ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない   作:なはた

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第7話

 

春の穏やかな気候から一転、梅雨入りしジメジメとした空気が漂う……そんな6月中旬の金曜日。俺はボスからの命令を受け、街の大型ショッピングモールに作られた屋上テラスに現れていた。『ここに行け!エリザよ!』と言われたときは場所が随分と限定的な事から疑問を抱いたものだが、調べてみれば休日は多くの買い物客や家族連れで賑わっており市民にとってある種憩いの場と化しているらしく、ソサエティの掲げる理念的にわざわざここを破壊しようと狙いを定める理由も納得ではあった。最も、俺は破壊活動など行わないが……

 

 

だが今日は平日で、しかも天候が雨というのも相まって普段と違い人影は殆ど見受けられない。「雨は…嫌いだ…」と雨なのにオープンカーに乗ってそうな某ダイナミック作品キャラの台詞は俺も同意なのだが、市民に危害を加えないのを大前提としているので今回ばかりは感謝したい。ほぉ~~~ん。

 

おっとついまたダイナミック語録が……一人雨に打たれながらボケるという状況に虚しさを抱いていたそのとき、3人の少女……いや魔法少女が現れた。

 

 

「―――見つけたよエリザ!」

 

「貴方との戦闘という名の愛の深め合いもそれなりの回数を重ねてきましたが、雨の中というシチュエーションは今回が初めてですね。新鮮味があってこれはセ○クスレスならぬファイトレスのマンネリ防止になります、ですが最も……私は貴方の可愛さに飽きるなんて事は何千回、いや何億回だろうとあり得ませんけど」

 

「……ごめんね、ソフィアちゃんが何言ってるのか私未だによく分からないんだ」

 

「フフフ、リリィにもきっといつか理解出来る日が訪れますよ」

 

「そ、そっか……?そうだといいな……?」

 

「……リ、リリィ、ソフィア、今は雑談してる場合じゃない……ソサエティ幹部エリザが目の前にいる。だから私達は魔法少女として戦わないと……」

 

「そっ、そうだね!」

 

「私とした事がつい己の内に秘めた感情を曝け出しすぎましたね、こんなの普段は無いのですが(自覚ナシ)……申し訳ありませんアメリア」

 

「きょ、今日こそ絶対……絶対に勝つ……!」

 

「うん!」

 

「2人ともいきますよ!そしてエリザはイカせてみせますよ!!」(もうこの青は救いようがない)

 

 

「……来なさい」

 

 

毎度の如くソフィアのヤベェ発言に対し、正直表情を変えずに我慢するのも辛くなってきたので頭を抱えたくて仕方がない。まあそこら辺はとりあえず置いといて……俺がエテルネルステッキを構え意志を見せた事で、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

「リリィ・ストレートスラッシュ!」

 

 

先陣を切ったのはリリィだ、放たれたピンク色の巨大な光の刃が一直線にこちらへ迫ってくる。

 

 

「……カウントレス・レーザー」

 

 

光の刃に対し、漆黒の黒い一本のレーザーを放ちそれを迎撃する。二つの力は衝突し相殺された、大きな爆発音が響き渡る中……

 

 

「まだだよ!リリィ・ハートバースト!」

 

 

何度か戦闘を重ねて、お互いに理解が進んできたのかリリィはこの相殺を予想通りと言わんばかりに間を空けずに攻撃を繰り出してきた。リリィが無数のピンク色ハート型のエネルギー弾を上空へ放つと、それらはぐるりと宙を舞うように頭上から俺をめがけて飛んでくるのが見え……この技は嫌いだ。何故ならこちらも顔を空に向けてレーザーを放たないといけないから、そのとき一瞬だけ隙が生まれてしまうのである。視界を戻したら例の青が目の前にいるとかだったら、詰みだし多分泣いちゃうと思う。生命と貞操の両方が危機なんだよ怖いに決まってるだろマジで。

 

 

カウントレス・レーザーを放つ為、俺は見上げるように顔を上空へ向けた瞬間。

 

 

「―――貴方の相手はリリィだけではありませんよ」

 

 

まるで透き通った湖を彷彿とさせるような綺麗で耳心地の良い声が聞こえ、驚いて視界を戻せばソフィアが俺を冷静に見据えるように……いや顔が赤いのは気のせいだと思いながら……彼女はこう言い放った。

 

 

「ソフィア・クリスタルコールド」

 

 

絶対零度の冷気を纏う氷の結晶が生成されていき、数秒で約2メートル程度の巨大サイズになると轟音と共にリリィのハートバーストと同様俺の方に向かってきた……これは面倒だと思った所で更なる追い打ちをかけるように。

 

 

「アメリア・フォレストソード……!」

 

 

アメリアがステッキを地面に突き立てると、彼女の足元がまるで大地を揺るがすように振動し緑色に輝く光の剣が地面から現れた。そしてその剣をアメリアは両手で力強く握ると、右から回り込むように走りながら凄まじいスピードでこちらへ向かってくる。

 

頭上から降り注ぐリリィのエネルギー弾幕、真正面から向かってくるソフィアの巨大な氷の結晶、そしてそれら二つの相手をするので精一杯になるであろう事を考え別方向から攻め込むアメリア。まさに連携プレイである、速度的に見てもこれら三方向からの攻撃を同時に打ち消さなければ俺は負けてしまうだろう。

 

 

「こっ、これならッ……!」

 

 

アメリアには勝利への道筋が既に見えているのか、その表情からようやく悲願を達成できると喜びが溢れ出ていて……俺はこの作戦を考えたのは彼女だと確信した。凄いものだ、前のただとりあえずエテルネルステッキを振り、レーザーを照射するだけの自分だったらここで敗北していたかもしれない。でも俺は公園での戦いの際に生じた危機体験から、もっとこれを使いこなさければと思い脳内で何度もイメージトレーニングを重ねた。レーザーの本数をコントロールするだけじゃなく、何か複数人との戦いにおいて有効に働く技を……ぶっつけ本番だが出来ると信じてる。

 

俺はステッキを握りしめ、己の心が通じるよう冷静に、されど力強く唱える。

 

 

 

「―――カウントレス・レーザー」

 

「え!?」

 

「なっ……!?」

 

 

驚きの声を上げるリリィとソフィア、何故なら今まではずっと一方向のみに照射されてきた無数のレーザーがまるで意志を持つように、分散し上空と真正面……後もう一つ。

 

 

「う、うそ……」

 

 

回り込んでいるアメリアの元へ打ち込まれた……爆発音を上げるハートブラスト、砕け散るクリスタルコールド、そしてフォレストソードも―――バキッと折れて消滅するのであった。攻撃の前提でスピードを出していたアメリアはその目的を失ってしまった動揺からか、勢いを殺せずにそのままコンクリートの壁へ思いっきり衝突してしまい……

 

 

「アメリアちゃん!」

 

「アメリア!」

 

 

「だ、大丈夫……だからっ……」

 

 

急いでアメリアの元へ駆け寄る2人、俺も心配になったがまさか敵でありながら魔法少女と同じ真似など行えるはずもなく……だが幸いな事に彼女は普段と同様にボロボロになるだけで済んでいた……いやこれを幸い扱いするのは自分でもどうかと感じるけれど、実際大ケガなどをせず命に別状が無いのが大事なのだ。

 

 

「……戦いは終わり」

 

 

表情はクール系敵幹部を装いつつも、内心ホッとしながら俺は霧の中へと姿を消した。

 

 

 

 

エリザがいなくなった後、その場に残された魔法少女達。

 

 

 

「こ、この作戦なら勝てると思った…………ううん、勝てなくても攻撃を一発は入れられるだろうって。それだけでも良かった、だってエリザは強敵だから……でも結果は最低限の目標にすら届かない。私は魔法少女で、みんなを守らなきゃいけない存在なのに……」

 

「アメリアちゃん……」

 

「アメリア……」

 

 

アメリア……伊藤奏は内気な性格ながらもその心に秘めた正義感は誰にも負けない、しかしだからこそ今の現状が苦しいのだ。彼女は膝をつきながら、悔しそうに唇を噛み締めエリザの立っていた場所を見つめていた。

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

―――屋上テラスでの戦いから翌日となる土曜日、俺は息抜きというかお目当てのグッズを買う為にアニメショップを訪れていた。その店が入っているのは奇しくも昨日魔法少女達と戦闘を交わしたショッピングモールで、愛音ちゃんの公園の件といい何の因果な事やらと不思議に感じる。私服は当然「I am a very badgiri☆」と胸元に刻まれた英字Tシャツ着用しており、我ながら自分のセンスの良さが怖い。本屋へ行ったときと同様のまるで着せ替え人形へ向けるような視線を感じるのはきっと気のせいだろう、うん間違いないね。

 

 

そしてお目当てである今話題の百合ラノベを原作にした人気アニメのグッズが売られているコーナーへ向かうと、そこには一人の少女がいた。

 

 

「かっ、可愛い女の子同士がイチャイチャするのは私にとって最高の癒し……グッズ沢山買って家で眺めて現実の辛さを和らげようへへへ……」

 

「…………」

 

 

一人小声でブツブツと呟きながら、ニヤケ顔を浮かべているフォレストグリーンの髪を持つ小柄な少女。いくら見た目が可愛らしくとも、ちょっと怖いと思ってしまうのは仕方がないだろう。まあオタクとして気持ちは分かるけどね……でもそのコーナー俺も見たいんだが、彼女の横に行くのは少し気まずく一体どうしたものかと悩んでいたそのとき。

 

 

「アッ……!?」

 

 

少女が小さく声を漏らし、それと同時に俺の足元にコツンと何かがぶつかった音が聞こえた。目線を下に向けて確認すると、その正体は商品の缶バッチで……

 

 

「ごっ、ごめんなさい……!」

 

 

小動物っぽさを感じさせる少女は本当に動物みたいな素早さでこちらに近づいてきて、必死に謝罪の言葉を告げながら頭を下げており……別にそこまで謝る必要は無いと思うんだが……俺は落とした缶バッチを拾い、渡してあげた。すると。

 

 

「あ、ありがとうございます……!この缶バッチ前に来たときは売れ切れだったからずっと欲しくて、だってこれで全種類コンプだし私の好きなCP同士で揃うんです……!一緒に仲良く飾って気分は最高きっと悩みも全部消し飛んで―――ってななな、何でもないです……!?」

 

 

超早口で語った後、我に返ったように顔を真っ青にして手をアタフタとさせ混乱状態に陥ってしまった。その姿は前世の記憶を彷彿とさせ……ああ、一日たりとも忘れた事は無い高校時代のあのやらかし。教室で俺は好きなエロハーレムラノベをブックカバーして読んでいたら、うっかり床に落としてしまったのだ。そして本を拾った前の席のギャルは本を開き、最初のページのエッチなカラー挿絵を見て言われた感想は「へぇ~、翔太ってこういうのが好きなんだあ……マジウケるんだけど(笑)」

 

……俺を殺してくれ……

 

 

俺は目の前で慌てる少女に自分と同じ黒歴史を持ってほしくないという一心から、その子の手をそっと握ると驚いた様子で頬を赤らめていた。

 

 

「なな、何……!?」

 

「私もそのキャラ好き、だから気持ちは分かる」

 

「えっ……?」

 

 

そして長い沈黙の後、俺より僅かに身長の低い少女は上目遣いでこちらを見上げながら。

 

 

「…………ち、ちなみにこのキャラのCPだと誰との組み合わせが好き……ですか?」

 

 

まるで同士を求めるように、期待の籠った声色で訪ねてきた。きっとこの子はずっと自分の趣味を誰かと共有したいという気持ちを抱えてきたのだろう、見ず知らずの他人に聞く辺り相当勇気を振り絞ったのが伝わってくる。俺もコミュ力が高いわけでは全くないが、純粋にその気持ちに答えたいと思う。しかし問題が一つ―――CP論争はどうしても火種を生みかねないという点、お互いに作品が、同じキャラが好きでもその部分で意見が分かれて内心気まずくなるなんてあるあるだ。俺は噛み合う事を祈りながら。

 

 

「……○○と○○」

 

 

推しCPを静かに伝えた、そして目の前の少女はさっきより更に長い沈黙を経て……

 

 

「う、うん!私もそう……!同じ……!」

 

 

そう言って、心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 

 

これがフォレストグリーンの髪を持つ小柄で可愛らしい少女―――伊藤奏さんとの最初の出会いである。




この少女…一体何カルアメリアさんなんだろうな…(すっとぼけ)

次回からアメリア編となります。
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