ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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なんだか体調悪い


第10話 異質な新入生

「スリザリン!!」

 

 組み分け帽子の声が大広間へ響く。

 

 一瞬の静寂。

 

 そして次の瞬間、スリザリンの長テーブルから一際大きな拍手が上がった。

 

「やっぱりだ!」

 

「当然だろ」

 

「アウレリウス家だぞ」

 

 ざわめきの中、セラフィーナは静かに帽子を外して立ち上がる。その動作には一切の迷いが無かった。まるで最初から決まっていた場所へ向かうだけであるかのように。

 

 深緑と銀のテーブル。スリザリン生達の視線が一斉に集まる。興味、警戒、期待、そして僅かな畏れ。その全てを真正面から受けながら、セラフィーナは堂々と歩いていく。オーロラもその隣を静かに歩いていた。

 

「アウレリウス!」

 

 ドラコが少し嬉しそうに声を上げる。

 

「やっぱりスリザリンだったね。君なら絶対にそうだと思っていたよ」

 

「あぁ、そうなったな」

 

 セラフィーナは当然のことのように答えると、ドラコの隣に座る。オーロラも当然のようにセラフィーナの膝に飛び乗って座り、毛繕いを始める。

 

「……凄かったな今の」

 

 ドラコが少し興奮した様子で言う。

 

「帽子、かなり長く悩んでたじゃないか」

 

「そうか?」

 

 周囲の上級生達もひそひそと話している。

 

「帽子があそこまで喋るの初めて見たぞ……」

 

「アウレリウス家だしな……」

 

 教師席。スネイプは腕を組んだまま、静かにセラフィーナを見ていた。表情に変化は無いが、その黒い瞳だけが僅かに細められている。

 

「……なるほど。確かにレジナルドの娘だ」

 

 小さな呟き。隣に座るマクゴナガルが僅かに視線を向けた。

 

「随分と両親に似ていますね」

 

「そのようですな……厄介なことに」

 

 短い返答。だがスネイプ自身、内心では納得していた。あれは確かにスリザリンだ。野心、覇気。そして、頂点へ至ることを当然とする精神。それは歴代のスリザリン生の中でも、特に色濃い部類だった。

 

 そしてハーマイオニーやロン達の名前も呼ばれていく。

 

「ほう、あいつ等はグリフィンドールか」

 

「ポッターがグリフィンドール……」

 

 ドラコは少し不満そうな顔をする。

 

「不満かマルフォイ」

 

「付き合う相手を選んだ方がいいと忠告してやったのに……」

 

 ドラコは不満そうに唇を尖らせる。

 

「だが断られた、と」

 

「あぁ。しかもロン・ウィーズリーなんかの肩を持つんだ」

 

 その言い方に、セラフィーナは少しだけ笑う。

 

「別に肩を持った訳ではないだろう。どうせ貴様の態度が悪かったんだろう」

 

「なっ……!」

 

 ドラコが言葉に詰まる。周囲の上級生達からクスクスと笑いが漏れた。

 

「ハッキリ言うなぁ……」

 

「流石アウレリウス家だ」

 

 その時、グリフィンドールのテーブルから大きな歓声が上がる。そちらに視線を移すとハリー・ポッターが席へ迎えられていた。ロンが満面の笑みでハリーの背中を叩き、ハーマイオニーもどこか嬉しそうに拍手している。

 

「随分と歓迎されているな」

 

「当然だよ。“生き残った男の子”だからね」

 

 ドラコは面白くなさそうに言う。セラフィーナはグリフィンドールのテーブルへ視線を向ける。ハリーはまだ少し緊張しているようだったが、それでも先程より表情は明るかった。

 

「……だが、悪くない顔をしている」

 

「え?」

 

「自分で選んだ場所へ辿り着いた人間の顔だ」

 

 セラフィーナはカボチャジュースを一口飲む。

 

「そういう人間は嫌いではない」

 

 ドラコは複雑そうな顔をした。

 

「君って本当に変わってるよね」

 

「よく言われる」

 

 そしてリオラもスリザリンに選ばれ、当然のようにセラフィーナの隣に座る。

 

 

 

 その時、ダンブルドアがゆっくりと立ち上がった。途端に大広間のざわめきが静まっていく。長い銀髭を蓄えた老魔法使いは、楽しげな笑みを浮かべながら両腕を広げた。

 

「諸君、ようこそホグワーツへ!」

 

 その声が大広間へ響き渡る。

 

「まずは何より――食事としよう!」

 

 直後、空だった皿へ大量の料理が現れた。

 

「おぉ……!」

 

 一年生達から驚きの声が上がる。

 

 ローストビーフ、チキン、マッシュポテト、パイ、スープ。豪華な料理が長テーブルいっぱいに並んでいく。ロンなどは完全に目を輝かせていた。

 

「すっげぇぇぇ……!」

 

 セラフィーナも珍しく軽く目を見開いている。

 

「これは素晴らしいな」

 

「はい。アウレリウス家の料理人と良い勝負ですね」

 

 食事が始まる。決闘貴族や脳筋名家と呼ばれているとは言え、アウレリウス家は正真正銘の上流階級であり貴族。セラフィーナとその従者であるリオラの食事マナーは完璧と言えるほど美しいものであった。

 

 そして──

 

「……その子も食べるんだな」

 

「当然だ。オーラは人と同じものを何でも食べるからな」

 

「本当に何でも……?」

 

 少し目を見開きながらオーロラに目を向ける。オーロラは料理を決して食い散らかしたりせず、静かに目の前の料理を食べている。野菜も魚も肉も、好き嫌い一つ見せず平然と食べていく。

 

 そして食事が進んでいく。

 

 最初に気付いたのは、近くに座っていた上級生だった。

 

「……ん?」

 

 皿が空になる速度がおかしい。だがセラフィーナ本人の動きは極めて優雅だった。音を立てない、姿勢も崩れない。ナイフとフォーク捌きは完璧。まるで貴族の晩餐会そのもの。その所作の美しさに、最初は誰も『量』へ意識が向かなかった。

 

 だが――ローストビーフ一皿。チキン、パイ、ポテト、スープ……。

 

 追加。

 

 さらに追加。

 

 周囲が段々静かになる。

 

「……あなた、かなり食べるのね」

 

 遠慮がちに声を掛けてきたのは、スリザリンの上級生らしき少女だった。

 

 セラフィーナはナプキンで口元を軽く拭きながら答える。

 

「あぁ。鍛錬量が多いからな」

 

「鍛錬?」

 

「毎日やっているぞ。筋力鍛錬、走り込み、格闘訓練、箒飛行、魔力制御……他にも色々だ」

 

 フォークを置きながら、まるで当たり前のように言う。周囲の上級生達が静まり返った。

 

「ま、待て。筋力鍛錬って何だ?」

 

「そのままの意味だが?」

 

「いや、魔法使いだろ君……?」

 

 セラフィーナは少し不思議そうな顔をする。

 

「魔法使いだから鍛えるのだ。強靭な肉体は魔力の制御や集中にも影響する。父上からそう教わった」

 

 ドラコが乾いた笑みを浮かべる。

 

「……アウレリウス家って本当に変わってるよね」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

 即答だった。

 

 そして気付けば、周囲のスリザリン生達は皆、セラフィーナ達を見ていた。恐れ、警戒。だがそれ以上に――興味。

 

 アウレリウス家。

 

 決闘貴族。

 

 そしてレガリア・アウルム。

 

 ホグワーツへ現れた異質な新入生は、入学初日から既に強烈な存在感を放っていた。




ホグワーツの料理食べてみたい
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