ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない   作:なはた

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第6話 

 

ペロッと青酸カリを舐める国民的名探偵の如く、諸星さんに名前を聞かれて俺は咄嗟に「橘翔子」と偽名を名乗り3人で母親探しを行う事になった。路地裏から表の商店街へ出ると、平日ながらもご老人や主婦に学校終わりの学生と多くの人々で賑わいを見せている。愛音ちゃんによればこの中でいつの間にか母親とはぐれてしまったらしい、これはショッピングモールなどの大型施設等にも当てはまるが人が沢山いる空間だとどうしても迷子は発生してしまう。

 

 

だが、まあよくある話だし仕方ないよねと安易に片づけるのではなく……薄暗い路地裏で一人孤独に涙を流していた愛音ちゃんの為にも必ず母親を見つけてあげなければ―――よし!コミュ障だけど頑張るぞ!

 

 

「ねえ貴方、少し尋ねたい事があるの」

 

うわ、すっごい可愛い子……ここ、こんな少女漫画だったら名前も存在しないようなクラスのモブ女に一体何の御用でしょうか!」

 

「……この辺りで焦った様子で誰かを探している女性を見なかった?」

 

「わ、私は年齢=恋人無しな女なので24時間365日常時焦っていますけど……ハッ!もっ、もしかして私は噂に聞く逆ナンというやつをされているのですか!?」

 

「…………ごめん、説明が足りなかったみたい。貴方の事ではなく、私が見つけたいのは迷子になった娘を探す母親よ」

 

「私にママになってほしい!?わ、分かりました!まだ母乳は出ませんが頑張ってオギャらせてみせますね……ほらほら~ママでちゅよ~♡」

 

 

卑しさを孕んだ目でジリジリとこちらに駆け寄ってくる女子高校生、ひええ……覚悟が見事爆発四散し俺は彼女から逃げるように足早で立ち去った。もしあのまま会話を続けていたら、間違いなくホテルへお持ち帰りされて食べられてたに違いない。元より自分の提案で1:2で手分けして探す事となったのに何と情けない有様か……隠れ肉食系女子が追って来ていないのを確認し、俺は壁に手をつき荒い呼吸を整える。体力よわよわだからちょっと走るだけでアウトなのだ。悲しいなぁ。

 

 

「ハァ……ハァ……とりあえず、2人と合流しなきゃな……」

 

 

そう小さく呟いた瞬間、遠くから色鮮やかなショッキングピンクのツインテールと黒髪ボブを風に揺らしながらこちらに向かって走ってくる諸星さんと愛音ちゃんの姿が視界に入った。そしてあっという間に距離は縮まり、ザコな俺と違い年相応に元気であられるらしく2人とも息切れ一つせず成果アリと言わんばかりに笑みを浮かべている。

 

 

「おねーちゃん!お肉屋のおじさんに聞いたらわたしの名前を呼んでる人を見たって言ってた!ぜったいお母さんだよ!見つけて早く一緒にいつもの公園で遊びたいなぁ」

 

「愛音ちゃんのお母さんは商店街の南口の方に歩いて行ったみたいなんだ!私達も行こう!」

 

「分かった……でもその前に一つだけいい?あすか、貴方に忠告しておきたい件があるの」

 

「えっ、忠告って?」

 

「……お持ち帰り系女子の存在には気を付けなさい、貴方は可愛いから危険性が高い……私はさっき危なかった」

 

「何があったの!?」

 

「おもちかえりけいじょし???」

 

 

首を傾げる愛音ちゃんにまだ早いと俺は誤魔化すように先ほどと同様、頭を撫でてあげると「えへへ、おねーちゃんの手……柔らかくてすっごく気持ちがいいね」と羞恥心と幸福が入り混じったような表情になっていた。その顔を見てこちらも自然と心がポカポカと温かくなってくる、情報も得た事だし見つかるのも時間の問題だろう。

 

そう、思っていたのだが―――

 

 

 

 

「……おかーさん、どこにもいない」

 

「愛音ちゃん……」

 

「…………」

 

 

商店街の南口へ向かい探すも母親の姿は見当たらず、戻って商店街全体の店の一つ一つに手当たり次第入って探すもその姿は無かった。現状行き詰まりの状態、時刻は夕暮れ時となり太陽が沈み始め……まるで比例するように明るかった愛音ちゃんの表情もみるみる影を落とし今に至る。諸星さんは俺と同様に、落ち込む彼女に何と声を掛けていいか分からない様子であった。

 

 

諸星さんは隣の俺に、愛音ちゃんに聞こえないよう小声で耳打ちしてくる。

 

 

「翔子さん、私達は商店街の隅々まで探したよね?」

 

「……ええ」

 

「ならどうしてお母さんはいないんだろう……もしかして、運悪くすれ違っちゃったり……もう一度全部回ってみるのはどうかな?」

 

「悪くはない、でも……」

 

 

俺は商店街のベンチにぐったりと座る愛音ちゃんに視線を向けた、ただでさえ体力的にも小さい子供が長時間動き回るのは疲れるだろうに精神面でのダメージが追い打ちを掛けている。諸星さんもそこは把握済みらしく、真っすぐな目で俺を見つめ言い放ってきた。

 

 

「ここは私一人で行くよ、翔子さんには愛音ちゃんの面倒を見ていてほしいんだ」

 

「それなら貴方じゃなくて私が……」

 

 

諸星さんにそこまでさせるわけには、表にこそ出さないもののマジでベッドに今すぐダイブしたいほど体は疲れ切っているが俺が行くべきで……だが諸星さんは優しく微笑みながら俺のおでこに軽く人差し指をチョンッと当てると。

 

 

「翔子さん、無理は禁物―――めっ、だよ」

 

 

目がクリクリとしていて可愛らしく、紛れもなく美少女である諸星さんの顔が目の前という至近距離、そしてそれ以上にまるで子供に言い聞かせるような彼女の言動は元高校生の俺にとって羞恥心を刺激するには十分な破壊力であった。ていうか女の子同士にしても、この距離感はちょっとおかしいような……これは数多のラブコメ作品を嗜んできた俺の勘が訴えている。諸星さんはもしかしなくても。

 

 

「……貴方、下に妹か弟がいるでしょう」

 

「え?うん、弟が1人いるよ!どうして分かったの?」

 

「……何となく」

 

「凄いね翔子さん!」

 

 

やはりお姉ちゃん属性か、意図せずこのコミュニケーションを行っているのならクラスの女子の脳を少なからず焼いてそうだな……って今はこんな話をしてる場合じゃない。一人行ってしまいそうな諸星さんの腕を掴み、その足を止める。

 

 

「ど、どうしたの?」

 

 

諸星さんは俺の行動に困惑を示している……実際、諸星さんの言う通りすれ違い説もかなりあり得るのだが何か根本的な部分を見落としている気がしてならない。そもそも商店街以外の可能性は?母親が愛音ちゃんとはぐれてしまい、娘はこの場所に行ったと勘違いしてしまうような所がこの近くに…………ああ、あるじゃないか。

 

 

俺は愛音ちゃんの隣に腰掛け、彼女の頭に優しく手を置いた。そして。

 

 

「愛音」

 

「……おねーちゃん?」

 

「―――お母さんの居場所が分かった、行こ」

 

「えっ!?」

 

 

母親探しに決着を告げるのだった。

 

 

 

 

 

「―――愛音!」

 

「ママー!」

 

「もうっ、心配したわ……!急にいなくなっちゃうから!一通り商店街を探しても見つからなくて、それでもしかしたら一人でここに来ちゃったんじゃないかと思って……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「……ふふっ、いいのよ。だってママは愛音が無事ならそれでいいんだからね」

 

「うんっ……!」

 

 

 

抱きしめ合う2人、その光景を諸星さんは心の底から安心したように温かい目で見つめている。母親探しの答え合わせ、その場所は……何の因果か俺が少し前に魔法少女達と戦った街の公園であった。根本的な見落とし、それは商店街以外の可能性という点だ。そこで俺は愛音ちゃんの過去の発言を振り返り、彼女は「見つけて早くいつもの公園で一緒に遊びたいなぁ」と言っていた事から、もしかしてお母さんは愛音ちゃんが1人で公園へ遊びに行ってしまったのではないか?と思い至った可能性に賭けた。

 

 

愛音ちゃんの母親が俺達の前に来て、深々と頭を下げる。

 

 

「本当に、本当にありがとうございます……!」

 

「いえいえ!無事に2人が会えて良かったです!」

 

「……そうね」

 

「ありがとう!あすかおねーちゃん!」

 

「あ、あすかおねーちゃんだなんて照れちゃうなぁ……でっ、出来ればもう1回呼んでくれないかな?」

 

「あすかおねーちゃん!!」

 

「……えへへぇ~」

 

 

その呼び方がよほど嬉しいのか、頬をだらしなく緩ませる諸星さん。お姉ちゃん属性を存分に発揮してますね……そして愛音ちゃんは何故か頬を赤らめ、モジモジとしながら俺の元に近づいてきた。

 

 

「おねーちゃん……ちょっとしゃがんでほしいな?」

 

 

とろけた瞳でお願いされて、訳も分からず言う通りに愛音ちゃんに目線を合わせるようにしゃがみ込むと……彼女は俺の頬に顔を近づけ。

 

 

「ありがとね―――しょうこおねーちゃんっ」

 

「ッ!?」

 

「あ、愛音ちゃん!?」

 

「あらまあ……!」

 

 

そっと唇を落としたのである―――呆然とする俺を前にして、愛音ちゃんは満足気に微笑むのだった。

 

 

 

 

 

「あはは……えっと、良かったね?」

 

「……イジらないで」

 

「でも私、あの子の気持ちも分かるなあ。困ったときに助けに来てくれた王子様……いやこの場合はお姫様だけどね、そんなシチュエーションで好きにならないわけないよ!うん!」

 

 

2人が去った後、無事役目を終えた俺と諸星さんは公園のベンチに座っていた。白馬の王子様ならぬお姫様理論を力説するように大きく声を貼る彼女を見て内心ため息をつく、愛音ちゃんの気持ちは嬉しいけど幼女からの頬キスは色んな意味でアウトなのだ。俺が男だったらきっと通報されてたと思う……まあそこら辺はともかく、本当に解決して良かった。

 

 

「翔子さんみたいな人、私尊敬しちゃうなぁ!優しくてクールでしかもすっごく可愛い!」

 

「別にそんな事ない、優しいなんて…………私には使っちゃダメ。それは貴方みたいな人を指す言葉」

 

 

諸星さんの裏表など存在しない純粋な言葉に、つい俺は突き放すような反応を取ってしまった。悪いが、優しいなんてとてもじゃないけれど自分には当てはまらないワードだからだ。何故なら己の生を優先するが為に、悪役なんてやってるんだから……沈黙が場を支配し俺は気まずくなり俯いて黙り込むと……ふと左手が柔らかく温かな感触に包まれている事に気が付く。

 

 

見れば―――諸星さんが真剣な顔つきで両手で俺の左手をギュッと握っていたのだ。

 

 

「ううん、翔子さんは優しくて善い人だよ。自分でそう思えなくても、私が断言してあげるからね!」

 

「…………」

 

「翔子さん優しい!」

 

「…………」

 

「翔子さん善い人!」

 

「……分かった、私の降参。だからもうやめて」

 

「ふっふっふ~、どうやら勝っちゃったみたいだね」

 

「全く……」

 

 

あまりにも引かない諸星さんに俺は意地を張るのが馬鹿らしくなってしまった、でも決して嫌な気分じゃなくて……一転し穏やかな空気が流れる中。それは唐突に幕を閉じる。

 

 

っ……!?ジュエルが反応して―――つまりソサエティが現れたって事だね

 

 

諸星さんは俺に聞こえないレベルの小声で何かをボソッと呟いた後、焦ったようにベンチから立ち上がり。

 

 

「ご、ごめんね翔子さん!私ちょっと用事思い出しちゃった!行かなきゃ!」

 

「……別に、構わない」

 

 

彼女はまるで嵐のような勢いで公園の入り口まで走ると、こちらに振り向き。

 

 

「またね!翔子さん!」

 

 

満面の笑みを浮かべながら、大きく手を振ってきた。元気で人助けに一切嫌な顔をせず、それどころか自ら望むほどの溢れる善性を持つ少女……結局最後まで初対面時に抱いたのと同じ印象であった。こんな人間は中々いないであろう、でも……だからこそ俺はこう思える。

 

 

「ええ、また会いましょう―――あすか」

 

 

 

 

 

 

 

「―――マジカルジュエルは緑色に反応していますね、つまり今回現れたのはハザードでしょう。数日前のヘレンとの戦いはかなり苦戦を強いられました、彼もヘレンと同じくらいの強敵です。気を引き締めて行きますよ」

 

「……ち、千代はヘレンとハザード相手のときは至って真面目なのにジュエルの色が銀に輝く(エリザ出現)と途端に顔をニヤつかせ始めるのやめてほしい……」

 

「奏……その言い方は心外ですね、私はリーダーですよ?いつでも冷静沈着に決まってるじゃないですか」

 

「こわ……」

 

 

 

「千代!奏!遅れてごめんね!」

 

「あっ、あすか……!」

 

「これで3人揃いましたね―――今日も人々の為にこの街の平和を必ずや守ってみせましょう!」

 

「お、お願いだからいつもこれで……」

 

 

古江千代、黒に近い青色で落ち着きや重厚さに、信頼感を与えると言われるネイビーブルーの髪を持つ文武両道・容姿端麗の大和撫子(??)を体現したような美しき少女。

 

伊藤奏、深く落ち着いた森林のような緑であるフォレストグリーンの髪を持つ小動物のような印象を受ける小柄で可愛らしい少女。

 

そして……諸星あすか、色鮮やかなショッキングピンクの髪を持つ2人と同様に可愛い少女。だが彼女らには誰にも言えない秘密がある。それは。

 

 

「翔子さん……また、会えるといいな」

 

「あすか?今何か言いましたか?」

 

「……ううん!何でもない!それじゃあ2人とも―――行くよ!」

 

「ええ!」

 

「うっ、うん……!」

 

 

「「「マジカルジュエル・オープン」」」

 

 

 

平和を脅かす悪の組織『ソサエティ』と戦い、この街を守る魔法少女という事だ。

 





エリザとあすかの関係はまだ始まったばかりですし、他の魔法少女である2人にも少しずつスポットライトを当てて行きたいですね。
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