ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない   作:なはた

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第3話

 

会議部屋はアジト内の中央に位置し、まるでハガ○ンの真理の扉みたいな石などの鉱物で出来た巨大な扉を手で押し入るのだが、開くたびに毎度子供向け玩具の如く『ようこそ、身の程しらずのバカ野郎』と誰かの妙に気合いの入った録音音声が律儀に流れるのだ……いやこれやっぱ完全にハ○レンじゃね??

 

 

好きなんだねー!とニッコリして終わるなら平和なのだが、問題はその録音音声がガスマスクや布など何かしらで口を覆っていないと出ないようなくぐもった声で……しかもどこかボスの声を彷彿とさせ……気のせいだと思う事にしよう。うんそれがいい。

 

 

疑問に蓋をして心の奥底に封印し、足を進めると大理石で作られた白色のマーブル模様が入る会議用のテーブルと椅子が見えてきた。そして既にサディストお姉さんことヘレンと、緑髪でスーツ姿の両耳にピアスを付けたホストみたいな見た目で、何故か俺を敵視している男幹部のハザードが座っている。陰キャな俺にとっては相性最悪な2人なので、本音を言えば今すぐバックレてシュタインちゃんと戯れていたいけれど……だがしかし、嘆いても仕方がない。だから俺はこう思う事にしたのだ、嫌な先輩とも我慢して付き合う……これはバイトもやらなかったので社会経験が無い俺にとって良い機会なのだと。

 

 

よし!頑張るぞ!

 

 

表情こそいつも通り仏頂面だが、裏腹に俺の内心は闘志の炎が燃え盛っていた。満を持して椅子に座り、そして―――

 

 

「チッ……」

 

「ふふっ、私はエリザの存在をこの部屋に入ってきたときから既に認知していたわ。だって……貴方の濃厚なメスの匂いが私の鼻を強引に犯してきたから、ね?」

 

「…………」

 

 

俺の存在が心底気に食わないと言わんばかりのハザードの力強い舌打ちと、ヘレンの変態セクハラ発言を連続で食らい……闘志の炎は一瞬で鎮火されてしまった。もうやだこの職場。

 

へし折られた心を必死に隠しながら、黙ってボスがモニターに映るのを待っているとハザードがこちらを睨みつけてきている事に気が付いた。ひええ……

 

 

「……おいエリザ、テメェこの前の発言について未だに謝罪の一つもしてこないとか一体どういうつもりだ。オレをナメてんのか?」

 

「……何の話?」

 

「あ!?とぼけんじゃねぇよ!4日前の事だ!」

 

 

鬼の形相を浮かべながら叫んでくるハザードに内心ビビリ散らかしながら、俺は記憶を掘り返す。そもそもハザードとは会った所で毎回面倒な絡み方されるだけなので、俺は無言を貫き通しており失言などやらかしようがなく……あ、思い出したわ。

 

彼の言う通り4日前、俺は広いアジト内でハザードと運悪く顔を合わせてしまったのだがそのとき彼の服装が何故か薄汚れており……そして俺は親切心から「スーツ、汚れてる。クリーニングに出した方がいい、後部屋は綺麗にね」とついついオカンみたいな台詞吐いちゃったんだった。クールキャラを一瞬でも崩してしまったのは俺にとって問題だが、ハザードが怒る理由にはならないような……?

 

 

「的外れな戯言ぬかしやがって……オレは綺麗好きで毎日部屋の隅までしっかり掃除してんだよ……」

 

「……ハザード、強がらなくていい」

 

「ああ!?」

 

 

その気持ち分かるよ、俺も前世で母さんから口うるさく部屋を掃除しなさいって言われてよく腹立ってたもん。今振り返ると子供だった……ハザードに対してちょっとだけ親近感を抱いていると、彼はついに抑えきれなくなってしまったのか苛立ちを爆発させるように椅子から立ち上がり言い放った。

 

 

「オイ!いいかエリザ!オレのスーツの汚れは魔法少女共との戦闘の際についたものだ!それを誤解して汚部屋扱いするな!!」

 

 

……そうだったのか、勘違いして失礼な事言っちゃったな。俺は素直にハザードに謝罪するのと同時に、彼をフォローする意味も込めて。

 

 

「ごめんなさい……でも大丈夫、魔法少女に傷つけられたからって落ち込まないで。アナタは強いから」

 

「…………ブレイクダー(幹部達が魔法少女に放つ怪物の名前)が倒されたときに、飛び散った地面の砂がオレのスーツに付いただけでオレ自身はやられてねぇっつの……

 

 

俺の言葉を受けてハザードはブツブツと小声で何かを呟きながら、力を抜くようにゆっくりとその身を椅子に降ろしていった。正直自信はなかったが、どうやらナイスフォローが出来たようだ。もはや怒る気力すら失せたように見えるのはきっと気のせいだろう、パーフェクトコミュニケーション(よし、楽しく話せたな)。

 

 

「エリザ、貴方は本当に面白い子ね」

 

「……どういうこと?」

 

「お姉さんの独り言よ♡」

 

 

そう言ってウィンクしてくるヘレンに内心首を傾げた瞬間、中央のモニターに突然ジジジと砂嵐が起こり……お出ましか。

 

 

『―――傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰』

 

 

人間を罪に導く可能性があると、そう見做されてきた欲望や感情である七つの大罪を言い終えると砂嵐が収まり……画面いっぱいに映ったのは不気味なガスマスク。呼吸音が漏れ出ていて、中に誰かが入っている事が分かる……そう、コイツが『ソサエティ』のボスだ。さっきまで俺に対して変な態度を取っていたハザードも、途端にその顔つきを引き締め真剣な表情を浮かべているのは画面越しであるにも関わらずボスの放つ異様な空気に圧倒されているからだろう。

 

タイラー・ダーデンとか真理の扉パロとかやってるからよく分からなくなるが、やはりコイツは本物だ―――

 

 

「ぼすのはなつおーらはさすまじいです!えりざさまもそうおもいますよね!」

 

 

うん、凄まじいよね…………ん?

 

幻聴かな、今シュタインちゃんの声が聞こえたような……いや気のせいに違いない。きっと疲れてるのだろう、会議が終わったらステッキさんに頬ずりして正気度上げないとね……

 

「あらあら~、誰かと思えばシュタインじゃない」

 

「おいテメェ!今は会議中だぞ!」

 

 

反応するヘレンとハザード……そうか、みんなで集団幻覚見てるのか。怖……

 

 

『シュタインよ、何故ここにいる』

 

 

ボスまで触れてるならもう本物じゃねぇか、いやボスと同じ事言う感じでアレだけど何でここにいるんですか??

 

ボスの問いに対し、シュタインちゃんは太陽のように明るい笑顔を浮かべながら。

 

 

「しゅたいんはみらいのかんぶとして、しゃかいかけんがくしにきました」

 

『……なんだと?』

 

「えっへん、です」

 

『……シュタイン、貴様……』

 

 

ボスの声がより一層低くなり……シュタインちゃんはボスが作り出した存在だ、しかしだからこそ創造主の怒りを買おうものならどうなるか分からない……彼女は組織、そして何よりもこの世界で俺にとっての唯一の友達だ。もし傷つけようとするなら―――

 

説得が通じるとは思えない、俺はステッキをギュッと強く握りしめる……まさか、こんな展開になるだなんて。でももう戦うしか道が……額から汗を流しながらボスが次に発する言葉を震えて待っていると。

 

 

『そうか、よく学ぶがいい―――まずソサエティは会議を始める際に腐り切った現代社会、そしてそれらを作り上げた人間共への怒りを込めた掛け声を行うのだ。ソサソサソーサ!今のを……3回ずつだ……』

 

「そさそさそーさ!」

 

『……ほう、たった一度で私の掛け声の声量に細かな抑揚まで完全にコピーするとは流石はシュタイン。私の作り出した最高傑作な事だけはあるようだ』

 

 

そんな掛け声いつもやってないじゃん……思考が数秒間フリーズし、絞り出すように出たツッコミ。そして俺はヘレンの件で抱いていた疑惑に対し、ようやく確信を得る。やっぱり…………やっぱり、信用しちゃいけなかったんだ。

 

 

「畜生……エリザだけでなくあのロボガキもボスに好かれやがって……」

 

『ハザード、貴様今何と言った』

 

「いっ、いえ!何でもありません!」

 

 

女神様―――いやあの女神は俺をニチアサ世界観ではなく、もっとこう何かヘンテコな魔法少女モノの世界へぶち込んだのだと。

 

 

「ねえエリザ、貴方も今の掛け声やってくれないかしら?」

 

「……死んでも嫌」




何だこの敵組織は!真面目にやってる魔法少女達を見習えよ!(なお約一名を除く)

組織側のキャラ紹介も終わり、次回からはエリザと魔法少女サイドの絡みを本格的に描いていく予定です。
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