザの強大な力に対処できるか考えた……!自信を無くしかけた事もあったけど……!あの出会いが―――彼女が私に力をくれた……!」

 

 

凄まじいスピードでこちらに向かってくる……バリアでレーザーを打ち消された衝撃、光り輝く大剣が俺を真っ二つにぶった切る絵面を想像し沸き上がってくる恐怖、それに何よりアメリアの言う「彼女」が何故か俺の頭の中で反復するように何度も繰り返され集中できず技を放つ事ができない。おい!彼女って誰だよ!?(※貴方です)

 

 

そんな俺の苦しみなど関係無しにアメリアは言葉を続ける。

 

 

「そっ、それから悩みに悩んで……でも数日前とある答えに行き着いた。攻撃ばかりじゃ届かないって、何より大切なのは……護る力!きっとこれが正しいって彼女も言ってくれるはず、だって私達は街の平和を、人々を助ける魔法少女だからっ……!!」

 

 

 

……だから彼女って誰だよ!????(※貴方です)

 

 

眼前に迫るフォレストソードを前に今まで感じた事も無いような純粋な死への恐怖、それが俺の生存本能能力を限界にまで引き上げ……

 

 

「ッ……カウントレス、レーザー……!」

 

 

錯乱状態の中でも何とか技を放つ事に成功した、超至近距離で漆黒の一本のレーザーと緑の巨剣が正面から激突し……フォレストソードはバキッと折れて消滅した。文字通り間一髪である、後数秒でも照射するのが遅れていれば、本来ならまあボロボロになる程度で済むところだろうが俺のよわよわな体の場合は真っ二つに切断されてもおかしくない。ニチアサだったら後世に語り継がれる放送事故と化し、女児先輩達にトラウマを刻んでしまうだろう。

 

 

武器を失ったアメリアは俺から距離を取るように離れる……あぶねぇ、もしこのまま素手で殴りかかってこられでもしたら普通に終わってたもん。俺が肉弾戦ザコいって事を知られてないのが救いだったか……アメリアの元にリリィとソフィアが駆け寄る。

 

 

「アメリア!大丈夫ですか!?」

 

「アメリアちゃん!」

 

「はぁ……っ……う、うん、大丈夫」

 

 

 

心配になり駆け寄る2人、屋上テラスの時と構図は似ているが最大の違いはアメリアの瞳に光が灯っている事だろう。場は硬直状態となった……これなら帰れるか?もう心臓バックバクで冷静を装うの精一杯だし終わりにしたい、いやさせてください。

 

 

「……戦いは終わり」

 

「ま、まだ私達戦えるよ!」

 

「リリィの言う通りです、貴方と私の蜜月はまだ始まったばかり。夜まで……いいえ夜が明けるまで、いやもう振り切って24時間続けようではありませんか!ル・マンならぬテ・マン耐久レースです!」

 

「……ソフィアちゃんが何言ってるのか私も頑張って理解出来るようになった方がいいのかな?」

 

「リ、リリィ……それはならなくていいと思う……」

 

 

引き分けに見えるが、正直な所罠にハマり危うく倒されかけたので今回は俺の敗北と言えよう。バリアか……相当手加減した威力のカウントレス・レーザーとはいえ防がれたのは相当な衝撃を受けた、やはり魔法少女達は成長しその力を強めていく。それを思い知らされたな、俺も色々と対策を練らなきゃ……

 

 

「あっ霧が!?待ってください!せめて貴方の雨に濡れて滴る髪が戦いながらとてもエッチだなと感じていた事だけは伝えておきたくて―――」

 

 

青の発言は安定のスルーで……そして霧の中へ消えていく最中、俺は確かにこの目で見た。

 

 

「……ありがとう、翔子……」

 

 

まるで霧が晴れたように心の底から嬉しそうに笑い、そして小声で誰かの名前を呼び感謝を伝えているアメリアの姿を……実質的に負かされたにも関わらず俺はその笑みを見て―――良かったね。そう思ってしまうのは何でだろうか?




次回からソフィア編スタートです!
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