ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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ストック無しの毎日投稿が果たしていつまで続くか


第13話 導く魔法

 ホグワーツ最初の朝食を終えた一年生達は、時間割を片手に慌ただしく廊下を移動していた。動く階段、突然消える通路。そして好き勝手に話しかけてくる肖像画たち。城そのものが新入生を翻弄しているようだった。

 

「うわっ!また階段動いた!」

 

「だから急げって言っただろ、ロン!」

 

 ハリーとロンが慌てて階段を駆け上がる。後ろではネビルが教科書を盛大に落としてしまい、ハーマイオニーが呆れながら拾い集めていた。

 

「ご、ごめん!」

 

「もう……本当にしょうがないわね」

 

 一方その頃。セラフィーナたちは迷いなく廊下を歩いていた。リオラが少し後ろを歩き、オーロラはセラフィーナの肩の上で丸くなって眠そうにしている。

 

「お嬢様、次は変身術の教室です」

 

「うむ。動く階段に消える通路……中々に面白い城だな」

 

 すれ違う生徒達が、思わず足を止めてヒソヒソと囁く。

 

「あれ昨日の……」

 

「四年生を倒したっていう子だ」

 

「レガリア・アウルムだ……」

 

 セラフィーナはそんな視線などまるで意に介さず、オーロラの頭を軽く指先で撫でた。

 

「まだ眠いのかオーラ」

 

「お屋敷とは環境が違いますからね。眠りが浅かったのかもしれません」

 

 その言葉に反応するように、オーロラは再び大きな欠伸をする。

 

 変身術の教室前には、既に数人の一年生が集まっていた。そこにはハリー達の姿もあった。

 

「あっ、セラフィーナ!」

 

 ハリーが軽く手を振る。だがロンは反射的に少し距離を取った。

 

「お、おはよう……」

 

「なんだウィーズリー、もう昨夜の話を聞いたのか?」

 

 ロンが勢い込んで身を乗り出す。

 

「聞いたよ!四年生を半殺しにしたって本当か!?」

 

 周囲の一年生が一瞬、息を飲んだ。セラフィーナは気にすることなく静かに微笑みながら、紅い瞳でロンをじっと見つめた。

 

「ふん。愚か者に相応の報いを与えただけだ。騒ぐほどのことではない」

 

 ロンは気圧されたように少し後ずさり、ハーマイオニーは興味津々な目でセラフィーナを見ていた。ハリーがフォローしようとしたその時、教室の扉がゆっくりと開いた。

 

 生徒達がぞろぞろと中に入り、それぞれ席に座る。教壇の上には、灰色の猫が優雅に座っていた。尻尾を巻いてじっと生徒達を見つめている。

 

「先生、まだ来てないのかな……」

 

「猫がいるぞ」

 

 生徒達がひそひそと話す中、オーロラだけは教壇の猫を見てわずかに目を細めた。

 

 全員が席に着いたその時、突然猫が飛び上がり勢いよく回転した。次の瞬間、そこに立っていたのは厳しい顔をしたマクゴナガル教授だった。

 

「わっ!?」

 

「ええっ!?」

 

 教室中がどよめいた。ハリー達三人組も目を丸くしている。

 

 マクゴナガル教授は眼鏡の奥から鋭い視線を教室中に走らせ、静かに言った。

 

「変身術は、魔法の中で最も複雑で危険なものの一つです。軽い気持ちで扱えば、君達自身や他人を危険に晒すことになる……」

 

 教授の視線が、ふと後ろの席に座るセラフィーナとその肩の上のオーロラに止まった。

 

 セラフィーナは動じることなく、教授の視線を受け止めていた。寧ろ、わずかに興味深げな笑みを浮かべている。マクゴナガル教授は一瞬眉を寄せたが、何も言わずに授業を続けた。

 

「まずは基本からです」

 

 マクゴナガル教授が杖を軽く振る。すると教卓の上に積まれていたマッチ棒がひとりでに宙へ浮かび、生徒達の机へ一本ずつ配られていった。

 

「今日はこのマッチ棒を針に変身させなさい。集中力と正確なイメージが鍵です」

 

 教室がざわついた。セラフィーナは自分の机のマッチ棒を指先で摘まみ上げ、じっくりと観察した。木の繊維まで見つめるような真剣な眼差しだ。

 

「……面白い。対象の構造を書き換えるのか」

 

 リオラが小声で囁く。

 

「お嬢様、戦闘魔法以外は苦手でしたよね?」

 

「……言われなくても分かっている」

 

 その様子を見ていたドラコは後ろの席で呆れたように呟いた。

 

「……それが一年生の会話なのか?」

 

 マクゴナガル教授が机を軽く叩く。

 

「私語は禁止です。始めなさい」

 

 教室中に杖を振る音が響く。ほとんどの生徒のマッチは変化しない。何の変化も無い者、煙を上げる者、焦げる者。ネビルに至ってはマッチ棒が発火して机から転げ落ちる始末だった。

 

 一方、ハーマイオニーのマッチ棒は先端が銀色に光り始めていた。

 

 セラフィーナは深く息を吐き、集中した。深紅の魔力が微かに杖の先で揺らめく──しかし、マッチ棒は微動だにしなかった。

 

「……ふむ。失敗か」

 

 リオラが静かに微笑む。

 

「お嬢様、旦那様も変身術が苦手だと仰っていました。ここは旦那様に似たのですね」

 

「うるさいぞ、リオラ。……次は成功させる」

 

 セラフィーナは小さく舌打ちし、再びマッチ棒を見つめた。その瞳には、むしろ闘志のような楽しげな光が宿っていた。

 

「ミス・グレンジャー、素晴らしい出来です」

 

 ハーマイオニーが嬉しそうに背筋を伸ばす。一方マクゴナガルは、変化しないマッチ棒を睨むセラフィーナを見ていた。

 

「苦戦しているようですね、ミス・アウレリウス。落ち着いて。焦りは禁物です」

 

「……はい。理論は理解しているはずなのですが」

 

 セラフィーナは珍しく素直に頷きながらも、指先でマッチ棒を軽く叩いた。

 

「ミス・アウレリウス。貴女は力を流すのではなく、叩き込もうとしている」

 

 セラフィーナの眉が僅かに動く。

 

「変身術は決闘ではありません。対象を破壊するのではなく、導くのです」

 

 セラフィーナは静かに目を閉じた。

 

 『導く』

 

 その言葉を頭の中で反芻する。押し潰すのではない。力で捻じ伏せるのでもない。対象の形を理解し、変化を促す。

 

「……なるほど」

 

 再び杖を振る。するとマッチ棒の先端がわずかに針に変わった。

 

 マクゴナガルは静かに微笑み軽く頷く。

 

「上出来です、ミス・アウレリウス。よく理解しましたね。ただ……もう少し優しく、丁寧に。力任せではいつか限界が来ますよ」

 

 セラフィーナは小さく微笑み返した。

 

「肝に銘じます、教授」




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